【完結】狐と竜の怪異専門探偵事務所~千年前に構った竜の子に現世で再会、溺愛執着されています~

オジカヅキ・オボロ

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01 怪異に遭おう1

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 車窓から眺める景色は、人工的な建造物から緑、自然へと移り変わっていく。流れる木々がこちらへ腕を差し出してくるように蕾や満開の花を見せてくれるのは目を和ませてくれた。
 大学二年のゴールデンウィーク。
 オカルト研究同好会に所属している壬司瀧ミツカサ ロウは、恒例の『フィールドワーク』のために地元を離れ、同好会メンバーとともに信州のとある山を目指していた。

「このために毎年ひとりは免許取るんだよなー」

 四年の真岡の運転は、免許を取って三年ということもあるのか危うげない。停まる時も体が揺れない安定感があった。運転技術が相当高いのかもしれない。
 瀧は助手席に座っている。大まかな道案内はナビがしてくれるが、細かなナビは三年の西山や一年の嶋田には向かないからと、真岡から名指し指名されたからだ。

「真岡センパイが一年の時も車だったんですか?」
「そう」
「車のほうが旅費が安く済むからですか?」

 後部座席から身を乗り出してきたのは嶋田だ。真岡は「それもあるけど」と視線を前方から動かさずに返す。

「俺たちが目的とするような場所って、交通の便がいいと思う?」
「……なるほど」

 これ以上ない理由に、嶋田も納得したようだった。

「一回、真岡も免許取ってない時、誰も車出せないままフィールドワーク行くことになった時は地獄だったな……」

 最寄り駅から三十キロほど徒歩だった、と西山が遠くを見つめる顔で言うと、嶋田が「うわ」と嫌そうな声を出す。

「真岡センパイ、絶対いなくならないでくださいね」
「俺も卒業するからなあ……嶋田が免許取るのが一番いいだろうな」
「ええー……」
「部で補助出してもらえよ」

 車は後部に乗る専門、と乗り込む時に嶋田が言っていたことを思い出して、ついつい笑ってしまう。

「あ、真岡さん、次の分岐は右で……わかりにくいので見逃さないでください」
「……もしかしてあの木がめっちゃ生えてるほう?」
「です」
「険道って聞いてたけど、ほんとだな……」

 一気に道が悪くなり、車が時にがたがたと揺れる。かろうじて舗装はされているが、手入れや車の行き来などはまったくされていないとわかる道。走りやすい新道ができたことで通る車も少ないのだろう、アスファルトのあちこちが細かく隆起して裂け、逞しい草や花がそこかしこに生えている。

 真っ当な場所へ続くかどうか怪しい。そんな気持ちにさせてくれるのが、この険道や酷道だ。けれどこういう道にこそ胸を高鳴らせてしまうのは、冒険心なのか向こう見ずなのか。

(冒険心ってことにしておきたいよなあ)

 何しろ若い男が四人も集まっている。しかも同じ趣味で盛り上がっているのだ。そのために多少の無茶をするくらい、大目に見てほしい。できる限り他人の迷惑にならないようにするつもりはあるから。

「タキいると地図見なくていいから助かる」
「褒めてますよね? カーナビ最新式の入れればいいのに」
「他ふたりが役に立たないからな……カーナビが役に立つところばかりじゃないし」
「あっひどい!」
「事実だ」

 西山の抗議に短くぴしゃりと返す真岡のやりとりはいつものことで、瀧も、西山と同様に貶されたはずの嶋田も笑った。

「車で行ける道は途中までしかなくて、そっから先は歩きだからな」
「今年は廃村探検だったよな!」
「そこ、なんで廃村になったんでしたっけ」

 嶋田の問いに答えたのは瀧だ。

「ダムじゃなかったっけ?」
「いや、ダムは口実で……三十人が猟奇的に殺された事件の痕跡を消すために……とかじゃなかったか?」
「西山さん、それ津山の事件と混ざってません?」
「真岡センパイ、正解は?」

「俺たちが行く場所が普通の理由であるわけがないだろ。猟奇的犯罪は面白みがあるが……何らかの怪異に襲われ、ある日いきなり村人の半数が消えたんだと。残ってた村人も、いつ自分や家族がいなくなるかわからないから、次々と村を捨てて……ってことらしい」

「あ、怪異か」
「いや怪異が良いわけではないですよ」

 この世では、ヒトでは解明できない不可解な現象を怪異と呼んでいる。人魂や屍人、幽霊や神隠しなどがその一部だ。
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