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しおりを挟む夢を見た。
俺はいつも通りアーロ様を探していた。花畑の中でアーロ様はしゃがみ込んでいた。
そのアーロ様は出会った頃の姿だった。
『アーロ様、こちらにいらっしゃったのですね。』
『……』
アーロ様は何も語らずただ花を摘んではそれを捨てる。
『さぁ、戻りましょう。』
『……嫌だ、戻りたくない…』
俺の方に顔を向けたアーロ様の青紫色の瞳には涙が浮かんでいた。
『だって、あの家は僕を苦しめるんだもん…誰も僕を守ってくれない…』
そう言ってアーロ様は泣き出してしまった。俺は思わずしゃがんでそのままハグをした。
『ならば俺がずっと貴方をお守りします。』
頭を撫でるとアーロ様は落ち着いてきたのかそのまま抱き返してきた。
ーーーーー
「…今の夢は…」
若い頃の俺と幼いアーロ様の夢を見た。実際夢のような出来事は起きていない。だって泣いているアーロ様を見たのは俺を犯したあの日だけなのだから。弱々しいアーロ様なんて見たことすらない。
ー僕はずっと、欲しいものを我慢してきた。ずっとずっと我慢してきた!だから一番欲しかったものぐらい手に入れたっていい筈だ!ー
アーロ様は泣いていた。今思え返せば、まるで欲しいものは全て手に入らないような言い方だった。
俺自身はともかく、アーロ様に手に入らないものなんて無いと思ってた。
オルレアン家は魔法石のおかげで貴族の中でも金は持っている。身分も申し分ないし、美しい顔を利用すれば麗しき令嬢だって落とすことは出来るだろう。
いや、よくよく考えたら、アーロ様は愛に飢えてるのかもしれない。
実は、アーロ様の母親はアーロ様を産んですぐに亡くなってしまった。そしてアーロ様の父親でありオルレアン家の子爵はその傷を埋めるかのように遊びまくっている。
金はあるし仕事は真面目にこなす、後妻を迎えずいつまでも亡くなった妻を思い続ける。けれどもその間の時間はアーロ様に費やすことはしなかった。
愛した妻を殺した恨みがあったかどうかはわからない。必要最低限しかアーロ様と接することはしなかった。その上自分の美貌で酷い目に遭ってきたのだ。
旦那様との関係はアーロ様が成長されてからは少しづつ関わるようになって改善し始めてきたから、すっかり忘れていた。
きっとアーロ様は愛に飢えているんだ。そして唯一心を開いてくれた俺に依存しているに違いない。
…だったら尚更ここから出なければ。
アーロ様はまだ若い。この先俺なんかよりずっと素敵な人と出会い、そして愛を育んでいけるだろう。
優秀な人だからきっと、みんなから愛されるはずだ。
「…アーロ様…」
でも、アーロ様自身はそれを望んでいるのだろうか。
アーロ様は俺の言葉を聞こうとしない。けれどもそれは、俺もそうではないのか?
俺は……
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