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貴族同士の離婚は夫婦だけの問題ではない。けど私は自分勝手な理由で離婚させてもらう。元々男同士の政略結婚だ。周囲も薄々私達の関係に気づいているのだろう。
だからまずはアデリーナとして彼に会うのはやめることにした。元々仲良くなる為に女装して彼を探るつもりだったからだ。離婚してしまえば仲良くなる必要はない。
本当は、手紙でもう会えないと伝えようとした。けど、最後に彼が笑っているところがみたい、そんな欲が勝ってしまった。
なので私はロバートくんを待ち伏せした。そして仕事が終わったタイミングで彼に声をかけてた。
「ロバートくん。」
「あrッ、デリーナ!?待っていてくださったのですか!?」
突然押しかけたにも関わらず彼はどこか嬉しそうに笑みを浮かべた。あぁ、彼は本当にアデリーナのことが好きなんだと実感する。
「…実は、別れを言いにきたの…」
「え!?!どうして!お、俺何かしてしまったのでしょうか!?」
彼は慌てて私の肩を掴んだ。そしてエメラルドグリーンの瞳は揺れていた。
「違うんだよ、ただ、遠くまで行くことになって、手紙も届かない場所に。」
「……もう、俺とは一緒に居たくないってことですか。せっかく仲良くなれたと思ったのに…」
ロバートくんの瞳は涙を浮かべていた。
「ごめん、本当にごめんね!!」
私は自分の方に置かれた手を手に取って、ギュッと握りしめた。そして手を離し、ロバートくんを背にして私は走り去ってしまった。
「ーーー!!」
きっと、アデリーナの名を呼んでいるのだろう。彼の悲痛な叫びが聞こえた気がした。
ーーーーー
その日の夜、私は自分の部屋にロバートくんを呼び出した。彼に離婚を突きつける為にだ。
果たしてこれは彼にとって良い報告になるのだろうか、それとも悲しい報告になるだろうか。もしそうなら立て続けに彼に悲しい思いをさせてしまっていて申し訳なくなる。
けど、これはロバートくんの為だ。ロバートくんが好きだからこそ、これ以上嫌な思いをさせたくないのだ。
彼はきっと、私と別れた後は素敵な女性と結ばれることが出来る。もしかしたらオーバートリー家より更に良家と関係を持つことが出来るだろう。
本当は嫌だけど、けどロバートくんが幸せになってほしい気持ちの方が強い。
「失礼します、アルロ様。」
するとロバートくんが入ってきた。相変わらず無愛想だ。まぁ、突然好きな人と会えないと言われてそのショックも含まれているだろうけども。
「ごめんね、急に呼び出したりして。実は大事な話があって…」
大事な話があると言った瞬間、ロバートくんは身震いした。何となく察ししたのだろうか。
「……大事な話、とは…」
「…それは、ね…………」
私と離婚しよう。そう言いたいのに中々切り出せなかった。
まだ、まだ私は無様にも未練があるようだ。
「それ、は……」
早く、早く言うんだ。言って早くロバートくんを自由にしてあげないと。
「……………実は……気づいていたんだ。君が私に向けていた感情を…」
「!?!い、いつから…?」
「初めて会った時からだよ。私の見るその綺麗な目でわかっていたよ。」
私のことが嫌いだって。
「そんな…」
ロバートくんは口に手を当てて動揺していた。アレでも隠していたつもりだったのだろうか。
「俺の、気持ちがわかっていながら、誘っていたのですか…!?」
誘っていた?あぁ、おそらく一緒に寝た時のことか。やっぱり嫌だったんだ。
「うん、ごめん…」
「いくらなんでも…手を出されるとは思わなかったんですか?」
手を出すって、そこまで嫌われていたのか私は!!??いや、むしろ今まで叩かれたりしなかっただけ彼は我慢していたのかもしれない。
なら、最後ぐらい1発殴られても良いかもしれない。
「君は優しいからね、手を出すとは思わなかったよ。けど、ロバートくんがしたいなら手を出しても構わないよ。」
「な、あ、あんた何を言い出すんだ!?!」
「立場を気にしているなら構わない!誰にも言うつもりはない。君の名誉は守る!だから君が気が済むまで…いくらでも…」
殴られたことはないし正直怖いがロバートくんの気が済むならそれで良かった。
「……い、良いんですか、本当に…」
「あぁ、もちろん。」
「………わかりました。後で文句言わないでくださいね。」
私は目を瞑った。少しでも痛みを緩める為に。
あ、殴られた後に離婚伝えるのって、それって暴力振るわれたから離婚したいってことにならないか?それは流石にまずい気がする。
「あ、待ってロバートく、」
とりあえず一旦離婚を切り出してからにしてもらおうとして目を開けた瞬間、ロバートくんの顔を間近にあり、頬に手を添えられ、そしてそのまま彼の唇が私の唇と重なった。
だからまずはアデリーナとして彼に会うのはやめることにした。元々仲良くなる為に女装して彼を探るつもりだったからだ。離婚してしまえば仲良くなる必要はない。
本当は、手紙でもう会えないと伝えようとした。けど、最後に彼が笑っているところがみたい、そんな欲が勝ってしまった。
なので私はロバートくんを待ち伏せした。そして仕事が終わったタイミングで彼に声をかけてた。
「ロバートくん。」
「あrッ、デリーナ!?待っていてくださったのですか!?」
突然押しかけたにも関わらず彼はどこか嬉しそうに笑みを浮かべた。あぁ、彼は本当にアデリーナのことが好きなんだと実感する。
「…実は、別れを言いにきたの…」
「え!?!どうして!お、俺何かしてしまったのでしょうか!?」
彼は慌てて私の肩を掴んだ。そしてエメラルドグリーンの瞳は揺れていた。
「違うんだよ、ただ、遠くまで行くことになって、手紙も届かない場所に。」
「……もう、俺とは一緒に居たくないってことですか。せっかく仲良くなれたと思ったのに…」
ロバートくんの瞳は涙を浮かべていた。
「ごめん、本当にごめんね!!」
私は自分の方に置かれた手を手に取って、ギュッと握りしめた。そして手を離し、ロバートくんを背にして私は走り去ってしまった。
「ーーー!!」
きっと、アデリーナの名を呼んでいるのだろう。彼の悲痛な叫びが聞こえた気がした。
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その日の夜、私は自分の部屋にロバートくんを呼び出した。彼に離婚を突きつける為にだ。
果たしてこれは彼にとって良い報告になるのだろうか、それとも悲しい報告になるだろうか。もしそうなら立て続けに彼に悲しい思いをさせてしまっていて申し訳なくなる。
けど、これはロバートくんの為だ。ロバートくんが好きだからこそ、これ以上嫌な思いをさせたくないのだ。
彼はきっと、私と別れた後は素敵な女性と結ばれることが出来る。もしかしたらオーバートリー家より更に良家と関係を持つことが出来るだろう。
本当は嫌だけど、けどロバートくんが幸せになってほしい気持ちの方が強い。
「失礼します、アルロ様。」
するとロバートくんが入ってきた。相変わらず無愛想だ。まぁ、突然好きな人と会えないと言われてそのショックも含まれているだろうけども。
「ごめんね、急に呼び出したりして。実は大事な話があって…」
大事な話があると言った瞬間、ロバートくんは身震いした。何となく察ししたのだろうか。
「……大事な話、とは…」
「…それは、ね…………」
私と離婚しよう。そう言いたいのに中々切り出せなかった。
まだ、まだ私は無様にも未練があるようだ。
「それ、は……」
早く、早く言うんだ。言って早くロバートくんを自由にしてあげないと。
「……………実は……気づいていたんだ。君が私に向けていた感情を…」
「!?!い、いつから…?」
「初めて会った時からだよ。私の見るその綺麗な目でわかっていたよ。」
私のことが嫌いだって。
「そんな…」
ロバートくんは口に手を当てて動揺していた。アレでも隠していたつもりだったのだろうか。
「俺の、気持ちがわかっていながら、誘っていたのですか…!?」
誘っていた?あぁ、おそらく一緒に寝た時のことか。やっぱり嫌だったんだ。
「うん、ごめん…」
「いくらなんでも…手を出されるとは思わなかったんですか?」
手を出すって、そこまで嫌われていたのか私は!!??いや、むしろ今まで叩かれたりしなかっただけ彼は我慢していたのかもしれない。
なら、最後ぐらい1発殴られても良いかもしれない。
「君は優しいからね、手を出すとは思わなかったよ。けど、ロバートくんがしたいなら手を出しても構わないよ。」
「な、あ、あんた何を言い出すんだ!?!」
「立場を気にしているなら構わない!誰にも言うつもりはない。君の名誉は守る!だから君が気が済むまで…いくらでも…」
殴られたことはないし正直怖いがロバートくんの気が済むならそれで良かった。
「……い、良いんですか、本当に…」
「あぁ、もちろん。」
「………わかりました。後で文句言わないでくださいね。」
私は目を瞑った。少しでも痛みを緩める為に。
あ、殴られた後に離婚伝えるのって、それって暴力振るわれたから離婚したいってことにならないか?それは流石にまずい気がする。
「あ、待ってロバートく、」
とりあえず一旦離婚を切り出してからにしてもらおうとして目を開けた瞬間、ロバートくんの顔を間近にあり、頬に手を添えられ、そしてそのまま彼の唇が私の唇と重なった。
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