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グランド・アーク
竜は二度死ぬ
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ホアナッドは倒れた。この戦いはダランたちの勝利だ。
そう思われた。
「ゴ・・・ゴボー。とんでもなく強烈だったぞ、今のは」
そして、ホアナッドは起き上がった。
ダランは、首を斬ったにもかかわらずだ。
首だけになったホアナッドが、しゃべっていた。
「生まれて初めて死んだ。もう死ねねえじゃんか、チクショー」
竜は二度死ぬ。一度だけなら、どんなに切り刻まれても、粉々にされても生き返る。竜人も然りだ。
これは、竜の血液に蘇生作用のある成分が含まれているからだと言われている。しかし、一度でも復活すると、その成分がなくなるのだ。
ホアナッドは痣がないだけで、竜人である。そのため、胴体が素早く首を拾って繋げ直すと、生体反応で元の姿に戻った。つまり、復活したのである。
「オラ、本気だったんだけどな」
「ところで、お互いまだ名乗ってなかったな」
他の囚人まで倒している間に、ダランもホアナッドも、名乗るのをすっかり忘れてしまっていたのである。
「ダラン=リーグイーストだ」
「ホアナッドと言う」
「スプスーさんは、スプスーさんプリ」
互いに実力を認め合ったという、厳かな空気が流れていた。ホアナッドが復活しなければ、そんな空気とは無縁だったと思うと残念な戦いだったのかもしれない。
「俺は、野生の世界で修行を積む。また会おう、ダラン」
「まあ、そうなら強いて止めまい。お主ほどの戦士なら、素晴らしい強さをいつか手に入れるだろうて」
そして、ホアナッドは翼で飛び立ち、どこかに飛んでいってしまったのだった。
「犯罪者を逃がして良かったプリか」
「それを言ったら、私も賞金首ですよ」
「ヨロロ。私はヨーロイ」
「ユロ。私はユーロイ」
「マ・・・、私はマジル。マジル=カヤルーサだ」
ヨーロイとユーロイ。
双子霊童という通り名を持つ彼女たちは、怨霊だ。
霊体なので、一切の物理攻撃は通じない。その割に、呪いの力で相手には苦痛を与えるという一方的な戦いの末に、勢い余って無実の人々を大量虐殺。その結果を怨霊なりに償うため、壁をもすり抜けられる幽霊が、わざわざ捕らわれていたのだという。
「ヨロ。つまり、こんな風にやっていくの」
「ユーロー。そして、そんな風に苦しむのよ」
ヨーロイ、ユーロイは、二人一組となっておぞましい舞いを踊り始めた。すると、マジルに突然、苦しみが襲ってきたのだ。
首を絞められながら、爪を剥がされるような激しすぎる苦痛。常人ならそれだけでショック死は間違いない。
「・・・こんなモノなのね」
「えっ」
「えっ」
しかし、明らかに蒼白な顔をしながらも眉一つ動かさず、マジルは二人に歩み寄っていった。
「私は殺し屋。だから恨まれて呪われたり、憑かれたりは普通なの」
そういうと、マジルはヨーロイを自らの体に取り憑かせた。
「こうして、・・ヨ、ロ・・・、そして私ごと」
マジルは自分自身の心臓を、苦無で貫いた。
ワルガーたちは、永遠とも思える戦いの中にいた。ダランたちは300人ほどを相手どったが、あくまでそれは近くの囚人たちに過ぎない。
実際、ワルガーはこれまでに長牢獄の囚人を3000人以上は倒しているのだが、まだ半分ほども進んでいないようで長牢獄の終わりは、まだ見えないでいたのだ。
「くはっ。さ、流石に一人抱えて戦い続けるのは、訓練にしちゃあキツ過ぎる」
「盗賊さん。ごめんなさい、私のせいで」
「そうだけど、そうだけどよ。ただ謝れば良いってモンじゃないだろ。人形マンに会うんならそれまでは胸、張ってねェと」
「は、はい」
戸惑いながらも、根っからの悪人ではない所をワルガーに見つけたスフィアは、どこか安心して戦いを任せられるのだった。
しかし、戦いは絶え間なく状況が変わる。たとえば、とんでもない強敵が出てきた時だ。
「ワルガー。ワルガー=ザンじゃないか。久しいな」
「うおっ、お、お前は」
ワルガーと同年代ほどの、すらりとした若い男。騎士を思わせる重鎧、大剣に盾という犯罪者がしていてはいけない身なりをした男は、タビウン=ハークと名乗った。
「お、おお。皮肉なモンだな。騎士なのにな」
見覚えのある騎士の装備だから戸惑って見せたものの、ワルガーはタビウン自身には見覚えがない。
「分かるさ、ワルガー。お前はいつもそうやって話を合わせていたな。その癖、覚えちゃいないんだ。いつもいつも」
「バレたか」
「しゃらくさいんだよォ」
タビウンは大剣で、ワルガーに斬りかかった。が、相手はワルガーだ。騎士を目指していた事のある者に、騎士の戦い方を挑むのは常に手の内を晒しているに等しい。
「えいやー」
「ちょろい、ちょろい」
加えて、マジルとの修行時代に鍛えぬいた肉体を手に入れたワルガーは、大剣の鋭い刃をも通さない強靭な手で、その剣を直接掴んだ。
「男なら、殴り会おうぜえェ」
そして、渾身の力を込めると大剣の刀身をバキリと折ってしまったのだ。
盗賊王ワルガー=ザンには、盗賊王とは別の通り名がある。
武器破壊。ワルガーはそのもう一つの顔を、惜しげもなく見せようとしていたのだった。
そう思われた。
「ゴ・・・ゴボー。とんでもなく強烈だったぞ、今のは」
そして、ホアナッドは起き上がった。
ダランは、首を斬ったにもかかわらずだ。
首だけになったホアナッドが、しゃべっていた。
「生まれて初めて死んだ。もう死ねねえじゃんか、チクショー」
竜は二度死ぬ。一度だけなら、どんなに切り刻まれても、粉々にされても生き返る。竜人も然りだ。
これは、竜の血液に蘇生作用のある成分が含まれているからだと言われている。しかし、一度でも復活すると、その成分がなくなるのだ。
ホアナッドは痣がないだけで、竜人である。そのため、胴体が素早く首を拾って繋げ直すと、生体反応で元の姿に戻った。つまり、復活したのである。
「オラ、本気だったんだけどな」
「ところで、お互いまだ名乗ってなかったな」
他の囚人まで倒している間に、ダランもホアナッドも、名乗るのをすっかり忘れてしまっていたのである。
「ダラン=リーグイーストだ」
「ホアナッドと言う」
「スプスーさんは、スプスーさんプリ」
互いに実力を認め合ったという、厳かな空気が流れていた。ホアナッドが復活しなければ、そんな空気とは無縁だったと思うと残念な戦いだったのかもしれない。
「俺は、野生の世界で修行を積む。また会おう、ダラン」
「まあ、そうなら強いて止めまい。お主ほどの戦士なら、素晴らしい強さをいつか手に入れるだろうて」
そして、ホアナッドは翼で飛び立ち、どこかに飛んでいってしまったのだった。
「犯罪者を逃がして良かったプリか」
「それを言ったら、私も賞金首ですよ」
「ヨロロ。私はヨーロイ」
「ユロ。私はユーロイ」
「マ・・・、私はマジル。マジル=カヤルーサだ」
ヨーロイとユーロイ。
双子霊童という通り名を持つ彼女たちは、怨霊だ。
霊体なので、一切の物理攻撃は通じない。その割に、呪いの力で相手には苦痛を与えるという一方的な戦いの末に、勢い余って無実の人々を大量虐殺。その結果を怨霊なりに償うため、壁をもすり抜けられる幽霊が、わざわざ捕らわれていたのだという。
「ヨロ。つまり、こんな風にやっていくの」
「ユーロー。そして、そんな風に苦しむのよ」
ヨーロイ、ユーロイは、二人一組となっておぞましい舞いを踊り始めた。すると、マジルに突然、苦しみが襲ってきたのだ。
首を絞められながら、爪を剥がされるような激しすぎる苦痛。常人ならそれだけでショック死は間違いない。
「・・・こんなモノなのね」
「えっ」
「えっ」
しかし、明らかに蒼白な顔をしながらも眉一つ動かさず、マジルは二人に歩み寄っていった。
「私は殺し屋。だから恨まれて呪われたり、憑かれたりは普通なの」
そういうと、マジルはヨーロイを自らの体に取り憑かせた。
「こうして、・・ヨ、ロ・・・、そして私ごと」
マジルは自分自身の心臓を、苦無で貫いた。
ワルガーたちは、永遠とも思える戦いの中にいた。ダランたちは300人ほどを相手どったが、あくまでそれは近くの囚人たちに過ぎない。
実際、ワルガーはこれまでに長牢獄の囚人を3000人以上は倒しているのだが、まだ半分ほども進んでいないようで長牢獄の終わりは、まだ見えないでいたのだ。
「くはっ。さ、流石に一人抱えて戦い続けるのは、訓練にしちゃあキツ過ぎる」
「盗賊さん。ごめんなさい、私のせいで」
「そうだけど、そうだけどよ。ただ謝れば良いってモンじゃないだろ。人形マンに会うんならそれまでは胸、張ってねェと」
「は、はい」
戸惑いながらも、根っからの悪人ではない所をワルガーに見つけたスフィアは、どこか安心して戦いを任せられるのだった。
しかし、戦いは絶え間なく状況が変わる。たとえば、とんでもない強敵が出てきた時だ。
「ワルガー。ワルガー=ザンじゃないか。久しいな」
「うおっ、お、お前は」
ワルガーと同年代ほどの、すらりとした若い男。騎士を思わせる重鎧、大剣に盾という犯罪者がしていてはいけない身なりをした男は、タビウン=ハークと名乗った。
「お、おお。皮肉なモンだな。騎士なのにな」
見覚えのある騎士の装備だから戸惑って見せたものの、ワルガーはタビウン自身には見覚えがない。
「分かるさ、ワルガー。お前はいつもそうやって話を合わせていたな。その癖、覚えちゃいないんだ。いつもいつも」
「バレたか」
「しゃらくさいんだよォ」
タビウンは大剣で、ワルガーに斬りかかった。が、相手はワルガーだ。騎士を目指していた事のある者に、騎士の戦い方を挑むのは常に手の内を晒しているに等しい。
「えいやー」
「ちょろい、ちょろい」
加えて、マジルとの修行時代に鍛えぬいた肉体を手に入れたワルガーは、大剣の鋭い刃をも通さない強靭な手で、その剣を直接掴んだ。
「男なら、殴り会おうぜえェ」
そして、渾身の力を込めると大剣の刀身をバキリと折ってしまったのだ。
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