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そろそろ良い加減少しはスローライフをしたい
第55話 手汗男ターク
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「俺はターク・ナーデッドと言います。貴女は!?」
ここはちょっと多めに歩いたところにある喫茶店。
歩いた分だけタークは汗をかいている。
手汗男は額の汗を手で拭ぐおうとしたので、収納からタオルを出してやる。
「これを使えですわよ。返品不可だわよ」
「ありがとう!」
手汗男改め、タークは感激した様に目を輝かせている。
「酷い女言葉……」
ルミィお婆ちゃんがボソッと時夫の悪口を言う。
くそっ!敬老精神とひと目があってデコピンできないですわ!
そして、顔面全体をタオルで拭いたタークが身を乗り出しつつ、唾を飛ばす勢いでトーニャを質問責めにする。
「そ、それで貴女の名前は?お住まいはどちらに!?ご職業は!?おいくつですか!?彼氏はいませんよね!?それと、貴女はもちろん処じ……」
「あーーーもう!!!一気に捲し立てるな!……ですわ!
プライバシーを名前も聞く前から根掘り葉掘り問いただして答える馬鹿いないだろう!……と思いませんこと!?」
女言葉難しいー!
「お……ワタシの名前は……トーニャなのですわ!
それで、おま……あなたの知ってる、あの店の秘密を教えろですわ」
「ふふふ……貴女もせっかちな人だ……」
タークは指紋がたっぷりと付いたメガネをくいくいっと中指で動かしながらニヤリと笑う。
なんかムカつくな。殴りたい……いや、汗が俺の手に付いたら嫌だからやっぱりいいや。
ルミィお婆ちゃんは果汁をのんびり飲んでいる。
お婆ちゃんのフリ似合うなぁ。
「そう言うの良いから。早くするのですわ」
「ふぅ……仕方ないですなぁ。
では、お話しするとしますか……。
あの店の裏メニュー……それは……」
ダンッ!!
時夫は両手でテーブルを叩いて話を中断させた。
「そっちじゃなく!!安さの秘訣を教えろなのですわ!!」
「な、なるほど……それでは一から説明すると……」
タークの話を(ムカつく謎のやれやれ、ふふふ、ふむ……だとかを省いて)まとめると次の通りだ。
――パーラーゴールダマインの地下では、捕まった獣人の子供たちが泣きながらアイスクリームを作っている。
獣人の子供たちの給料は1日1ゴルダだけ。
パーラーゴールダマインの社員は、獣人たちが逃げたりしないよういつも見張っている。
こうして人件費を大幅に抑えることで、パーラーゴールダマインは安くて美味しいアイスクリームをみなさんに提供できるのです。
「なんで酷い……」
ルミィお婆ちゃんは涙を浮かべてショックを隠しきれていない。
時夫は……なんかどっかの日本で聞いたことある話だな?とかは思わなかったよ。
とりあえず、タークを詳しく尋問する。
「それは……本当なのかしら?おま……アナタは何か証拠を持ってるのかしら?」
それに対して、タークはニンマリと自信ありげに唇の端を歪める。笑顔ヘタかよ。
「ふふふ……これを見てください」
差し出したのは写真だ。
火と光魔法を利用したカメラで紙に白黒で焼き付けられている。
この世界の紙ってそういえばどうやって作ってるんだろう?
紙を作る謎魔法を使ってるんだろうな。
……最近時夫もこの世界に思考が毒されて来て、難しいことは考えなくなって来た。
だって、そういう便利な魔法を使える奴がいるから!で大抵のことは解決してるんだもん。
科学が発展しない訳ですよ。
それはさて置き、
「これ……狐獣人……ですわよね?それに、ロン毛……」
時夫が呟く。
「そう!そう!そうなんだ!このムカつくチャラいイケメン勘違い野郎はロリコンで、子供達を地下に攫って閉じ込めてるんだ!!」
な、なんだってー!
と、ふざけるには、あまりにしっかりと人物がわかる様に写っている。
「もしかして……この狐獣人の子供たちは毛が白くなかったか?」
白黒写真なので分かりづらいが、相当明るい色をしてるのは確実だ。
端っこにタークの汗染みがあるので、そこは触らない様に気をつける。
「トーニャたん!よくぞそこに気がついてくれた!
珍しいでしょ?だから俺は写真をわざわざ撮ったんだ!」
そう、カメラも紙もこの世界では値段が高いので、おいそれと買ったり、使ったり出来ないはず。
それなのに写真を撮ったのは、タークが目撃したのが、それだけ珍しい光景だったからなのだ。
要するに、滅多に会う機会の無い、氷魔法の使い手たる北狐族を複数見るのはタークにとって初めての経験だったということだ。
「……わかった。必要な情報は得られた。
で、貴様……普段から盗撮しているな?」
「え?いや……その、盗撮なんてトーニャたん人聞きの悪い……。
単に芸術を心と紙に保存してるだけですよぅ」
タークはぴゅぴゅーっと下手くそな口笛を吹きながら目を逸らした。
それで誤魔化してるつもりか?
「……『空間収納』は使えるのか?ですわ?」
時夫は質問を変えた。
「んん?それは残念ながら使えないのですなぁ。
使えたら大事なコレクションを保存しておくのに……」
眉根を寄せつつ首を振って見せるが、何を表している表情かは分からなかった。
もしかしたら、本人はアンニュイな表情を作ってるつもりかも知れない。
『空間収納』は便利なので使える人も多い魔法だが、平民の使用率はやはり低いのだ。
「よし、では貴様の家を家宅捜索する!……わよ!」
「え!?そんな!お家デート!?」
「違うがとにかく連れて行って貰おうか……しら?」
タークの家を訪問し、タークはルミィ婆さんが背後から気絶させ、トーニャとルミィ婆さんで家を漁った。
ミーシャやうちの看板娘、そして、パーラーゴールダマインの店員さん達の隠し撮りがあった。
それらはその場で全て焼いた。
そして、タークの家を出る。
もう二度と来ることは無いだろう。
さらば!!永遠にグッバイ!!
「さて、誘拐か……」
厄介な事件の予感に、時夫はやれやれと首を振った。
「トキオ……その動作タークっぽいですね」
癖が移った様だ。やれやれ。
ここはちょっと多めに歩いたところにある喫茶店。
歩いた分だけタークは汗をかいている。
手汗男は額の汗を手で拭ぐおうとしたので、収納からタオルを出してやる。
「これを使えですわよ。返品不可だわよ」
「ありがとう!」
手汗男改め、タークは感激した様に目を輝かせている。
「酷い女言葉……」
ルミィお婆ちゃんがボソッと時夫の悪口を言う。
くそっ!敬老精神とひと目があってデコピンできないですわ!
そして、顔面全体をタオルで拭いたタークが身を乗り出しつつ、唾を飛ばす勢いでトーニャを質問責めにする。
「そ、それで貴女の名前は?お住まいはどちらに!?ご職業は!?おいくつですか!?彼氏はいませんよね!?それと、貴女はもちろん処じ……」
「あーーーもう!!!一気に捲し立てるな!……ですわ!
プライバシーを名前も聞く前から根掘り葉掘り問いただして答える馬鹿いないだろう!……と思いませんこと!?」
女言葉難しいー!
「お……ワタシの名前は……トーニャなのですわ!
それで、おま……あなたの知ってる、あの店の秘密を教えろですわ」
「ふふふ……貴女もせっかちな人だ……」
タークは指紋がたっぷりと付いたメガネをくいくいっと中指で動かしながらニヤリと笑う。
なんかムカつくな。殴りたい……いや、汗が俺の手に付いたら嫌だからやっぱりいいや。
ルミィお婆ちゃんは果汁をのんびり飲んでいる。
お婆ちゃんのフリ似合うなぁ。
「そう言うの良いから。早くするのですわ」
「ふぅ……仕方ないですなぁ。
では、お話しするとしますか……。
あの店の裏メニュー……それは……」
ダンッ!!
時夫は両手でテーブルを叩いて話を中断させた。
「そっちじゃなく!!安さの秘訣を教えろなのですわ!!」
「な、なるほど……それでは一から説明すると……」
タークの話を(ムカつく謎のやれやれ、ふふふ、ふむ……だとかを省いて)まとめると次の通りだ。
――パーラーゴールダマインの地下では、捕まった獣人の子供たちが泣きながらアイスクリームを作っている。
獣人の子供たちの給料は1日1ゴルダだけ。
パーラーゴールダマインの社員は、獣人たちが逃げたりしないよういつも見張っている。
こうして人件費を大幅に抑えることで、パーラーゴールダマインは安くて美味しいアイスクリームをみなさんに提供できるのです。
「なんで酷い……」
ルミィお婆ちゃんは涙を浮かべてショックを隠しきれていない。
時夫は……なんかどっかの日本で聞いたことある話だな?とかは思わなかったよ。
とりあえず、タークを詳しく尋問する。
「それは……本当なのかしら?おま……アナタは何か証拠を持ってるのかしら?」
それに対して、タークはニンマリと自信ありげに唇の端を歪める。笑顔ヘタかよ。
「ふふふ……これを見てください」
差し出したのは写真だ。
火と光魔法を利用したカメラで紙に白黒で焼き付けられている。
この世界の紙ってそういえばどうやって作ってるんだろう?
紙を作る謎魔法を使ってるんだろうな。
……最近時夫もこの世界に思考が毒されて来て、難しいことは考えなくなって来た。
だって、そういう便利な魔法を使える奴がいるから!で大抵のことは解決してるんだもん。
科学が発展しない訳ですよ。
それはさて置き、
「これ……狐獣人……ですわよね?それに、ロン毛……」
時夫が呟く。
「そう!そう!そうなんだ!このムカつくチャラいイケメン勘違い野郎はロリコンで、子供達を地下に攫って閉じ込めてるんだ!!」
な、なんだってー!
と、ふざけるには、あまりにしっかりと人物がわかる様に写っている。
「もしかして……この狐獣人の子供たちは毛が白くなかったか?」
白黒写真なので分かりづらいが、相当明るい色をしてるのは確実だ。
端っこにタークの汗染みがあるので、そこは触らない様に気をつける。
「トーニャたん!よくぞそこに気がついてくれた!
珍しいでしょ?だから俺は写真をわざわざ撮ったんだ!」
そう、カメラも紙もこの世界では値段が高いので、おいそれと買ったり、使ったり出来ないはず。
それなのに写真を撮ったのは、タークが目撃したのが、それだけ珍しい光景だったからなのだ。
要するに、滅多に会う機会の無い、氷魔法の使い手たる北狐族を複数見るのはタークにとって初めての経験だったということだ。
「……わかった。必要な情報は得られた。
で、貴様……普段から盗撮しているな?」
「え?いや……その、盗撮なんてトーニャたん人聞きの悪い……。
単に芸術を心と紙に保存してるだけですよぅ」
タークはぴゅぴゅーっと下手くそな口笛を吹きながら目を逸らした。
それで誤魔化してるつもりか?
「……『空間収納』は使えるのか?ですわ?」
時夫は質問を変えた。
「んん?それは残念ながら使えないのですなぁ。
使えたら大事なコレクションを保存しておくのに……」
眉根を寄せつつ首を振って見せるが、何を表している表情かは分からなかった。
もしかしたら、本人はアンニュイな表情を作ってるつもりかも知れない。
『空間収納』は便利なので使える人も多い魔法だが、平民の使用率はやはり低いのだ。
「よし、では貴様の家を家宅捜索する!……わよ!」
「え!?そんな!お家デート!?」
「違うがとにかく連れて行って貰おうか……しら?」
タークの家を訪問し、タークはルミィ婆さんが背後から気絶させ、トーニャとルミィ婆さんで家を漁った。
ミーシャやうちの看板娘、そして、パーラーゴールダマインの店員さん達の隠し撮りがあった。
それらはその場で全て焼いた。
そして、タークの家を出る。
もう二度と来ることは無いだろう。
さらば!!永遠にグッバイ!!
「さて、誘拐か……」
厄介な事件の予感に、時夫はやれやれと首を振った。
「トキオ……その動作タークっぽいですね」
癖が移った様だ。やれやれ。
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