悪女で悪魔

黒澤尚輝

文字の大きさ
8 / 69

しおりを挟む


なんとか落ち着きを取り戻した私はその日早退をして母に助けを求めた。
予想はしていたのだ。私の中に混じる淫魔の血が何かの理由をきっかけに暴れ出したと。

同じ血混じりの母に感じたことを全て伝えると悲しそうな表情で母は言った。

「きっとその少女は聖女の末裔よ。聖女は力もあるのよ」
「真実⋯⋯」
「この手もね、聖女の浄化魔法で爛れてしまったのよ⋯⋯痛かったわね」
「だから火傷みたいになってるのね」
「もう、魔族なんて信じる人はいないわ⋯⋯。淫魔なんて言っても理解はされない。ユナイデル家も以前は淫魔と知った上で結婚していたけど、今ではもう淫魔ということは隠しているわ」
「お父様もお祖父様も知らないものね。私とお母様とお祖母様が淫魔の血混じりということを」
「きっと、今ある魔力が尽きてしまうともう大地からの力で変換することはできない。⋯⋯男の人の、精液を摂取しないと魔力を使えないわ」
「はい」
「っごめんなさい⋯⋯メルっっ辛いわよね⋯⋯っ」
「いいのです」

私のために涙する母の優しさに私も少し涙が溢れた。

それから私は魔力の元精液を摂取することなく魔力を使い果たし、落ちぶれてしまった。
精液を摂取しないといけないとは分かっているもののどうしてもできなかった。どうすればいいのかは母から借りた本で学んだが勇気が出なかった。

そこから私は地に落ち馬鹿にされた。
異性に襲われかけた時にはなんとか逃げ出したものの、淫魔の血が〝襲われれば良いものを〟そう語りかけてきている気がした。

淫魔の本能を抑えるのに比例して、聖女の末裔は嫌がらせかのように私に近づいてきた。私の体に流れる血に魔族が混じっていることを本能的に感じ浄化しようとしているのか、単に意味もなく先輩である私に無遠慮に近づいてきているのか分からなかったが行く先々に少女は現れた。

聖女の前だとより血が騒ぎ異性を求めてしまいそうになった。
聖女に触れられる、聖女のものに触れると浄化魔法で肌が焼ける。
さらに聖女の作った物を食べると想像を絶する痛みに襲われるらしい。
そのため聖女にはできるだけ近づかず離れてもらうよう、最悪の場合突っぱね拒否をした。時には手を叩き、時に魔族とバレないよう爛れた肌を手袋で隠した。

そんな努力を踏み躙るかのように聖女は私の元に来た。それも5人の男を代わる代わるに連れて。

2年の首席と2番、3年の第一騎士団団長息子と上級研修所所長息子、1年の天才と呼ばれる少年。その5人を侍らせ私の元へとやってきた。

異性から香る匂いは様々だ。魔力の質により味も匂いも変化する。質の良い人の匂いは甘く質の悪い人の匂いは薄い。
人間が食べ物の匂いを嗅ぎ腹を空かせるのと同じで淫魔も甘く強い香りを嗅げば喉が渇き下腹部が疼くのだ。

聖女の力で増幅された淫魔の能力はいつもよりも敏感に異性の匂いを嗅ぎ分けた。
そんな状態の時、聖女の隣にいる男5人はみんな魔力の質が学園内でもトップレベル。
どの菓子よりも甘くどんな香水よりも強い5人のな香りは私の理性を擦り切るのに十分だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

処理中です...