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23 水落鬼2
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「なんですか、みんな変な顔して」
「いや……だってそりゃ……」
「タキちゃんセンパイ、獣人か神族の方だったんですか?!」
嶋田の唐突な問いに、反射的に「はぁ?!」と返した。
「そんなわけあるか、オレはれっきとした純粋なヒトだ!」
「いや、でもさぁタキちゃん……」
西山の引きつったような顔に首を傾げると、真岡が頭の上のほうを指差す。
「タキ、自分の頭と腰を触ってみろ」
「は?」
「いいから」
言われるがまま、自分の頭と腰を撫でて――動きを止めた。
「……ナニコレ」
「何かの動物的な耳と尻尾……だと思うんだよなぁ……尻尾のふさふさ具合から察するに、狐とか……でも狐ってそんなに何本も尻尾あったっけ……? ないよな……でも狐だと思うんだよ……おまえらはどう思う?」
「真岡に同意」
「真岡に同意」
「真岡センパイに同意」
「こんな時に一致団結しなくても……梓玥サン」
振り返ると、梓月は目を見開いて瀧を見つめていたようだったが、瀧が救いを求める目で見ていることに気付いたのか、一度目を伏せてから全員を見回す。
パチンと指を鳴らした、と思ったら四人が瀧から視線を外した。なんの前触れもなく、四人とも瀧の姿に突然興味を失くしたような、忘れたような、不自然な態度だ。これはきっと術を使ってくれたと見るべきだろう。
慌ててもう一度自分の頭や腰のあたりに触れるが、先ほど感じたふさふさとした感触はもうない。
(ええ……何これ……何が起きたんだ……)
まさか驚きで引っ込んだのだろうか。そして彼らの態度は瀧自身でも原因がわからないことをあれこれ詮索されるよりはよほどいいが、不自然には違いなく、気持ち悪さがあった。
瀧の耳や尾の件はともかく、今この現象の原因をどうにかしてくれたのは、間違いなく梓玥だ。けれど今それを問いただす必要はない。それよりも優先事項が他にあるからだ。
「黎センパイ、その、水の塊は……?」
全員の興味は、梓玥の傍らへと移ったようだった。瀧もそちらのほうへ行く。おそるおそると嶋田が尋ねたのは、梓玥はちらりとふわふわと浮いている水の塊だ。
「中にいる」
「中!?」
「触らないように。危ない」
「あっ、ハイッ」
顔ごと突っ込みかけた西山が慌てて止まる。好奇心の塊のような男だが、梓玥の言葉には素直に止まるくらいの理性はあった。
水の塊の中にいるのは、子どものようだった。かつては服だったらしい襤褸布を身に着けていて、顔色はひどく悪い。
「幽霊……じゃ、なさそう……?」
質量がありそうだ、と嶋田が言う。西山も同意して頷いた。
「幽霊ならすり抜けそうだもんな」
「妖魔鬼怪でいえば魔? 霊じゃないし元はヒトっぽいし」
「妖と怪はヒト以外のものだっけ? 妖が獣で怪は植物とか事象とか……魔がヒトの上位存在の成れの果て? 魔じゃなくない?」
真岡が首を傾げると、西山も首を傾げる
「あれ? じゃあどれも違うじゃん」
「鬼って可能性もありますけど」
「あ、そうか。鬼のほうがヒトに近いか。幽霊ともちょっと違うし……」
大陸では同一視されるようだが、倭国では幽霊と鬼は別のものだ。幽霊は実態を伴わないもの、鬼は時に実体を伴うものと区分されている。水牢に閉じ込められた子どもは、どちらにも見えた。
答え合わせを頼むかのように、全員が梓玥を見る。梓玥は小さく頷いた。
「……これは、水落鬼という」
「水落鬼? って大陸の鬼?」
西山が持っている知識の中に存在した単語らしい。彼はフィールドワーク好きだが、オカルトに関することについてはよく勉強する。
「いや……だってそりゃ……」
「タキちゃんセンパイ、獣人か神族の方だったんですか?!」
嶋田の唐突な問いに、反射的に「はぁ?!」と返した。
「そんなわけあるか、オレはれっきとした純粋なヒトだ!」
「いや、でもさぁタキちゃん……」
西山の引きつったような顔に首を傾げると、真岡が頭の上のほうを指差す。
「タキ、自分の頭と腰を触ってみろ」
「は?」
「いいから」
言われるがまま、自分の頭と腰を撫でて――動きを止めた。
「……ナニコレ」
「何かの動物的な耳と尻尾……だと思うんだよなぁ……尻尾のふさふさ具合から察するに、狐とか……でも狐ってそんなに何本も尻尾あったっけ……? ないよな……でも狐だと思うんだよ……おまえらはどう思う?」
「真岡に同意」
「真岡に同意」
「真岡センパイに同意」
「こんな時に一致団結しなくても……梓玥サン」
振り返ると、梓月は目を見開いて瀧を見つめていたようだったが、瀧が救いを求める目で見ていることに気付いたのか、一度目を伏せてから全員を見回す。
パチンと指を鳴らした、と思ったら四人が瀧から視線を外した。なんの前触れもなく、四人とも瀧の姿に突然興味を失くしたような、忘れたような、不自然な態度だ。これはきっと術を使ってくれたと見るべきだろう。
慌ててもう一度自分の頭や腰のあたりに触れるが、先ほど感じたふさふさとした感触はもうない。
(ええ……何これ……何が起きたんだ……)
まさか驚きで引っ込んだのだろうか。そして彼らの態度は瀧自身でも原因がわからないことをあれこれ詮索されるよりはよほどいいが、不自然には違いなく、気持ち悪さがあった。
瀧の耳や尾の件はともかく、今この現象の原因をどうにかしてくれたのは、間違いなく梓玥だ。けれど今それを問いただす必要はない。それよりも優先事項が他にあるからだ。
「黎センパイ、その、水の塊は……?」
全員の興味は、梓玥の傍らへと移ったようだった。瀧もそちらのほうへ行く。おそるおそると嶋田が尋ねたのは、梓玥はちらりとふわふわと浮いている水の塊だ。
「中にいる」
「中!?」
「触らないように。危ない」
「あっ、ハイッ」
顔ごと突っ込みかけた西山が慌てて止まる。好奇心の塊のような男だが、梓玥の言葉には素直に止まるくらいの理性はあった。
水の塊の中にいるのは、子どものようだった。かつては服だったらしい襤褸布を身に着けていて、顔色はひどく悪い。
「幽霊……じゃ、なさそう……?」
質量がありそうだ、と嶋田が言う。西山も同意して頷いた。
「幽霊ならすり抜けそうだもんな」
「妖魔鬼怪でいえば魔? 霊じゃないし元はヒトっぽいし」
「妖と怪はヒト以外のものだっけ? 妖が獣で怪は植物とか事象とか……魔がヒトの上位存在の成れの果て? 魔じゃなくない?」
真岡が首を傾げると、西山も首を傾げる
「あれ? じゃあどれも違うじゃん」
「鬼って可能性もありますけど」
「あ、そうか。鬼のほうがヒトに近いか。幽霊ともちょっと違うし……」
大陸では同一視されるようだが、倭国では幽霊と鬼は別のものだ。幽霊は実態を伴わないもの、鬼は時に実体を伴うものと区分されている。水牢に閉じ込められた子どもは、どちらにも見えた。
答え合わせを頼むかのように、全員が梓玥を見る。梓玥は小さく頷いた。
「……これは、水落鬼という」
「水落鬼? って大陸の鬼?」
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