聖女ですが何も知らない狼獣人をだましています

植野あい

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王弟妃 ベリンダ

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 美しい金色の瞳と、困惑して顰められた眉。さらに伏せられた狼の耳も素晴らしく、私はファルクの困り顔まで好きだった。

「アルミナは知らないんだ。だから簡単なことみたいに言うけど、俺は狼の獣人なんだからな」
「ファルクだって経験ないくせに」

 私たちは結婚しても処女と童貞のままだった。中途半端に触り合うばかりで、ファルクもまた欲求不満を抱えている。

 その証拠に彼の脚の間はキスだけで盛り上がっていた。今日も手でしてあげようかと、寝間着の布がパツパツに張っている箇所をそっと撫でた。が、ファルクに手首を掴まれる。彼は私の後頭部に手を添わせ、ボフンとベッドに押し倒した。

 仰向けになった私に、ファルクがすかさず伸し掛かる。熱情のこもった、けれどいたずらっぽい表情。身動きができないよう腰をぎゅっと太ももで挟まれて、なんだか期待でお腹の奥が疼いた。

「全く、聖女がこんなにいやらしいなんてな」

 からかうようにファルクが目を細める。

「ファルクといるとこうなるの」

 こうやって、ふざけ合っている時間はもっと好きだ。ファルクはお仕置きとばかりに私の耳をパクパクと唇で食みながら、敏感と知っている脇の下をくすぐった。

「く、くすぐったい」
「そうか」
「ふっ……あはは、ひゃっ……あっ……ふ、うんっ」
「どうしてそういう声になるんだ?」

 純粋にくすぐられる感覚を味わっていたはずなのに、私は徐々に昂って高い声が出た。ファルクの唇や、指に触られるとどうしてもだめだった。

「わかんな……気持ちいい……もっとして」
「アルミナ、お前は本当になんでこう………」

 ファルクはくすぐるのをやめ、私を抱きしめた。はあっとため息まで吐かれてしまう。

「呆れてるの?」
「無防備すぎて心配になる」
「私に危害を与えられる人なんていないけど?神聖力で実は腕力もあるし」
「そうじゃない」

 身を起こし、ファルクは私を真摯に見つめた。視界いっぱいに広がるファルクの顔面は、いつ見てもかっこよかった。高く整った鼻や、上下の厚みの揃った唇は決して見飽きない。かわいい狼の耳が伏せられていることだけは残念だった。

「アルミナが何でも喜んでくれるから、俺はときどき慢心しそうになる。ちゃんと幸せにできてるって。でも、俺はアルミナに与えられてばかりだ」
「聖女の能力のこと?あんなのは大したことじゃない。私のほうがファルクに与えられてるのよ」

 ファルクに出会って、私は自分がどんなに孤独だったのかを知った。穴に落ちている人間が自分を見下ろせないように、抜け出さなければその悲惨さは自覚できない。私はありのままの自分を出せる人はいなかったし、それを愛してくれる人もいなかった。

「ねえ、私はファルクさえいればいいの。ファルクが欲しいの」
「俺も同じ気持ちだ」
「信じて。もうこの身体で生きていくから、今日こそ抱いて」
「……わかった」

 唇を重ね、ファルクがゆっくりと微笑む。彼より心の清い人はきっとこの世に存在しないんじゃないか、そんな笑みだった。私は度々どうしようもない嘘をつくから、その分だけ信用がない。

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