マテリアー

永井 彰

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グランド・アーク

鍵を探せ

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 第三層に向かう階段があるらしき所には扉は、ぴったりと閉ざされていた。「第三層・階段」とわざわざ氷のプレートに掘られて壁に飾り付けてある。
 そして、3つの鍵穴が扉にはある。

「鍵を探さないと、プリ」
「石部屋、洞窟部屋、森林部屋。部屋の数と一致するのだから、おそらくそこに1つずつあるのだろうな」

 ダランの予測が正しければ、第二層にある3つの部屋のそれぞれに扉の鍵がある事になる。

「では手分けして探しましょうか」
「そうだな、適当に3組に分かれよう」

 ダランとワルガー。
 スプスーとゼロ。
 マジルとスフィア。

 このように分かれてそれぞれに部屋を探索することになった。

 まずダランたちの組はと言うと、石で出来た部屋を目指した。
 第一層からの階段が南西端、第三層への階段はフロア中央にあり、石部屋はその間あたりにある。

 石で出来ている部屋の中に、4つの箱があり、それぞれが繰り返し同じ事を言っている。すなわち、
 赤い箱は「我は鍵を持つ」
 緑の箱は「赤の箱は鍵を持たぬ」
 青の箱は「黄色の箱は正直なり」
 黄色の箱は「緑の箱は正直なり」
と言うのだ。

 更に4つの箱が四隅に置かれた中央の床には、次のような文句があった。
〈1つの箱のみが真実を言う。間違いがあれば、直ちに汝らは深い呪いに侵される〉
 そして、2人が気付くと入り口の扉はしっかり閉まっていた。

「解かねえと出られんらしいな」
「弱ったな、私は頭を使うのを得意としないのだが」

 1つのみが真実だとあるので、2人は順当に1つずつ真実であると仮定して考えて行き、最終的に赤い箱が真実を言っているという結論で一致した。

 赤い箱以外を考えていくと、緑の箱が真実なら、黄色の箱も真実になってしまい真実が2つになる。同様に、青の箱が真実なら黄色の箱も真実になってしまう。黄色の箱が真実なら、緑の箱も真実になってしまう。
 そして、赤い箱を真実とした時にだけ「1つの箱が真実を言う」という条件を満たす。これが2人が考えた理由だ。

 赤い箱を、ダランが恐る恐る開いた。

「合っていてくれ・・・!」

 そこには鍵が入っていた。

「やったぜ」
「まさか謎を解かされるとはな」

 閉ざされていた扉は再び開いた。そして2人は第三層の入り口に向かう。

 一方、スプスーとゼロは、洞窟になっている部屋に来た。

「薄暗いですね」
照明の羽バタフライト。光魔法で作った、この羽を持つプリ」

 洞窟の壁に、文字が刻まれていた。

「OTTFFS_ENT。_に入るは何か、アルファベット1文字で答えよ」

 それを読む間に洞窟の入り口が岩で塞がれてしまった。

「答えるとどうなるんでしょうね」
「鍵がきっと出てくるのプ」

 スプスーが考え込みかけていたのだが、ゼロはオールディント譲りの頭脳で答えを導き出し、スプスーに耳打ちした。

「行きますよ、せーの」
「「S」」

 問題が刻まれた壁が動き出し、横にずれていく。すると、空間が現れて台座の上に鍵があった。
 そして同時に、洞窟の入り口も開いた。

「やりましたね」
「なんでエスだったプリか?」

 それぞれのアルファベットには、ある共通点がある。それは数字を英語で1、2、3、・・・と数えると分かる。
 One, Two, Three, Four, ...
 そう、数字を英語で表した時の頭文字。それが「OTTFFS_ENT」の意味だ。この時、_は左から7番目。つまりSevenの頭文字が答えであり、それはS、というわけだ。

 マジルとスフィアは、森林の部屋にやって来た。

「本当に森そのものだな」
「ええ、猪に気を付けましょう」

 猪だけを言う意味は分からないが、猿の魔物が何やら紙切れを持ってきたので、マジルはそれを受け取った。

「魔物です」
「まあ、敵意はなさそうだから。それに、これ」

 その紙切れには、次のように書かれていた。

「花にはあり、葉にはない。点にはあり、字にはない。狐にはあり、タヌキにはない。それは何か答えよ。ちなみに漢字1文字である」

 2人は紙切れをよく眺め、考えた。

「これが分かれば鍵が手に入る、そういう事だろうか」
「マジルさん。む、難しいですね、これは」

 ふと気配に気付き、スフィアが振り返る。するとあったはずの何かがなくなっていた。

「あっ、―――入り口がありません」
「本当だな。どうやら、維持でもクイズをさせたいらしい」

 だが、マジルにはもう答えが出ていた。

「答えは火。さあ、鍵をよこせ」

 先ほどの猿魔物が、鍵をどこからか持ってきた。入り口も再び現れ、2人は元来た道を戻ったのだった。

 この問いは、問題でありなしを言われている文字の後ろに共通して入る1文字を当てさせるのが狙いだ。花火、点火、狐火。このように、ありの文字には共通して「火」という漢字が続くのである。


 鍵を手にした一行は、第三層の扉に集結した。
 鍵を鍵穴に差し込む。そして3つの鍵を挿し終えると、ごうごうと音がして扉が開いた。

 しかし一行は驚愕きょうがくする。そこにあったのは、第三層に隠されたもう1つの謎解きだったのだ。

「太陽は16、月は4、星は9。では宇宙は?」

 扉が開いた後に出てきた扉に、大きく書かれた謎に一行は、げっそりした。

「げえ、またクイズかよ」
「よほど先に進ませたくないプリ」

 マジルが推論を述べる。

「これはきっと、宇宙というのがヒント。宇宙には太陽が16、月が4つ、星が9つは有り得ないから、きっと惑星だ。そうすると宇宙それ自体は1つしかない。答えは1つだ」

 ダランが反論する。

「いや、太陽が16もあるとは聞いたことがない。月だって、地球の周りにある1つしか知らん。星が惑星ならともかく、これはそれぞれがいくつかあるか、なのかを、もう少し疑うべきかもしれないな」

 ゼロも仮説を立てた。

「うーむ。もしかしたら、それぞれの言葉を英語に直すのでは。太陽はsun、月はmoon 、星はstar、宇宙はuniverse。まあ、英語にしたところで繋がりは見えてきませんが・・・」

 スプスーも推理を披露する。

「数字に、何か意味があるプリよ。16日が太陽の日とか、太陽の直径が16キロメートルとか、きっとそういう理屈プ」

 ワルガーは痺れを切らしてきた。

「ああ、めんどくせえな。そもそも、この扉をぶち壊せばクイズに付き合う理由もなくなる」

 しかしそればかりは一同みな賛同しかねた。仮にもここはゾーンの根城。クイズといえども、間違えるとどうなるかは誰にも分からないのだ。まして反則は、とんでもない罰が待つかもしれない。

 すると、スフィアが閃いた。

「分かったかも、しれません」

 スプスーの言うように、数字に意味があるとするならば、それは漢字の画数だと言うのだ。
 確かに太陽は2文字合わせて16画、月は4画、星は9画、そして宇宙は14画。よって、

「答えは14。そうですね」

 ごうごうと再び音がして今度こそ、開いた扉の先に階段があった。
 戦いの後に謎解きを設けるあたりが、流石、大魔王の配下だけある。

 第三層への階段は、らせん状になっていた。ぐるぐると、まるで同じ所を回っているかのよう。

「ふう。う、うわ。俺は高い所がニガテなんだよ。なんでこんなに登らせんだ、ゾーンの野郎」
「確実にワルガーが登るなんて想定してないから」
「マーちん、冷たいのプ」

まだまだ続く、らせん階段。しかし中盤あたりから氷の精霊やガーゴイルの大群が襲ってきた。階段は思いのほか狭く、ワルガーは立ちすくみ動けないため、他のメンバーで倒していく。

大量飛竜レーザー・セット
魔法の釘矢ボルト
久遠正善魂矢エターナル・ジャスティス・アロー

 氷の精霊は蒸発し、ガーゴイルは戦意喪失してどこかに行ってしまった。

「皆さん、強いですね。ボクは魔法靴ホッパーしかないから」
「気にしないで、ゼロ。光の力を使えば、もう私も戦えるのよ」

 攻撃手段がなく戦いに参加できなかったゼロを、スフィアは励ました。

「ゼロなら、魔法を使えるかもしれないプリね。今度、時間がある時に幾つか教えてあげるっプ」
「スプスーさん、すみません」
「おい、人形マン。簡単に謝るのはナシだぜ、口癖になっちまう。言うなら、ありがとう、だ」
「す、すみません、ワルガーさん」
「―――フフッ」
「ん?マジル、今もしかして」

 スフィアはマジルが笑ったのを、初めて見た気がした。

「珍しいね、マジルが笑うなんて」

 ダランも気付いて、結局、みんなが笑ったのだった。

「スフィア、聞いて」
「どうしたの、マジルさん」
「マジルで良い。そんな事より、私は決めたぞ。私は先の戦いで、スフィアに命を救われた。だから私は殺し屋を今、やめる。そして王女を守る忍者になる」

 マジルの決死の意思だ。しかし、ダランは冷静に釘を差す。

「マジル。殺し屋をやめるのは、暗殺組合スカーを敵に回す事ですよ。それを請け負う覚悟はありますか」
「―――。―――私は、ずっと1人だった」

 兄がいても、彼もまた組織の一員。暗殺者である事は、孤独を抱える定めそのもの。それを切り捨てるならば、返るのは永遠の闘争だ。

「1人でしかいられないあの場所は、人間の居場所じゃない。私はスフィアたちを、人間を守りたいんだ。そのためなら、―――ヤツらと戦い続ける」

 らせん階段は静まり返った。その決断が正しいのかどうか、今は誰にも分からなかったからだ。

「見えてきたプリ。第三層っプ」

 巨大な扉が見えてきた。まるでここからが正当な城であると主張しているかのような立派ささえ否めない、いかつい扉だ。

「みんなで開けましょう。これからも、みんなで進んでいくために」

 スフィアの声に、皆が頷いた。
 そして、各々が扉に手を置く。

 ゆっくりと、扉は開いた。


 暗殺組合スカー。そこにはありとあらゆる殺しに精通した、猛者たちが集う。

「き、貴様は、―――なぜここに」

 マジルは、ぎょっとした。いるはずのない人間が、そこにいたのだ。

「マジル、よくも私を殺してくれたね」

 微妙に裂けた口を歪ませ、暗殺者は笑った。
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