異世界召喚戦記

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第1章 異世界召喚 城塞都市ダペス

第7話 雷獣、そして親子風呂

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城の左奥、公爵邸の後方にある見張り台へ入り、地下へ進む。

まあ、地下といってもこの城が高台にあるので、城塞都市の石畳よりまだ、上に位置すると思うが…

地下一階に着くと、降りた階段から先は、真っ直ぐ廊下が伸びており、左右に、数部屋に分けられた、牢屋があった。
広さは、畳四畳半くらい…1人用だろうか?

30m程進むと、正面が大きな牢屋になっていた。畳9畳程あるだろう。2人の兵が、牢番を務めていた。

牢番から、ランプを渡されたティアナが、ランプを片手で掲げ牢屋を照らす。

「右奥の壁際にいます。水や干し肉など食べます。たまには少し唸りますが、伝説の雷獣の幼体と言っても、おとなしいものですね」

口調は軽いが、兵は姿勢を崩さず状況を話してきた。
ティアナが、右側を照らそうとランプを掲げると…

グウゥ…グウゥゥ…

少しづつうなり声が大きくなる。右奥に、青く光る目が見える。それは、唸りながら近づいてきた。
沙耶を自分の後ろに下げ、牢番も含め皆、3・4歩後ずさりする。

「こんなに、威嚇してきた事はないのですが」

牢番の顔が、少し怯えた。

全体が見えてきた。真っ黒な、中型犬程の大きさの豹に似た動物だった。

豹と異なる所は…
やや、顎が顔がすっきりとしており
チーターに似ている、体つきはまだ大人ではないというが、チーターのように細くなく、足や首回りが太く見える。
又、背中、前足の付け根…盛り上がって見える左右の肩甲骨付近より、それぞれ、触角のような尻尾より細い体の長さ程あるものが、体に沿ってフワッと揺れている。

牢の鉄柵の所まで来た。
ティアナをじっと睨むように一声唸ると、鉄柵の隙間から鼻を出し伏せの姿勢を取り、黒い獣は博影を見上げた。
その目は、さっきまでの険しさはない。

博影は、ゆっくり近づくと鼻先へ右手を伸ばした。
ゆっくり鼻先から、額まで数回撫でる。

「おぉ…魔物とはいえ、自分の命を救ってくれた人間はわかるのですかな」

後ずさったまま牢番は言うが、けして近付こうとはしない

「それなら、首筋を切り裂いた私の事は、かなり恨んでいるでしょうね」

ティアナも、苦笑いしながら…後ずさったまま近付こうとはしない。

「この魔物は、そんなに危険? 魔物?獣ではないの? それにまだ子供っぽいよ」

沙耶も近づき、魔物の鼻先を撫でる。

「これは、獣ではなく魔物です。魔物は、腹部の奥に魔石を持っており不思議な力を使ったりします。
基本的に、魔物の領域に近づかなければ、人里に現れる事はありませんが、聖石を使用した武器を使う騎士でなければ、倒す事は困難です」

博影、沙耶の手に身を任せながら…魔物は、ちらっとティアナを見ている。

「この幼体というか子供は、伝説の雷獣で、魔物狩りに派遣された騎士部隊が、はぐれているこの魔物を見つけ、生け捕りにして来ました。
騎士10人がかりで、魔物の体力が尽きるまで戦い。2時間以上かかったそうです」

少し、ティアナが近付こうとすると…博影達に撫でられたまま、魔物は少し唸った。
ティアナは、怯み。又、少し後ずさった。

「公爵様からは、この魔物の扱いは、博影様に一任するとの事です」

「一任?」

「はい、殺して魔石を取り出しても良いし……牢から出しても良い。との仰せです」

ティアナは、愛想笑いを浮かべながらかなり、困っているようだ。

「? 魔物を牢から出してもいいの?」

ちょっと、噛みながら博影がティアナに尋ねた。

沙耶が、クックッと笑う。沙耶に指摘されなくてもわかっている。
博影も、40歳の言葉遣いと、15歳の言葉遣いと混じり合って、話していて違和感があるのだ。

「はい。その代わり、この聖石が付いている隷属の首輪を魔物に付ける事が、条件ですが…
ただ、幼体とは言え、この雷獣の魔力がかなり強いので私の力では、隷属の首輪を付けられません」

「自分が、この首輪を付けられれば、牢から出して良いということか…」

撫でながら呟く。

「お父さん、生贄にされて助かって、又殺される。閉じ込められる…可哀想だよ。助けてあげて、
ねっ、チェルだって首輪つけるのに協力するよね~」

沙耶は、調子に乗って、まるで、家の猫を可愛がるように、喉を撫でている。
魔物も嫌がっていない。

「チェルって、うちの猫の名前じゃないか…この顔で、チェルって感じか?」

「そうかなぁ~チェルで、いいよね」

博影の言葉を意に介さず、もう、両手で可愛がっている。

「ティアナ。首輪をくれ、牢に入る」

博影は立ちあがった。

「えっ? それはダメです。このまま、鉄柵の隙間から首輪を付けて下さい。この鉄柵も、聖石のご加護をつけてますから大丈夫ですが、なければ、簡単に嚙み切りますよ」

ティアナに、即却下される。

「いや、この魔物をいずれ逃すにしても、一緒にいるとしても、かなり強い魔物なら、よけいに自分が従えさせる事が出来ると、見せておかないと心配の種は消えないだろ?
首輪をつけなくても、従えさせる事が出来ると見せる」

博影は、入り口らしい所に立つ。

「普通ならとても了承出来ませんが、これは、昨日の博影様の治療に対して公爵様からのお礼…との事ですので、絶対無理しないで下さい」

ティアナが鉄柵に近づき、博影に念を押した。

「雷獣程になると、人の言葉を理解する…と、言い伝えられていますから、まずは、私も実証してみます。
出来てから入って下さい」

ふぅぅ~と、浅く長く息を吐き、魔物の前に立つ。

「おまえ、今の話を理解しましたか? 理解したなら、今から博影様がおまえをここより出すために、中に入りますから、この柵のいちばん右端で待ちなさい」

魔物は、先程と違いティアナが、近付いてもう唸らなかった。又…仕方がないと…しぶしぶ立ち上がり、右奥へ行き、博影へ顔を向け座った。

「まるで、人間みたい。いやいや、しぶしぶ、のそのそしてる」

沙耶が喜ぶ。

ティアナが、左側にある入り口横の鉄柵外にかけてある聖石を左手で触れ…念じる。

「博影様、どうぞ」

開けて入る。魔物は全く動かない。

「いい子だね~、動かないで待ってるね」

博影の後ろから入って来た沙耶が、嬉しそうに言い、魔物へ駆け出し、両手で首や頭に抱きつき頬ずりした。
周りの誰も、止める暇がなかった。

ちょっと、ドキッとしたが…しょうがないなぁ…まぁ、チェルでいきますか…とつぶやきながら…
博影も近寄り頭をなでる。

「チェルで、いいか?」

と苦笑いしながらたずねると、博影と沙耶の顔を、魔物は交互に舐めた。

ティアナより、首輪を受け取り念じる。

…博影、沙耶の許可なく人や生き物を傷付けない事…

魔物は、大人しく従っていた。


………


地下牢から、出ると…

次は、治療所へ向かう。博影と沙耶、2人に挟まれ、大人しくチェルが歩く。
犬ではないのだが、リードを持たずに犬の散歩をしている感じがして、かなり気を使う。

しかし、チェルは大人しいもので、駆け出したりせずしっかり同じスピードで博影寄りに歩く。
本当に、人の言葉を理解しているのか試してみる。

歩きながら…

「チェル。沙耶は自分の大切な娘だから頼むよ。チェルが守ってくれ」

と、話すと沙耶の方へ寄り…これでいいのだろう…と、言わんばかりに博影を横目で見上げる。

「いゃ、試してごめん。よろしく頼む」

チェルの頭を撫でた。

重傷者が入っているあの治療所へ着いた。
沙耶とチェルに、外の目立ちにくい木の陰で待っているように話す。いつもなら、口を尖らず沙耶だが、
ここまでくる道すがら、チェルを見た市民からかなり驚かれたので、さすがに、治療所へチェルを連れて入る事は気が引けたようだ。
素直に、木の陰に移動する。

ティアナと治療所へ入ると、すぐベレッタが近寄って来た。

「みんな順調に回復しているわ」

男性、女性合わせ5人の修道者が、包帯の巻き直しやトイレ介助など行っている。

「良かったです。なにかあったら、遠慮なく呼び出して下さい」

「えぇ、遠慮なく声かけるから、その時はよろしくね。頼りにしてるわ」

お互い軽く会釈をする。

ティアナと、治療所を後にする。
この後、遅めの昼食を、町をあちこち見学しながら食べる予定だったが…チェルを連れて、街中をあるくつもりになれなかったので、ティアナに沙耶を任せ、何か買って来て貰う事にし、自分とチェルは、城へ戻る事にした。

2時間後、ティアナと沙耶が両手いっぱいの食べ物を抱えて、本館3階の部屋に戻って来た。

…いやいや、誰がこれ食べるの…

と思いつつ、楽し気に話す沙耶の街での話を聞く。
野菜のかき揚げ、芋コロッケ、鳥の炭火焼、煮豆…等
すべて…それ風のものだが、薄味又は、塩味ながらまあまあいけた。

かなり多かったので、残りはすべてチェルにあげると…すべて食べた…

「チェルは、雑食か…」

意外すぎる。

「お父さん、何でも食べるから、チェルの食べ物は心配しなくていいね」

まだ、少し残っている物を食べるチェルのあちこちを撫でる。チェルは、気にした風もない。
食事を邪魔されても、動揺しない。

…これなら、全く心配しないでいいな…

と、博影は安心した。

夕方…

部屋に軽めの食事を持って来てもらい、ティアナを含め3人とチェルで頂く。そして、ぬるめのビールも頂く。

…たしかに、この世界に冷蔵庫はないよな。ちょっと、がっかりだがこれも慣れるしかない…

丸テーブルに、3人で腰掛け頂いているのだが、やけにティアナが自分の世話をしようとする。

見た目15歳、中身40歳のおじさんからすれば、甲斐甲斐しくて非常に可愛らしいのだが、沙耶には、面白くないようだ。
いつの間にか、給仕にビールを貰い飲んでいる。

…まぁ、異世界だから多めに見よう。これで、ぐっすり寝れるなら、良いだろう…

食事が終わり、片付けが終わりティアナが帰る。服を着替え寝る準備をしようとしていると…

トントン

「はい、どうぞ」

沙耶が、チェルのブラッシングをしながら返事をする。チェルは、今からくる者に全く興味を示していない。
昨夜の食事会でお世話になった給仕役の女性が来た。

「奥様より、お風呂が用意してありますが、いかがですか…とのことです」

そう言えば、昨夜…お風呂を使われる時は、最後で良いので使わせて下さい…
と、図々しくアンジェに軽くお願いしていたのだった。

「ありがたくて使わせて頂きます」

と、言うが早いか、すぐ廊下に出ようとする沙耶。自分もすぐ着替えを持ち、女中の後に続く。
お風呂場は、公爵邸一階の奥にあった。

「公爵様、ご家族様はお風呂をお使いになり。自室にて就寝中ですので、遠慮なくお使いください…との、ことです。
終わられたら、そのままお部屋におかえりください。後は、夜当番の者が片付けますから」

深々と礼し、女中は二階へ上がって行った。

さっそく使わせてもらう。扉を開けると、広い脱衣所となっている。

「沙耶が先でいいよ」

「何言ってるの! お父さん、久々のお風呂だよ。ぬるくなったら、楽しみ半減するし、なかなか機会ないんだから、一緒に入るよ!」

沙耶は躊躇せず、すぐに上、下と脱ぎ全裸になる。

「ほら、はやく! なに、恥ずかしがってるの」

前も隠さず、手をつかみ無理矢理風呂場に引っ張っていこうとする。

「ちょっとまて、脱ぐから」

沙耶の勢いに負ける。脱ぐと、手で隠しながら風呂場に入る。
チェルは…脱衣所の入口側に寝そべり、番をするつもりのようだ。

「わぁ、お風呂ひろーい。石造りかぁー、すごいねお父さん」

お風呂の淵に、両膝をついて浴槽へ乗り出すようにかがみ込み、右手を入れて湯加減をみる。

「ちょっと熱めかな? 体を洗ってたら、ちょうどいい湯加減になるかな?」

沙耶がはしゃぐ。
ついつい沙耶の方を見てしまうが…隠すものはなにもなく、沙耶の形の良い、張りのあるお尻が目に入る。

ぎこちなく相槌を打ちながら、布に石鹸をつけて、体を洗い始める。

「お父さん、背中洗ってあげる」

と、言うと沙耶は、足を洗っていた布をとりあげ、後ろから背中をこすり出した。

「どう? もう少し強くがいい?」

わざわざ、私の顔の横から、覗き込むように聞いてくる。両足を合わせ、手で隠しながら…

「いや、それぐらいで気持ちいいよ」

と、答えると…

そう…と、言いつつ…

…もう! 女子中学生じゃないんだから、なに隠してるの? 親子水入らずじゃん、空気読めおっさん…
と、ブツブツいいながら、強く背中を擦ってくる。

その言葉を聞きながら…

あのなぁ~、15歳の身体は、ちょっとした刺激でもいきり立つんだよ。娘に、いきり立ったとこ、見せられるか! と、心の中で説教する。

しかし、このままでは、父親の威厳が損なわれる。

「沙耶、交代しよう」

そのまま、お互い180度回転し、沙耶が持っていた布に石鹸をつける。自分のタオルは前を隠し、安心して沙耶の背中をこする。

「お父さん、気持ちいい~毎日入りたいね~」

と、沙耶は気持ちよさそうに言う。

「沙耶の背中は綺麗だね。お尻も可愛いね」

と、煽る。

「いいでしょ。良い形のお尻でしょ」

沙耶は全く意に介していない…

「お父さんのお尻も、可愛くなったよー」

くっ! 負けていられない。

「そうかぁ~? 沙耶、また胸大きくなった?」

と、煽っていて、逆にこっちが恥ずかしくなる。

「サイズはね、D。いい形してるでしょ。触ってみる?」

後ろを振り返り、ニヤニヤしながらこっちの顔を見ている。これは、酔っ払ってるな…

もはや、煽ることをやめ、お風呂のお湯を桶で、汲んで沙耶にかけ石鹸を流し、自分の石鹸も流した。
お互い、髪の毛まで洗い湯船に浸かった。

石造りの湯船に、背を持たれさせながら一息ついていると、沙耶が私の正面に来て背中を向けると、私の両足の間に入って来た。
私の方に背中を傾け、まるで、背もたれ付きの椅子がわりにされる。

「あ~癒される。お父さんも、癒されるでしょ」

はいはい、癒される癒される。くっつきすぎだっての!

もう、こんなに密着されたら…下半身のいきり立った物は、誤魔化しようがない。
若いのだから、しょうがない…と、開き直る。

「お父さん、ティアナの事どう思ってるの?」

半分体をこちらに向け、まるで、ごまかされないようにと、両目をしっかり見てくる。

「はぁ? どう思ってるの…って、言われても自分は40歳だぞ。ティアナは15歳、子供じゃないか」

沙耶の質問に全力で否定する。

…いやいや、それはないでしょう。たしかに、ティアナは見た目も可愛らしく、大人になったらかなりの美人になるだろう。
が、恋愛の対象になりはしない。どっちかというと、近所の可愛い娘さんだろう…

「ふーん、私にもこんなになってるのに?」

沙耶は、足で博影のいきり立った物を軽く小突いた。

くっ、恥ずかしさに…やめなさい…とは、言ったものの、沙耶は、まったく、悪びれた様子はない、
もはや、煽るだけ深みにはまるな。

はいはいと、沙耶の言葉を受けながら軽く流し、傍目は、恋人のようにお風呂を、1時間程楽しみ、風呂場を出た。

かなりのぼせたが、その夜は、心地よい眠りにつけた。


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