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前編
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「げほっ、はい…すいません…ありがとうございます…げほっ、では失礼します…」
次の日、俺は思いっきり風邪を引いた。
流石に飲食店だから無理して出勤する訳にもいかないから休む連絡を入れた。まぁ、先輩の顔を見たくなかったからある意味ラッキーだったのかもしれない。もしかしてそれで風邪引いたのかもしれない。
とはいえ久しぶりに風邪を引いた。ここ数年は体調管理には気をつけていたのだが引く時は引くらしい。だから風邪薬を買ってなかった。病院行くにしても薬局に行くとしても身体が怠すぎて動けない。
「にゃーん…」
クロが心配そうに俺の顔を見てきた。
「だ、大丈夫。ちょっと寝れば治るから。」
そうだ、寝る前にクロの餌の準備だけしておこう。流石に料理作る体力はないから今日はキャットフードでいいよな。
さっそく行動に移そうとした瞬間、予想外に身体が重くベッドの下に落ちてしまった。
「にゃ?!」
落ちた俺に慌てながら近づくクロ。
「ごめん…ご飯まっててくれ…」
あぁ、ダメだ。落ちた衝撃も相まって身体が怠くて動かせない。意識も朦朧としてきた。ちょっと寝れば回復するだろうか。俺はひとまずうつ伏せになって目を瞑った。
熱い、だるい、辛い。時間が経てば経つほど余計に悪化している気がする。こんな時、頼れる人が居ない。思い付くのは亡くなった祖母だけだ。
どうしてこんな辛い思いをしなければならないのだろうか。俺は誰にも迷惑をかけないように生活してるのに。
目付きが悪いからって、誰も中身を見てくれない…
熱で弱ってきたからなのか思考がネガティブになってきている。
「つらい…」
思わず涙が出てきてしまった。大の大人が実に情けない。
「……」
すると、明らかに自分の手ではない人の指先が涙を拭くように俺の頬に触れた。
一体何が起きたのか分からずゆっくりと瞼を開けた。
青と緑の瞳と目が合った。クロじゃない、人だ。けど頭には猫耳のようなものが付いている。
「…だ、だれ…?」
俺はこんな人は知らない。けれども前から知っているような、なんなら最近まで会っていたような感覚がある。
「……今はベッドに移動しよっか、シロウ。」
その甘い声を聞いてすぐに夢に出てくる男の影と同一人物だと気付いた。
幻覚を見ているのか?それともいつのまにか夢を見ているのか?わからない。
けどいつもは影としか見えていなかったが今ははっきり見える気がする。
さらさらした黒い髪に、黒い猫耳。白い肌に垂れ目の甘い顔をしており、左右違う瞳で妖艶な雰囲気を醸し出していた。
「自分で立ち上がれそう?」
一旦自分で立ち上がれるか膝を立てようとしたが、力が入らなかった。
「無理だ…」
「わかった、じゃあちょっと身体起こすよ。」
そう言って影はうつ伏せになっていた俺を仰向けにした後、脇に腕を通してきた。そしてそのまま勢いよくベッドに身体を乗せてくれた。
「よしおっけい、ふぅなんとかなった。」
影は腕で頭の汗を拭いた後、布団を掛けてきた。
「薬、家にないんでしょ?買ってくるよ。ついでに何か買ってくるね。」
「じゃあ…チョコアイスも…」
「オッケー、わかった♪」
ウインクをした後、そのまま影は買い出しに行ってしまった。起きるのも辛くなってきたから、俺はそのまま目を瞑った。
しばらくしてバタンと玄関のドアが開く音が聞こえた。帰ってきたのだろうか。
「買ってきたよー!とりあえず風邪薬と、後チョコアイスって言ってたけどどれがいいのか分からなかったから置いていたやつ全種類買ってきた♪」
「全種類…」
影が袋から出して来たのは、CMでよく流れている定番の風邪薬と沢山のチョコアイスだった。チョコならなんでも良かったのだがまさか全種類買ってくるとは。スーパーなカップって言えば良かっただろうか。全部冷凍庫に入るのか、それ以前にいくらかかったのか…
「じゃあさっそく薬飲もっか。起き上がれる?」
正直さっきよりも身体が熱く重く感じていた。自力で起き上がれそうになかったので俺は頭を横に振った。
「そっか、じゃあちょっと頭あげるね。」
影は俺の頭を手のひらに乗せて少し顔を上げた。
「口開けて、薬入れるから。」
俺は素直に口を開けた。影は錠剤を入れてきた。錠剤は俺の口の下に置かれ、少し苦かった。
「はい、ストロー差したからいける?」
いつのまにか用意していたストローを水が入ったペットボトルに刺して俺に突き出してきた。そのままストローを咥えて水を吸ってそのまま錠剤を流し込んだ。
「よしおっけい。じゃあこのまま寝てなよ。」
「あ、あぁ、そうする…」
ゆっくりと頭を下ろされた後、俺はそのまま目を瞑った。
不思議とさっきまで辛い感情があったけど、今はそれは無くなっていた。夢や幻覚なのかわからない俺にとって都合の良い妄想の具現化である影が居るからだろうか。いつのまにかそのまま寝落ちした。
次の日、俺は思いっきり風邪を引いた。
流石に飲食店だから無理して出勤する訳にもいかないから休む連絡を入れた。まぁ、先輩の顔を見たくなかったからある意味ラッキーだったのかもしれない。もしかしてそれで風邪引いたのかもしれない。
とはいえ久しぶりに風邪を引いた。ここ数年は体調管理には気をつけていたのだが引く時は引くらしい。だから風邪薬を買ってなかった。病院行くにしても薬局に行くとしても身体が怠すぎて動けない。
「にゃーん…」
クロが心配そうに俺の顔を見てきた。
「だ、大丈夫。ちょっと寝れば治るから。」
そうだ、寝る前にクロの餌の準備だけしておこう。流石に料理作る体力はないから今日はキャットフードでいいよな。
さっそく行動に移そうとした瞬間、予想外に身体が重くベッドの下に落ちてしまった。
「にゃ?!」
落ちた俺に慌てながら近づくクロ。
「ごめん…ご飯まっててくれ…」
あぁ、ダメだ。落ちた衝撃も相まって身体が怠くて動かせない。意識も朦朧としてきた。ちょっと寝れば回復するだろうか。俺はひとまずうつ伏せになって目を瞑った。
熱い、だるい、辛い。時間が経てば経つほど余計に悪化している気がする。こんな時、頼れる人が居ない。思い付くのは亡くなった祖母だけだ。
どうしてこんな辛い思いをしなければならないのだろうか。俺は誰にも迷惑をかけないように生活してるのに。
目付きが悪いからって、誰も中身を見てくれない…
熱で弱ってきたからなのか思考がネガティブになってきている。
「つらい…」
思わず涙が出てきてしまった。大の大人が実に情けない。
「……」
すると、明らかに自分の手ではない人の指先が涙を拭くように俺の頬に触れた。
一体何が起きたのか分からずゆっくりと瞼を開けた。
青と緑の瞳と目が合った。クロじゃない、人だ。けど頭には猫耳のようなものが付いている。
「…だ、だれ…?」
俺はこんな人は知らない。けれども前から知っているような、なんなら最近まで会っていたような感覚がある。
「……今はベッドに移動しよっか、シロウ。」
その甘い声を聞いてすぐに夢に出てくる男の影と同一人物だと気付いた。
幻覚を見ているのか?それともいつのまにか夢を見ているのか?わからない。
けどいつもは影としか見えていなかったが今ははっきり見える気がする。
さらさらした黒い髪に、黒い猫耳。白い肌に垂れ目の甘い顔をしており、左右違う瞳で妖艶な雰囲気を醸し出していた。
「自分で立ち上がれそう?」
一旦自分で立ち上がれるか膝を立てようとしたが、力が入らなかった。
「無理だ…」
「わかった、じゃあちょっと身体起こすよ。」
そう言って影はうつ伏せになっていた俺を仰向けにした後、脇に腕を通してきた。そしてそのまま勢いよくベッドに身体を乗せてくれた。
「よしおっけい、ふぅなんとかなった。」
影は腕で頭の汗を拭いた後、布団を掛けてきた。
「薬、家にないんでしょ?買ってくるよ。ついでに何か買ってくるね。」
「じゃあ…チョコアイスも…」
「オッケー、わかった♪」
ウインクをした後、そのまま影は買い出しに行ってしまった。起きるのも辛くなってきたから、俺はそのまま目を瞑った。
しばらくしてバタンと玄関のドアが開く音が聞こえた。帰ってきたのだろうか。
「買ってきたよー!とりあえず風邪薬と、後チョコアイスって言ってたけどどれがいいのか分からなかったから置いていたやつ全種類買ってきた♪」
「全種類…」
影が袋から出して来たのは、CMでよく流れている定番の風邪薬と沢山のチョコアイスだった。チョコならなんでも良かったのだがまさか全種類買ってくるとは。スーパーなカップって言えば良かっただろうか。全部冷凍庫に入るのか、それ以前にいくらかかったのか…
「じゃあさっそく薬飲もっか。起き上がれる?」
正直さっきよりも身体が熱く重く感じていた。自力で起き上がれそうになかったので俺は頭を横に振った。
「そっか、じゃあちょっと頭あげるね。」
影は俺の頭を手のひらに乗せて少し顔を上げた。
「口開けて、薬入れるから。」
俺は素直に口を開けた。影は錠剤を入れてきた。錠剤は俺の口の下に置かれ、少し苦かった。
「はい、ストロー差したからいける?」
いつのまにか用意していたストローを水が入ったペットボトルに刺して俺に突き出してきた。そのままストローを咥えて水を吸ってそのまま錠剤を流し込んだ。
「よしおっけい。じゃあこのまま寝てなよ。」
「あ、あぁ、そうする…」
ゆっくりと頭を下ろされた後、俺はそのまま目を瞑った。
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