【完結】狐と竜の怪異専門探偵事務所~千年前に構った竜の子に現世で再会、溺愛執着されています~

オジカヅキ・オボロ

文字の大きさ
63 / 68

62 現在のふたり(本編完結)

しおりを挟む
   *******




「懐かしい」
「だよね、オレも懐かしい。あの後は関西のほうの山に行って散々だったな……」
「無事でよかった」
「梓玥と、栢葯さんと静峨さんのお陰だよ」
「…………」

 ソファの三人掛けに座っていたが、梓月に抱き上げられるとひとり掛けのほうへ梓玥が座り、その膝に座らされた。
 何年か経ったせいか、すっかりこの状態にも慣れてしまった。おそらく天界の者たちが見たら卒倒しかねないはずだ。今は誰もいないので誰に気兼ねすることもないのだが。
 ちらりと梓玥の顔を見下ろす。あの頃と少しも変わらない、玉より滑らかで艶やかな肌、くちびる、氷のような薄青の双眸、絹より滑らかな長い髪。ずっと見ていられるほど美術品より美しい彼は、他の者が見れば無表情なのだろうが、瀧の目にはそうではない。

「……なんで不機嫌になってるんだ」

 くすくすと笑いながら頬をつつく。目線がこちらを向いた。

「全部、梓玥のお陰だよ」

 いい子、と笑って頭を撫でる。撫でられている梓玥は満足そうだ。――傍目からは無表情だが。

(こういうところ、かわいいんだよなあ)

 卒業して三年が経つが、その間に狐の瀧耀としてもヒトの瀧としても梓玥に慣れてきた。呼び捨てもできて、少しは以前の、狐の時のように梓玥をからかう余裕もできるくらいに。

(何から何まで世話になってるけど、梓玥が気にしたところないんだよなあ)

 小さな竜だった頃の彼が言っていた、「娶りたい」「お嫁さんになってほしい」という言葉の延長なのだろうか。

「ん……あ、こら」

 シャツの裾から侵入した手をぺしりと叩く。けれど手の動きは止まらない。

「悪戯してる場合じゃ……」

 頭を大きな手で引き寄せられ、口付けされる。くちびるが二度三度と触れてくるのは戯れのようで、少しこそばゆい。
 けれどそんなことを思っていられたのもわずかの間。舌が口の中へ差し込まれると、彼の好きなように蹂躙されてしまう。

(……頭、溶けそ……)

 丁寧と言えば聞こえはいいが、執拗に口中を弄られ、舌を絡められれば顎が痺れてくる。
 ようやく口が解放された頃には、シャツはすっかりはだけられていた。梓玥の手のひらは肌を舐めるように這う。その手を掴んだ。

「……ダメだから」
「…………」
「不満そうにしてもダメ。仕事なのに、よれよれで出るわけにいかないだろ」

 まして、今日会うのは学生時代の先輩だ。ちゃんとしているところを見せないと、彼も不安になるだろう。
 瀧の言葉が正論だとわかっているだろうが、瀧以外の者にはわからない程度には、梓玥は明らかに不満そうにしている。

「……触りたい」
「今じゃなくてもいいだろ?」
「今触りたい」
「……駄々っ子みたいだな……小さい頃のほうが聞き分けが良かったな?」
「…………」
「よしよし、聞き分けのいい良い子は好きだよ」

 その良い子はものすごく不服そうな顔をしているが、こればかりは許容してやることはできない。何しろ仕事なのだから。
 ギュッと抱きしめて背中をぽんぽんと撫でてやると、少しは落ち着いたらしい。——抱きしめ返してくれる腕の力が少しばかり強いのは、大目に見ておく。

「……ゆっくりしすぎたかな」

 呟いて腕時計を見れば十一時。

「そろそろ依頼人がやってくるか。梓玥、お茶か何か淹れるからちょっと下ろして」
「…………うん」

 うん、と言いながらも離してくれる気配がない。

(時々子どもっぽいんだよな……)

 かわいいが、甘やかしてばかりではいけない。

「久々に西山さんが来るんだから、少しはちゃんとしないと。多分お昼も一緒に食べるけど……」
「予約はしてある」
「さすが。ありがと」

 額に軽く口付ければ、梓玥の気持ちは浮上したようだ。渋々そうではあるが、腕を放して解放してくれる。

「暑くなってきたから、冷たいのがいいよな……アイスコーヒーでいいか……」

 冷蔵庫から冷やしていた自家製コーヒーのボトルを取り出すと、グラスへ注ぐ。氷もコーヒーで作ってあるので、味が薄まることはない。

 十一時十分。

 そろそろ、と思ったところにドアが開いた。

「いらっしゃいませお客様。怪異や妖魔鬼怪でお困りでしたら怪異専門探偵社狐塚が誠心誠意をこめて解決いたします」

 反射的に出た口上に、依頼人であるかつての先輩は「頼むよ」と疲れた笑みで手を振った。










   ********



本編完結です。
この後、番外編をいくつか更新予定です。(R18はそちらに…)
♡連打とか投票とかして頂けると嬉しいです!!!よろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

処理中です...