悪女で悪魔

黒澤尚輝

文字の大きさ
59 / 69

51

しおりを挟む
暗闇。何もない。ここはどこ。分からない。
突然目の前に暖かな光が灯る。優しい色の光は私を包み込み肌を焼く。
叫ぶ。痛いはずなのに痛くない。でも痛みを知っている。

光は私を焼きどこかへと行った。なぜかそれを追いかける私。爛れた肌は痛々しいのに光を追う足を止められない。

光は止まった。6つの光のもとへ。7つの光は掛け合い虹色に輝いた。私は目を細め見つめることしかできなかった。突然私の胸元から現れたのは黒い塊。何かわからないそれは光の方へふらふら向かい1つの光は触れる。その光は美しい輝きの傍ら黒い塊に少し侵食された。そしてまた1つまた1つと黒い塊はヒカリを侵食した。

1番最初に追った光はピンク色に輝き黒い塊を照らす。塊は霧を上げ小さくなり消えた。ピンク色は強く輝き6つの光を包み込んだ。1つとなった光は空へと昇り輝いている。

光の隅にはまるで黒い塊がいたことを証明するように黒いシミとなっている。

暗転。

次に目を覚ますと見知らぬ部屋にいた。大きな窓からは外の灯りが入りキラキラと輝く。天板のついたベッドとそこらじゅうにある人形。フリルのついたスカートやワンピースのかかったクローゼット。そしてベッドには2人の男女。

聖女と首席がベッドで睦み合う。生々しい水音と気持ちよさそうに喘ぐ聖女の声。首席は短く息を吐きながらも聖女へ愛の限りを伝える。耳を塞いでも聞こえる声に心臓が軋む。

2人が達すると2番目が部屋へ入り早々に服を脱ぎ女と重なる。そして1年のの天才が、団長の息子が、所長の息子が、先生が次々と部屋へやってきては聖女と愛し合う。

目を閉じたいのに閉じれない。耳を塞いでも聞こえる。声をあげても聞こえてないのか気が付かれない。目の前ではただひたすら行為が続き聖女が達し男たちが達し、愛を語らい口づけを交わす。

吐き気がするのに何も出ない。

──やめて。私のなのに
「あなたのもの?バカ言わないで。魔法で作った紛い物を自分のものなんて頭がおかしいんじゃない?」
──紛い物なんかじゃない
「淫魔の魔法がなければあなたなんか誰とも関係を持つことなんてできない」
──私は愛されている
「愛されているわけがない。あなたは偽物。私の身代わり」
──やめて
「馬鹿な女」

頭に響く聖女の末裔の声。勘違いするなと言う声。愛されているかのように感じていたのは全て魔法のおかげ。私自身が愛されていたわけではない。少しだけも行為に好意が混じっていると勘違いしないための注意喚起なのだろうか。

目の前では男たちが甲斐甲斐しく女を責め次の順番で揉めていた。女はそんな男たちに少しだけ笑い何かを言う。男たちは嬉しそうに笑い1人1人女にキスをする。
本のようなその光景をただ眺めることしかできない私は紛い物だからだろう。頬に何かが伝う。何が伝っているのか自覚してしまえば私は壊れてしまう、そう思い知らぬふりをした。

私と行為をしていた男たちを思い出す。あんな笑顔見たことがない。私では引き出せない笑顔に鼻の奥がツンと痛んだ。

淫魔の能力が芽生えてから情緒が不安定となり始めている。以前より悲しみ怒り欲に忠実となった。いつか完全な淫魔として覚醒してしまうのだろうか。ただただ不安だった。

割り切れているつもりでも簡単に受け入れることなんてできるはずもなかった。強がっているだけで悪魔へと変わっていく自分に恐怖した。私はどうなってしまうのか。誰にも言えない弱音がボソリと漏れる。

目の前ではいまだに行為が続いていた。


────────

意識が浮上し目が覚める。いつも見る天井にゆっくり身体を起こす。そこは自分の部屋で何も変わらない光景に疑問が生じた。準備室にいたはずなのに一体何をしていたのか、記憶がない。先生に呼び出され何かを話しそのあと自宅にどう戻ったのか、分からない。最近疲れていたからだろうか泥のように眠り記憶が曖昧なのだろう。体も疲れている。今日はちょうど休日だ。たまにはゆっくりしよう。

そういえば、何か夢を見ていた気がした。どんな夢かは思い出せないが何か辛い夢だった気もする。思い出せないのならそんな気にすることでもない気がするがなんとなく気になった。

「⋯⋯とりあえず、ご飯食べよ」

寝巻きから簡単な私服へ着替え一階へと降りる。しん、と静まり返っていることから両親は泊まり込みの仕事をしているのだろう。冷気の出る魔法陣が組み込まれた箱、保冷庫をあけ食材を取り出し簡単に調理した。

静まり返った部屋で1人食事を摂る。昨日のこと、夢のことどちらもやはり思い出すことはできなかった。これ以上考えてももやもやするばかりで気分が悪くなりそうだ。食事も喉を通らず調理したのにゴミとなってしまった。
部屋は戻りベッドに潜り込む。そっと目を閉じそのまま眠りに落ちた。夢は見なかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

処理中です...