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第11話
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ヴァローナと結婚できたが、それから間もなく問題が発生した。
問題とも思えないがヴァローナの体調が思わしくなく、また寝込みがちになってしまった。
「疲れが溜まったのだろう。休めばきっと良くなる。大丈夫だ」
「心配をかけてごめんなさいね。きっとどこかの性悪女が嫉妬しているせいだわ」
名前を出していないがルミーネのことだな。
きっと俺たちの結婚を嫉妬して呪いをかけたか何かをしたのだろう。
そんなことをする暇があれば婚約者でも探せばいいと思うが、そんなことをするルミーネだから婚約者ができないのだろう。
自業自得というものだ。
「だが俺たちの愛は奇跡を起こす。呪いになんか負けるはずがない」
「そうね」
* * * * * * * * * *
楽観視していたがヴァローナの体調は良くなるどころか徐々に悪化していった。
もしかしたら神は努力しない人間には奇跡を起こさないのかと考え、俺は医師を手配しようとした。
「また断られただと!?」
「は、はい。ロスコーラー子爵家からはどんな理由があっても断るとのことでした」
「くそっ、どうしてだ……」
使用人は悪くない。
悪いのは医師か…医師に手を回すような奴だろう。
「ルミーネのせいに決まっている」
こんなことで嫌がらせしてくるなんて、やはりルミーネは最低だ。
最低だということはもう理解していたが、ここまで執拗だとは思わなかった。
「仕方ない、効くとは思えないが薬を試してみるか。手配してくれ」
「はい」
薬なんて気休めでしかないが、それでも病気の治療のために手を尽くしたことにはなる。
奇跡は人としてできることをした後に起きるものだ。
薬なんて効果がなく無駄なことだが奇跡を起こすためには必要なことだ。
薬は当家の領地では扱っていない。
他領まで買いに行くとなると時間がかかるが仕方ない。
ヴァローナ、苦しいかもしれないがもう少しの我慢だ。
* * * * * * * * * *
「薬を売らなかっただと!?失礼な奴だな!」
「申し訳ありません。ロスコーラー子爵家の名を出したのですが相手は意に介さなかったようです」
「くそっ、ロスコーラー子爵家に対して舐めたことをしてくれたな」
すぐにでも戦争を仕掛けて滅ぼしてやりたいが、今はヴァローナの病気の治療のほうが優先だ。
「他の領地にも当たれ。俺は俺で探してみる。急げよ」
「はっ」
使用人には引き続き薬の調達を任せるが、俺だって何かせずにはいられない。
* * * * * * * * * *
探せば薬がない訳ではなかった。
薬屋ではなく怪しい行商人相手だったし、しかも相当な額を吹っ掛けられた。
当家は財政的にも厳しかったのでかなり無理をして金を捻出することになったが、薬を手にできたのだ。
しかし効果はなかった。
やはりと言うべきなのか。
「ごめんなさいね、こんな私で」
「薬なんて効果がないものだ。これはヴァローナの責任ではない」
ますます弱ってきたヴァローナを見るのは辛い。
そんな状態なのに俺を気遣うヴァローナを見るのも辛い。
だが俺達には真実の愛があり、真実の愛は奇跡を起こす。
「私、もう駄目かもしれない」
「そんなことはない!俺たちの愛はまた奇跡を起こせるはずだ!」
「うふふ、ありがとうフロイデン。フロイデンに愛されて私は幸せよ」
「俺だってヴァローナを愛し愛され幸せだ。だからこの幸せが続くよう奇跡を起こしてみせるさ」
ヴァローナがこんな状態だというのに医師は当家からの要請を拒否している。
医師という立場は立派だが人としては最低な部類だな。
きっと金のあるわがままな貴族たちを優先しているに違いない。
だがもう当家には医師を呼び寄せるほどの金もない。
ただ見守るだけしかできないのか?
奇跡はまだなのか!?
これが真実の愛を証明しろという神の与えた試練なのか!?
ならば大丈夫だ。
俺たちの愛は本物であり、真実の愛だから絶対に奇跡を起こせる!
* * * * * * * * * *
奇跡は起きなかった。
ヴァローナを失った俺は生きている意味を見いだせなかった。
どうしてこんなことになったんだ……………。
どうして誰も助けてくれなかったんだ…………………。
罪のないヴァローナはどうしてこんな目に遭ったんだ?
問題とも思えないがヴァローナの体調が思わしくなく、また寝込みがちになってしまった。
「疲れが溜まったのだろう。休めばきっと良くなる。大丈夫だ」
「心配をかけてごめんなさいね。きっとどこかの性悪女が嫉妬しているせいだわ」
名前を出していないがルミーネのことだな。
きっと俺たちの結婚を嫉妬して呪いをかけたか何かをしたのだろう。
そんなことをする暇があれば婚約者でも探せばいいと思うが、そんなことをするルミーネだから婚約者ができないのだろう。
自業自得というものだ。
「だが俺たちの愛は奇跡を起こす。呪いになんか負けるはずがない」
「そうね」
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楽観視していたがヴァローナの体調は良くなるどころか徐々に悪化していった。
もしかしたら神は努力しない人間には奇跡を起こさないのかと考え、俺は医師を手配しようとした。
「また断られただと!?」
「は、はい。ロスコーラー子爵家からはどんな理由があっても断るとのことでした」
「くそっ、どうしてだ……」
使用人は悪くない。
悪いのは医師か…医師に手を回すような奴だろう。
「ルミーネのせいに決まっている」
こんなことで嫌がらせしてくるなんて、やはりルミーネは最低だ。
最低だということはもう理解していたが、ここまで執拗だとは思わなかった。
「仕方ない、効くとは思えないが薬を試してみるか。手配してくれ」
「はい」
薬なんて気休めでしかないが、それでも病気の治療のために手を尽くしたことにはなる。
奇跡は人としてできることをした後に起きるものだ。
薬なんて効果がなく無駄なことだが奇跡を起こすためには必要なことだ。
薬は当家の領地では扱っていない。
他領まで買いに行くとなると時間がかかるが仕方ない。
ヴァローナ、苦しいかもしれないがもう少しの我慢だ。
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「薬を売らなかっただと!?失礼な奴だな!」
「申し訳ありません。ロスコーラー子爵家の名を出したのですが相手は意に介さなかったようです」
「くそっ、ロスコーラー子爵家に対して舐めたことをしてくれたな」
すぐにでも戦争を仕掛けて滅ぼしてやりたいが、今はヴァローナの病気の治療のほうが優先だ。
「他の領地にも当たれ。俺は俺で探してみる。急げよ」
「はっ」
使用人には引き続き薬の調達を任せるが、俺だって何かせずにはいられない。
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探せば薬がない訳ではなかった。
薬屋ではなく怪しい行商人相手だったし、しかも相当な額を吹っ掛けられた。
当家は財政的にも厳しかったのでかなり無理をして金を捻出することになったが、薬を手にできたのだ。
しかし効果はなかった。
やはりと言うべきなのか。
「ごめんなさいね、こんな私で」
「薬なんて効果がないものだ。これはヴァローナの責任ではない」
ますます弱ってきたヴァローナを見るのは辛い。
そんな状態なのに俺を気遣うヴァローナを見るのも辛い。
だが俺達には真実の愛があり、真実の愛は奇跡を起こす。
「私、もう駄目かもしれない」
「そんなことはない!俺たちの愛はまた奇跡を起こせるはずだ!」
「うふふ、ありがとうフロイデン。フロイデンに愛されて私は幸せよ」
「俺だってヴァローナを愛し愛され幸せだ。だからこの幸せが続くよう奇跡を起こしてみせるさ」
ヴァローナがこんな状態だというのに医師は当家からの要請を拒否している。
医師という立場は立派だが人としては最低な部類だな。
きっと金のあるわがままな貴族たちを優先しているに違いない。
だがもう当家には医師を呼び寄せるほどの金もない。
ただ見守るだけしかできないのか?
奇跡はまだなのか!?
これが真実の愛を証明しろという神の与えた試練なのか!?
ならば大丈夫だ。
俺たちの愛は本物であり、真実の愛だから絶対に奇跡を起こせる!
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奇跡は起きなかった。
ヴァローナを失った俺は生きている意味を見いだせなかった。
どうしてこんなことになったんだ……………。
どうして誰も助けてくれなかったんだ…………………。
罪のないヴァローナはどうしてこんな目に遭ったんだ?
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