護衛騎士をやめたら軟禁されました。

海野(サブ)

文字の大きさ
8 / 12

8

しおりを挟む
俺がアーロ様に想いを寄せていることに気づいたのは、今から2年前の時、アーロ様が18歳になった頃だ。
 この国は18歳で成人を迎える。見た目も中身もすっかり大人になったアーロ様を見て、当時の俺はまるで兄のような感覚で考え深かった。
 捻くれ者だった幼少期の頃の面影はなく、自分の美貌を利用するようになったからか、貴族らしく世渡りが上手になっていた。
 そうなると必然的に社交界やらで引っ張られる訳だ。当然俺も護衛として付いていくことになる。まぁパーティーとかは壁に張り付いてアーロ様を見守ることしか出来なかったのだが。
 あの日も社交界で招待されて、途中でアーロ様は外の風を当たりにバルコニーに出ていた。俺も出てアーロ様の側に駆け寄ろうとした時だった。

 ふわっとまだ冷たさを込めた風がアーロ様の白い髪を揺らしたのだ。
 それだけじゃない。満月の明かりに照らされて白い髪も青紫色の瞳も輝いて見えた。
 儚さを感じさせるその姿はまるで月光美人のようだった。
 
 その姿を見た時、俺は身体が動かなかった。まるで金縛りにあったかのようなそんな感覚を感じた。
 そして心臓だけは激しく動いていた。ドクンドクンとうるさいほどに。

 確かに今まで美しいとは思っていたが、綺麗な花を見るような感覚で、アーロ様が子供で守るべき対象だったのだ。
 けどもう違う。アーロ様は立派な大人になったのだ。
 
 それからは精神的に辛かったと思う。何回も言っているが相手は貴族で男なのだ。どう考えても結ばれることは不可能だ。そして何よりアーロ様はそういう愚か者は嫌っていたのだ。
 だから頭では理解するしてるつもりだった。諦めようとした。けど美しい令嬢がアーロ様に近づくだけで嫉妬してしまう。しまいにはアーロ様に抱かれる想像しながら自分を慰めるとこまで落ちてしまった。
 考えて考えて、出た結果が護衛騎士を辞めてアーロ様の側から離れることだった。

 けど、それが最悪な結果をもたらせてしまった。

 結局俺はどうすれば良かったのだろう

ーーーー

「それじゃあルドルフ、また来る。」

 ようやく解放されて俺はまるで干からびたカエルの様にビクビクと痙攣していた。
 そんなみっともない俺に、帰る支度を済ませたアーロ様は俺の額に唇を落とし、部屋から出て行った。
 
「う、アーロさまぁ…」

 シーンと部屋は静かでさっきまで与えられていた熱が冷めると途端にものすごく辛くて寂しくなる。
 ようやく痙攣が治り、俺はゆっくりと身体を起こした。

「ゔっ……腰が…」

 腰だけじゃない、あらゆる身体の場所に激痛が走る。あんなに激しくされたのだから痛みが出るのは当たり前だ。喉だってガラガラだ。
 なんとかテーブルの上に置かれたピッチャーを手に取りそのまま直接口に含み飲み干す。
 再び俺はベッドに横たわる。そして右足にはめられている枷を触る。

「これさえどうにか出来れば…」

 この地獄のような生活をずっと送るつもりはない。必ずここから逃げ出すつもりだ。
 …じゃないと、アーロ様はこの先俺に固執続ける。
 オルレアン家の跡継ぎがこんなことをしているとバレたら一巻のおしまいだ。あれから何度も必死に説得したがアーロ様は聞く耳持たずだった。
 アーロ様の為にも俺はここから逃げ出さなくてはいけない。
 本当は、アーロ様の為ではないのかもしれない。両思いなのに叶わない恋なのだ。なのにアーロ様は俺を抱く。彼に抱かれるたび俺の心が辛くなるのだ。
 結局、俺は自分のことしか考えてない。

 もしかしたら、これが俺の与えられた罰なのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

神父様に捧げるセレナーデ

石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」 「足を開くのですか?」 「股開かないと始められないだろうが」 「そ、そうですね、その通りです」 「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」 「…………」 ■俺様最強旅人×健気美人♂神父■

処理中です...