『万物異転、猫が世界の史を紡ぐ【出会い編】 ~出会ってすぐにモフられる~』

メイン君

文字の大きさ
27 / 34

第26話 毒を纏いて

しおりを挟む
『思った以上の威力だな……』

 俺の飛ばしたマグマの玉が当たり、一メートル近い大きさのサソリがボロボロの炭になっていく。

 今のサソリへの一撃だが、マグマを口に含んでも平気になったので、これをなんとか武器として使えないか考え今に至る。

 マグマをテッポウウオよろしく、口から飛ばしてみた。これをマグマ弾と俺は呼ぶことにした。
 初めはあまり遠くに飛ばなかったが、全身を使って飛ばすようにしたら十メートルくらいは飛ばせるようになった。

 グズグズになっていくサソリを見て、背筋が凍る思いだ。
 間違いなく加護のおかげで助かったけど、下手したら俺はサソリの状態になっていたかもしれない。
 加護の適応能力の方がマグマの侵食速度を上回ったけど、結構危ない勝負だったのではないだろうか。

 過ぎたことはしょうがないとして、もう少し慎重に限界を見極めていこう……

 マグマは口の中に入れてる間に冷めるかなと思ったが、どうやら火耐性は冷やして耐えるという類のものではないらしい。口に入れたまま数分なら熱いまま運ぶことができ、なんとなく自分が魔法瓶になった気分だ。

 難点は一回ごとにマグマを補給に戻らなければならず、連射ができないということだ。ヒットアンドアウェイで経験値を稼いでいこう。


◇◇◇


 マグマ弾を使い数体の魔物を倒して経験値に変えた。倒し切れなかった敵はマグマおかわりの間に逃げられたりもしたけど、しょうがない。

 一メートル以上ある巨大な蜂にマグマ弾をかわされて追いかけられた時はやばかった……
 右腕無い状態で走るのに慣れていない為につまづいてしまい、巨大蜂の太い針で背中を刺された時は本気で死んだと思った……
 死ぬほど痛かったけど、毒は無効化されたのか、なんとかマグマの中に転がり込んで助かった。

 ダメージ床が安全地帯とか……あれ? これ何の知識だっけ?

 しかし、よく生きてるなと思うくらいボロボロになってきた……
 見える範囲だけでも、俺の体は傷だらけのズタズタで、自慢の長毛もほとんど焦げてみすぼらしい感じになっている。

 この状態で動きに支障が出ていないのも「加護」のおかげなのだろうか。
 もはや見た目は猫に見えない状態だ……アンデッド系の魔物と言われた方が納得するかもしれない。

 リルとクレアには気持ち悪がられるかもなあ……
 リル達が無事に助かり、そう思われる状況になるなら俺はそれで満足だが…… 



◇◇◇


 そんなこんなで結構な数の魔物を倒したおかげでレベルが上がってきた。
 片手が無い状態にもだいぶ慣れてきて、以前以上の速度で走れるようになってきた。

 いまいち経験値やレベルの仕組みが分からないけど、倒したときに近くにいるとその魔物の魔力を吸収する的な感じだろうか。女神様がいて魔法がある世界だから、ファンタジー的な理由があるのかもね。

 あと、スキル獲得等の能力向上を期待して、倒した魔物はできるだけ食べることにしている。不味い魔物ばかりだが、状況的には臥薪嘗胆だしヨシとした。

 体も少し大きくなってきたし、今のところ順調と言っていいだろう。
 そして、さっきから新たに手に入れた攻撃手段も使っている。

『――自己鑑定』
 
---------------------------------------------------------------
名前:シュン
種族:ワイルドキャット
レベル:19
体力:32
魔力:35

スキル:「自動翻訳」「自己鑑定」「火無効」「毒無効」「暗視(強)」「毒弾」  

称号:「シャスティの加護」
---------------------------------------------------------------


 そう、あらたなスキルが手に入った。この「毒弾」というスキル、毒を体内で生成して毒の弾として飛ばせるというものだ。
 おそらく毒持ちの魔物を食べたり、マグマ弾を何度も吐き出してたから、体が適応して変わったとかそんなとこだろう。

 毒を生成できるようになるとは……もはや猫としての可愛さもあったもんじゃないな……まあ有難いんだけど。
 火魔法覚えたらいいなとは思ってたけど、結果オーライ。
 
 この「毒弾」がなかなか便利で、アレンジして霧状にすることもでき、ちょっとした範囲攻撃になる。
 毒の種類について詳しくは分からないけど、相手が痙攣して動かなくなったりする。
 神経毒といった感じだろうか。

 威力もかなり強力で、明らかに毒持ち毒耐性持ちのサソリが一撃で動かなくなった。動きが速い巨大蜂二匹に遭遇した時はだいぶ焦ったけど、「毒弾」の霧状いわゆる「毒霧」を使ったら二匹ともボトっと落ちて動かなくなった。殺虫スプレーになった気分だった……

 あと、魔力は徐々に上がってきてるんだけど、いまだに魔法は使えないんだよな……
 何か特別な知識がいるのだろうか……

---------------------------------------------------------------
「シャスティの加護」――――尋常ならざる適応力を手に入れる。異世界どこでも生きていける。
---------------------------------------------------------------

 これは俺の推測が多分に含まれるのだが、「シャスティの加護」は圧倒的短期間の「進化」というのが、イメージとして近いのではないだろうか。
 専門的な知識は持ってないし、あくまでイメージとしてだが。

 生物が長い時をかけて進化していく過程を、超短時間で実現できているのではないだろうか。しかも生殖による突然変異を経ないでも、俺単体で進化していけるというチート能力。
 ゴキブリがある惑星で超強力な進化を遂げるという物語を思い出した……

 とにかく、超進化能力と仮定して自身を強化していこうと思う。
 
 倒せる敵が増えてきたのは良い傾向だ。
 今なら森にいたマッチョ熊も倒せるだろう。
 けど、あの傭兵団長にはまだ勝てない……

 今の目標はあの巨大ムカデだが、この「毒弾」はヤツに効くのだろうか……
 効かなかった場合に、一撃で殺されかねない。
 だが、越えていかなければならない敵であることは間違いないだろう。
  
 近場の敵をあらかた倒したところで、巨大ムカデと遭遇したところに向かうことにした。 


 
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

異世界での異生活 ~騎士団長の憂鬱~

なにがし
ファンタジー
成人年齢15歳、結婚適齢期40~60歳、平均寿命200歳の異世界。その世界での小さな国の小さな街の話。 40歳で父の跡を継いで騎士団長に就任した女性、マチルダ・ダ・クロムウェル。若くして団長になった彼女に、部下達はその実力を疑っていた。彼女は団長としての任務をこなそうと、頑張るがなかなか思うようにいかず、憂鬱な日々を送る羽目に。 そんな彼女の憂鬱な日々のお話です。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...