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第九章 涙と光と
第四話
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季武は六花のスマホを取り出した。
「五馬ちゃんのスマホ探すのか?」
「ああ」
「此、ベランダに落ちてた」
金時が懐からスマホを出した。
季武が試しに掛けてみると金時の持っているスマホが振動した。
画面に六花と表示されている。
「室内じゃなくてベランダ?」
綱が言った。
「連中に気付かれない様に外から置いたんだろ」
「外からって十五階……」
金時は言い掛けて口を噤んだ。
異界の者なら何階だろうと外から上がれる。
ましてや土蜘蛛なら造作もない。
誰も口には出さなかったが最早疑いようが無かった。
大江山でも攫われた人間全てがすぐに喰われていた訳では無かったから捕まったものの最近まで無事だった可能性は有る。
だがここで喰われたならスマホは室内に落ちていたはずだ。
四人のスマホが同時に振動した。
綱が画面を見た。
「一旦マンションへ帰れって」
綱の口調から核が戻ってないのは明らかだった。
「如何すんだよ! 二度も同じ手を喰らったなんて、オレ達の方が頼光様に核にされんぞ」
貞光が頭を抱えた。
「どうせ核にされても直ぐに再生されて人間界に戻されるだろ」
金時はそう言って溜息を吐いた。
「抜かったな」
頼光が厳しい表情で腕を組んでいた。
「保昌様は……」
「向こうで叱責を受けてる」
季武以外の三人が同情するような表情を浮かべた。
元々保昌達は土蜘蛛から核を守る為の掩護要員だ。
それがあっさり奪われてしまったのだから今頃相当絞られているだろう。
「又一から遣り直しですか」
「そうなる」
頼光と四天王は溜息を吐いた。
頼光が部屋に戻り、季武も部屋へ行こうとした時、
「季武、お前未だ告白してないのか?」
綱が声を掛けた。
「六花ちゃん、落ち込んでるんだろ。お前に好きだって言われたら喜ぶぞ」
「六花は八田が死んだかもしれないって時に嬉しい事が有ったりしたら八田に申し訳ないって考える筈だ」
「なら逢引は如何だ? 俺がデートプラン建てて遣るよ。都内には良い場所一杯有るんだぞ」
綱が言った。
此奴、女子に近付けない様に見張られてたのに、しっかりデートスポット調べてたのか……。
季武は半ば呆れて綱を見た。
昼休み、季武と六花はいつものように屋上に居た。
「え、日曜日?」
六花が聞き返した。
「良い店が有るからお前を連れてってやれって」
「如何して?」
「食事の礼だ」
「そんなの良いよ」
「見返りなしじゃ気軽にリクエスト出来ないって言ってたぞ」
「……高いお店じゃないよね?」
「綱が調べてた店だから学生向けだろ」
「綱さんがわざわざ調べてくれたの?」
「自分で行く為だ」
「え、五馬ちゃんと行こうと思ってたお店って事?」
六花が痛ましそうな表情を浮かべた。
しまった!
綱と五馬に同情しているのだろう。
季武は胸の中で舌打ちした。
「多分、八田と付き合う前からだ。女を口説いたら直ぐ連れていける様に」
そう言えば綱さんって女ったらしなんだっけ……。
「女に近付かない様に見張ってるんだが隙を見ては口説こうとするからな」
「……見張ってる? 痕を付けた恋人がいるんでしょ。その人だったらどうするの?」
「其の時はそう言うから」
「そっか」
「で、行けそうか?」
「そう言う事なら」
綱からは丸一日のデートプランを渡されていたが、この様子では六花は楽しめそうにない。昼食後に喫茶店に行くだけにしておいた。
季武は五馬の話をすべきか迷っていた。
六花が五馬を心配しているのは分かっている。
ただ、季武達に負担を掛けたくないから何も聞いてこないのだ。
もし鬼に喰われてしまっていたら五馬が死んだと告げなければならない。
たった一人の友達が死んだと訊かされるのも悲しいが、それを告げる方も辛いだろうと気を遣っているのだ。
死んだと言われなければ生きてるかもしれないという希望を持っていられると言うのも有るだろう。
しかし五馬はまず間違いなく反ぐれ者だ。
四天王は酒呑童子以外にも昔から多くの反ぐれ者を討伐してきたから恨んでいる者は大勢いる。
恐らく、その中の一人だ。
エリの痕を付けていた事から考えても六花から季武の気配がするのに気付いて四天王に近付く為に仲良くなったのだろう。
五馬が鬼と手を組んでいたと訊かされれば利用する為に友達の振りをしたのだと知って心を痛めるに違いない。
だから出来れば教えたくない。
いっそ死んだ事にしてしまおうかと思ったが五馬は自分の死を偽装してない。
再び姿を現す可能性が有る。
五馬の死を悲しんだ後に生きてる姿を見たら季武に嘘を吐かれたと知って更に傷付くだろう。
それに死んだと思っていた五馬が生きている姿を見て混乱した心の隙を突かれて利用される恐れも有る。
五馬が六花の前から消えたままで居てくれればこれ以上六花は傷付かずに済む。
たった一人の友達が居なくなったのは辛いだろうが傷は最小限に抑えられる。
だが人間側に付いている季武でさえイナ以外の人間の感情には斟酌したりしないのだ。
まして人を喰いに来てる反ぐれ者が人間の気持ちを思い遣ったりはしないだろう。
六花が初めて五馬と下校した翌日の事は良く覚えてる。
見た事もないくらい燥いでいた。
相当嬉しかったのだ。
出来る事なら教えたくない。
此のまま八田が二度と姿を見せないでくれれば……。
外見が違えば六花は五馬だと気付かないはずだ。
五馬の見た目で出てこないでくれるだけで良い。
それだけで六花はこれ以上傷付かずに済む。
六花に気付かれずに討伐出来れば其に越した事は無いのだが……。
「五馬ちゃんのスマホ探すのか?」
「ああ」
「此、ベランダに落ちてた」
金時が懐からスマホを出した。
季武が試しに掛けてみると金時の持っているスマホが振動した。
画面に六花と表示されている。
「室内じゃなくてベランダ?」
綱が言った。
「連中に気付かれない様に外から置いたんだろ」
「外からって十五階……」
金時は言い掛けて口を噤んだ。
異界の者なら何階だろうと外から上がれる。
ましてや土蜘蛛なら造作もない。
誰も口には出さなかったが最早疑いようが無かった。
大江山でも攫われた人間全てがすぐに喰われていた訳では無かったから捕まったものの最近まで無事だった可能性は有る。
だがここで喰われたならスマホは室内に落ちていたはずだ。
四人のスマホが同時に振動した。
綱が画面を見た。
「一旦マンションへ帰れって」
綱の口調から核が戻ってないのは明らかだった。
「如何すんだよ! 二度も同じ手を喰らったなんて、オレ達の方が頼光様に核にされんぞ」
貞光が頭を抱えた。
「どうせ核にされても直ぐに再生されて人間界に戻されるだろ」
金時はそう言って溜息を吐いた。
「抜かったな」
頼光が厳しい表情で腕を組んでいた。
「保昌様は……」
「向こうで叱責を受けてる」
季武以外の三人が同情するような表情を浮かべた。
元々保昌達は土蜘蛛から核を守る為の掩護要員だ。
それがあっさり奪われてしまったのだから今頃相当絞られているだろう。
「又一から遣り直しですか」
「そうなる」
頼光と四天王は溜息を吐いた。
頼光が部屋に戻り、季武も部屋へ行こうとした時、
「季武、お前未だ告白してないのか?」
綱が声を掛けた。
「六花ちゃん、落ち込んでるんだろ。お前に好きだって言われたら喜ぶぞ」
「六花は八田が死んだかもしれないって時に嬉しい事が有ったりしたら八田に申し訳ないって考える筈だ」
「なら逢引は如何だ? 俺がデートプラン建てて遣るよ。都内には良い場所一杯有るんだぞ」
綱が言った。
此奴、女子に近付けない様に見張られてたのに、しっかりデートスポット調べてたのか……。
季武は半ば呆れて綱を見た。
昼休み、季武と六花はいつものように屋上に居た。
「え、日曜日?」
六花が聞き返した。
「良い店が有るからお前を連れてってやれって」
「如何して?」
「食事の礼だ」
「そんなの良いよ」
「見返りなしじゃ気軽にリクエスト出来ないって言ってたぞ」
「……高いお店じゃないよね?」
「綱が調べてた店だから学生向けだろ」
「綱さんがわざわざ調べてくれたの?」
「自分で行く為だ」
「え、五馬ちゃんと行こうと思ってたお店って事?」
六花が痛ましそうな表情を浮かべた。
しまった!
綱と五馬に同情しているのだろう。
季武は胸の中で舌打ちした。
「多分、八田と付き合う前からだ。女を口説いたら直ぐ連れていける様に」
そう言えば綱さんって女ったらしなんだっけ……。
「女に近付かない様に見張ってるんだが隙を見ては口説こうとするからな」
「……見張ってる? 痕を付けた恋人がいるんでしょ。その人だったらどうするの?」
「其の時はそう言うから」
「そっか」
「で、行けそうか?」
「そう言う事なら」
綱からは丸一日のデートプランを渡されていたが、この様子では六花は楽しめそうにない。昼食後に喫茶店に行くだけにしておいた。
季武は五馬の話をすべきか迷っていた。
六花が五馬を心配しているのは分かっている。
ただ、季武達に負担を掛けたくないから何も聞いてこないのだ。
もし鬼に喰われてしまっていたら五馬が死んだと告げなければならない。
たった一人の友達が死んだと訊かされるのも悲しいが、それを告げる方も辛いだろうと気を遣っているのだ。
死んだと言われなければ生きてるかもしれないという希望を持っていられると言うのも有るだろう。
しかし五馬はまず間違いなく反ぐれ者だ。
四天王は酒呑童子以外にも昔から多くの反ぐれ者を討伐してきたから恨んでいる者は大勢いる。
恐らく、その中の一人だ。
エリの痕を付けていた事から考えても六花から季武の気配がするのに気付いて四天王に近付く為に仲良くなったのだろう。
五馬が鬼と手を組んでいたと訊かされれば利用する為に友達の振りをしたのだと知って心を痛めるに違いない。
だから出来れば教えたくない。
いっそ死んだ事にしてしまおうかと思ったが五馬は自分の死を偽装してない。
再び姿を現す可能性が有る。
五馬の死を悲しんだ後に生きてる姿を見たら季武に嘘を吐かれたと知って更に傷付くだろう。
それに死んだと思っていた五馬が生きている姿を見て混乱した心の隙を突かれて利用される恐れも有る。
五馬が六花の前から消えたままで居てくれればこれ以上六花は傷付かずに済む。
たった一人の友達が居なくなったのは辛いだろうが傷は最小限に抑えられる。
だが人間側に付いている季武でさえイナ以外の人間の感情には斟酌したりしないのだ。
まして人を喰いに来てる反ぐれ者が人間の気持ちを思い遣ったりはしないだろう。
六花が初めて五馬と下校した翌日の事は良く覚えてる。
見た事もないくらい燥いでいた。
相当嬉しかったのだ。
出来る事なら教えたくない。
此のまま八田が二度と姿を見せないでくれれば……。
外見が違えば六花は五馬だと気付かないはずだ。
五馬の見た目で出てこないでくれるだけで良い。
それだけで六花はこれ以上傷付かずに済む。
六花に気付かれずに討伐出来れば其に越した事は無いのだが……。
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