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2019年10月18日。ゲームを完成させた小6の兄の友人

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 10月18日。

 今回はゲーム制作ソフト・RPGツクールについて兄との微笑ましき昔話でもしよう。

 僕とRPGツクールとの出会いは1996年、スーパーファミコンで発売されたRPGツクール2から始まった。

 ある日、兄が突然ソフトを買ってきた。どうやら兄の友人の影響を受けて……当時は小学六年生ぐらいだったはず。買ってきたようだった。

 まずは作例としてサンプルゲーム『だんきちのバクチンだいさくせん!!』が予め収録されていたので、それを遊んでいた。これがサンプルだというのになかなかにキワドイネタやぶっ飛んだカオスな展開をねじ込んでくる。所謂『公式が病気』というやつだ。のちに公式ガイドブックを手にして解ったが、当時桃栗たき子さんがほぼ1人で制作したものだった。文面から察するに明るい人柄のようで、楽しいんだけれどどこか闇がある(褒め言葉)素敵なお姉さんなのだろう。

 サンプルゲームは今改めて見ると、初心者が作例とするにはイマイチ説明不足な面が目立った。だが、サンプルデータをそのままコピーして改造することも出来たので、サンプルを元にゲームバランスを考えたりイベントの挙動を確かめたりすれば結構参考になった。



 さて、ソフトを手にしある程度サンプルゲームもやり込んだ僕や兄は嬉嬉として初めてのゲーム制作に勤しんだ。学校から帰って宿題をそこそこにやったらすぐに作った。

 だが、実際にゲーム制作をやったことがある人なら大体わかるだろうが、ゲームをまともに1本完成させること自体非常に根気と努力、知恵が必要なのだ。故に制作を途中で投げ出しエターナった(創作物を制作途中で諦めること)人もとても多い。恐らく完成させた人よりも遥かに多い。その困難さからゲーム制作を嫌い完全に離れた人もいれば、ツクールは好きだけどファンの範疇に留まる人もいる。

 僕も兄も色々作ろうとはしたが、RPGツクール2では1本も完成することはなかった。

 当時の説明書に書かれていた『アスキーゲームコンテスト……グランプリに輝いた作品の作者には賞金1000万円!!』という、夢の企画も今は懐かしい。当時としてはかなりのドリームチャンスがあったのだ。

 結局、グランプリに輝いた作品は現れず終いだが、あのコンテストで生まれた名作のいくつかは今なおツクラー(ツクールシリーズの愛用者の通称。ツクーラーとも)の間で語り草である。


 だが、ツクール2を我が家のゲーム入れ箱に迎えてしばらく経ったら、なんと兄の同級生の友達が1本のRPGを完成させた。

 当時としては「へー、○○くんゲーム作ったんか! 見せて見せてー」という感じだったが、今冷静に考えれば凄い功績だ。小6の人生経験やゲーム体験、頭脳、センスで1本ゲームを完成させただけでも物凄いことだと思う。


 早速ターボファイル(ツクール2のゲームデータを保存出来る周辺機器。かつてのメモリーカードやゲームチップほどの記録性能は無いが、当時としては貴重な外部記憶装置だ)に入ったデータを読み込み、兄と共に遊ばせてもらった。


 内容は、まあ、小6男子が友達との内々に作ったものらしい身内ネタやお下劣なネタ、カオスなネタが炸裂してはいたものの、メインストーリーもゲームバランスも意外としっかりしたものだった。

 微かな記憶を頼りに話すが……確か主人公の友人(名前:カゲくん)が悪魔に呪いをかけられ、常に全身に真っ黒い影を纏った姿に変えられてしまったので、呪いを解くために世界中を旅して悪魔を倒す……というものだった気がする。


 最初から4人パーティで、主人公から仲間キャラまでキングくん、クイーンちゃん、カゲくん、魔剣士ちゃんという編成で、名前の通りキングくんとクイーンちゃんは王族の姿、カゲくんは真っ黒な人型、そして魔剣士という謎の仲間はバニーガール姿だった。


 さて、1996年発売で当時のゲーム少年たちが作ったゲーム、というくだりで察した人もいるかもしれないが、当時は旧スクウェアと旧エニックスの二大企業がRPGで業界を席巻していると言っていい時代だ。それらの名作たちに影響されたネタはバンバン出てきた。

 特に印象に残ったのは、FF4とクロノトリガーで出てきた『開発室』だ。

 『開発室』ではゲームを制作した開発チームがゲーム内のアバターを借りて登場し、特に意味の無いことや開発の裏話、キワドイネタ、さらには理不尽な戦闘イベントまで用意されていた。兄の友人もこれが好きだったらしく、なんとツクール2のゲーム内に隠しダンジョンとして3つも開発室を設置していた。開発室好きすぎだろ僕ら。


 まあ、その開発室の内容もゲーム本編に輪をかけて身内ネタやカオスネタが炸裂していた。本編の道中の宿屋の宿泊費がやたら高いとか敵キャラの名前がシュール過ぎるとか、そういう要素が霞むほどの悪ふざけっぷりだ。

 開発室の隠し通路を通ると、何故か船の姿をした友人たちがいる。体臭が強いとからかわれていた友人の黒歴史日記なアイテムがあるのだが、これを本人に見せると恥ずかしさのショックでUNKOを漏らす。

 何故か漏らしたUNKOを持ち歩いて別の友人キャラのもとへ持っていくと

「くさっ!?」

 とこれまたショックを受け、反動で何故か子供が産まれる。友人は男子だが、産まれる。産まれた子はアイテムとして持ち歩けるが、何の用途もない。捨てられない。売却出来ない。

 さらに最後の開発室に行くと、作者が玉座に鎮座している。グラフィックは何故か狼男。普通に話しかけると戦闘になる。

 仲間を4人連れていると戦闘になってしまうのだが、仲間を減らすイベントもある。

 開発室の通路に殺し屋がいて、クイーンか魔剣士を殺せてしまうのだ。実に酷い。普通にパーティ編成システムまでは作れなかったようだ。

 仲間を間引いて作者に話しかけると、今度は快く仲間になってくれる。そしてバランスブレイカーになるほど強い。ゲーム内で設定できる敵キャラのヒットポイントが9999までなのだが、最強の技を当てると5000もダメージを与える。ラスボスの悪魔も2発で倒せる。

 こういったいかにも小学生男子らしい酷いイベントが散りばめられ(ぶちまけられ?)ていた。


 繰り返しになるが、ゲームを1本、それも子供時代で完成させられるのは大変難易度の高いことだ。僕の兄の世代は何故だか性格は変わった人ばかりだが、何かずば抜けた能力を持っている人が多かった。


 当時の兄の友人たちは楽しんで作っただけだろうが、ああいったラクガキ帳に描き殴るような創作意欲は、大人になった今でも大事にしたいものだ。
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