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前編
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しおりを挟むそれから薬は飲んだものの、そこまで熱が下がらなかった。その間、影に色々看病してもらっていた。着替えや水分補給など。
いつのまにか影に頼りっきりになっていたが、影は俺の都合の良い妄想だから良いやと思っていた。風邪引いた時は変な夢を見ると言うが、俺はむしろ良い夢を見たと思う。まぁ変な夢なのは変わりないのだが。
そして数日が経ち、ようやく熱が下がり意識がはっきりしてきた。まだ多少頭の違和感はあるが、だいぶ回復してきた。俺はガバッと上半身を起こして右の方を見た。そこにはベッドにもたれる影が居た。
すぅすぅと寝息が聞こえてくる。ずっと俺の看病をしていたからか疲れたのだろう。
俺はぐっと身体を伸ばした。そしてもう一度影を見る。
「………いや、本当に誰だ?!!!」
俺は思いっきり叫んだ。
意識がはっきりしてきた今、改めて目の前にいる男が誰なのかわからない。しかも普通の男ではない、猫耳と尻尾が生えているのだ!
本当に俺の都合の良い妄想なのかこれは、それとも熱で頭がやられてしまったのか?どっちなのかわからない。
「うん……?」
すると影、猫耳の男は俺の叫びで目が覚めたのか、半目になりながら俺の方を向いた。俺はひぇっと情けない小さな悲鳴を上げて、かけてあった布団を盾にした。
「あー、風邪治った?」
猫耳の男は俺の顔を見て何か悟った後、ニコッと笑みを浮かべてベッドに座ってきた。
「お、お前は一体誰なんだ……?!」
「誰って、“クロ“だよ。」
まるで当たり前かのように猫耳の男はそう言った。
「は、はぁ?!クロは猫だぞ?!!そんなコスプレした変質者じゃ、ない…クロ…?!そういえばクロはどこにいる??!」
そういえばクロはどこにいる…?!さっきから姿どころか鳴き声さえ聞こえてこない。俺は辺りを見回した。
「ここに居るってば。」
猫耳の男は自分に指を指した。
「仮にクロって名前だとしてもお前ではない!!」
「しょーがないなぁ、じゃあこれでどう?」
その瞬間、ぽんっと効果音のような音が聞こえたと思いきや、目の前に現れたのは紛れもないクロだった。
「にゃん」
クロはかわいく鳴いた。
「は、え、ク、クロっ…」
今起きたことは現実なのか?動物が実は人間だったという展開は今まで数えきれないほど映画や小説という非現実でしか見たことがない。それとも俺はイカれてしまったのだろうか?俺は混乱し、頭を抱えた。
するとクロは再び人間の姿になる。正確には猫耳が生えた状態の。
「信じた?」
クロは猫耳をぴょこぴょこと動かし長い尻尾を揺らした。
まだ俺の頭がイカれてる説を推しているが、仮に本当ならばクロは普通ではないということになる。
「か、仮に信じるとして、お前は一体何なんだ?! というかその猫耳は本物なのか? ま、まさか化け猫…?!」
妖怪には詳しくないが、化け猫は人に化ける妖怪だったはずだ。
クロは化け猫なのか尋ねられた後、口元に指を当てて少し考え、間を開けた。そしてまたしてもニコッと笑みを浮かべたのだ。
「うん、僕化け猫♪ ちなみに耳は本物だよ? というかこの姿がデフォなんだよねー。」
触ってみる?と頭を寄せてきた。俺は本物の耳なのか付け耳なのか確認する為に、恐る恐る手を伸ばし猫耳を触った。
柔らかい質感、その感覚はずっと黒猫の時の姿のクロを撫でていた感覚と同じだった。
「……まじかよ…」
さすがにもう認めざるをえない。ずっと普通の黒猫だと思っていたクロが、実は化け猫だったということを。
「え、じゃあ待て、ずっと夢だと思っていたあの、その、行為はまさか現実…?」
俺は毎晩見た夢を思い出す。いやさすがにあれは夢だよな?夢であってくれ!!
「もちろん現実だよ♪僕がずーっとシロウのこと気持ちよくさせてたんだよ♪」
しかしクロはあっさりと俺のわずかな希望を砕いた。
俺の顔は一瞬でお湯が沸いたヤカンのように熱く赤くなった。
「な、なんでそんなことした?!!」
「んー、まりょ、いや妖術を貯めるには相手の精力が必要なんだよねー。猫の姿でいるのも妖術を使うし。」
「なんだそのエロ漫画みたいなふざけた設定?!!」
「本当にね、ふざけてるよね。けどシロウ、身体触られて気持ちよさそうだったじゃん。」
その瞬間、クロの顔つきが変わった。すべて見透かしているような目付き。ゾクッと身体が震えた。
というか図星だった。甘い声で囁かれ、触られ舐められ身体が興奮し、もっと欲しいと欲を言った。
「な、な、なわけあるか!!!!!!」
だがそれを素直に言えるはずがないし認めたくなかった。流石にそれぐらいの恥とプライドぐらいはある。俺は布団を被って熱くなっている顔を隠した。
「ふーん?本当に?」
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