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2019年10月21日。故人に抱いた夢と可能性

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 10月21日。

 昨夜はかなり早く寝た。もうここしばらく身体や精神がしんどいのがなかなか取れないので。

 昨夜は色んな夢を見たはずだが、印象的だったのは最初に見た夢。

 海外アニメ『RWBY』を制作しているルースターティースプロダクション(よくネットではR.T.Pとも)に取材か何かでお邪魔して、ニース=オウムさんに色々尋ねたりする夢だ。

 ニースさんは、監督だったモンティ=オウムさんの兄だ。モンティさんは、『RWBY』の2期が終わった後に医療事故?で亡くなった。

 人が死んだという悲しみはもちろんの事、まだこれから展開していくはずの作品を作る上で中核を成していた人物が作品に対し永遠に携われなくなってしまったのだ。

 僕が初めて『RWBY』に触れた時は日本版でのDVDが出たばかりのタイミングで、メインスタッフたちのオーディコメンタリーやメイキング映像などでも元気な姿で制作に当たったりインタビューに答えたりしているモンティ氏の姿を目にしていたせいか、既に故人であると知ったのは1期のDVDを観終わった後……ファンになったと同時のタイミングだった。

 そう。『この作品も制作者も素晴らしい! ファンになる!!』そう決めて、詳しくプロフィールを調べた瞬間にその人は既にこの世にいないと知ったのだ。この言いようのない悲しみが解る人はどれくらいいるだろうか。


 モンティ監督は作中で主人公の仲間キャラクターの声優も務めていた(R.T.Pでは制作スタッフが自ら声優を務める風習があるそうで)。台詞こそ少ないがこれがまた役とよく合っていた。


 そして兄であるニース氏は弟の葬式で初めて副監督を務めていた人と出会ったらしく、『声や雰囲気がモンティに似ている……』と思われたらしい。


 当然、兄弟だからといってさすがに情に任せて監督までは兄に任せられない。しかし、寡黙なキャラクターボイスなら……ということで、メインスタッフが頼み込んだ結果、ニース氏は声優の代役を務めることに了承した。


 そういった悲しい背後があったせいもあるが、夢の中でニース氏に対し、僕は単なる取材だけでなく、個人的に連絡先を交換しようとしたり、とにかく縁を結びたいと必死だった。彼の友人になりたかったのだ。


 夢から醒めてみれば、当然スマホの連絡先リストに彼の名前はない。寂しい。


 『RWBY』をもっと応援しようという気持ちが高まっただけでなく、そうして『人との縁をもっと大事にしよう。いつ今生の別れが訪れるのかわからないのだから』とも思ったのだった。


 話は変わるが、僕は趣味で絵を描く。かつて宮崎駿のような巨匠に憧れ、新海誠を目標にして、アニメーターになりたいと思った。自主制作アニメーションがブームになった時期に、僕はアニメ専門学校の門を叩いたことがある。

 結果は無残なものだ。ひとつひとつのプログラムで講師が教えることを一部も理解出来なかった上に「君はアニメーターでなく、作品を徹底的に分析して評論家になれ」と講師から言われる始末。今冷静に考えればプロの職人を目指すのになんて失礼な勧めだ、と憤りも覚えるが、幼稚な子供同然だった僕は当時何も考えず信じ込んでいた。『学校に入って卒業する頃には一人前になっている』などと本気で思っていたのだから最悪なぐらい始末が悪い。


 とまあ、僕の悔恨は置いておいて。

 そんな経験もあったから今なおアニメーターとか漫画家の人たちには強い憧れとコンプレックスを持っている。コンプレックスを何とか弱めて絵を楽しんで描き始めたきっかけは、ほんの2年前のことだ。


 2年余りでどの程度絵に対する認識が変わり、実力を付けたのか。ズバリ、『趣味のお絵描きの範囲を出ない』と思う。未だにアニメーターとか漫画家で食っていける人たちは雲の上の存在というか、天上人だ。


 それでも、ツールの進化でこんな素人でもある程度絵を楽しんで描ける環境は整いつつある。そこそこのスペックのPCとペンタブレット、そしてクリップスタジオなどの絵描きソフトがあれば、後は腕前と経験次第で漫画やアニメが作れる。2Dの絵とは少々畑違いだが、それこそ『RWBY』のようなエモーショナルなアニメも作れるかもしれない。


 だが、そこで僕はまた迷う。


 イラストレーションの類いは少しは齧る程度やってきた。だが、僕は果たして漫画とアニメとイラスト、どの絵描きが向いているのか?


 漫画を描く技術と、アニメ作画の技術と、イラストレーションの技術はそれぞれ全く異なる画力だ。画業のどれかひとつが飛び抜けているのなら他の分野も網羅出来るというのは大きな間違いだ。

 参考書を頼みにしようにも、ほとんどの本は内容が細分化され過ぎていて、如何なる名著でも漫画、アニメ、イラストレーション全てを網羅した参考書は未だかつて無い。強いて言えば人体の基礎構造やデッサン、風景デッサンの基礎的な書籍程度だ。


 ならば、どうすれば解る。


 何を試金石にすれば、自分の絵描きとしての適性が解る。


 どうすれば、より上達出来る。



 ひとつだけわかっている答えは……『実際に一作でも二作でもそれらを制作してみること』だろうか。


 漫画が上手くなる術は、どんな上手い理屈よりも『とにかく1ページでも1コマでも描くこと』と聞いたことがある。それ以外に上手くなる真の術は無い。


 言われてみれば、その通りだ。漫画を描かずに学術論文や創作論をいくら頭を捻って考えても、実際に描く経験を積まないと経験値は0のままだろう。恐らくアニメも同じ。



 雲を掴むような感覚だが、自分の絵描きとしての適性や可能性を探すなら、半ば手当り次第に試すしかない。


 今、『創世樹』などの小説を自分なりに書いている最中でも、僕の中で全く違うキャラクターによる全く違うドラマがわちゃわちゃと蠢いている。漫画でもアニメでも表現したい場面が沢山あるのだが……まあ制作環境や作品発表の環境を考えれば、手始めに漫画を描くのが適しているか。


 今まで自己流でやっていたが、久しぶりにやってみるか。


 1話完結、若しくは1話で終わっていても違和感がないプロットを書き、作品のイメージをキャラ設定表やイメージボードで纏め、ネームを描こう。そして、一作でも十作でも漫画を描いてみよう。そこでようやく自分の創作者としての適性が見え始める。


 R.T.Pのマット・ハラム氏の言葉にこんなものがある。


『皆さんの想像力を使って、皆さんに出来るどのような方法でも良いので、この世界をより良い場所にしてください』


 これは、モンティ=オウム氏自身もメディアに向けて言っていた言葉でもある。


 自分がプロになれるとは未だに到底思わない。


 思わないが、創作は単なる仕事や物品や金銭以上のモノを我々に与えてくれる。そう信じたい。
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