ひろい宙に夢をみる

叶歌

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ひろい空に夢をみる

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いつかの人類は宙を仰いで星に夢をみたのだろうか。僕は今宙を見上げて地球に思い焦がれる。







「宙、おはよう。」
 窓から入る風のような優しい声が僕を呼んだ。僕の世界を変えてくれたその人はいつも優しい声で優しい目で僕に笑いかける。
「ヒロ様、おはよう…。今日もいい天気、ですよ。」
 カーテンと窓をいつもの時間にあけることは僕の仕事の一つ。僕のご主人様を起こすための仕事だ。ベッドの上からはまだ少し眠そうな声をあげてシーツの滑る音と共に起きてきた。少し皺のついた寝間着を脱ぐとつるしておいた服に腕を通して、街にいる猫みたいにぐいっと一つ伸びをする。後ろについた寝ぐせにはまだ気づいていないようだ。
「宙、今日はちょっと仕事で街に行かなきゃいけないんだけど、どうする?」
 その言葉にわかりやすく肩を跳ねさせてしまった。街にはあまりいい思い出がないから行くのがまだ少し怖い。
「わかった。じゃあ、待っててね。今日は兄さんが休暇で城にずっといると思うからあまりこの部屋から出ないほうがいいかもしれない。」
「うん。気を付けて、行ってきて……ください。」
僕のできる限りの笑顔で見送る。
この城のこの部屋は今まで生きていた中で一番安全で居心地がいい。あんな狭くて暗い部屋にはもう戻りたくない。

 この星には奴隷制度がある。僕はその奴隷だ。
僕は、出来損ない過ぎて売りに出されることはなかったが、そのかわり奴隷商人のペット……のようなものだった。
首や手足には枷がついて自由がきかない。鎖に繋がれたペット。あの時の僕の仕事は商人の従順な奴隷でいること。どんなに酷いことをされても、どんなにいろいろと触られても我慢しなくてはいけない。
生まれたときからだったから、嫌という感情はきっと麻痺していたけれど。少しでも声を出せば、少しでも勝手な動きをすれば、すぐに鞭で打たれていた。普段は地下牢みたいなところに重い鎖で繋がれその中ですらほぼ身動きが取れない状態。真っ暗で寒くて息が苦しいような場所。


だが一月ほど前、街で奴隷商人にこき使われ粗相をした際に鞭を打たれていたところを偶然ヒロ様に拾ってもらった。その時はヒロ様がこの星の皇子様ということも何も知らなくて、ただただ神様が手を差し伸べてくれたのだと、そう思った。


ヒロ様はとても優しい。
ぶったり、鞭で打ったり、それ以外の痛いことしたり、いろんなところを触ったり、そんなことなにもしない。触れる手は、掛けられる声はいつも優しく温かい。
だから僕は少しでもヒロ様のお手伝いがしたい。ヒロ様を悲しませたくない。だから言いつけは破らない。この城はあまり奴隷に良い感情を持っている人がいないらしい。
その中でも第一皇子のヒロ様のお兄さんが特に奴隷嫌いと有名で、アロ様という方……らしい。まだ会ったことはない。詳しくは知らないが奴隷という存在が嫌いで奴隷商人のように鞭で打ったり痛めつけたりしているとヒロ様から聞いた。だから一人でいるときはこの部屋の外になるべく出ないように言われている。
 ヒロ様が帰ってくるまでこの部屋で待っていることはなんの苦でもなくて、少しの寂しさはヒロ様の留守を任されたことで埋められた。
今日もとてもいい天気だから窓を開けて空気を入れ替えて、さっき脱いでいた寝間着をたたんで、掃除をしてヒロ様の帰りを待つ。
それだけでとても心が満たされる。


 僕は地球という、こことは違う星の人種らしい。
それを知ったのはこの城に来てからだ。奴隷商人や街の人からよく、この地球人め、と罵られ虐げられてきた。ここに来るまで地球というものがなんなのかも知らなかったし、興味もなかった。それを教えてくれたのはヒロ様。
とても離れたところの星の血が僕には入っている。その血はこの星の人から嫌われ、だから僕は奴隷なのだと。ゆっくり僕にもわかるように説明してくれた。
 「私はこの星から奴隷制度や地球人とこの星の差別をなくすことが夢なんだ。」
ヒロ様は僕の頭を撫でながら少し遠くを見てそう口にした。
夢。夢ってなんだろう。そう思っていると、いつかしたいこと、実現したいことなんだよとまたゆっくり教えてくれて、優しい目をして僕を見てから少し口を開いてすぐ固く閉じて悲しげな顔を見せた。その顔の意味はまだ僕にはわからない。そうか、いつかやりたいこと。これもまだ僕にはわからないな。今はこうしてヒロ様と一緒にいることがうれしい。
 
今日は城内の図書館っていう本がたくさんあるところで仕事らしい。まだ行ったことないところで詳しくは知らないけど、頼まれたものを届けるために今から初めてそこに行ける。あまり一人で出歩いたことがないため少しの緊張と興奮が混じりあう。あとはここの角を曲がれば着くはず。
 「おい奴隷。何一人で歩いているんだ。汚らわしい。一人で出歩くんじゃねえ。」
 長い廊下に響き渡る怒声。名乗られなくてもわかった。きっとこの人がアロ様だ。眼に宿った威圧感が今まで感じてきたそれよりも圧倒的でどれほど僕が嫌いなのかがわかる。
 「……すみません。すぐ、どきます。」
 僕に一つ睨みをやると服を翻してその場から颯爽と去っていった。
ヒロ様がアロ様に気をつけろと言っていた意味がわかった。あれはたしかな嫌悪だ。街の人より、この城の他の誰よりも強い嫌悪。
だけど、なぜだか僕にはそれがあまり恐怖には感じなかった。理由はわからないけどアロ様に恐怖を感じない。



扉を三回叩いて開ける。ヒロ様は中央にある大きな机の真ん中のほうに座り、たくさんの本を広げていた。
「宙。ありがとう、助かったよ。この資料が必要なことをすっかり忘れていてね。きちんと電話取ってくれてよかった。」
「ヒロ様のお役に立ててうれしい。」
「良ければ私が終わるまでここにいるといい。ここに来るのは初めてだろう。」
「うん。じゃあここに、いる。」
ヒロ様の目の前の席に座ってこっそりと盗み見た。いつもは見ない真剣な表情はとても新鮮で、その本というものがどんなものなのか少しの興味がわく。今までいたところにはそんなものはなかったし、ヒロ様も自室ではあまり読んでいなかった。
「宙、気になるかい?」
よほど見てしまっていたのだろう。ヒロ様はこちらを見遣ると微笑んで手招きをした。僕はそれに大人しく従い、ヒロ様の隣に行く。
「宙、字は読めないんだっけ?」
「読めない、です。本も見るの初めて。」
「そうか。じゃあ、ちょっとずつ覚えていこう。私が教えるよ。宙は今のままでも十分魅力的だけど、学があることは悪いことじゃない。それに興味を大切にしないとね。」
その日から少しずつ文字を教えてもらった。
まずは文字が表になっているものを用意してもらってそれを覚えていった。
ヒロ様は忙しくて部屋にいないことが多いから、あまり一緒にはできなかったが、いない間の一人の時間が勉強で彩られていく。
文字を覚えてきたころに絵ばかりの本を与えられた。内容自体は難しくなくて、文字を追えることができれば理解できた。普段は目にしないような様々な絵や様々な色がとても面白い。
少し文字に慣れてきたころには数ページに一回くらいしか絵が描かれていないような本。たまにわからない言葉があってもヒロ様に聞くと丁寧に教えてくれた。そのころからは本を読むことが楽しくて仕方なかった。
小さな紙の束で広がる世界は何を読んでも新しく、今まで以上に自分の見る世界が色づいていく。その日に読んだ本のことをヒロ様に話すと毎回楽しそうに聞いてくれてそれも読書の楽しみの一つになった。


「宙今日はいつもより難しい本持ってきたよ。たぶん気に入るはず。」
「ヒロ様が持ってきてくれる本は、なんでも面白い、です。」
「そう言ってくれると持ってくる甲斐があるね。はいどうぞ。」
昨日は妖精の話だった。その前はこの星のどこかにある木の話。
今日の本はなんだろう。
「青い星……。」
「そう。読んでみて。感想あとで教えてね。」
表紙は綺麗な青。ヒロ様が用意してくれた僕の椅子に腰かけてさっそくページを開いていく。


ようやく読み終わって、でも最後のページを閉じてしまうことがもったいないように感じた。
それくらい面白かった。青い星、それは地球を指していて、同時に僕の祖先の星だということも指している。
僕の祖先がいたという星はとても興味深かった。
国境という見えない線で区切られた、たくさんの国があって、そのなかにもっと小さく分けられた区分がある。
この星にはない海というしょっぱい水で覆われていて、この星よりもたくさんの木々や動物がいるらしい。
いつもより少し厚めの本は今まで読んできた物語とは少し違っていた。これはきっと本当のことが書いてある本。見たことはないけれどきっとそう。
僕の中の地球は僕の祖先の星だということだけで完結していた。
でも違う。ページをめくるたびに与えられる知識は少しずつ僕の世界を広げた。罵られてきた僕にとって想像の地球はとても汚い星だった。本当はどうだろう、少なくともこの本の中ではとても綺麗だった。絵も写真もない、文字だけの世界だけどそれだけでもどれほど綺麗かわかる。
 「どうだったかな?」
 読み終えたことを確認するとヒロ様はそっと声をかけてきた。この本がどれだけ面白くて素敵だったか言いたくてもどうも言葉が出てこない。たくさんの言葉は今まで感じたことのないほどの勢いで駆け巡り、喉から妙な音が漏れる。
 「すごく、面白かったです。すごく……本当にすごく。」
 やっとの思いで出てきた言葉は何とも幼くて、きっと言いたいことの何分の一も伝わっていない。それでもヒロ様は僕の中に渦巻く感情をくみ取ったかのようにいつも以上の笑顔を僕に向けた。


ヒロ様の許可を得て、一人でも図書室を利用させてもらえることになった。
今まで一人で出歩くことが怖かったりヒロ様があまり一人で出歩かないようにと言っていたりしたことから、頻繁に一人で城内を歩くことはあまり慣れない。
それでも何度も足を運ぶうちに不安は消えた。目的地に着けばたくさんの本が待っているかと思うと自然と少し速足になる。
「おい、そこの。また一人で出歩いているのか。」
「アロ様……。すみません。今日はヒロ様街に用事があるみたいで……」
「知らんわ。そんなこと聞きたいわけじゃない。とっとと失せろ。」
「はい。」
最近よくアロ様をお見掛けする気がする。一人で図書館に行き始めたころから頻度が増して、そのたびにこうして声を掛けられているような。
やはりどんなに威圧的な態度を取られてもそれが恐怖に繋がらない。
ヒロ様にこのことを言ったら危機感がないと言われたけれど、実際アロ様は僕に手をあげないし気のせいかもしれないが最初よりも少しだけ言葉が優しくなったような気がしているのだ。だからといってまだヒロ様以外と話すことが慣れなくて言葉がつかえてしまうけれど。



 最近芽生えたこの感情になんと名前を付ければ良いのだろう。本を捲るたびに増幅するそれは知識欲だけではない。それ以上の何かだ。
 「地球……行ってみたいな……。」
 僕以外誰もいない図書館に響いた。言葉にしてみると自覚する。行ってみたい。
それは図書館に行くとかそんな簡単なことじゃないんだ。本から得た知識はそれがどれほど難しいことかを裏付けるのには十分だった。   
 本だけで納まっていた僕の世界はいつの間にか広がり本の中だけでは納まりきらなくなっていた。
 いつかこんな話をヒロ様としなかっただろうか。そう、たしか。
 「ゆ、め……。」
 夢。そう、夢という言葉がぴったりだ。
前にヒロ様が言っていた、夢というものになるんだ、これは。いつかやりたいこと、実現したいこと。まさにそれじゃないか。
最近持った感情に名前を付けることが出来た喜びとそれの自覚がじわじわと広がって身体が熱くなる。僕にもできたヒロ様も持つ夢というもの。早くヒロ様にも教えたい。僕にも夢ができたのだと。きっとあの時、僕に遠慮していたのだ。目を細めて眉を下げたあの顔を思い出してより一層早くとヒロ様の部屋に急ぐ。
 「おっと。大丈夫?」
 「す、すみません。」
 きちんと確認しなかった角で誰かとぶつかってしまった。大変なことをしたと一瞬体が強張るがその声と包まれた腕で分かった。
今早く会いたいと望んでいた人。
 「ヒロ様。ヒロ様!」
 「どうしたの、そんな慌てて。今図書館に迎えに行こうと思ってたんだ。」
 「ヒロ様、僕地球に行ってみたい!これが前にヒロ様が教えてくれた夢ですよね!」
 普段は出さないような大きな声に少しびっくりしたような顔を見せてから僕をぎゅっと抱きしめた。
 「ああ。ああ、そうだよ。それが宙の夢か。うん。大切に持っているんだよ。」
 抱きしめられていてヒロ様の顔は見えなかったけど、嬉しそうな声はくすぐったく耳に響く。ヒロ様も喜んでくれている。
きっと夢を持つということはとてもすごいことなんだ。


 それからヒロ様は様々なところで地球に行けないのかと交渉してくれたりしたみたいだが、この星の今の技術では無理なことは早々にわかった。
でも簡単に叶ってしまったらそれはきっと夢じゃないんじゃないだろうか。だから今はこれでいい。
だけど、地球に対する憧れは簡単になくならない。今日も変わらずにいつものように図書館に足を運ぶ。まだ読んでいない地球に関する本はたくさんあって、今日はまだ手を付けていない上のほうの本を読むと決めていた。上のほうは台を使っても届かないからヒロ様と一緒に行けるときしか読むことはできない。
今日は図書館での仕事だからあとでおいでと朝食をとった後、悪戯をするときのような顔で言っていた。
ヒロ様はああ見えて結構な悪戯好きでよく城内で行う仕事を投げ出しては街へ繰り出している。
僕はあまり困ったことはないけれど、使用人さんが何か言っていたことを耳にしたことがあった。でもその街への秘密の散歩がなければ僕はヒロ様と出会えていないわけだから使用人さんには申し訳ないけど僕はそれを止めるべきだなんて言えない。
いつものようにノックをしてから図書館のドアをそっと開ける。図書館のドアはヒロ様の部屋よりも少し重いがそれにも慣れてきた。
ドアが開いたのに気付いたヒロ様は今朝にもした顔を浮かべながら手招きをして僕を呼びよせる。それに引っ張られるように隣に行くと、一冊の本を差し出された。
「これを読んでごらん。」
最近はいつも自分で本を選んでいたからヒロ様から本を受け取るのは久しぶりだ。
「これ、上のほうにあった本でまだ私が取ったことないものだから読んでないだろう?先に読ませてもらったけど、たぶん気に入るよ。」
気に入るよと言って渡してもらえる本はいつも面白いから普段以上に期待が高ぶる。
この本には何が書いてあって僕にどんな世界を見せてくれるのだろう。
表紙にはなにも書いていない。絵もタイトルも。
「なにも書いてないなんて珍しいよね。私もそれが気になって手に取ったんだ。」
なかなか表紙を開かないからか、ふっと笑い声を漏らして僕の頭に手を置きながら僕が思っていたことを口にした。
最近僕が言葉を口にしなくても、なにを思っているかなんてヒロ様には筒抜けな気がする。それが少し嬉しいこともバレているかもしれないことは少し恥ずかしい。
ヒロ様は仕事あるからと少し離れたところでたくさんの紙を広げている。その様子を見てから僕は一息ついて本の表紙を開いた。



ヒロ様は本当なんでもわかってる。どうしたって僕が地球に対する憧れがなくならないこと。だから僕にこの本を渡してくれたんだ。それにきっとこれを読んだあと僕がなんて言うかどうしたいかもわかってる。
表紙を閉じたらたぶん、どうだったと優しい声と顔で聞いてくれるんだ。だから僕はきちんと言葉が紡げるように、表紙を閉じる前にドアとは反対側にある大きい窓に目をやって、広く開けた空を見た。
ぱたんと表紙を閉じると待ってましたとばかりにヒロ様がこちらに近づく。
「宙、どうだったかな。面白かっただろう?」
ほら、またこの顔。
「ヒロ様。僕この花が見たいです。」


本に書かれていたのは花のこと。
でもただの花じゃない。この星の、この王都の近くに地球から持ち込まれた花が咲いているらしい。はっきりした場所は書かれていない。どんな色かも、どんな香りなのかもなにも書かれていない。ただ、初めて地球から来た学者が種を持ち込みそれを王都の近くの森のどこかに植えたということだけしかわからない。
この星は地球人を虐げはするものの、殺したりはしない。基本的に無駄に関りを持ちたくないんだ。だからその花もどこかで咲いていることだろう。
 今はそれに期待をするしかない。
 「うん。じゃあ、二日後行ってみよう。スケジュールはもう調整してあるからね。それに、この近くに山は多くないし、だいたいどこの山か検討ついてるんだ。」
「ありがとう……ございます。」
ヒロ様の優しさと少しの希望が嬉しくてつい頬が緩む。緩んだ頬をヒロ様の温かい手によって包まれ、あげた視線はヒロ様の瞳に奪われた。
「絶対見つけよう。きっと素敵な花だよ。」
細められた瞳は窓から差し込んだ光を取り込んで、深い青に星を散りばめたみたいだった。



出発までの二日間、頭の中はあの花のことで埋め尽くされていた。当たり前だ、小さな希望がもう目の前にある。
僕の知っている花は部屋の窓から見える庭の花と街にあった花屋の花。あとは、本に描かれた花。自然に生えた花は知らない。
管理されていない、手折られて花はどんな花だろう。
庭に植えられている花は、赤、青、黄色。香りは知らない。花屋で見たのはたしか紫やピンクがあったと思う。風に乗ってうっすらと感じた香りはすこし甘い感じだった気がする。
あの本を読んだとき、思い浮かんだのはヒロ様の瞳のような深い青。今までで一番きれいだと思った色。匂いは涼しい爽やかな感じ。
他にもいろんな色を想像した。庭に咲くような黄色い花かもしれない。花屋で見た薄いピンクかもしれない。匂いも知っている甘い香りかも。
時折窓から外を眺めてはそんなことばかり考えていた。本を読んでいる時でさえ花のことが頭をよぎる。
想像はたくさん広がって、二日なんてあっという間に過ぎた。



朝ごはんは興奮で喉を通らなくて、ヒロ様に心配をかけてしまった。こんなにドキドキするのは初めてでどうしていいかがわかない。どうしたら止むのだろう。少し怖くなるほど心臓がうるさいのだ。
ヒロ様は少し呆れたように笑って、そんなに急がなくても花は逃げないよと。頭では理解していても体が伴わないというのはきっとこういうこと。
少し離れているからと出発は朝ごはんを食べてすぐだった。
僕にとってはとても久しぶりの城以外の場所、しかも外。馬車に乗るのは初めてだ。見たことはあっても、こんなに近くで見るのも初めて。
こんな感じなんだと馬に少し触れてみた。少し温かくて短い毛がつるりとしている。
以前はこんなことにも興味が持てなかったなと自分の成長が少し嬉しい。
先ほどより少しは落ちつけた気がする。そんな僕を見てヒロ様は頭を優しく触れた後、じゃあ行こうかと馬車に乗せてくれた。


初めての馬車はあまり心地よいものではなかった。
がたがたと地面の凹凸によって揺れて少し気持ち悪い。ヒロ様は大丈夫なのかとちらっと見てみたけど、特に気分が悪そうでもなく、むしろ僕のことを心配しているようだった。いつも移動は馬車みたいだから慣れてるのかな。
太陽がてっぺんに来る頃には少し慣れてきて、外を見る余裕も出てきた。今日もいつものようにいい天気で雲一つない真っ青な空。窓から入ってくる風は温いけど、久々の外はヒロ様と一緒にいるからか気持ちがいい。
すうっと深呼吸すると風と共に舞い込むいろんな匂いが鼻をくすぐる。ヒロ様の部屋の窓から吸う空気とは違う匂いがする気がした。


どれくらい揺られたか、体感としてはそこまでではないけど、既に日は傾いている。このまま森に入るのは危険だからと近くの村で一夜過ごすことにした。
城下町しか知らないけど、この村はとても小さくて少し走れば端まですぐに着いてしまいそう。
普段、この村にはあまり人が訪れないそうで久々の人の訪れに嬉しそうにしていたと思ったら、そのうちの一人がヒロ様だとわかると大慌てでこの村唯一の宿を用意してくれた。
「ヒロ様、ここは人が少ないんですね。」
「そうだね。それにこの村はほかの王都近くの村や町に比べて貧困でね。それも問題視してるんだけど、どうもまだ手を回せていないんだ。」
たしかに城下町に比べたら貧しそうな感じはするけど、どこか活気がある気がするのは村の人たちが明るい人たちだからなのかもしれない。
僕の首輪を見たらきっと地球人だってわかったはず。なのに僕にも明るく話しかけてくれたのはきっとこの村全体の人柄。出迎えてくれた村長さんも、宿の女将さんもみんな僕の目を見て、ゆっくりしていってねと優しく言ってくれた。
初対面で僕にこんなに優しく接してくれるのはヒロ様以外初めてで、少しくすぐったい。
「明日も早いから、早く寝たほうがいい。今日は久しぶりの外だったし随分疲れただろう。」
「はい。もう寝ます。ヒロ様も?」
「いや、私はもう少しだけ起きているよ。先におやすみ。」
「うん。あまり無理しないでくださいね。おやすみなさい。」
寝る前にいつもしてくれる額への口づけをもらって、まだなんの体温にも侵されていないベッドに潜り込んだ。



朝起間が覚めると隣にはヒロ様がまだ眠っていた。
閉じられた瞼を縁取る、髪とお揃いのアイボリー色の睫毛はカーテンの隙間から覗く光で煌めいてとても綺麗だ。僕はこの朝陽に煌めくアイボリーが好き。瞳の色と共に好きな色の一つ。
そうだ、あの花はこんな綺麗なアイボリーかも。
じっとそれを眺めていると、視線に気づいたかのように少し身動ぎ起きてしまった。もう少し見ていたかったな。
「ヒロ様、おはようございます。すぐ出発しますか?」
「……おはよう、宙。いや、女将さんが朝食を用意してくれるそうだからね、それをいただいてから行こう。御者も隣の部屋で休んでいるはずだから声をかけてから朝食に行こうか。」
「わかりました。用意します。」
いそいそとベッドから抜け、まずは自分の身支度を急いで済ましてから、すぐにヒロ様が支度をできるよう準備する。合間に窓を覗いたが今日もとてもいい天気だ。きっと森に入るには最適な天気。
「よし、じゃあダイニングまで行こうか。先ほど御者に連絡して今日のスケジュールは伝えた。朝食を頂いたらすぐ出発するよ。」
「もう荷物も片付いているので、すぐ出られます。」
あとは荷物を持って出るだけの状態にして、朝ごはんのためにダイニングに行く。
一階に降りる階段から美味しそうな匂いがふわりと包んだ。


「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさま。マダム、とてもおいしかったよ。」
「そりゃよかった。皇子様に何出せばいいかなんてわからなくて、いつも出してるようなもん出しちまったけどよかったのかい?」
「もちろん。心の籠った優しい料理だった。ありがとう。」
ヒロ様は優しい笑みを浮かべながら女将さんとの会話に花を咲かせている。
本当においしかった。すごく温かかった。いつもの城のごはんも美味しいけど、ここのごはんは何だろう、さっきヒロ様が言ってたみたいに優しい味だったんだと思う。
「おチビちゃん、そんなガリガリでいつもちゃんとごはん食べてるのかい?」
おチビちゃん?僕のことかとはっとした。ヒロ様と話してたから話しかけられると思わなかった。
「うん。食べてます。」
「そうかい。そりゃよかった。王都の方は地球人に対する当たりがきついだろ?おチビちゃん見て心配だったけど、この皇子様の元なら平気そうだね。ちゃんと食べて大きくなるんだよ!」
「は、はい。」
昨日宿に着いたときも少し言葉を交わしたけど、こんなパワフルだと思わなくて少し圧倒されてしまった。お礼はきちんと伝えるものだと、ヒロ様に教わっている。美味しかったと口にしたら、ヒロ様とは違う温かくて少し厚い手で頭をガシガシと撫でられた。


「そうだ、マダム。私たち、この辺の山にある花を探してるんだけど、知らないかな?地球から持ち込まれた花らしいんだけど。」
「ああ、あれかね。なるほど、だからこんなとこまで来たのかい。この村抜けて一番手前の山にあると思うよ。あんまり人入らないみたいだからよく知らないけど、見たことない綺麗な花が咲いてたって村の誰か言ってたからね。」
部屋からも見えたあの山かな。たしかにすごく近そうだった。あそこにあの花があるのか。
納まっていた興奮が、昨日の朝みたいに体を支配する。
「そうか。何から何までありがとう。とても助かったよ。」
「ありがとう、ございました。」
「またいつでも来なさいな。皇子様もおチビちゃんも気を付けるんだよ。」
こくんと頷くと、最後にまた頭を撫でられた。その手は少し乱暴だけど、やっぱり温かい。


村を出ると、目的の山は本当に近かった。馬車で移動できるのは、この麓まで。ここからは歩いて探さないといけない。
ヒロ様は水や少しの食糧が入っているらしい鞄を持って先に馬車から降りた。差し出された手を取って僕も降りると目の前には緩やかな坂と木々がずっと続いている。
「この山はあまり人が入らないみたいだから、整備された道がほぼないからね。気を付けるんだよ。疲れたり、しんどかったりしたらきちんと言うこと。わかったかい、宙。」
「わかりました。」
一歩一歩と足元に気を付けて進んでいく。
ヒロ様が言ってたようにきちんと整備された道はないが、今まで人が通ってきたであろう道があって、そこは多少歩きやすくなっていた。
今日はとても天気が良くて、気温も高いから歩いたら暑くて大変かもしれないと思っていたけど、高い木々で覆われた山は少し涼しくて、歩いても少しの汗が滴るくらい。
普段城から出ないでいるからこんなにたくさん歩くのは久しぶりで、しかも太い木の根がそこら中に張っているし、太陽の光は木々に遮られて暗く視界が悪くなっていて余計に歩きにくくて上手く歩けない。それでも全く苦ではない。
ヒロ様が隣に居て、僕に合わせて歩いてくれているし、この先に花があるのかと思うと頑張れる。それに足を運ぶごとに、花への思いが増していく。
しばらくずっと似たような道を歩いていたけど、少しずつさっきまであったような道がなくなってきている。きっとここまでは人が本当に入ってこないんだ。
でもたぶんもうすぐだ。そんな気がする。
ふわりと過ぎていく風がそう教えてくれている気がしているから。


転ばないようにずっと下ばかり見て歩いていたけど、ふと明かりを感じて顔をあげる。それは気のせいなんかではなくて、少し先から木が開けて光が漏れていた。
きっとあそこだ。
ヒロ様のほうを覗うと、ヒロ様もそう思ったのだろう、目がキラキラしてる。
早く、早く。焦る気持ちをなんとか抑えて、一歩ずつ確実進める。
あと3歩。
あと1歩。
ようやく届いた目的の場所は、あまりにも明るくて眼の前が一瞬ちかっとする。
視界がはっきりした時にはもう足の痛みや腕のたくさんの小さな傷なんて忘れていた。




そこに広がっているのは一面の白。
なんの混じりもない真っ白な花。それが辺り一帯を埋め、咲き誇っている。一面の白は太陽の光で一層白く、まぶしい。
風に揺られて舞う香りは甘いような、それでいて少しスッとするような。あと、たくさんの陽を浴びているからか暖かなお日様の匂いのような気もする。
こんなに見たいと思っていた花が目の前にあるのに、たくさんの本を読んで前よりも言葉を知ったのに、言葉が出てこない。
代わりに、目から何かが溢れる。頬に伝うそれは温かく、意図せず零れて落ちていく。
ああ、なんて。
「ヒロ様、ヒロ様。綺麗ですね。とても、とても綺麗ですね。」
いつか、初めて地球について知った、あの本に出会って紡いだ言葉のように拙く幼いそれしか出てこない。伝えたい気持ちの何分の一もきっと伝わらない。
言葉を置き去りにして、気持ちだけが溢れて止まらない。
本のなかで想像した花より何倍も綺麗で、綺麗で。
この星の人たちが馬鹿にする地球という星は、僕と縁のある星は、こんなに綺麗な花を咲かせるんだ。本に出会うまで、汚れた星なのだと、僕は汚れた血が流れているのだと。そう思っていたのに、今はとても誇らしい。
文字だけの世界じゃこんなにも感情が動かなかったと思う。
僕の夢は、僕だけの力じゃどうにもならなくて、叶わない可能性のほうが高いかもしれない。でもこの花を見て、僕はやっぱり諦められない。
この花たちはこんなに綺麗なんだ。地球はどれほどまで美しいんだろう。


「この星の人間は、とても臆病なんだ。知らなくちゃいけないことを、なにも知ろうとしない。」
しばらくなにも言葉を発さない僕の代りに、低く静かな声が静寂を破る。
そっと見上げると、その真剣な視線は真っすぐとても遠くに向けられていた。
「この星だけで完結して、他を受け入れずに淘汰していく今の世は変わっていくべきなんだ。」
一瞬の間を開けて遠くを見つめていた瞳がこちらに向いた。
「ねえ、宙。宙はこんなに強く綺麗な花の咲く地を故郷に持っているんだよ。素敵だね。」
その言葉は、僕にすっと入ってきて、鼓動を速めた。ヒロ様の言葉で、花も地球ももっと特別になっていく。
それが嬉しくて、止んだ涙がまた溢れそうになっていると、ヒロ様はまた何か楽しそうな顔をした。
「宙、私はこの花を城に持って帰って、部屋から見える花壇に植えたいと思っているんだけど、どうだろう?」
 いつの間に出したのか手には布と紐が握られている。鞄に入っていたのは水だけじゃなかったのか。
「持って帰ってもいいんですか?」
「ああ。ここは誰の管理もされていないし、問題はないよ。それに、生態を調べたいからね。」
「じゃあ!あの!」
今度は感情が動くよりも先に言葉が出た。次の言葉が出てくるように、少し深く息を吸う。
「もしよかったら、僕にお世話させてください。」
きちんとヒロ様の目を見て、はっきりと。
「もちろん!宙がそう言ってくれて嬉しいよ。」
そう言って僕に向けた笑顔は、太陽の光を反射した花みたいに眩しくて。声は、僕が初めて地球に行きたいと、これが夢だと言ったときに聞こえた声と同じもので、きっとあの時もこんなくしゃりとした眩しい笑顔だったんだろう。
僕もすごく嬉しい。
ヒロ様が僕に手を差し伸べてくれた時と同じように、この景色は一生忘れない。




城の一角にある、ヒロ様が僕に用意してくれた花壇。そこには白い花が一定間隔をあけて咲いている。
この花壇のお世話をすることが僕の新しく増えたお仕事。
お世話といっても、朝に水をあげるくらい。あとは、自然にずっと咲いていた花だしあまり必要はないけどたまに肥料をあげたりしている。
最近は、図書館だけじゃなくて、こうして庭にも頻繁に足を運ぶようになった。
まだヒロ様以外とお話することは苦手だけど、あの村でヒロ様以外にも僕のことを受け入れてくれる人がいることを知ってから、ヒロ様の側近さん達とは前より少しだけ僕からも声をかけられるようになった。
前の僕よりはたぶん、きっと少しだけ成長できてると思う。
でもこれだけじゃ足りない。
だって、僕はヒロ様の何の役に立てない。ヒロ様は今のままでいいというけど、僕は嫌だ。

ヒロ様は僕のためにいろんなことをしてくれる。
この間花を見に連れて行ってくれたこともそうだけど、街で本を買ってきてくれたり、忙しいはずなのに少しでも時間ができると一緒にいてくれたり。昨日は伸びた髪を切ってくれた。
今だって、いろんなところに赴いて奴隷制度の廃止を呼び掛けている。
早くなんの不安もなく、一緒に街で買い物をしたり、僕が一人でも安心して出歩けるようになればいいと、普段の忙しい常務に加えて活動しているから以前よりももっと忙しくなった。
もし、僕がもっと頭がよかったり、うまく人と話せたりできれば、少しはヒロ様の役に立てるかもしれないのに。待ってることしかできないのはとてももどかしい。


僕はヒロ様の隣にずっといたい。それは今みたいになんでもしてもらうんじゃなくて、僕もヒロ様になにかできるようになりたい。
 ヒロ様には笑顔でいてほしい。僕がヒロ様を笑顔にしたい。
 これは夢じゃなくて、目標。
 いつかじゃなくて、すぐにでもそうなりたい。
 でも今すぐにそうなることなんて出来ないから、ヒロ様みたいにコツコツとやるべきことをやっていこう。
 今僕にできることは、僕の好きな色の一つにもなったこの花を枯らさずに育てること。
 あとは今日もいい天気だから、お布団を干して、お部屋を掃除して、帰ってきたヒロ様が少しでも気持ちよく今日を終われるように、そして気持ちよく明日を迎えられるようにしよう。
 太陽の光を元気よく浴びる花に水をあげて、僕はヒロ様の部屋に戻った。
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愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

キサラギムツキ
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長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

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