【完結】狐と竜の怪異専門探偵事務所~千年前に構った竜の子に現世で再会、溺愛執着されています~

オジカヅキ・オボロ

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62 現在のふたり(本編完結)

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「懐かしい」
「だよね、オレも懐かしい。あの後は関西のほうの山に行って散々だったな……」
「無事でよかった」
「梓玥と、栢葯さんと静峨さんのお陰だよ」
「…………」

 ソファの三人掛けに座っていたが、梓月に抱き上げられるとひとり掛けのほうへ梓玥が座り、その膝に座らされた。
 何年か経ったせいか、すっかりこの状態にも慣れてしまった。おそらく天界の者たちが見たら卒倒しかねないはずだ。今は誰もいないので誰に気兼ねすることもないのだが。
 ちらりと梓玥の顔を見下ろす。あの頃と少しも変わらない、玉より滑らかで艶やかな肌、くちびる、氷のような薄青の双眸、絹より滑らかな長い髪。ずっと見ていられるほど美術品より美しい彼は、他の者が見れば無表情なのだろうが、瀧の目にはそうではない。

「……なんで不機嫌になってるんだ」

 くすくすと笑いながら頬をつつく。目線がこちらを向いた。

「全部、梓玥のお陰だよ」

 いい子、と笑って頭を撫でる。撫でられている梓玥は満足そうだ。――傍目からは無表情だが。

(こういうところ、かわいいんだよなあ)

 卒業して三年が経つが、その間に狐の瀧耀としてもヒトの瀧としても梓玥に慣れてきた。呼び捨てもできて、少しは以前の、狐の時のように梓玥をからかう余裕もできるくらいに。

(何から何まで世話になってるけど、梓玥が気にしたところないんだよなあ)

 小さな竜だった頃の彼が言っていた、「娶りたい」「お嫁さんになってほしい」という言葉の延長なのだろうか。

「ん……あ、こら」

 シャツの裾から侵入した手をぺしりと叩く。けれど手の動きは止まらない。

「悪戯してる場合じゃ……」

 頭を大きな手で引き寄せられ、口付けされる。くちびるが二度三度と触れてくるのは戯れのようで、少しこそばゆい。
 けれどそんなことを思っていられたのもわずかの間。舌が口の中へ差し込まれると、彼の好きなように蹂躙されてしまう。

(……頭、溶けそ……)

 丁寧と言えば聞こえはいいが、執拗に口中を弄られ、舌を絡められれば顎が痺れてくる。
 ようやく口が解放された頃には、シャツはすっかりはだけられていた。梓玥の手のひらは肌を舐めるように這う。その手を掴んだ。

「……ダメだから」
「…………」
「不満そうにしてもダメ。仕事なのに、よれよれで出るわけにいかないだろ」

 まして、今日会うのは学生時代の先輩だ。ちゃんとしているところを見せないと、彼も不安になるだろう。
 瀧の言葉が正論だとわかっているだろうが、瀧以外の者にはわからない程度には、梓玥は明らかに不満そうにしている。

「……触りたい」
「今じゃなくてもいいだろ?」
「今触りたい」
「……駄々っ子みたいだな……小さい頃のほうが聞き分けが良かったな?」
「…………」
「よしよし、聞き分けのいい良い子は好きだよ」

 その良い子はものすごく不服そうな顔をしているが、こればかりは許容してやることはできない。何しろ仕事なのだから。
 ギュッと抱きしめて背中をぽんぽんと撫でてやると、少しは落ち着いたらしい。——抱きしめ返してくれる腕の力が少しばかり強いのは、大目に見ておく。

「……ゆっくりしすぎたかな」

 呟いて腕時計を見れば十一時。

「そろそろ依頼人がやってくるか。梓玥、お茶か何か淹れるからちょっと下ろして」
「…………うん」

 うん、と言いながらも離してくれる気配がない。

(時々子どもっぽいんだよな……)

 かわいいが、甘やかしてばかりではいけない。

「久々に西山さんが来るんだから、少しはちゃんとしないと。多分お昼も一緒に食べるけど……」
「予約はしてある」
「さすが。ありがと」

 額に軽く口付ければ、梓玥の気持ちは浮上したようだ。渋々そうではあるが、腕を放して解放してくれる。

「暑くなってきたから、冷たいのがいいよな……アイスコーヒーでいいか……」

 冷蔵庫から冷やしていた自家製コーヒーのボトルを取り出すと、グラスへ注ぐ。氷もコーヒーで作ってあるので、味が薄まることはない。

 十一時十分。

 そろそろ、と思ったところにドアが開いた。

「いらっしゃいませお客様。怪異や妖魔鬼怪でお困りでしたら怪異専門探偵社狐塚が誠心誠意をこめて解決いたします」

 反射的に出た口上に、依頼人であるかつての先輩は「頼むよ」と疲れた笑みで手を振った。










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本編完結です。
この後、番外編をいくつか更新予定です。(R18はそちらに…)
♡連打とか投票とかして頂けると嬉しいです!!!よろしくお願いいたします。
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