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3章 Dedicated to an angel
#30 青年の正体
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暴走
その言葉を聞き、カミーユ除く3人は固唾を呑みこみ、状況が良く分かっていないカミーユは、どういう事なのか内心困惑していた。
『_____ルリア様を、自室に寝かせてまいります。』
そこで話は途切れ、また静寂な空気が調理場を包み込んだのだが、青年の腕の中で眠るルリアが僅かに動き、ふとジャンヌはそう声にすると青年に近付く。
青年は少し屈むとジャンヌにそっとルリアを渡し、彼女はルリアを抱きかかえると体勢を整え、調理場を後にする。
扉の閉まる音が響くと共に、青年はカミーユの方を向き優しげな___けれど、どことなく困っているかの様な笑みを浮かべた。
『____こんな形で挨拶をしてすまない。私の名前はウィル。ウィル・W・カーディナル。天使と___ルリアと、セリーヌの兄さ。よろしくお願いするよ。』
ルリアの事を天使と言いかけた彼__ウィルと名乗った青年は、うやうやしくお辞儀をしながらカミーユに挨拶を交わす。
名を名乗ったウィルを、顔を見上げ見つめていたカミーユも慌ててお辞儀をした。
「あ、わ、私はカミーユと言いますっ!ルリア様のお世話係になりました…!」
噛みそうになりながらも挨拶をするカミーユが面白かったのか、彼は小さく笑みを零すと優しげに微笑みながら、彼女に右手を差し出す。
彼女はその手を握ろうとしたが、ふと手を見つめると、急いで身につけているエプロンで軽く手を拭いた。
『はは、そんな事をしなくても私は特に気にしないよ。』
自身の手を握る前に、エプロンで手を拭いた彼女の動作を見、差し出してきたカミーユの手を優しく握りつつ、彼は親しげな笑みを含みながらそう述べる。
カミーユはその言葉と親しげな笑みに、少々困っているかのような笑みを浮かべた。
_____この薄暗い部屋でも分かる、整った顔立ち。
笑みを浮かべているのもあるのだが、燭台の僅かな灯りによって見える優しげな表情と、男性特有の低い___だが、周りの男性よりは高めな、落ち着いた声。
きっと、様々な女性を虜にしてきたのだろう。
それが簡単に分かる程、彼の顔は端麗だった。
それに背は周りの男性よりも幾分か高く、カミーユは背伸びをしていても彼の顔をきちんと見る事は出来ず、それに気付いていたのか手を差し出していたウィルは少し屈んでいた事に気付く。
恐らく、顔以外でもその様な些細な優しさで女性を虜にしているのだろうと、カミーユは直感で感じていた。
そしてその姿勢が辛そうだと悟ると、彼女はそっと手を離し、ウィルはゆっくりと姿勢を戻す。
『___とりあえず、ルリア様の力が暴走したなら、掃除しないとですね。後はあたし達に任せて休んでて下さい。』
カミーユとウィルの挨拶が終わるまで黙っていたジェシカは、にこりと明るい笑みを浮かべながらそう述べ、ウィルは彼女の方を見ると小さく頷いた。
『あぁ、ありがとう。それじゃあ、後は頼むよ。』
そして3人に労いの言葉をかけると、彼は身に纏っていた黒いマントを翻し調理場を後にする。
「____さっ、お掃除しよーっ!」
バタン、という扉が閉まる音が調理場に響いた後、フェイはにこやかに笑いながら、明るい声で2人にそう告げた。
その言葉を聞き、カミーユ除く3人は固唾を呑みこみ、状況が良く分かっていないカミーユは、どういう事なのか内心困惑していた。
『_____ルリア様を、自室に寝かせてまいります。』
そこで話は途切れ、また静寂な空気が調理場を包み込んだのだが、青年の腕の中で眠るルリアが僅かに動き、ふとジャンヌはそう声にすると青年に近付く。
青年は少し屈むとジャンヌにそっとルリアを渡し、彼女はルリアを抱きかかえると体勢を整え、調理場を後にする。
扉の閉まる音が響くと共に、青年はカミーユの方を向き優しげな___けれど、どことなく困っているかの様な笑みを浮かべた。
『____こんな形で挨拶をしてすまない。私の名前はウィル。ウィル・W・カーディナル。天使と___ルリアと、セリーヌの兄さ。よろしくお願いするよ。』
ルリアの事を天使と言いかけた彼__ウィルと名乗った青年は、うやうやしくお辞儀をしながらカミーユに挨拶を交わす。
名を名乗ったウィルを、顔を見上げ見つめていたカミーユも慌ててお辞儀をした。
「あ、わ、私はカミーユと言いますっ!ルリア様のお世話係になりました…!」
噛みそうになりながらも挨拶をするカミーユが面白かったのか、彼は小さく笑みを零すと優しげに微笑みながら、彼女に右手を差し出す。
彼女はその手を握ろうとしたが、ふと手を見つめると、急いで身につけているエプロンで軽く手を拭いた。
『はは、そんな事をしなくても私は特に気にしないよ。』
自身の手を握る前に、エプロンで手を拭いた彼女の動作を見、差し出してきたカミーユの手を優しく握りつつ、彼は親しげな笑みを含みながらそう述べる。
カミーユはその言葉と親しげな笑みに、少々困っているかのような笑みを浮かべた。
_____この薄暗い部屋でも分かる、整った顔立ち。
笑みを浮かべているのもあるのだが、燭台の僅かな灯りによって見える優しげな表情と、男性特有の低い___だが、周りの男性よりは高めな、落ち着いた声。
きっと、様々な女性を虜にしてきたのだろう。
それが簡単に分かる程、彼の顔は端麗だった。
それに背は周りの男性よりも幾分か高く、カミーユは背伸びをしていても彼の顔をきちんと見る事は出来ず、それに気付いていたのか手を差し出していたウィルは少し屈んでいた事に気付く。
恐らく、顔以外でもその様な些細な優しさで女性を虜にしているのだろうと、カミーユは直感で感じていた。
そしてその姿勢が辛そうだと悟ると、彼女はそっと手を離し、ウィルはゆっくりと姿勢を戻す。
『___とりあえず、ルリア様の力が暴走したなら、掃除しないとですね。後はあたし達に任せて休んでて下さい。』
カミーユとウィルの挨拶が終わるまで黙っていたジェシカは、にこりと明るい笑みを浮かべながらそう述べ、ウィルは彼女の方を見ると小さく頷いた。
『あぁ、ありがとう。それじゃあ、後は頼むよ。』
そして3人に労いの言葉をかけると、彼は身に纏っていた黒いマントを翻し調理場を後にする。
「____さっ、お掃除しよーっ!」
バタン、という扉が閉まる音が調理場に響いた後、フェイはにこやかに笑いながら、明るい声で2人にそう告げた。
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