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しおりを挟むなんとか落ち着きを取り戻した私はその日早退をして母に助けを求めた。
予想はしていたのだ。私の中に混じる淫魔の血が何かの理由をきっかけに暴れ出したと。
同じ血混じりの母に感じたことを全て伝えると悲しそうな表情で母は言った。
「きっとその少女は聖女の末裔よ。聖女は真実を現す力もあるのよ」
「真実⋯⋯」
「この手もね、聖女の浄化魔法で爛れてしまったのよ⋯⋯痛かったわね」
「だから火傷みたいになってるのね」
「もう、魔族なんて信じる人はいないわ⋯⋯。淫魔なんて言っても理解はされない。ユナイデル家も以前は淫魔と知った上で結婚していたけど、今ではもう淫魔ということは隠しているわ」
「お父様もお祖父様も知らないものね。私とお母様とお祖母様が淫魔の血混じりということを」
「きっと、今ある魔力が尽きてしまうともう大地からの力で変換することはできない。⋯⋯男の人の、精液を摂取しないと魔力を使えないわ」
「はい」
「っごめんなさい⋯⋯メルっっ辛いわよね⋯⋯っ」
「いいのです」
私のために涙する母の優しさに私も少し涙が溢れた。
それから私は魔力の元を摂取することなく魔力を使い果たし、落ちぶれてしまった。
精液を摂取しないといけないとは分かっているもののどうしてもできなかった。どうすればいいのかは母から借りた本で学んだが勇気が出なかった。
そこから私は地に落ち馬鹿にされた。
異性に襲われかけた時にはなんとか逃げ出したものの、淫魔の血が〝襲われれば良いものを〟そう語りかけてきている気がした。
淫魔の本能を抑えるのに比例して、聖女の末裔は嫌がらせかのように私に近づいてきた。私の体に流れる血に魔族が混じっていることを本能的に感じ浄化しようとしているのか、単に意味もなく先輩である私に無遠慮に近づいてきているのか分からなかったが行く先々に少女は現れた。
聖女の前だとより血が騒ぎ異性を求めてしまいそうになった。
聖女に触れられる、聖女のものに触れると浄化魔法で肌が焼ける。
さらに聖女の作った物を食べると想像を絶する痛みに襲われるらしい。
そのため聖女にはできるだけ近づかず離れてもらうよう、最悪の場合突っぱね拒否をした。時には手を叩き、時に魔族とバレないよう爛れた肌を手袋で隠した。
そんな努力を踏み躙るかのように聖女は私の元に来た。それも5人の男を代わる代わるに連れて。
2年の首席と2番、3年の第一騎士団団長息子と上級研修所所長息子、1年の天才と呼ばれる少年。その5人を侍らせ私の元へとやってきた。
異性から香る匂いは様々だ。魔力の質により味も匂いも変化する。質の良い人の匂いは甘く質の悪い人の匂いは薄い。
人間が食べ物の匂いを嗅ぎ腹を空かせるのと同じで淫魔も甘く強い香りを嗅げば喉が渇き下腹部が疼くのだ。
聖女の力で増幅された淫魔の能力はいつもよりも敏感に異性の匂いを嗅ぎ分けた。
そんな状態の時、聖女の隣にいる男5人はみんな魔力の質が学園内でもトップレベル。
どの菓子よりも甘くどんな香水よりも強い5人の極上な香りは私の理性を擦り切るのに十分だった。
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