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第四章 復活と土蜘蛛と
第六話
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土曜日、六花は四天王のマンションに料理を作りに来ていた。
放課後だと短時間で料理出来るものしか作れないので、ビーフシチューのような下拵えだけでも時間が掛かるものは休みの日に作る事にしたのだ。
四人にブランチを作って出した後、夕食の支度を始めた。
「六花ちゃん、明日は? 用ある?」
「特に無いですよ」
「なら明日も……」
「図々し過ぎだろ」
季武が綱を睨み付けた。
「私は良いよ」
「甘い顔すると此の先ずっと飯作らされ続けるぞ」
「今までもそうだったんでしょ」
「貞光や金時の妻が作ってくれた時も有った」
「綱さんの奥さんは?」
声が分からなくて妻が怒ったと言っていたから居たはずだ。
「綱の妻は三人とも余り……」
「三人!?」
「綱は決まった相手が三人居るんだ」
季武が金時の説明を補足した。
「決まったって言えんのかよ」
貞光の言葉に六花が首を傾げた。
「綱は他の女にも手を出してるからね」
金時が言った。
そう言えば何度も修羅場に巻き込まれたって言ってたっけ。
「エリはそろそろ十代後半くらいの筈なんだけどなぁ……」
「え、人間なんですか?」
「そうだよ」
綱が答えた。
「季武話してねぇのかよ」
貞光が季武を睨んだ。
「異界の者同士は恋愛感情って持たないんだよね。繁殖行為が必要ないからそう言う感情も無いんだよ」
「同じ人間と長く一緒に居っと似たような感情が芽生える事ぁ有っけどな」
金時と貞光が説明してくれたが却って分からなくなった。
同じ人間と長く一緒に居る事で恋愛感情が芽生えるのなら何故未だ出会ってない人にそう言う感情を持っているのだろうか。
「イナちゃんもそうだけど、人間って生まれ変わっても中身は余り変わらないんだよね。だから決まった相手を想い続けられるみたいだよ」
金時が六花の疑問を見抜いたらしい。
と言うか恐らく毎回同じ説明をしてくれているのだろう。
「綱は決まった相手っつって……」
「其もう良いって!」
綱が貞光を遮った。
六花が昔から変わってないらしいのは季武を始めとした四天王のこれまでの話からなんとなく分かった。
性格がほぼ変わらないなら見た目以外は好みのタイプのままだろう。
「でも、私、前世のこと覚えてませんけど、綱さんの奥さん達は覚えてるんですか?」
「覚えてないよ」
「じゃあ、どうやって捜すんですか?」
「痕が有るんだ。六花の首の後ろに有る様なのが」
「生まれ変わると顔も名前も変わっちゃうし、向こうは此方を覚えてないから分かり易い様に。其に出会う前に鬼とかに襲われたりしない様にする為にも」
綱が言った。
そう言えば季武が痕は前世の六花が鬼を怖がっていたから付けたと言っていた。
今世で六花と季武が再会した時のような大物には効かないようだが。
「全然分かり易くないだろ。着物で隠れる様な所に付けるから捜すのが大変なんだ」
「でもイナちゃん、江戸の頃とか結構からかわれてたじゃん」
六花は訊ねるように季武を見た。
「女性が髪を結う習慣が有った頃の話だ。髪を上げるとお前の痕は見えるから」
この辺りの生まれで見鬼で項に痣が有るというのは分かり易い目印だったそうだ。
「何度か場所を変えようかって言ったんだが、此で早く見付けて貰えるならって言うから……」
「イナちゃん性格が可愛いよな」
金時が羨ましそうに言った。
「キツい女ばっか選ぶからじゃん」
「ミホちゃん、凄ぇキツかったよな」
「お前、良くミホちゃんと喧嘩して家追い出されて季武んちに転がり込んでたもんな」
「お前らが入れてくれねーからだろ! 追い返さないの季武だけだったし」
「イナが可哀想だって言うから仕方なくだ」
「其でイナちゃんがミホちゃんに取成しに行ってたんだよな」
「金時が居ると二人きりに成れないからな」
二人きり……。
初めて会った時は夫婦になったって言ってたけど、もしかしてそのとき以外にも恋人になった事があったって事かな。
いつもわざわざ捜してくれてるみたいな感じだけど。
それともイナって言ってるから最初の時の話かな?
「流石に三日連続で泣き付いた時は季武にも追い返されたけどな」
「彼んとき俺んちに来たんだよな。金時に頼まれて仕方なくキヨが取成しに行ったら何故かミホちゃんとキヨが意気投合して俺まで家追い出された」
綱が言った。
季武君に追い返されて、綱さん家から二人で追い出されたとしたら……。
「貞光さんの家に行ったんですか?」
「いや、金時はミホちゃんに謝って家に入れて貰ったけど綱は他の女ん家に行った」
貞光が答えた。
「そう、其で更にキヨちゃん怒らせたんだよね」
「丁度文貰ってたから顔を見に行っただけだよ。次の日帰ったし」
「良く他の女の家に泊まった足で帰れるな」
季武は視線も声音も冷ややかだった。
激怒したキヨは綱を家に入れなかった。
「然したら又他の女の家に行ってさぁ」
「謝れよ、そう言う時は」
「結局どうしたんですか?」
いつまで経っても家に入れてもらえないのは何故かと金時に訊ねて「他の女の家を渡り歩いてたら当然だろ」と言われ慌てて頼光の邸に転がり込んだ(他の三人には断られた為)。
放課後だと短時間で料理出来るものしか作れないので、ビーフシチューのような下拵えだけでも時間が掛かるものは休みの日に作る事にしたのだ。
四人にブランチを作って出した後、夕食の支度を始めた。
「六花ちゃん、明日は? 用ある?」
「特に無いですよ」
「なら明日も……」
「図々し過ぎだろ」
季武が綱を睨み付けた。
「私は良いよ」
「甘い顔すると此の先ずっと飯作らされ続けるぞ」
「今までもそうだったんでしょ」
「貞光や金時の妻が作ってくれた時も有った」
「綱さんの奥さんは?」
声が分からなくて妻が怒ったと言っていたから居たはずだ。
「綱の妻は三人とも余り……」
「三人!?」
「綱は決まった相手が三人居るんだ」
季武が金時の説明を補足した。
「決まったって言えんのかよ」
貞光の言葉に六花が首を傾げた。
「綱は他の女にも手を出してるからね」
金時が言った。
そう言えば何度も修羅場に巻き込まれたって言ってたっけ。
「エリはそろそろ十代後半くらいの筈なんだけどなぁ……」
「え、人間なんですか?」
「そうだよ」
綱が答えた。
「季武話してねぇのかよ」
貞光が季武を睨んだ。
「異界の者同士は恋愛感情って持たないんだよね。繁殖行為が必要ないからそう言う感情も無いんだよ」
「同じ人間と長く一緒に居っと似たような感情が芽生える事ぁ有っけどな」
金時と貞光が説明してくれたが却って分からなくなった。
同じ人間と長く一緒に居る事で恋愛感情が芽生えるのなら何故未だ出会ってない人にそう言う感情を持っているのだろうか。
「イナちゃんもそうだけど、人間って生まれ変わっても中身は余り変わらないんだよね。だから決まった相手を想い続けられるみたいだよ」
金時が六花の疑問を見抜いたらしい。
と言うか恐らく毎回同じ説明をしてくれているのだろう。
「綱は決まった相手っつって……」
「其もう良いって!」
綱が貞光を遮った。
六花が昔から変わってないらしいのは季武を始めとした四天王のこれまでの話からなんとなく分かった。
性格がほぼ変わらないなら見た目以外は好みのタイプのままだろう。
「でも、私、前世のこと覚えてませんけど、綱さんの奥さん達は覚えてるんですか?」
「覚えてないよ」
「じゃあ、どうやって捜すんですか?」
「痕が有るんだ。六花の首の後ろに有る様なのが」
「生まれ変わると顔も名前も変わっちゃうし、向こうは此方を覚えてないから分かり易い様に。其に出会う前に鬼とかに襲われたりしない様にする為にも」
綱が言った。
そう言えば季武が痕は前世の六花が鬼を怖がっていたから付けたと言っていた。
今世で六花と季武が再会した時のような大物には効かないようだが。
「全然分かり易くないだろ。着物で隠れる様な所に付けるから捜すのが大変なんだ」
「でもイナちゃん、江戸の頃とか結構からかわれてたじゃん」
六花は訊ねるように季武を見た。
「女性が髪を結う習慣が有った頃の話だ。髪を上げるとお前の痕は見えるから」
この辺りの生まれで見鬼で項に痣が有るというのは分かり易い目印だったそうだ。
「何度か場所を変えようかって言ったんだが、此で早く見付けて貰えるならって言うから……」
「イナちゃん性格が可愛いよな」
金時が羨ましそうに言った。
「キツい女ばっか選ぶからじゃん」
「ミホちゃん、凄ぇキツかったよな」
「お前、良くミホちゃんと喧嘩して家追い出されて季武んちに転がり込んでたもんな」
「お前らが入れてくれねーからだろ! 追い返さないの季武だけだったし」
「イナが可哀想だって言うから仕方なくだ」
「其でイナちゃんがミホちゃんに取成しに行ってたんだよな」
「金時が居ると二人きりに成れないからな」
二人きり……。
初めて会った時は夫婦になったって言ってたけど、もしかしてそのとき以外にも恋人になった事があったって事かな。
いつもわざわざ捜してくれてるみたいな感じだけど。
それともイナって言ってるから最初の時の話かな?
「流石に三日連続で泣き付いた時は季武にも追い返されたけどな」
「彼んとき俺んちに来たんだよな。金時に頼まれて仕方なくキヨが取成しに行ったら何故かミホちゃんとキヨが意気投合して俺まで家追い出された」
綱が言った。
季武君に追い返されて、綱さん家から二人で追い出されたとしたら……。
「貞光さんの家に行ったんですか?」
「いや、金時はミホちゃんに謝って家に入れて貰ったけど綱は他の女ん家に行った」
貞光が答えた。
「そう、其で更にキヨちゃん怒らせたんだよね」
「丁度文貰ってたから顔を見に行っただけだよ。次の日帰ったし」
「良く他の女の家に泊まった足で帰れるな」
季武は視線も声音も冷ややかだった。
激怒したキヨは綱を家に入れなかった。
「然したら又他の女の家に行ってさぁ」
「謝れよ、そう言う時は」
「結局どうしたんですか?」
いつまで経っても家に入れてもらえないのは何故かと金時に訊ねて「他の女の家を渡り歩いてたら当然だろ」と言われ慌てて頼光の邸に転がり込んだ(他の三人には断られた為)。
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