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2019年10月25日。宮沢賢治原作『銀河鉄道の夜』劇場版アニメ感想

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 10月25日。

 調子が悪い、というか低調なので短いかも。

 今日は昔の劇場版アニメ『銀河鉄道の夜』を観た。宮沢賢治の名作だ。


 感傷的。ひたすらに感傷的で夢の中のような幻想的な世界観だ。

 作業所の先生に見せて貰ったのだが、先生は子供の時にテレビで放送していたものを、風邪か何かで熱を出して寝込んだ状態で見ていたので、余計に寝ぼけて夢でも見たような気分だったそうだ。


 ジョバンニとカムパネルラが山猫のようなデザインなのは、やはり宮沢賢治作品の中に多く山猫が登場するからクロスオーバーさせているのだろうか。


 空想の世界でありながら、科学との融合を試みている表現も多かった。先生の分析によると、スピリチュアルな精神世界に生きている人間のごく一部の書き手は語彙が少ないにも関わらず、巧みに言葉を操り組み合わせて誰にも真似出来ないような文章表現が出来るそうだ。それって凄いことだけれども、それが普段から出来てしまう人の精神は生きづらそうだな……とも思った。


 銀河鉄道の汽車に乗る人たちは、やはり死に逝く人々の魂の旅の喩えか。途中で天上の楽土、キリスト教で言う天国の世界の描写があったが、宮沢賢治はやはり真理を知っていたのだろう。死に逝くカムパネルラが行き着く先はブラックホールのような暗黒……即ち無の世界。宇宙の根源へと還ることを。これはどちらかというと仏教的な捉え方らしいが(僕は仏教は宗教ではなく哲学や精神医学の類いだと捉えてます)。


 『千と千尋の神隠し』の作中で千尋が電車に乗るシーンがあるが、児童文学に明るい宮崎駿なら当然知っているであろう。同じく死者の魂が荷物(恐らく生きていた頃の記憶や思い出)だけを大事に持って黄泉の世界へと逝く。途中の駅のホームに佇む少女の魂が『火垂るの墓』の節子である、と知っている貴方は事情通だ。やはり宮沢賢治の世界もオマージュし、踏襲している作家は多い。


 総合して、非常に高いクオリティのアニメ映画だと思った。まずあまりにも詩的な宮沢賢治の世界を映像化するだけでも難易度が非常に高いし、音作りも異彩を放っているように感じた。

 そして、こういった世界観のアニメも減ったな、と感じ、少し寂しい気分だ。


 詩的な世界を映像表現で観客に伝えるのは確かに難しい。だが、そういうチャレンジもこの先欠かさず挑むクリエイターが絶えないことを切に祈る。物質主義ではなく、情緒や精神世界を大事にする作品こそ、ある意味人間にとって大きな意味と価値を持つのだから。
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