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第4話

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「この馬鹿者が!」

父上に呼び出されて、まずこれだ。
怒鳴られるような心当たりといえば…リブしかいない。
俺からは父上に言わなかったのに、密告するような真似をするとは人間性が透けて見える。
俺への嫌がらせだな。

「メーベル嬢と浮気したそうだな?」
「遊びでいいからと誘われて応じただけです。浮気ですらありませんが?」
「それは浮気だ、馬鹿者が!!」

メーベルから誘われたと説明したのに、どうして父上は理解しないのだろうか。
そもそも俺の言い分を理解しようとせず、俺が悪いと決めつけているのではないか?
勝手な思い込みで怒鳴りつけられる身にもなってほしい。
そういった他人の気持ちになって考えられないから父上は駄目なのだ。

「わざわざ怒鳴らないでください。用件は以上ですか?」
「まだだ。スターブ子爵から報告を受けたが、メーベル嬢と浮気したのは、どうやら事実のようだな」

俺は学習したので遊びだとか誘われただけだと訴えることはしない。
どうせ理解されないのだし、怒鳴られるだけ損だ。

こうなったのもリブが婚約破棄なんてするからだ。
遊びの関係を本気と思い込んだのはリブであり俺に責任はない。
遊びと本気の違いすら理解できないとは俺の婚約者に相応しくない。
…そう考えると婚約関係が解消されているのだからリブの行為は悪いものではないのか?

「とにかくメーベル嬢とは別れろ。それとリブ嬢に謝って、どうにか婚約破棄を撤回してもらえ」
「そもそもメーベル嬢とは遊びの関係なので、別れるも何もありません。もう終わっています。リブに謝罪しても無駄だと思いますが」
「それでもだ。真摯に謝罪すればリブ嬢も考えを変えるかもしれない」
「無理だと思いますが…」

父上が睨むので、それ以上は言わなかった。
俺の意見は聞く必要がないということなのだろう。
無駄だとわかっているのに無駄なことをしなければならないのか…。

「謝罪だけならタダだろう?慰謝料を支払わなくて済むならそうしたほうがいい」
「それは確かに」

父上は考えなしではなかった。
強欲なリブからの慰謝料請求なんて復縁できれば支払う必要もない。
復縁してから適当な理由で婚約解消すれば慰謝料も支払わずに済むだろう。
名案だ。
俺がすべきことは理解した。

「まずはメーベル嬢だ。メーベル嬢を説得しなければリブ嬢との復縁は無理だろう」
「わかりました」
「いいか、とにかくメーベル嬢とは問題を起こすなよ?ピンクルー伯爵家を敵にする訳にはいかないのだ」
「重々承知しています」
「…頼んだぞ」
「はい」

父上もしつこいな。
それだけピンクルー伯爵家を敵にしてはいけないということだろうし、俺が信用されていないということでもある。
とにかく結果だ。
父上が文句の言いようがない結果を出せば黙らせられるだろう。

まずはメーベル様か。
下手に関わると余計に執着されそうだが説得…できるのか?
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