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第二話
4.「いいわ、一緒に行きましょう。」
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翌日、昨夜の件が気になった二人は侵入経路を辿ることにした。
幸い・・・と言っていいのか、怪我人や運悪く亡くなった者の亡骸は既に移動されていたが、瓦礫などまだ片付けが追いついておらず、争った場所からさかのぼることはできそうだった。
何か情報はないかと、ゆっくり歩きながら辿って行ったのだが、二区画も歩くとこれ以上進めなくなった。
「どういうことですかねー?」
「うーん、てっきり何処かの外壁まで続いていると思っていたんだけど・・・。」
「急にここに現れた的な?」
「そうとしか思えないわね・・・。」
物理的に道がないというわけでもなく、そこから先にはあの大きなモンスターが移動した形跡がぱったりと消えていたのだ。
周りを見渡しても移動時にできた足跡や壊れた壁などがあるわけでもなく、屋根伝いに来たとしたらあの大きさであり屋根に何らかの痕跡があるはずだがそれもなく、水の中を来てここで地上に上がったのならそれもあるであろうが近くに大きな川はない。ここで急に現れたと言わざるを得ない状況だった。
二人であーでもないこーでもないと話し合っていると声がかかった。
「お嬢さん方も見に来た口かい? 俺も同じ口なんだがね。」
「あら、ジンって言ったわね。やっぱり気になる?」
「まぁな。」
ジンが同じようにモンスターの経路を辿って来ていた。周りを見渡し、
「ここで現れた・・・と?」
三人で話し始めたが結局答えは出そうになかった。
暫くの間、一ブロック先のあたりまで四方を調べたが、やはり手掛かりはなく解散となった。
ぶらぶらと歩きようやく見つけたカフェで一休みしながら
「やはり気になるわね。」
「近くに水路はありませんでした。地下道も、少なくとも出入り口はなかったです。大きな木が並んでいたりしたら、その木伝いに来ることも可能かもしれませんがありません。屋根伝いも同様。空から落ちてきた、にしてもあの巨体の重量が着地した形跡もなかったわけです。あの場所に急に現れた、が結論になっちゃいます。」
「そうね・・・。手掛かりがこれ以上ないわけだけど、この世界のモノじゃない何かがかかわっている気がするのよね・・・。」
ツカサは考えに耽る。
(状況と情報を整理しましょう。)
(突然モンスターが現れ街を荒らした。)
(モンスターは通常話さない。だけどあのモンスターは喋った。)
(これは見間違いかもしれないけれど、額の赤い石の中?後ろ?にヒューマンの姿があった。)
(実際に姿があった前提で考える。一体化していたように見えた。)
(ヒューマンが、モンスターと? どういうこと?)
(モンスターが人に変化できるようになった?)
(いや、だとしても話せるというのは無理があるわ。逆に、人がモンスターになる?)
そこまで考え、以前獣人が変化した事案を思い出す。
(!?)
(こちらのほうが可能性が高い。ゴリラモンスターの痕跡が途切れていたのも説明がつく。あれは元は人だというの?)
(あとは・・・商人組合で人攫いが頻発しているという話があったわね。この状況だと、全く繋がりがないと考えるのは無理があるわね。)
(・・・ヤツらが関与して、ヤツら、もしくは唆された誰かが、亜人をモンスターにしている?)
(ヤツらが絡んでいるとしも、ヒューマンを攫いモンスターと融合? それともモンスター化かしら? なんにしてもそれなりの規模の施設が必要ね。)
(多分考えの方向は間違っていないと思うんだけど、情報が何もないわ。)
ここまでまとめた内容をセリカと共有する。
「ざっくばらんに調査するにしても、人手がいりますねー。警邏隊? って人たちもそろそろ動き始めるとは思いますがー。と言うわけで、カレンに手伝ってもらいましょー。」
「そうしましょうか。」
「ここじゃなんですから、どこか人目のないところに行きましょー。」
セリカに連れられ商業区と居住区の境の林のあたりに移動した。
街と言うのは大体同じ構造になっており、そこまで厳密になっているわけではないが、商人組合やマテリアライザー互助会、商人の店や宿や食事ができる店等がある商業区、研究施設や学校などがある学区、街の住人が住む居住区、商人たちが住む高級住宅区になっている。領主の館は大体居住区と高級住宅区の間に存在している。
「カレンは私が呼びますねー。カレンー、調査仕様で五人ほどおいでませー。」
セリカが呼ぶと、数秒後、いつもの恰好ではなく黒い外套を身に着けた状態のカレンが五人現れた。
「調査仕様ってなに? 外套羽織ってるし。まぁいつもの恰好じゃ困るわけだけど。」
「ふっふっふっ、さぁカレンさん、ツカサさんにお見せしなさい。」
『『『『『畏まりました、セリカ様。』』』』』
五人のカレンが外套を開くと、そこには黒色の和装が現れた。
「これぞ東洋の神秘! 女性版忍者、くノ一ルックですー!。」
「・・・。」
「袖がほとんどないことで”もしかしたら見えるかも”を演出しながらも様々な道具を仕込める少し丈が長めの上衣! 目立ってはいけないのですがここは譲れない、チャームポイントの赤帯! 動きやすさを追求しつつ生足からあふれ出るエロチックさを両立したスパッツ! これに目元だけをのぞかせる頭巾を被れば完璧ですっ!」
「・・・。」
「さらに、ここに私ことセリカちゃんもくノ一ルックで加わります! これで私も立派な忍者の仲間入りです!」
セリカは外套を開き、カレンたちと同じ姿を見せた。
ツカサはこめかみを押さえながら
「・・・カレンになんて恰好させてるのよ・・・。」
「ツカサさん、何もかも置いておいて、単純に一つ質問に答えてください。」
「・・・何よ。」
「カレンの恰好、似合ってると思いません?」
「・・・そりゃ、悪くはないんじゃない? 結構可愛いとは思うし、スタイリッシュ?ではないか、んー、シュッと引き締まって見えるわね。」
「ツカサさんの身体は、カレンと同じですよね? 答えがここにあるわけです。どうです? この格好してみませんか、絶対似合いますよっ!!!」
「するかっ!」
ゴチーン!
割と全力の拳骨がセリカの頭に落ちたのだった。
暫くしゃがみこんで頭をさすっていたセリカだったが、立ち直ると
「じゃぁカレンたちと調査に行ってきますね。カレンー、商業区、学区、居住区、高級住宅区、ついでに領主の館まで手分けしてお願いねー。私もどれかに行きますー。では、顔がばれるとまずいから頭巾を被ってねー、ゴー!」
カレンたちは頭巾を身に着けるとその場から黒い影となり四方に散っていった。
「では私も行ってきますー。」
セリカも行こうとするが、こちらを振り返り、
「・・・いつかツカサさんに着せて見せますっ!」
と言う決意を残して黒い影となり移動していった。
「着ないわよ・・・、はぁ。暫くセリカたちの調査待ちね。というかセリカまで行く必要なかったんじゃ?」
一人残ったツカサは特にすることもなく、買い物でもしようとマテリアライザー互助会の店に足を向けた。
マテリアライザー互助会の店で買い物を済ませたツカサは昼食を取るため、昨日行った食事処に向かった。
「お、なんだよお前さん、また来たのか。」
「あら、貴方もいたの。」
先ほど別れたジンがいた。
「蕎麦が気に入ったか?」
「そうね。また食べてもいいと思う程度には、ね。」
「もう一人は?」
「いつも一緒にいるわけじゃないわよ。ちょっと。」
注文を済ませ蕎麦が出てくるころにはジンは食べ終わっていたが、肘をついてツカサの方を見ていた。
「何よ?」
「いや、別に?」
食べ始め暫くした頃にセリカから連絡がきた。
(ツカサさん、微妙に怪しいところを見つけましたー。)
箸を止めセリカに話しかける。
(微妙? どう言うこと?)
(学区を調査しに行ったカレンが見つけたんですが、数人が大慌てで資料やなにかを荷車に積み込んでいたらしいんです。
連絡をもらって私も来たんですが、学区の奥にあって一見使われてなさそうな館なんですよねー。なのに中から白衣を着たヒューマン二人と武装したヒューマン四人が、今丁度荷車で出ていくところなんです。武装ヒューマンは夕べ観た領軍の恰好に近いですねー。あとヒューマンが入りそうな大きな袋が荷車に何個か積まれています。後をつけたいんですが、こう明るくちゃそれも難しくて・・・。)
「大きな袋・・・?」
「ん? どうかしたか?」
「あら、声に出てたかしら、独り言よ。」
つい口を出た言葉をジンに聞きとがめられ、とりあえずごまかしたツカサは
(確かに少し怪しい感じね。確かにどこに行くかは気になるけど、見つかってもことだし、良いわ、今から向かいます。)
(はいですー。場所は送りますねー。)
心の中の会話を終了し、蕎麦を食べ終えると代金を払い店を出て目的の場所に向かい歩き始めた。が、何故かジンが着いてくる。
「気のせいじゃなければ、着いてきてない?」
「んー? そっちのほうに行きたい気分なんでな。」
「・・・なんで着いてくるのよ?」
「・・・なんか見つけたか?」
ジンは鞘に納めた大太刀を肩に乗せ、顎に手を当て不敵な笑みを浮かべ
「俺の勘はよく当たるんでね。お前さんに着いていくと面白い事に出会えそうだ。」
そんなことを言う。ツカサは
(うーん、昨日のこともあるし気になるのも仕方ないか。邪険にするのもなんだし、連れてって働いてもらいましょう。)
と考えると、
(セリカ、ジンと会ったから一緒に向かいます。カレンはどこかに隠れててもらって。)
(ジンさんとまた会ったんですか? 何処にでもいますねー。わかりましたー。)
(通信手段がばれるとまずいから、送ってもらった場所のほうに行くから、適当なところまで迎えに来て。)
(はいですー。)
セリカに伝え、
「いいわ、一緒に行きましょう。」
ジンと共に学区に向かった。
「行き先は?」
「学区の方。セリカがそっちの方を調査しに行ったの。」
「根拠は?」
「特にないわ。あの子の勘。」
「んで、連絡があったと。」
「そう。・・・あっ。」
つい口を滑らせたツカサを、ジンはしたり顔で見る。
「昼前にお前さんら二人と、お前さんそっくりで格好の違う五人ほどを見かけてな? 何かあるとは思っていたが、そうか、遠くの人物と連絡する手段も持っているってーわけか。ま、深くは追及しないでおいてやるよ。はっはっはっ!」
自業自得とはいえ知られてしまい、またカレンたちを見られていたということもあり、どう口を封じるかを考え始めていたツカサであったが、ジンの顔を見て毒気を抜かれ
「何か調子狂うわね。私のミスなんだけど・・・。追求しないならまぁ良いわ。」
問題を棚上げすることにした。
学区を抜け端のほうまで来た辺りでセリカが待っているのが見えた。
「ツカサさーん来てくれたんですかー。ありがとうございますー。一緒に探しましょー。」
「あ、演技はもういいわ。話しのあった場所に行きましょう。」
「あれ?」
セリカはツカサとジンを交互に見ながら、小声でツカサに問いかける。
(私たちのこと言っちゃったんですか?)
(言いわしないわ。通信しているのがバレて、それを追求しないように言っただけよ。)
(ごまかさなかったんですか?)
(ごまかしようがないじゃない。この世界には通信と言う概念がないんだから。)
(ありますよ?)
(えっ、ないでしょう?)
(通信だって科学技術の上に成り立っているんですからマテリアライズで可能じゃないですか。)
(あ、そうね。それでいきましょう!)
ツカサはジンに、先ほどの件を誤魔化すように話を持っていくが、
「さっきの件、追求しないなら良いと言ったけど、聞きたいでしょ? 私の流派の秘術で心と心で会話できるマテリアライズなのよ。」
「・・・って、その嬢ちゃんと相談したと・・・? それでごまかし切れると・・・?」
ニヤニヤ
ジンのほうが一枚上手のようだった。
(ダメみたい・・・。)
(あちゃー。ツカサさん、やらかしちゃいましたねー。)
(うっ面目ない・・・。)
(こーれーはー、何してもらっちゃおうかなー。んふふ、考えておきますね・・・。)
(あー、もー、ついでにカレンも見られてたわよ。)
(調査しに行くときですか? あらら、隠しようがないですね。)
セリカはジンを見て
「じゃぁ、着いてきてくださいー。」
と言い、二人を案内し始めた。
幸い・・・と言っていいのか、怪我人や運悪く亡くなった者の亡骸は既に移動されていたが、瓦礫などまだ片付けが追いついておらず、争った場所からさかのぼることはできそうだった。
何か情報はないかと、ゆっくり歩きながら辿って行ったのだが、二区画も歩くとこれ以上進めなくなった。
「どういうことですかねー?」
「うーん、てっきり何処かの外壁まで続いていると思っていたんだけど・・・。」
「急にここに現れた的な?」
「そうとしか思えないわね・・・。」
物理的に道がないというわけでもなく、そこから先にはあの大きなモンスターが移動した形跡がぱったりと消えていたのだ。
周りを見渡しても移動時にできた足跡や壊れた壁などがあるわけでもなく、屋根伝いに来たとしたらあの大きさであり屋根に何らかの痕跡があるはずだがそれもなく、水の中を来てここで地上に上がったのならそれもあるであろうが近くに大きな川はない。ここで急に現れたと言わざるを得ない状況だった。
二人であーでもないこーでもないと話し合っていると声がかかった。
「お嬢さん方も見に来た口かい? 俺も同じ口なんだがね。」
「あら、ジンって言ったわね。やっぱり気になる?」
「まぁな。」
ジンが同じようにモンスターの経路を辿って来ていた。周りを見渡し、
「ここで現れた・・・と?」
三人で話し始めたが結局答えは出そうになかった。
暫くの間、一ブロック先のあたりまで四方を調べたが、やはり手掛かりはなく解散となった。
ぶらぶらと歩きようやく見つけたカフェで一休みしながら
「やはり気になるわね。」
「近くに水路はありませんでした。地下道も、少なくとも出入り口はなかったです。大きな木が並んでいたりしたら、その木伝いに来ることも可能かもしれませんがありません。屋根伝いも同様。空から落ちてきた、にしてもあの巨体の重量が着地した形跡もなかったわけです。あの場所に急に現れた、が結論になっちゃいます。」
「そうね・・・。手掛かりがこれ以上ないわけだけど、この世界のモノじゃない何かがかかわっている気がするのよね・・・。」
ツカサは考えに耽る。
(状況と情報を整理しましょう。)
(突然モンスターが現れ街を荒らした。)
(モンスターは通常話さない。だけどあのモンスターは喋った。)
(これは見間違いかもしれないけれど、額の赤い石の中?後ろ?にヒューマンの姿があった。)
(実際に姿があった前提で考える。一体化していたように見えた。)
(ヒューマンが、モンスターと? どういうこと?)
(モンスターが人に変化できるようになった?)
(いや、だとしても話せるというのは無理があるわ。逆に、人がモンスターになる?)
そこまで考え、以前獣人が変化した事案を思い出す。
(!?)
(こちらのほうが可能性が高い。ゴリラモンスターの痕跡が途切れていたのも説明がつく。あれは元は人だというの?)
(あとは・・・商人組合で人攫いが頻発しているという話があったわね。この状況だと、全く繋がりがないと考えるのは無理があるわね。)
(・・・ヤツらが関与して、ヤツら、もしくは唆された誰かが、亜人をモンスターにしている?)
(ヤツらが絡んでいるとしも、ヒューマンを攫いモンスターと融合? それともモンスター化かしら? なんにしてもそれなりの規模の施設が必要ね。)
(多分考えの方向は間違っていないと思うんだけど、情報が何もないわ。)
ここまでまとめた内容をセリカと共有する。
「ざっくばらんに調査するにしても、人手がいりますねー。警邏隊? って人たちもそろそろ動き始めるとは思いますがー。と言うわけで、カレンに手伝ってもらいましょー。」
「そうしましょうか。」
「ここじゃなんですから、どこか人目のないところに行きましょー。」
セリカに連れられ商業区と居住区の境の林のあたりに移動した。
街と言うのは大体同じ構造になっており、そこまで厳密になっているわけではないが、商人組合やマテリアライザー互助会、商人の店や宿や食事ができる店等がある商業区、研究施設や学校などがある学区、街の住人が住む居住区、商人たちが住む高級住宅区になっている。領主の館は大体居住区と高級住宅区の間に存在している。
「カレンは私が呼びますねー。カレンー、調査仕様で五人ほどおいでませー。」
セリカが呼ぶと、数秒後、いつもの恰好ではなく黒い外套を身に着けた状態のカレンが五人現れた。
「調査仕様ってなに? 外套羽織ってるし。まぁいつもの恰好じゃ困るわけだけど。」
「ふっふっふっ、さぁカレンさん、ツカサさんにお見せしなさい。」
『『『『『畏まりました、セリカ様。』』』』』
五人のカレンが外套を開くと、そこには黒色の和装が現れた。
「これぞ東洋の神秘! 女性版忍者、くノ一ルックですー!。」
「・・・。」
「袖がほとんどないことで”もしかしたら見えるかも”を演出しながらも様々な道具を仕込める少し丈が長めの上衣! 目立ってはいけないのですがここは譲れない、チャームポイントの赤帯! 動きやすさを追求しつつ生足からあふれ出るエロチックさを両立したスパッツ! これに目元だけをのぞかせる頭巾を被れば完璧ですっ!」
「・・・。」
「さらに、ここに私ことセリカちゃんもくノ一ルックで加わります! これで私も立派な忍者の仲間入りです!」
セリカは外套を開き、カレンたちと同じ姿を見せた。
ツカサはこめかみを押さえながら
「・・・カレンになんて恰好させてるのよ・・・。」
「ツカサさん、何もかも置いておいて、単純に一つ質問に答えてください。」
「・・・何よ。」
「カレンの恰好、似合ってると思いません?」
「・・・そりゃ、悪くはないんじゃない? 結構可愛いとは思うし、スタイリッシュ?ではないか、んー、シュッと引き締まって見えるわね。」
「ツカサさんの身体は、カレンと同じですよね? 答えがここにあるわけです。どうです? この格好してみませんか、絶対似合いますよっ!!!」
「するかっ!」
ゴチーン!
割と全力の拳骨がセリカの頭に落ちたのだった。
暫くしゃがみこんで頭をさすっていたセリカだったが、立ち直ると
「じゃぁカレンたちと調査に行ってきますね。カレンー、商業区、学区、居住区、高級住宅区、ついでに領主の館まで手分けしてお願いねー。私もどれかに行きますー。では、顔がばれるとまずいから頭巾を被ってねー、ゴー!」
カレンたちは頭巾を身に着けるとその場から黒い影となり四方に散っていった。
「では私も行ってきますー。」
セリカも行こうとするが、こちらを振り返り、
「・・・いつかツカサさんに着せて見せますっ!」
と言う決意を残して黒い影となり移動していった。
「着ないわよ・・・、はぁ。暫くセリカたちの調査待ちね。というかセリカまで行く必要なかったんじゃ?」
一人残ったツカサは特にすることもなく、買い物でもしようとマテリアライザー互助会の店に足を向けた。
マテリアライザー互助会の店で買い物を済ませたツカサは昼食を取るため、昨日行った食事処に向かった。
「お、なんだよお前さん、また来たのか。」
「あら、貴方もいたの。」
先ほど別れたジンがいた。
「蕎麦が気に入ったか?」
「そうね。また食べてもいいと思う程度には、ね。」
「もう一人は?」
「いつも一緒にいるわけじゃないわよ。ちょっと。」
注文を済ませ蕎麦が出てくるころにはジンは食べ終わっていたが、肘をついてツカサの方を見ていた。
「何よ?」
「いや、別に?」
食べ始め暫くした頃にセリカから連絡がきた。
(ツカサさん、微妙に怪しいところを見つけましたー。)
箸を止めセリカに話しかける。
(微妙? どう言うこと?)
(学区を調査しに行ったカレンが見つけたんですが、数人が大慌てで資料やなにかを荷車に積み込んでいたらしいんです。
連絡をもらって私も来たんですが、学区の奥にあって一見使われてなさそうな館なんですよねー。なのに中から白衣を着たヒューマン二人と武装したヒューマン四人が、今丁度荷車で出ていくところなんです。武装ヒューマンは夕べ観た領軍の恰好に近いですねー。あとヒューマンが入りそうな大きな袋が荷車に何個か積まれています。後をつけたいんですが、こう明るくちゃそれも難しくて・・・。)
「大きな袋・・・?」
「ん? どうかしたか?」
「あら、声に出てたかしら、独り言よ。」
つい口を出た言葉をジンに聞きとがめられ、とりあえずごまかしたツカサは
(確かに少し怪しい感じね。確かにどこに行くかは気になるけど、見つかってもことだし、良いわ、今から向かいます。)
(はいですー。場所は送りますねー。)
心の中の会話を終了し、蕎麦を食べ終えると代金を払い店を出て目的の場所に向かい歩き始めた。が、何故かジンが着いてくる。
「気のせいじゃなければ、着いてきてない?」
「んー? そっちのほうに行きたい気分なんでな。」
「・・・なんで着いてくるのよ?」
「・・・なんか見つけたか?」
ジンは鞘に納めた大太刀を肩に乗せ、顎に手を当て不敵な笑みを浮かべ
「俺の勘はよく当たるんでね。お前さんに着いていくと面白い事に出会えそうだ。」
そんなことを言う。ツカサは
(うーん、昨日のこともあるし気になるのも仕方ないか。邪険にするのもなんだし、連れてって働いてもらいましょう。)
と考えると、
(セリカ、ジンと会ったから一緒に向かいます。カレンはどこかに隠れててもらって。)
(ジンさんとまた会ったんですか? 何処にでもいますねー。わかりましたー。)
(通信手段がばれるとまずいから、送ってもらった場所のほうに行くから、適当なところまで迎えに来て。)
(はいですー。)
セリカに伝え、
「いいわ、一緒に行きましょう。」
ジンと共に学区に向かった。
「行き先は?」
「学区の方。セリカがそっちの方を調査しに行ったの。」
「根拠は?」
「特にないわ。あの子の勘。」
「んで、連絡があったと。」
「そう。・・・あっ。」
つい口を滑らせたツカサを、ジンはしたり顔で見る。
「昼前にお前さんら二人と、お前さんそっくりで格好の違う五人ほどを見かけてな? 何かあるとは思っていたが、そうか、遠くの人物と連絡する手段も持っているってーわけか。ま、深くは追及しないでおいてやるよ。はっはっはっ!」
自業自得とはいえ知られてしまい、またカレンたちを見られていたということもあり、どう口を封じるかを考え始めていたツカサであったが、ジンの顔を見て毒気を抜かれ
「何か調子狂うわね。私のミスなんだけど・・・。追求しないならまぁ良いわ。」
問題を棚上げすることにした。
学区を抜け端のほうまで来た辺りでセリカが待っているのが見えた。
「ツカサさーん来てくれたんですかー。ありがとうございますー。一緒に探しましょー。」
「あ、演技はもういいわ。話しのあった場所に行きましょう。」
「あれ?」
セリカはツカサとジンを交互に見ながら、小声でツカサに問いかける。
(私たちのこと言っちゃったんですか?)
(言いわしないわ。通信しているのがバレて、それを追求しないように言っただけよ。)
(ごまかさなかったんですか?)
(ごまかしようがないじゃない。この世界には通信と言う概念がないんだから。)
(ありますよ?)
(えっ、ないでしょう?)
(通信だって科学技術の上に成り立っているんですからマテリアライズで可能じゃないですか。)
(あ、そうね。それでいきましょう!)
ツカサはジンに、先ほどの件を誤魔化すように話を持っていくが、
「さっきの件、追求しないなら良いと言ったけど、聞きたいでしょ? 私の流派の秘術で心と心で会話できるマテリアライズなのよ。」
「・・・って、その嬢ちゃんと相談したと・・・? それでごまかし切れると・・・?」
ニヤニヤ
ジンのほうが一枚上手のようだった。
(ダメみたい・・・。)
(あちゃー。ツカサさん、やらかしちゃいましたねー。)
(うっ面目ない・・・。)
(こーれーはー、何してもらっちゃおうかなー。んふふ、考えておきますね・・・。)
(あー、もー、ついでにカレンも見られてたわよ。)
(調査しに行くときですか? あらら、隠しようがないですね。)
セリカはジンを見て
「じゃぁ、着いてきてくださいー。」
と言い、二人を案内し始めた。
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