【完結】狐と竜の怪異専門探偵事務所~千年前に構った竜の子に現世で再会、溺愛執着されています~

オジカヅキ・オボロ

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02 怪異に遭おう2

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獣人じゅうじん神族しんぞくは関係ない……という発表はされてたはずだけど。ま、関係あったとして、それを正直に発表するわけはないわな」

 それはそうだ、と三人も頷く。
 ヒトの上位存在である獣人、その上に神族。三種族が共存している世界が基本的に平和なのは、最上位である神族、そのトップクラスや神々が基本的に下位種族へ過干渉しないしあからさまな差別をしないからだ。むしろそれぞれの種族の輪を乱すことを嫌う傾向がある。
 ヒトが虐げられていることはない。能力的には獣人や神族に大きく劣ることも多いが、獣人に師事するヒトもいるし、その逆もいる。互いの矜恃を踏みつける真似をしない限り、激しく衝突するようなことがないからだ。

(それぞれの種族の罪はそれぞれで裁くけど……神族がヒトに対して犯した罪とか、どうなるんだろ)

 かつて『神隠し』と呼ばれた事象は、ヒトが有力な獣人や神族に攫われたことを暗に指していたし、行いが悪い獣人が『おに』として討伐された過去もある。だがそれらは現代の法にはそぐわないだろう。
 もちろん、獣人に取り入ろうとするヒトや、神族に媚びへつらう輩もいるが、そういうヒトのことは彼らもちゃんと見抜き、相応の態度で相手をする。

「……ほんとに怪異じゃなけりゃいいけど……」
「意外と心配性ですね、西山さん」
「だって、今の話だと本当に『怪異』で『連れ去り』なら、原因は妖魔鬼怪だろ。そんなのおれたちの手に負えないじゃないか。おれたちは不思議事象を面白がるだけなんだから」
「でもタキちゃんセンパイがいますし」
「オレ?」

 嶋田の発言に首を傾げる。嶋田は不思議そうに返してきた。

「家が陰陽師なんでしょ?」
「家は陰陽師だけど、オレは違うぞ。適正ないし、せいぜい勘がいいとかそれくらいだし」

 実家は陰陽師家としては名門。この倭国の鎮守をほとんど任されている土御門家に次ぐ地位にあると子どもの頃に聞いた覚えがあるが、自身に陰陽師としての適性がほとんどないものだから、実感は薄かった。

(陰陽師としては劣等生だからなぁ……)

 そのことで、兄ふたりに対する劣等感がないとは言わない。けれど両親は兄ふたりと瀧を比較して差別するような教育はしてこなかったから、今となっては気楽ではある。
 西山が笑った。

「タキにはシロがいるからなー」
「去年はずっとタキの勘とシロに助けられたようなもんだもんなあ」

 真岡も頷いて賛同する。

「黒い狐なんでしたっけ? なんで黒いのにシロなんですか?」
「色と逆の名前付けたほうが可愛いかなって」
「……よくわからないセンスっすね」
「ともかく! マジでマジなやつだったら企画段階で没ってるよ。……おっと、道はここまでか。必要な物だけ持っていくぞ」

 車は真岡の愛車の中古車だ。曰く「レンタカー借りて何かあった時の弁償代がこわい」という理由で自前の車らしい。
 四人がそれぞれ車から降りる。五月の、そろそろ強くなりかかっている日差しを避けるために帽子をかぶって長袖長ズボンの動きやすい軽装なのは全員同じだ。けれど腰にペットボトルを提げた以外は手ぶら、ボディバッグだけ、小ぶりなリュックとサコッシュ、と各自の持ち物には大きく差がある。

「嶋田、荷物多くないか?」

 瀧の指摘に、西山がまじまじと嶋田の装備を眺める。

「リュックとサコッシュ……リュックには何が入ってるんだ?」
「何かあった時にどうするんすか。非常食と飲み物は必須ですよ」
「おまえが一番生き残れそうだな……まあ俺たちも簡単な非常食と飲み物は持ってるけど」
「オレも携帯食料と水はあるし……西山さん真岡さん、一蓮托生ですよ」
「いやな一蓮托生だな……」

 軽口を叩き合いながら、真岡を先頭に意気揚々と歩き始める。蝉の声が賑やかだ。
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