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グランド・アーク
ホアナッド
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竜人は、顔が竜で体が人。それはホアナッドとて例外ではない。しかし、竜人が持つ一般的な特徴について、彼はひとつだけ欠けているモノがあった。
竜の印。竜人ならば必ず生まれ持つとされるその緋色の痣を、ホアナッドはあるべき場所、背中と腰の間、つまり尻尾の上に持たなかった。
ホアナッドはその事で、調和を尊ぶ竜人から差別され、竜人とは認められなかった過去がある。そして長きに渡るその迫害された生活の中で、自分こそが真の竜人であり、他の竜人は抹殺すべきという危険な思想に染まってしまったのだった。
「アンタはオラと同じ匂いがするぞ、じいちゃん」
そう告げるホアナッドだが、構えは崩さない。
「奇遇だな。同じ種が嫌いだろう。分かるさ、なんとなくな」
「シュって何プリか」
「私は人間が嫌いってことです」
そして、似た者同士と蚊帳の外、奇妙な図式で戦いは始まったかに思えた。だが、ホアナッドは突然、回れ右をしたかと思うと、周囲の囚人を倒し始めた。
ダランもそれに続き、スプスーは頭が真っ白だ。
「な、何が始まったのプ」
「決闘だからだ」
「スプスーはいるが、まあ、そんな感じだな」
利害の一致は、敵対関係を時に越える。あまつさえ、ホアナッドとて他の囚人は赤の他人にも劣る邪魔者でしかない。倒せる内に倒してしまうのは、彼にとっては得なのだ。
「弱い弱い。オラが強すぎんのかい」
ホアナッドは蹴り技の達人のようだ。次々に素早く精密な蹴りで相手の弱点を突き、早々と薙ぎ倒していく様は一種の爽快ささえある。
ダランもまた好調だ。翼竜槍でなくとも、リーチの長い槍という武器は集団戦との相性が高い。なぎ払うだけでも、相当数の囚人には攻撃と威嚇を兼ねる事が出来るのだ。
「キリがないというわけでもないのが、唯一の救いだ」
ダランは呟いた。長いとは言え、そこは牢獄。囚人が一般市民、いや、軍隊にすら数が及ぶ事は社会の仕組みからして有り得ない。
ダランの周囲にいたのは、せいぜい300人ほどだ。小規模の戦争ではあるが、ダランは8000人ほどの敵兵を1人で片付けた事がある。それを思えば、少し強い程度の囚人は訓練された兵士には及ばない者も珍しくないゆえ、楽勝なのであった。
「準備運動は済んだプリか」
スプスーはすっかり、観客となっていた。
魔力を温存したいスプスーとしては、大物相手に力を蓄えたいという思いからであり、断じてダランがどうでも良いわけではない。
また、あまりに弱そうだからか、囚人が寄って来ないのもスプスーが臨戦態勢を解く理由になっていた。
「ああ、サポートを頼む。おそらく、それでギリギリ勝てるかどうかだ」
ダランの正直な感想だ。少なくとも集団戦において、竜人を相手どってきたホアナッドは1つ抜けている。ダランは囚人たちとの戦いの中でホアナッドを観察し、それを理解していた。
「オラに本気を出させてみい、人間」
「出来れば、そうなる前に倒したいがね」
ダランとホアナッド、両者から気迫がみなぎる。スプスーはスプスーで、あらゆる補助呪文の中で何が最適なのかを考えていた。
(まだ先は長そうプリ。本気までは出したくないのプ)
「大竜閃」
「どりゃどりゃどりゃあ」
翼竜槍を最大限に大きく横薙ぎしたダランの大技と、ホアナッドの連続蹴りがぶつかり合った。
「よし、分かったプ。おっさん、槍に風を乗っけるから、上手く使うプリ」
「させるかぁ」
素早く大竜閃を受けたドラコは、翼竜槍を蹴った反動で、物凄い速さでスプスーに向かったのだ。
「げっ、ズルいプリ」
「正々堂々と戦えぇい」
ダランが追うが、竜人の脚力は人間の比ではなく、とても間に合わない。
「あわわプ、はっ、優しい泡」
得意の防御呪文だ。だが、詠唱が少し間に合わなかった。頬を強打し、スプスーは左方に吹き飛び、面会室側の壁に強か背中をぶつけた。そして、ビキビキと壁にはひびが入ったのだ。
「うん、やっぱり犬は雑魚だ」
「スプスー!」
スプスーからは返事がない。わずかに意識を失いかけているのだ。
「くっ、払いがダメなら。飛竜」
足を目一杯使っての、跳躍突進からの突き、それが飛竜だ。
(!やはり、やるなぁ)
避けきれず、ホアナッドは脇腹を深く抉られていく。人間ならば、もはや戦えないだろう。
しかし、彼は竜人。体力もまた、人間以上だ。ちょっとの怪我程度の顔で、興味深げにホアナッドはダランを見た。
「本当に面白い。動きは単純なのに、長年の研鑽がオラにも分かるぞ」
「はは、光栄に思えればね」
これが闘技大会ならば、どんなにか素直に喜べただろう。しかし今は単なる戦いなのだ。
「集中風」
風が翼竜槍を纏った。スプスーが目覚め、約束通りダランを支えたのだ。
「とどめだ。風竜閃」
翼竜槍が、竜人を斬り払った。
竜の印。竜人ならば必ず生まれ持つとされるその緋色の痣を、ホアナッドはあるべき場所、背中と腰の間、つまり尻尾の上に持たなかった。
ホアナッドはその事で、調和を尊ぶ竜人から差別され、竜人とは認められなかった過去がある。そして長きに渡るその迫害された生活の中で、自分こそが真の竜人であり、他の竜人は抹殺すべきという危険な思想に染まってしまったのだった。
「アンタはオラと同じ匂いがするぞ、じいちゃん」
そう告げるホアナッドだが、構えは崩さない。
「奇遇だな。同じ種が嫌いだろう。分かるさ、なんとなくな」
「シュって何プリか」
「私は人間が嫌いってことです」
そして、似た者同士と蚊帳の外、奇妙な図式で戦いは始まったかに思えた。だが、ホアナッドは突然、回れ右をしたかと思うと、周囲の囚人を倒し始めた。
ダランもそれに続き、スプスーは頭が真っ白だ。
「な、何が始まったのプ」
「決闘だからだ」
「スプスーはいるが、まあ、そんな感じだな」
利害の一致は、敵対関係を時に越える。あまつさえ、ホアナッドとて他の囚人は赤の他人にも劣る邪魔者でしかない。倒せる内に倒してしまうのは、彼にとっては得なのだ。
「弱い弱い。オラが強すぎんのかい」
ホアナッドは蹴り技の達人のようだ。次々に素早く精密な蹴りで相手の弱点を突き、早々と薙ぎ倒していく様は一種の爽快ささえある。
ダランもまた好調だ。翼竜槍でなくとも、リーチの長い槍という武器は集団戦との相性が高い。なぎ払うだけでも、相当数の囚人には攻撃と威嚇を兼ねる事が出来るのだ。
「キリがないというわけでもないのが、唯一の救いだ」
ダランは呟いた。長いとは言え、そこは牢獄。囚人が一般市民、いや、軍隊にすら数が及ぶ事は社会の仕組みからして有り得ない。
ダランの周囲にいたのは、せいぜい300人ほどだ。小規模の戦争ではあるが、ダランは8000人ほどの敵兵を1人で片付けた事がある。それを思えば、少し強い程度の囚人は訓練された兵士には及ばない者も珍しくないゆえ、楽勝なのであった。
「準備運動は済んだプリか」
スプスーはすっかり、観客となっていた。
魔力を温存したいスプスーとしては、大物相手に力を蓄えたいという思いからであり、断じてダランがどうでも良いわけではない。
また、あまりに弱そうだからか、囚人が寄って来ないのもスプスーが臨戦態勢を解く理由になっていた。
「ああ、サポートを頼む。おそらく、それでギリギリ勝てるかどうかだ」
ダランの正直な感想だ。少なくとも集団戦において、竜人を相手どってきたホアナッドは1つ抜けている。ダランは囚人たちとの戦いの中でホアナッドを観察し、それを理解していた。
「オラに本気を出させてみい、人間」
「出来れば、そうなる前に倒したいがね」
ダランとホアナッド、両者から気迫がみなぎる。スプスーはスプスーで、あらゆる補助呪文の中で何が最適なのかを考えていた。
(まだ先は長そうプリ。本気までは出したくないのプ)
「大竜閃」
「どりゃどりゃどりゃあ」
翼竜槍を最大限に大きく横薙ぎしたダランの大技と、ホアナッドの連続蹴りがぶつかり合った。
「よし、分かったプ。おっさん、槍に風を乗っけるから、上手く使うプリ」
「させるかぁ」
素早く大竜閃を受けたドラコは、翼竜槍を蹴った反動で、物凄い速さでスプスーに向かったのだ。
「げっ、ズルいプリ」
「正々堂々と戦えぇい」
ダランが追うが、竜人の脚力は人間の比ではなく、とても間に合わない。
「あわわプ、はっ、優しい泡」
得意の防御呪文だ。だが、詠唱が少し間に合わなかった。頬を強打し、スプスーは左方に吹き飛び、面会室側の壁に強か背中をぶつけた。そして、ビキビキと壁にはひびが入ったのだ。
「うん、やっぱり犬は雑魚だ」
「スプスー!」
スプスーからは返事がない。わずかに意識を失いかけているのだ。
「くっ、払いがダメなら。飛竜」
足を目一杯使っての、跳躍突進からの突き、それが飛竜だ。
(!やはり、やるなぁ)
避けきれず、ホアナッドは脇腹を深く抉られていく。人間ならば、もはや戦えないだろう。
しかし、彼は竜人。体力もまた、人間以上だ。ちょっとの怪我程度の顔で、興味深げにホアナッドはダランを見た。
「本当に面白い。動きは単純なのに、長年の研鑽がオラにも分かるぞ」
「はは、光栄に思えればね」
これが闘技大会ならば、どんなにか素直に喜べただろう。しかし今は単なる戦いなのだ。
「集中風」
風が翼竜槍を纏った。スプスーが目覚め、約束通りダランを支えたのだ。
「とどめだ。風竜閃」
翼竜槍が、竜人を斬り払った。
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