実験体達は完成品となる夢をみるか?

愛憎少女

文字の大きさ
6 / 10
第1章 Experimental Body

#5 鏡の少女

しおりを挟む
少女の明るい声はするのだが、その声の主は部屋にはおらず、壁に掛けられている大鏡が何故か輝きを放ち始める。

そして、その鏡からゆっくりと小さな手が現れ____


「やっとついたー!ただいま!」

声の主であろう少女と、その少女と手を繋いでいる少女が大鏡から現れたのであった。

コツンという2人分の小さな足音が部屋に響き、周りの少年少女達は驚くどころか、それが何時もの光景なのか口々に彼女達に "おかえり" と返していたのであった。

先程の明るい声の主であり、薄黄色の花柄のワンピースを着ている少女の名前は、実験番号008。

コードネームはミロワール。

そして、彼女と共に鏡から出てきた少女___赤と白を基調としたケープと、同じ赤の長袖のワンピースを着ている少女の名前は、実験番号003。

コードネームはジェンヌ。


2人は今回、共同で任務を行う命令を受けており、そしてその任務を遂行したのか戻ってきたのであろう。

その証拠に、ジェンヌのワンピースの上に身に付けている真っ白のエプロンは赤く染まっていた。



『………うるせ…』

ミロワールの声が耳に響いてうるさいのか、ユウは小さく呟く。けれど、彼女は気にせずヴォルペに駆け寄ると彼の尻尾に抱きついたのであった。

「ふっかふかー!私ヴォルペのしっぽすき!」


『…ふふ、ありがとう。でもいきなりはびっくりするからね。』「はーい!」

彼はいきなり尻尾に抱きつかれ少し驚くのだが、怒ったりはせず優しく忠告をする。だが、ミロワールは聞いているのかいないのか尻尾に顔を埋めながら返事を返す。

それが何時もの事なのか、ヴォルペは口元に笑みを浮かべたまま息を吐くと、彼女の頭をそっと撫でるのであった。

「おかえりにゃさいにゃあ。今回は意外におそかったにゃ、どうしたのにゃ?」

『……迷った。』「えへへ!いっぱい鏡あったから迷っちゃった!」

ブランカはジェンヌの方を振り向き首を傾げ、聞かれたジェンヌは少し間があった後そう答える。

どうやらジェンヌは話すのがあまり得意ではないらしく、そう簡潔に述べると鏡の近くに座り込み、ミロワールは尻尾を堪能しながら彼女の言葉に続ける。

「ミロワールちゃんの能力、凄いけど大変そうだもんね…」

その様子を眺めながら、アリスは控えめな笑みを浮かべながらそう呟いた。


彼女達実験体はそれぞれ違う能力を持っており、ミロワールの能力は、"鏡の中を通る能力"。

鏡であれば___否、手鏡の様にあまりに小さい鏡以外であれば、どんな鏡でも通る事が出来、移動が可能なのだ。

そして、ミロワールと手を繋いだ者は共に鏡の中を通る事が出来る。

この能力はかなり強い方だと思うが___逆に言えば、彼女はそれしか持っていないのだ。

暗殺や戦闘はまだ苦手な方で、故に彼女の任務はほとんどが共同であり、番号も008・・・なのである。


「あと誰がいないのー?」

彼女は尻尾を抱きしめながら首を傾げ、まだこの部屋に集まっていないのが誰か尋ねる。

『えーと、ライアとイザベラ。あと……』『アイ…』

それにドゥンケルハイトは答えていたのだが___やはり妹の事が大切らしく、ユウは妹の名前をすぐに答え、ドゥンケルハイトは困った様に笑みを零す。

「ほんと、最初と比べると増えたにゃあ…まっ、最初に完成品になるのはこの私なんだけどにゃ!」

『お前には無理だろ……』「にゃにおう!?」

「ま、まあまあ…落ち着いて…?」

ブランカは段々と人が集まり賑やかになっていく室内を眺め、その場に寝転びながら明るい声で言葉を紡ぐ。

その言葉からは、彼女はかなり前からこの実験体として生きているという事が分かり、ブランカの言葉にユウは先程の様に否定し彼女は飛び起きる。

それを先程同様にアリスは宥めていたのだが、不意に扉の開く音が聞こえ扉の方を振り向いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

処理中です...