80 / 100
グランド・アーク
新たな仲間
しおりを挟む
ゼロがいる牢を開く音がした。
そこにいたのは、ダラン=リーグイースト。そして、ワルガー、マジル、スプスーもいた。
「あなたたちは?」
ゼロは彼らを知らない。会った事のない顔ぶれは、にこやかにゼロを見守っていた。
「あなたたちは、ボクを助けに来たのか?」
「ゼロ、そうよ。彼らは私を守ってくれる、大切な仲間たち。そして、やっとあなたを助けに来れた」
スフィア=ジルアファンは、少し遅れてやって来た。大切な記憶、置き去りにしてきた心を取り戻して、王女はゆっくりとした確かな足取りでやって来たのだ。
「これから、厳しい戦いになるかもしれません。ゼロ、あなたはそれでも着いて来てくれますか」
ゼロの答えは決まっていた。
王女の旅の新たな仲間として、優しい魔法人形、ゼロが今度こそ加わったのだった。
時は少し遡る。
タビウンを倒し、気付くとラオダルたちクレイジー・ドーンの姿はなかった。勝利の空気に乗じて、本格的に行方をくらましたのだ。きっと倒すべき凶悪な犯罪者ではあったのだが、ワルガーたちは追わなかった。
間に合わないのと、敵であっても曲刀の情けがあったからだ。
「スフィア、待ってて。すぐ動けるようになる」
「マジル、ありが・・・うっ」
「姫さん、どうしたァ」
「スフィア、しっかりするプリ」
「スフィア=ジルアファン。目覚めなさい」
スフィアが目を覚ますと、そこにはスフィアがそのまま大人になったような女性が純白のローブを身に付けて立っていた。
「あなたは、誰」
「私は魂の杖の化身。悪の心に奪われたたくさんの魂の杖の中でただ一つ穢れを免れた、マテリアー王国の象徴たる杖の移し身です」
「あなたは、魂の杖なの?」
「そうです。マテリアー王国が大魔王により崩壊に向かう中、私はあなたの中に居場所を見つけました。ジルアファン家の選ばれし者よ、これは全て運命が定めたのです」
「どうして。父上は、父上は」
スフィアはマテリアーを出るまでの記憶は戻りつつあったので、その悲しみは記憶をなくしていた王女の心にわずか蘇ってきていた。
「実はあなたの父、レゼットはジルアファンの血統ではなかったのです」
レゼットは、元は王家ジルアファン一族に拾われた影武者。貴族として振る舞う事だけを求められた、偽りの王族だったのだ。
しかしそれがいつしか、人格の優れた行いを王族たちの中で高く評価され、ジルアファンでない王という快挙を成し遂げた。
だがそれをジルアファン家は許さなかった。王を名乗る以上ジルアファン家から逃げるのは罪だとして、ジルアファン家であると偽るように要求してきたのだ。
「では、私は誰の子なのです」
「いずれ運命があるならば、真実はあなたを導きましょう。それまでは厳しい道を仲間と行くのです。あなたはもっと、強くならねばならないのですから」
そして、スフィアは目覚めた。
意識を取り戻しただけではない。失った記憶もまた復活していたのだ。
「みなさん。私、全て思い出しました。ゼロを助けに行きましょう」
そして、現在。
スフィアはゼロの手を取った。そしてゼロは、自然と頭を垂れていた。
「ゼロ、ありがとう。共に本当の悪を討ちましょう」
「上手く行きましたね、いや、上手く行きすぎだ」
ぱち、ぱちという拍手と共に、シュットが現れた。
「ただ、どちらにせよ貴様らは犯罪者。つまり君たちが悪。私がそう思う限り、すなわち永遠に君たちは悪なのだよ」
囚人たちにはもう、戦える者はいない。たった1人になったシュットだが、その笑みは不敵なままだ。
「皆に愛されてきた勝ち組には分かるまい。果たすべき大義を誰も認めない苦しみ。だから私は悟ったのだ。今度は君たちがそれを味わう番なのだとな」
シュットはサーベルに雷を纏わせた。そして、それだけでシュットの周囲の牢は鉄格子ごと吹き飛んだ。
「私はゾーン様に力を与えられた。ようやく認められたのだよ、私という人間の価値をな」
「ゾーン、何者なんだ」
「何者かなど、どうでも良いのだ。大事なのは人を動かす力。人が動けば、それこそが結果。力をくれるゾーン様こそ、私の正義」
サーベルに絡み付く電流は、さながら蛇のようにうねりを伴っていた。まるでそれは、シュットという野心の男の精神そのものだ。
(ふむ。電磁竜閃は残り一発。だがヤツの電気は魔法だ。どうしたら勝てる。ダラン、考えろ。ダラン=リーグイースト)
「早速、ボクの出番みたいだ」
ダランが素早く思考を巡らせる一瞬の内に、ゼロが一歩前に進み出た。
「狼の足、そんな棒切れで防げるかい」
「黙れ、悪魔人形。神聖な戦いを妨げるな」
魔法靴で、僅かな格子を器用に足で捉え、ゼロは思い切り蹴り切った。
「靴砲」
人形の体は、電気を通しにくい材質で出来ていた。そのためゼロの魔法は靴にしか効かなくとも、シュットに力強い突撃を叩き込んだのだった。
そこにいたのは、ダラン=リーグイースト。そして、ワルガー、マジル、スプスーもいた。
「あなたたちは?」
ゼロは彼らを知らない。会った事のない顔ぶれは、にこやかにゼロを見守っていた。
「あなたたちは、ボクを助けに来たのか?」
「ゼロ、そうよ。彼らは私を守ってくれる、大切な仲間たち。そして、やっとあなたを助けに来れた」
スフィア=ジルアファンは、少し遅れてやって来た。大切な記憶、置き去りにしてきた心を取り戻して、王女はゆっくりとした確かな足取りでやって来たのだ。
「これから、厳しい戦いになるかもしれません。ゼロ、あなたはそれでも着いて来てくれますか」
ゼロの答えは決まっていた。
王女の旅の新たな仲間として、優しい魔法人形、ゼロが今度こそ加わったのだった。
時は少し遡る。
タビウンを倒し、気付くとラオダルたちクレイジー・ドーンの姿はなかった。勝利の空気に乗じて、本格的に行方をくらましたのだ。きっと倒すべき凶悪な犯罪者ではあったのだが、ワルガーたちは追わなかった。
間に合わないのと、敵であっても曲刀の情けがあったからだ。
「スフィア、待ってて。すぐ動けるようになる」
「マジル、ありが・・・うっ」
「姫さん、どうしたァ」
「スフィア、しっかりするプリ」
「スフィア=ジルアファン。目覚めなさい」
スフィアが目を覚ますと、そこにはスフィアがそのまま大人になったような女性が純白のローブを身に付けて立っていた。
「あなたは、誰」
「私は魂の杖の化身。悪の心に奪われたたくさんの魂の杖の中でただ一つ穢れを免れた、マテリアー王国の象徴たる杖の移し身です」
「あなたは、魂の杖なの?」
「そうです。マテリアー王国が大魔王により崩壊に向かう中、私はあなたの中に居場所を見つけました。ジルアファン家の選ばれし者よ、これは全て運命が定めたのです」
「どうして。父上は、父上は」
スフィアはマテリアーを出るまでの記憶は戻りつつあったので、その悲しみは記憶をなくしていた王女の心にわずか蘇ってきていた。
「実はあなたの父、レゼットはジルアファンの血統ではなかったのです」
レゼットは、元は王家ジルアファン一族に拾われた影武者。貴族として振る舞う事だけを求められた、偽りの王族だったのだ。
しかしそれがいつしか、人格の優れた行いを王族たちの中で高く評価され、ジルアファンでない王という快挙を成し遂げた。
だがそれをジルアファン家は許さなかった。王を名乗る以上ジルアファン家から逃げるのは罪だとして、ジルアファン家であると偽るように要求してきたのだ。
「では、私は誰の子なのです」
「いずれ運命があるならば、真実はあなたを導きましょう。それまでは厳しい道を仲間と行くのです。あなたはもっと、強くならねばならないのですから」
そして、スフィアは目覚めた。
意識を取り戻しただけではない。失った記憶もまた復活していたのだ。
「みなさん。私、全て思い出しました。ゼロを助けに行きましょう」
そして、現在。
スフィアはゼロの手を取った。そしてゼロは、自然と頭を垂れていた。
「ゼロ、ありがとう。共に本当の悪を討ちましょう」
「上手く行きましたね、いや、上手く行きすぎだ」
ぱち、ぱちという拍手と共に、シュットが現れた。
「ただ、どちらにせよ貴様らは犯罪者。つまり君たちが悪。私がそう思う限り、すなわち永遠に君たちは悪なのだよ」
囚人たちにはもう、戦える者はいない。たった1人になったシュットだが、その笑みは不敵なままだ。
「皆に愛されてきた勝ち組には分かるまい。果たすべき大義を誰も認めない苦しみ。だから私は悟ったのだ。今度は君たちがそれを味わう番なのだとな」
シュットはサーベルに雷を纏わせた。そして、それだけでシュットの周囲の牢は鉄格子ごと吹き飛んだ。
「私はゾーン様に力を与えられた。ようやく認められたのだよ、私という人間の価値をな」
「ゾーン、何者なんだ」
「何者かなど、どうでも良いのだ。大事なのは人を動かす力。人が動けば、それこそが結果。力をくれるゾーン様こそ、私の正義」
サーベルに絡み付く電流は、さながら蛇のようにうねりを伴っていた。まるでそれは、シュットという野心の男の精神そのものだ。
(ふむ。電磁竜閃は残り一発。だがヤツの電気は魔法だ。どうしたら勝てる。ダラン、考えろ。ダラン=リーグイースト)
「早速、ボクの出番みたいだ」
ダランが素早く思考を巡らせる一瞬の内に、ゼロが一歩前に進み出た。
「狼の足、そんな棒切れで防げるかい」
「黙れ、悪魔人形。神聖な戦いを妨げるな」
魔法靴で、僅かな格子を器用に足で捉え、ゼロは思い切り蹴り切った。
「靴砲」
人形の体は、電気を通しにくい材質で出来ていた。そのためゼロの魔法は靴にしか効かなくとも、シュットに力強い突撃を叩き込んだのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる