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王弟妃 ベリンダ
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「アルミナ様の負担が重いことは承知しています。ですが、私は聖女のみに頼らない国策を推進してきました。結果こそまだ出ていませんが……」
「結果が出ていないなら評価はできない。努力したと口で言うのは容易いだろうな」
シュナイダー卿が悔しそうに眉をきつくした。
「お言葉ですが、殿下こそアルミナ様を利用しているのでは?」
「何を!」
立ち上がりかけたファルクを止める。ケンカはともかく、私の女の勘がピンと来ていた。ファルクにたっぷりと愛情を注がれ、愛の何たるかを教えてもらった今の私だからこそ、わかってしまう。
シュナイダー卿がベリンダの名を唇に乗せるときのひどく大切そうな感じ。彼女を思い浮かべるとき、彼の冷たそうな水色の瞳が和らぐのだって、私は見逃していない。
「確認したいんですけど、シュナイダー卿はベリンダが好きになっちゃったんですね?」
「……っ!」
シュナイダー卿の引き締まった白い頬が、一気に赤く染まる。耳まで痛々しく真っ赤になるから、見てるこっちが恥ずかしいくらいだ。
「はっ?」
ファルクも驚き、お尻の後ろで立派な尻尾をボボンと膨らませた。
「この男がベル姉を好きになったって?しかもアルミナの身体だろ?おい、私情で動くにも程がある。聖騎士とはもっとかたいと思っていたんだが」
「アルミナ様……その、申し訳ございません」
「うわっ……えっ、まさか、私の身体を抱きしめたりしたんですか?すごく複雑なんですけど」
丁重に謝罪され、もうひとつの事実も明らかになった。私もベリンダの身体でファルクと毎夜いちゃいちゃしてるから文句は言えないけれど、何かしてるらしい。想像したくなかった。
シュナイダー卿は聖騎士だから人一倍清潔感がある。黒髪はサラサラだし、目元も涼しげでかなり整った顔立ちだけれど、私の感覚としては嫌だった。やっぱり私はファルク以外、絶対に無理なんだと実感してしまう。
「シュナイダー卿、まさか以前からアルミナを狙っていたのか?」
ファルクが私の肩を守るように抱き寄せ、問い詰める。
「違います、アルミナ様をそういった対象に見たことは一度もありません」
「じゃあどうして……」
若干傷つきながらも、まあそうだろうなと理解していた。私を見るシュナイダー卿の目つきに、色が含まれていたことは、本当に一度もなかった。
半年間、共に旅をした。ときには体がぶつかったり、天幕の中で下着が見えたりもしたけれど、そういう雰囲気は全く発生しなかったのに。
「ベリンダだからです。心がベリンダである限り、どのような姿でも私は彼女に惹かれたでしょうね」
――話が混乱したので、私たちは城砦の中庭に出た。
シュナイダー卿の発言はいちいちファルクの神経を逆撫でしたのだ。ベリンダの良さを語ると、どうしても私に魅力がないみたいになってしまう。また、ベリンダとはちゃんと両想いだというのも信じ難いらしかった。
ファルクがいると話が進まないので、悪いけど彼だけ5歩ほど後ろを歩いてもらっている。獣人の耳ならそれで十分聞き取れるし、私とシュナイダー卿は、まだ確認したいことが互いにあった。
山の向こうではオレンジ色の太陽が沈みかけ、飛竜がギャアギャアと鳴いていた。針葉樹であるイチイの木には小さな実がいくつもなり、微かに甘い匂いが漂う。
気温の下がってきた風を受け、私は顔にかかった赤い髪を耳にかけた。この半年間ですっかり見慣れた、ベリンダの髪色だ。
「申し訳ありません」
「何がですか?」
シュナイダー卿と並んで歩いていると、聖女として旅をした日々が思い出された。でも、あの頃とは関係がまるっきり違う。シュナイダー卿は罪悪感に苛まれているようだった。
「私は、つくづくアルミナ様に見下げられることをしてばかりですね。さらに嫌いになったでしょう」
「……いえ、別に。私はそもそもシュナイダー卿を嫌っていませんよ」
うるさいと思うことはあっても、憎んだりはしていなかった。ひとりで出歩くなとか、身だしなみをきちんとしろという彼の言い分は正論だったし、変な話だが反抗する楽しみがあった。
「そうでしょうか……私とアルミナ様が初めて出会ったときのことを、覚えておいでですか?」
「覚えてますよ、あれを会ったというのか知りませんが」
「覚えているのですか?!」
目を丸くしたシュナイダー卿が私を見つめる。そんなに私の記憶力を疑っているのだろうか。こう見えて、悪くはない。
「結果が出ていないなら評価はできない。努力したと口で言うのは容易いだろうな」
シュナイダー卿が悔しそうに眉をきつくした。
「お言葉ですが、殿下こそアルミナ様を利用しているのでは?」
「何を!」
立ち上がりかけたファルクを止める。ケンカはともかく、私の女の勘がピンと来ていた。ファルクにたっぷりと愛情を注がれ、愛の何たるかを教えてもらった今の私だからこそ、わかってしまう。
シュナイダー卿がベリンダの名を唇に乗せるときのひどく大切そうな感じ。彼女を思い浮かべるとき、彼の冷たそうな水色の瞳が和らぐのだって、私は見逃していない。
「確認したいんですけど、シュナイダー卿はベリンダが好きになっちゃったんですね?」
「……っ!」
シュナイダー卿の引き締まった白い頬が、一気に赤く染まる。耳まで痛々しく真っ赤になるから、見てるこっちが恥ずかしいくらいだ。
「はっ?」
ファルクも驚き、お尻の後ろで立派な尻尾をボボンと膨らませた。
「この男がベル姉を好きになったって?しかもアルミナの身体だろ?おい、私情で動くにも程がある。聖騎士とはもっとかたいと思っていたんだが」
「アルミナ様……その、申し訳ございません」
「うわっ……えっ、まさか、私の身体を抱きしめたりしたんですか?すごく複雑なんですけど」
丁重に謝罪され、もうひとつの事実も明らかになった。私もベリンダの身体でファルクと毎夜いちゃいちゃしてるから文句は言えないけれど、何かしてるらしい。想像したくなかった。
シュナイダー卿は聖騎士だから人一倍清潔感がある。黒髪はサラサラだし、目元も涼しげでかなり整った顔立ちだけれど、私の感覚としては嫌だった。やっぱり私はファルク以外、絶対に無理なんだと実感してしまう。
「シュナイダー卿、まさか以前からアルミナを狙っていたのか?」
ファルクが私の肩を守るように抱き寄せ、問い詰める。
「違います、アルミナ様をそういった対象に見たことは一度もありません」
「じゃあどうして……」
若干傷つきながらも、まあそうだろうなと理解していた。私を見るシュナイダー卿の目つきに、色が含まれていたことは、本当に一度もなかった。
半年間、共に旅をした。ときには体がぶつかったり、天幕の中で下着が見えたりもしたけれど、そういう雰囲気は全く発生しなかったのに。
「ベリンダだからです。心がベリンダである限り、どのような姿でも私は彼女に惹かれたでしょうね」
――話が混乱したので、私たちは城砦の中庭に出た。
シュナイダー卿の発言はいちいちファルクの神経を逆撫でしたのだ。ベリンダの良さを語ると、どうしても私に魅力がないみたいになってしまう。また、ベリンダとはちゃんと両想いだというのも信じ難いらしかった。
ファルクがいると話が進まないので、悪いけど彼だけ5歩ほど後ろを歩いてもらっている。獣人の耳ならそれで十分聞き取れるし、私とシュナイダー卿は、まだ確認したいことが互いにあった。
山の向こうではオレンジ色の太陽が沈みかけ、飛竜がギャアギャアと鳴いていた。針葉樹であるイチイの木には小さな実がいくつもなり、微かに甘い匂いが漂う。
気温の下がってきた風を受け、私は顔にかかった赤い髪を耳にかけた。この半年間ですっかり見慣れた、ベリンダの髪色だ。
「申し訳ありません」
「何がですか?」
シュナイダー卿と並んで歩いていると、聖女として旅をした日々が思い出された。でも、あの頃とは関係がまるっきり違う。シュナイダー卿は罪悪感に苛まれているようだった。
「私は、つくづくアルミナ様に見下げられることをしてばかりですね。さらに嫌いになったでしょう」
「……いえ、別に。私はそもそもシュナイダー卿を嫌っていませんよ」
うるさいと思うことはあっても、憎んだりはしていなかった。ひとりで出歩くなとか、身だしなみをきちんとしろという彼の言い分は正論だったし、変な話だが反抗する楽しみがあった。
「そうでしょうか……私とアルミナ様が初めて出会ったときのことを、覚えておいでですか?」
「覚えてますよ、あれを会ったというのか知りませんが」
「覚えているのですか?!」
目を丸くしたシュナイダー卿が私を見つめる。そんなに私の記憶力を疑っているのだろうか。こう見えて、悪くはない。
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