遅れた救世主【聖女版】

ヘロー天気

文字の大きさ
11 / 106
かつやくの章

第十話:アガーシャ騎士団



 聖女コノハの『アガーシャ騎士団による先行突入参加』が決まり、お供の神官二人も退出した中央大テント内にて。カーグマン将軍に参謀が小声で訊ねる。

「よろしいのですか?」
「まあ、後々面倒も減っていいだろう」

 カーグマン将軍は肩を竦めると、鼻を鳴らしてそう答えた。
 流石に『救世主』という触れ込みの『聖女』を死なせたとなると、神殿からの抗議や民衆からの批難は免れまいが、その大事な聖女様を最前線に寄越したのは神殿の判断。
 先行突入に参加したのは聖女本人の判断だと訴えれば鎮静化は図れる。証人に神官や護衛の騎士もいるので、たいした問題ではない。カーグマン将軍はそう切り捨てる。

「本当に異世界から召喚されて来たのかは知らないが、聖女扇動者の代役なぞ他にいくらでも立てられるだろう」
「なるほど、流石は将軍。深慮と慧眼には敬服致します」


 将軍が参謀の賛美に気分を直している頃。クレアデスの騎士達が居るアガーシャ騎士団の野営陣を訪れた呼葉は、騎士団長に先行突入への参加を告げて挨拶していた。

「こんにちは。明日の作戦について打ち合わせしたいのですが」

 どことなく悲壮感を漂わせていた騎士達は、呼葉の言葉にポカンとした表情を浮かべていたが、やがて団長らしき壮年の男性騎士が立ち上がって応えた。

「私はアガーシャ騎士団長を任されているクレイウッドだ。貴女は……聖女様という事だが?」
「聖女の呼葉です。明日の突入では皆さんを祝福するので、頑張って街を奪還しましょうね」

 よろしくと自己紹介した呼葉に、騎士達はざわめく。魔族軍を相手に共闘の姿勢を取り、援軍も送り込んでくれたオーヴィスだが、ここまでしてくれるとは思っていなかった。
 彼等は、自分達が捨て石にされる事も覚悟していた。それが、救世主と謳われる聖女を突入に参加させるというのだ。

「あ、参加するのは私が言い出した事だから。あまりオーヴィスを信用し過ぎないでね」

 感激に打ち震えそうになっているクレアデスの騎士達に、一言、忠告して冷静にさせる。援軍兵団のカーグマン将軍は、クレイウッド達が覚悟していた通り、彼等を使い捨てにするつもりだったのだから。


 その後、呼葉の先行突入部隊への編入手続きを終えて報告に来たアレクトールとザナム、護衛の聖都騎士を交え、クレイウッド達と明日の突入と奪還作戦の打ち合わせを行った。

 ちなみに、呼葉は援軍兵団を戦力の勘定に入れていない。自身聖女の力と、アガーシャ騎士団のみでパルマムの街を奪還するつもりであった。

「多分、途中で参戦して来ると思うけど、私達でやれるだけの事をしましょう」
「わ、分かりました。聖女様のお心遣いには、我がアガーシャ騎士団一同、全身全霊をもって応えましょう」

 クレイウッド団長の言葉に、騎士達も力強く頷く。
 呼葉が訪ねて来た時は悲壮感さえ漂っていたアガーシャ騎士団は今、大いに士気を高めており、明日の突入に向けて闘志を燃やしていた。


 アレクトールとザナムは、これも聖女コノハの力なのだろうかと、傍らで大きな宝杖を持って立つ、小さな少女を見やるのだった。

感想 16

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。