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「梓玥さ……、梓玥、真岡さんと何話してたんだ?」
家に帰り、結局好奇心に負けて聞いてしまった。
梓玥は温かい茶を淹れてくれると、マグカップを受け取った瀧を膝に抱く。
(……なんか、家では慣れてきたな……慣れていいのかわかんないけど……)
落ち着くと思い始めたら負けなんだろうなぁと思いつつ、茶を啜る。
「瀧たちは、真岡の家のことをどれくらい知っている?」
思いがけない問いに「へ?」と間抜けた声が漏れた。
「ええと……土御門系の陰陽師が親戚にいるっていう話は聞いたことがあるかな。あと上の兄貴が優秀で、何かと比較されてイヤだったっていうのは聞いたことがある」
「……水落鬼のほうは、そのことが少し関係している。それから、私と瀧自身のことも」
「えっ?!」
「真岡も色々確認するだろうから、少し時間がかかる」
それでも一週間はかからないだろうという梓玥の言葉を信じることにした。
それより今は、甘えかかってくる大きな竜をどう甘やかすかを考えたほうがいいか。ひとまず頭を撫でた。
「あ。あと動画のほうは……? それに、オレに関わるって、何だ?」
「蓋を開けたらそちらのほうが面倒だった。……私のことで瀧たちを巻き込んだのは申し訳ない」
「いいよ。そもそもはオレたちも梓玥をトラブルに巻き込んだし……」
「だが、そのお陰で出会えた。……見つけられた」
何が幸いするかわからないというのはこのことか。あの出会いがなければ、瀧の人生も大きく変わることはなかった。その意味では運命的な出会い――再会と言えるか。
梓玥はいつも氷のような青の瞳で、瀧を真っ直ぐ見つめる。見つめられるのは照れるし最初のうちは居心地の悪さも感じたが、イヤと思ったことはない。
膝の上で抱きしめられるのは慣れないが。
「オレにできることはある?」
「瀧のことが関わると言ったが、より正確に言えば、関わっているのは瀧耀のことだ」
「……狐のオレ」
「犯人の目星はついているが、白日の下に晒すにはもうひとつ決め手が欲しい。……一度、瀧の監視の目を誤魔化すのを止めて、狐の姿になってもらう」
狐。九尾の姿。
監視をずっと付けられていた理由だ。ヒトであるうちは問題ないと思われていたのだろうが、正体を晒すことで何が起こるのだろう。
「それだけでいいの?」
「万が一もないようにする」
多少は危険が伴うということだろうか。だが梓玥がいるなら、不安はないように思う。
(監視してるだけ……じゃ、なかったんだろうしなあ)
瀧の中の九尾を警戒していたということは、何かあった時には介入してくるつもりがあるのだろう。どういう介入の仕方をしてくるのか、瀧にどういう影響があるのかまではわからないが、いい影響ではないだろうことは、予想に難くない。
梓玥の表情にどこか影があるのも、そのあたりが影響しているのだろうか。
「梓玥のことは信用してる」
「……うん」
抱きしめてくる腕の力が強くなる。
「あ。……プールの時、オレが狐になったのは、皆覚えてないんだっけ?」
「ああ。あの時は記憶を操作させてもらった」
「そっか。……驚かせるだろうなぁ」
一番リアクションが大きいのは西山だろうか。嶋田は大きな目をさらにまん丸にするだろうか。真岡はどう驚くだろう。
「……嫌なら、また記憶を操作する」
「ん? んー……大丈夫。言いふらしたりするような人たちじゃないし。面白がるのはあるかもだけど」
何しろ『オカルト研究同好会』だ。質問責めにすることはありえても、瀧を遠ざけるような真似をすることはないだろう。
「それから、オレのこともだけど、皆の安全も確保できる?」
「もちろん」
「じゃあ安心だ」
それでも表情が晴れないでいる梓玥の頬を、手のひらで優しく撫でる。
「これもひとつのトラブルって思えば、オレたちはトラブル体質なんだし、あまり気に病まないで」
「……それは」
否定しづらい、と呟く梓玥の頬を軽く摘まんだ。
「嘘でも『そんなことはない』っていうところだろ!」
「……嘘はつけない」
「まったく……」
仕方ないなあと苦笑しつつ、融通が利かない梓玥の頭を撫でて抱きしめてやった。
+++++
家に帰り、結局好奇心に負けて聞いてしまった。
梓玥は温かい茶を淹れてくれると、マグカップを受け取った瀧を膝に抱く。
(……なんか、家では慣れてきたな……慣れていいのかわかんないけど……)
落ち着くと思い始めたら負けなんだろうなぁと思いつつ、茶を啜る。
「瀧たちは、真岡の家のことをどれくらい知っている?」
思いがけない問いに「へ?」と間抜けた声が漏れた。
「ええと……土御門系の陰陽師が親戚にいるっていう話は聞いたことがあるかな。あと上の兄貴が優秀で、何かと比較されてイヤだったっていうのは聞いたことがある」
「……水落鬼のほうは、そのことが少し関係している。それから、私と瀧自身のことも」
「えっ?!」
「真岡も色々確認するだろうから、少し時間がかかる」
それでも一週間はかからないだろうという梓玥の言葉を信じることにした。
それより今は、甘えかかってくる大きな竜をどう甘やかすかを考えたほうがいいか。ひとまず頭を撫でた。
「あ。あと動画のほうは……? それに、オレに関わるって、何だ?」
「蓋を開けたらそちらのほうが面倒だった。……私のことで瀧たちを巻き込んだのは申し訳ない」
「いいよ。そもそもはオレたちも梓玥をトラブルに巻き込んだし……」
「だが、そのお陰で出会えた。……見つけられた」
何が幸いするかわからないというのはこのことか。あの出会いがなければ、瀧の人生も大きく変わることはなかった。その意味では運命的な出会い――再会と言えるか。
梓玥はいつも氷のような青の瞳で、瀧を真っ直ぐ見つめる。見つめられるのは照れるし最初のうちは居心地の悪さも感じたが、イヤと思ったことはない。
膝の上で抱きしめられるのは慣れないが。
「オレにできることはある?」
「瀧のことが関わると言ったが、より正確に言えば、関わっているのは瀧耀のことだ」
「……狐のオレ」
「犯人の目星はついているが、白日の下に晒すにはもうひとつ決め手が欲しい。……一度、瀧の監視の目を誤魔化すのを止めて、狐の姿になってもらう」
狐。九尾の姿。
監視をずっと付けられていた理由だ。ヒトであるうちは問題ないと思われていたのだろうが、正体を晒すことで何が起こるのだろう。
「それだけでいいの?」
「万が一もないようにする」
多少は危険が伴うということだろうか。だが梓玥がいるなら、不安はないように思う。
(監視してるだけ……じゃ、なかったんだろうしなあ)
瀧の中の九尾を警戒していたということは、何かあった時には介入してくるつもりがあるのだろう。どういう介入の仕方をしてくるのか、瀧にどういう影響があるのかまではわからないが、いい影響ではないだろうことは、予想に難くない。
梓玥の表情にどこか影があるのも、そのあたりが影響しているのだろうか。
「梓玥のことは信用してる」
「……うん」
抱きしめてくる腕の力が強くなる。
「あ。……プールの時、オレが狐になったのは、皆覚えてないんだっけ?」
「ああ。あの時は記憶を操作させてもらった」
「そっか。……驚かせるだろうなぁ」
一番リアクションが大きいのは西山だろうか。嶋田は大きな目をさらにまん丸にするだろうか。真岡はどう驚くだろう。
「……嫌なら、また記憶を操作する」
「ん? んー……大丈夫。言いふらしたりするような人たちじゃないし。面白がるのはあるかもだけど」
何しろ『オカルト研究同好会』だ。質問責めにすることはありえても、瀧を遠ざけるような真似をすることはないだろう。
「それから、オレのこともだけど、皆の安全も確保できる?」
「もちろん」
「じゃあ安心だ」
それでも表情が晴れないでいる梓玥の頬を、手のひらで優しく撫でる。
「これもひとつのトラブルって思えば、オレたちはトラブル体質なんだし、あまり気に病まないで」
「……それは」
否定しづらい、と呟く梓玥の頬を軽く摘まんだ。
「嘘でも『そんなことはない』っていうところだろ!」
「……嘘はつけない」
「まったく……」
仕方ないなあと苦笑しつつ、融通が利かない梓玥の頭を撫でて抱きしめてやった。
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