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第2話「アスミナの戦い」
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さあそろそろ寝る時間だという時に、家の周囲に設置してある侵入者察知用の仕掛けに反応があった。
家から結構離れたところまで、張り巡らせているから、すぐにどうこうということはない。
こういう時はだいたい魔物が侵入して反応してるのだが……。
「アスミナ、一緒に行くか?」
魔物を倒すのは、良い実戦になるからな。
「はい! リュートさん、お供させてください」
アスミナが嬉しそうに返事をする。
まったく……。遊びにいくわけではないのに。
「僕も腹ごなしの運動したかったなあ……」
「私は眠いから先に寝てるよ」
ヘルゼーがほおを膨らませている。
マモリ―は眠そうにしている。
何かが侵入したっていうのに、心配されないってのは、ある意味信頼されてるからかもな。
「二人とも先に寝ててくれ。ヘルゼーはまた今度な」
そういうわけで、俺とアスミナは二人で侵入者のところまで向かった。
◇
侵入してきたのはガーラという大蛇の魔物だった。
かなり巨大で人間を余裕で丸のみできる大きさだ。
ガーラの皮は硬く、剣も魔法も効きにくい。
冒険者ギルドが定める魔物ランクでもBランク上位に指定されている。
今のアスミナだと10回中7回くらいは勝てる相手だろう。
「アスミナ、やってみるか?」
何をやるかは言わなくても伝わる。
「はい、リュートさん。頑張ります!」
アスミナの予想よりも強い魔物だったのだろう。
少し緊張の色がうかがえる。
「やれるだけやってみろ。それで駄目だったときは俺がなんとかするさ」
俺の言葉を聞いてアスミナがクスッと笑った。
「リュートさん……。いつも同じことを言ってくれますね。出会ったときにも同じ言葉をくれました」
アスミナは胸に手を当てて、目をつむりながら過去に思いを馳せている。
「そうだったか? あまり覚えていないな……」
なんとなく照れくさい気分になった。
「頑張って倒せたら……、なでなでして褒めてもらえませんか?」
アスミナが上目づかいでそんなことを言ってくる。
「ああ、分かった」
そんなことお安い御用だ。
アスミナが嬉しそうな顔をする。
「リュートさん、がんばりますね!」
そう言ってアスミナは大蛇に向けて一歩踏み出す。
さっきまでの緊張はいくぶんほぐれたように見える。
アスミナはその手に小型の杖を握っている。
ミスリル製のその杖はアスミナの魔法を補助するものだ。
『キシィー』
大蛇がアスミナに襲いかかった。
俺はいつでも動けるように準備をしつつ、アスミナの戦いを見守る。
アスミナは大蛇を中心に円を描くようにステップを踏む。
最小の動きで相手の間合いを外す動きだ。
「ファイアボール!」
アスミナは動きながら大蛇の頭部に向かって魔法を放つ。
だが、大蛇の動きは速く、魔法はかすっただけでかわされてしまう。
魔法を撃つのがコンマ1秒早かったな……。
相手が攻撃に移る瞬間、その出鼻に魔法をぶつけるべきだった。
この辺りはまだまだこれからの課題だな。
そうは言ってもアスミナは同じくらいの歳の冒険者とは比較にならないくらい優秀だ。
こと魔法に関しては一流に近いところにいる。
戦いに関するものである以上、俺は戦闘での魔法運用について教えることができるけど、俺自身は魔法はほとんど使えない。生活魔法レベルといってもいいくらいだ。
実際使える魔法は、俺よりもアスミナの方がはるかに多いし威力も強力だ。
それでも俺は一流の魔法使いが敵にいたとしても負けない自信があるし、今までもそんなことは数えきれないほどあった。
アスミナには演武だけの一流ではなく、実戦でも一流の魔法使いになってもらうつもりでいる。
アスミナはその才能も持ってるし、努力もできる女の子だ。
アスミナは大蛇の攻撃をかわしながら、何発か魔法を当てていた。
大蛇の体力も徐々に削られていってる。
「アイスランス!」
アスミナが放った氷の槍が大蛇の頭部より少し下あたりに刺さり、その巨大な体を地面に縫いとめた。
あと一手だ。
勝ちが見えたからかアスミナの足が止まった。
その場で止めの魔法を撃とうと思ったのかもしれない。
『キシャー!』
動きを封じられている大蛇の負けはもう確定している。
ただロウソクが消える瞬間の灯火が一番大きいように、魔物の最後の一撃と言うのは油断ならないものだ。
大蛇が口から吐き出した毒液がアスミナの顔に向かって降りかかる。
毒液に気づいたアスミナは、腕で毒液から顔を防ごうとしている。
毒液のほとんどは防げるだろう。
多少当たったとしても、アスミナにとって大きなダメージになることもなく、次の瞬間に唱える魔法で大蛇に止めをさせるだろう。
だけど、毒液の一滴か二滴くらいはアスミナの顔に当たるかもしれない。
俺は過保護なんだ――。
俺は一瞬の間に、アスミナに駆け寄り、抱き寄せ、その場を離れる。
ナイフで大蛇の首を切断することも忘れない。
「リュートさん……」
アスミナは俺に助けられたことに気づいたようだ。
一瞬うれしそうな顔をして、すぐにしょぼんとした顔をする。
上手く倒せなかったことを悔いてるのかもしれない。
「アスミナ、がんばったな……」
アスミナの頭をなでる。
「あ……。……でも」
うれしそうな顔をしてから落ち込んだ様子をみせる。
「今のは十分勝ちだった。俺が割って入ったのは……、俺の勝手だ」
アスミナの顔に傷がつくのを防ごうと思ったのは、俺の勝手な気持ちだ。
まあ、同じ場面があったら100回中100回とも同じ行動をするけど。
「リュートさん……」
今度はうれしそうな顔のままだ。
「あの大蛇は素材も取れるし持って帰るぞ」
「はい! かば焼きにすると美味しいですからね」
俺は素材として売るという意味で言ったのに、アスミナの中では食材だったようだ。
まあ、見た目はあんな大蛇でも、アスミナの手にかかれば美味しいご馳走に料理されてしまうのは今まで何度も見てきたからな。
「明日の夕飯を楽しみにしておくよ」
「はい! まかせてくださいね」
冒険者ギルドに持ち込むとちょっとした騒ぎになる大物も、食材が向こうからやってきた程度の我が家の夜のできごとなのであった。
家から結構離れたところまで、張り巡らせているから、すぐにどうこうということはない。
こういう時はだいたい魔物が侵入して反応してるのだが……。
「アスミナ、一緒に行くか?」
魔物を倒すのは、良い実戦になるからな。
「はい! リュートさん、お供させてください」
アスミナが嬉しそうに返事をする。
まったく……。遊びにいくわけではないのに。
「僕も腹ごなしの運動したかったなあ……」
「私は眠いから先に寝てるよ」
ヘルゼーがほおを膨らませている。
マモリ―は眠そうにしている。
何かが侵入したっていうのに、心配されないってのは、ある意味信頼されてるからかもな。
「二人とも先に寝ててくれ。ヘルゼーはまた今度な」
そういうわけで、俺とアスミナは二人で侵入者のところまで向かった。
◇
侵入してきたのはガーラという大蛇の魔物だった。
かなり巨大で人間を余裕で丸のみできる大きさだ。
ガーラの皮は硬く、剣も魔法も効きにくい。
冒険者ギルドが定める魔物ランクでもBランク上位に指定されている。
今のアスミナだと10回中7回くらいは勝てる相手だろう。
「アスミナ、やってみるか?」
何をやるかは言わなくても伝わる。
「はい、リュートさん。頑張ります!」
アスミナの予想よりも強い魔物だったのだろう。
少し緊張の色がうかがえる。
「やれるだけやってみろ。それで駄目だったときは俺がなんとかするさ」
俺の言葉を聞いてアスミナがクスッと笑った。
「リュートさん……。いつも同じことを言ってくれますね。出会ったときにも同じ言葉をくれました」
アスミナは胸に手を当てて、目をつむりながら過去に思いを馳せている。
「そうだったか? あまり覚えていないな……」
なんとなく照れくさい気分になった。
「頑張って倒せたら……、なでなでして褒めてもらえませんか?」
アスミナが上目づかいでそんなことを言ってくる。
「ああ、分かった」
そんなことお安い御用だ。
アスミナが嬉しそうな顔をする。
「リュートさん、がんばりますね!」
そう言ってアスミナは大蛇に向けて一歩踏み出す。
さっきまでの緊張はいくぶんほぐれたように見える。
アスミナはその手に小型の杖を握っている。
ミスリル製のその杖はアスミナの魔法を補助するものだ。
『キシィー』
大蛇がアスミナに襲いかかった。
俺はいつでも動けるように準備をしつつ、アスミナの戦いを見守る。
アスミナは大蛇を中心に円を描くようにステップを踏む。
最小の動きで相手の間合いを外す動きだ。
「ファイアボール!」
アスミナは動きながら大蛇の頭部に向かって魔法を放つ。
だが、大蛇の動きは速く、魔法はかすっただけでかわされてしまう。
魔法を撃つのがコンマ1秒早かったな……。
相手が攻撃に移る瞬間、その出鼻に魔法をぶつけるべきだった。
この辺りはまだまだこれからの課題だな。
そうは言ってもアスミナは同じくらいの歳の冒険者とは比較にならないくらい優秀だ。
こと魔法に関しては一流に近いところにいる。
戦いに関するものである以上、俺は戦闘での魔法運用について教えることができるけど、俺自身は魔法はほとんど使えない。生活魔法レベルといってもいいくらいだ。
実際使える魔法は、俺よりもアスミナの方がはるかに多いし威力も強力だ。
それでも俺は一流の魔法使いが敵にいたとしても負けない自信があるし、今までもそんなことは数えきれないほどあった。
アスミナには演武だけの一流ではなく、実戦でも一流の魔法使いになってもらうつもりでいる。
アスミナはその才能も持ってるし、努力もできる女の子だ。
アスミナは大蛇の攻撃をかわしながら、何発か魔法を当てていた。
大蛇の体力も徐々に削られていってる。
「アイスランス!」
アスミナが放った氷の槍が大蛇の頭部より少し下あたりに刺さり、その巨大な体を地面に縫いとめた。
あと一手だ。
勝ちが見えたからかアスミナの足が止まった。
その場で止めの魔法を撃とうと思ったのかもしれない。
『キシャー!』
動きを封じられている大蛇の負けはもう確定している。
ただロウソクが消える瞬間の灯火が一番大きいように、魔物の最後の一撃と言うのは油断ならないものだ。
大蛇が口から吐き出した毒液がアスミナの顔に向かって降りかかる。
毒液に気づいたアスミナは、腕で毒液から顔を防ごうとしている。
毒液のほとんどは防げるだろう。
多少当たったとしても、アスミナにとって大きなダメージになることもなく、次の瞬間に唱える魔法で大蛇に止めをさせるだろう。
だけど、毒液の一滴か二滴くらいはアスミナの顔に当たるかもしれない。
俺は過保護なんだ――。
俺は一瞬の間に、アスミナに駆け寄り、抱き寄せ、その場を離れる。
ナイフで大蛇の首を切断することも忘れない。
「リュートさん……」
アスミナは俺に助けられたことに気づいたようだ。
一瞬うれしそうな顔をして、すぐにしょぼんとした顔をする。
上手く倒せなかったことを悔いてるのかもしれない。
「アスミナ、がんばったな……」
アスミナの頭をなでる。
「あ……。……でも」
うれしそうな顔をしてから落ち込んだ様子をみせる。
「今のは十分勝ちだった。俺が割って入ったのは……、俺の勝手だ」
アスミナの顔に傷がつくのを防ごうと思ったのは、俺の勝手な気持ちだ。
まあ、同じ場面があったら100回中100回とも同じ行動をするけど。
「リュートさん……」
今度はうれしそうな顔のままだ。
「あの大蛇は素材も取れるし持って帰るぞ」
「はい! かば焼きにすると美味しいですからね」
俺は素材として売るという意味で言ったのに、アスミナの中では食材だったようだ。
まあ、見た目はあんな大蛇でも、アスミナの手にかかれば美味しいご馳走に料理されてしまうのは今まで何度も見てきたからな。
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