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好きな相手と結婚しているのに、けしてその想いは叶わない。そしてその想い人は女装した自分に想いを寄せているという自分でも何言ってるのかわからない状態だった。
こんなことだったら女装して彼に近づくんじゃなかった。そうしたら少なくともこんな辛い想いせずに済んだのに。
「はぁ…何をやっているんだ私は…」
私は頭を抱えていた。その時、コンコンとドアのノック音がした。開けると使用人が立っていた。
どうやらロバートくんの兄がお見えになっていると伝えられた。
ロバートくんは留守にしているのもあり、とりあえず客を待たせる訳にもいかないので挨拶も含めて私は客が待っている客間に向かった。
中に入ると椅子に座っていたロバートくんの兄が私に気付き、立って頭を下げた。
「お久しぶりですアルロ様、すいません突然訪問してしまって。」
「いえいえ、どうぞ腰を下ろしてください。」
失礼しますと彼はは腰を下ろした。彼は数年前に父親から爵位を受け継いた為、今は彼がブレア男爵の当主だ。
ブレア男爵はロバートくんより7歳年上でありロバートくんと同じ髪色と瞳をしているが、随分とふくよかな方だ。7年前はスラっとした体型だった気がするが。
「あー、えっとその、アルロ様。最近ロバートはどんな感じでしょうか?」
ロバートくんの名が出て一緒身体がビクッとなる。
「…変わらず、ですよ。仕事も真面目にこなしているみたいですし。」
仕事サボってアデリーナ《女装した自分》と遊びに行っていたことは黙っていよう。
「そ、そうですか…あはは…」
ブレア男爵は眉を顰めて渇いた笑いをして、目を泳がしていた。
「……あ、あのですねアルロ様、その、最近ロバートがその、アルロ様の顔に泥を塗るようなことをしたと聞きまして…」
「泥?別に私は泥は塗られていませんが。」
「いえそうではなく!ただそのぉ、アルロ様が知らないのならそれで良いのですが…ロバートの奴がアルロ様に対してご迷惑おかけしていないが心配で…」
ブレア男爵は顔を伏せでいた。よく見たら汗をかいているようだった。
なんとなく察しした。ロバートくんが最近問題を起こしたようで、それで私が彼を見切るんじゃないかと焦っているのだろう。
こう言ってはアレだが、ブレア家は我オーバートリー家から支援をもらっている状態だ。もし私が怒って縁を切ったら支援がもらえなくなってしまう。
「………」
本当に、ロバートくんは可哀想な立場に居る。自由を奪われて嫌いな奴と同じ空間にいないといけない。
これから先もきっと彼は結婚という名の牢獄に囚われ続けるのだろう。それはきっと私が死ぬまで。
けど、実はブレア家は現ブレア男爵の頑張りのおかげでだいぶ良くなったと聞く。もう我が家からの支援は必要ない程に。
「…ブレア男爵、安心してください。彼は何もしていませんよ。彼はとても素晴らしい人です。だから…どうか何があっても彼を支えてあげてください。きっともう、私の力がなくともブレア家は大丈夫でしょうから。」
「えっ、それって…」
ブレア男爵が何か言いかけていたタイミングにノック音と共にドアが開いた。
「失礼します、兄上がいらっしゃっていると…」
ロバートくんだった。
「あぁ、ブレア男爵と少しだけ世間話をさせてもらっていたよ。では後は兄弟水入らずで、私はここで失礼させていただきますね。」
「え、あ、!は、はい!」
客間から出て私は自分の部屋に入りドアを閉めた。そしてドアに身体を預けるように寄りかかった。
決めた。私はロバートくんと離婚しよう。
こんなことだったら女装して彼に近づくんじゃなかった。そうしたら少なくともこんな辛い想いせずに済んだのに。
「はぁ…何をやっているんだ私は…」
私は頭を抱えていた。その時、コンコンとドアのノック音がした。開けると使用人が立っていた。
どうやらロバートくんの兄がお見えになっていると伝えられた。
ロバートくんは留守にしているのもあり、とりあえず客を待たせる訳にもいかないので挨拶も含めて私は客が待っている客間に向かった。
中に入ると椅子に座っていたロバートくんの兄が私に気付き、立って頭を下げた。
「お久しぶりですアルロ様、すいません突然訪問してしまって。」
「いえいえ、どうぞ腰を下ろしてください。」
失礼しますと彼はは腰を下ろした。彼は数年前に父親から爵位を受け継いた為、今は彼がブレア男爵の当主だ。
ブレア男爵はロバートくんより7歳年上でありロバートくんと同じ髪色と瞳をしているが、随分とふくよかな方だ。7年前はスラっとした体型だった気がするが。
「あー、えっとその、アルロ様。最近ロバートはどんな感じでしょうか?」
ロバートくんの名が出て一緒身体がビクッとなる。
「…変わらず、ですよ。仕事も真面目にこなしているみたいですし。」
仕事サボってアデリーナ《女装した自分》と遊びに行っていたことは黙っていよう。
「そ、そうですか…あはは…」
ブレア男爵は眉を顰めて渇いた笑いをして、目を泳がしていた。
「……あ、あのですねアルロ様、その、最近ロバートがその、アルロ様の顔に泥を塗るようなことをしたと聞きまして…」
「泥?別に私は泥は塗られていませんが。」
「いえそうではなく!ただそのぉ、アルロ様が知らないのならそれで良いのですが…ロバートの奴がアルロ様に対してご迷惑おかけしていないが心配で…」
ブレア男爵は顔を伏せでいた。よく見たら汗をかいているようだった。
なんとなく察しした。ロバートくんが最近問題を起こしたようで、それで私が彼を見切るんじゃないかと焦っているのだろう。
こう言ってはアレだが、ブレア家は我オーバートリー家から支援をもらっている状態だ。もし私が怒って縁を切ったら支援がもらえなくなってしまう。
「………」
本当に、ロバートくんは可哀想な立場に居る。自由を奪われて嫌いな奴と同じ空間にいないといけない。
これから先もきっと彼は結婚という名の牢獄に囚われ続けるのだろう。それはきっと私が死ぬまで。
けど、実はブレア家は現ブレア男爵の頑張りのおかげでだいぶ良くなったと聞く。もう我が家からの支援は必要ない程に。
「…ブレア男爵、安心してください。彼は何もしていませんよ。彼はとても素晴らしい人です。だから…どうか何があっても彼を支えてあげてください。きっともう、私の力がなくともブレア家は大丈夫でしょうから。」
「えっ、それって…」
ブレア男爵が何か言いかけていたタイミングにノック音と共にドアが開いた。
「失礼します、兄上がいらっしゃっていると…」
ロバートくんだった。
「あぁ、ブレア男爵と少しだけ世間話をさせてもらっていたよ。では後は兄弟水入らずで、私はここで失礼させていただきますね。」
「え、あ、!は、はい!」
客間から出て私は自分の部屋に入りドアを閉めた。そしてドアに身体を預けるように寄りかかった。
決めた。私はロバートくんと離婚しよう。
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