マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第3章 東と西 黒の追憶編。

第115話 最強とパーマによる対談。

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「さて、始まりは何年前だったかな? アイツとの出会いは……」

「おい、そのトーンは何処かで聞いたことあるから止めろ。後、俺に関係する話なんだろうな?」

「……何を話そうとしたのか忘れた」

 別に適当な話をしようとした訳ではなく本当にボケて忘れてしまったのだ。

「俺に用事があったんだろ!?」

 目的を忘れてる奴に俺達は負けたのか?と疑いたくなるが、ここは我慢して目的を尋ねた。

「あぁ、そうそう……鬼塚弘人とは何処まで面識がある?」

 なんとか思い出し、魔界連合に関する話題で話を切り出そうとした。

「あの人が悪魔やりながら、鬼でヤクザやってるくらいだ。後は知らねぇよ」

「そうそう、あのハゲの偉いさんが組織調査として俺を任命し、チーム編成をしてたら、たまたま優秀そうなテメェに目を付けて、更に嫌がらせという名目でスカウトしにきたという話だったな? あまりにも下らなすぎて忘れてた」

(コイツ、本当に口悪いな。金持ち……いや輝さんの方が断然いいのに、コイツの道徳は何処へ捨ててきたんだ?)

 鬼塚から地獄の特訓を生き抜いた吹雪にとって、軽々と馬鹿にする忍の精神状態が危機的な物だと感じた。

「……なんで? っていう顔してるな。そんなに俺が悪魔相手にボロクソ言ってるのが気になるか?」

「ま、まあな……一応、ドラマとか漫画みたいに何かの協力者みたいな? 感じの味方なんだろ?」

 ここだけを聞かれて、悪魔達から報復されないか心配になる吹雪は動揺しながら、忍へ悪態をつく理由を尋ねた。

「……協力者っていうのは正解。俺の目は品川修二と同じで、力を抑える為に移植した」

「お、おう。そこはハッキリ言うんだな……力って、まさか『闇の覇気』が制御できなくなったとか?」

「違うな、『闇の覇気』は制御はできる。問題が『宇宙の覇気』だ。コイツの能力は空気操作、重力操作、無数分岐予知、隕石操作、空間操作、絶対零度操作、後は……」

「はい、終わり。多分、宇宙って色々と摩訶不思議なことがあるから、色々と言われて考えるだけも頭がパンクするから、止めてくれ。もう、やってる事が攻略不可能なラスボスになってるからよ……」

 そこへ吹雪がストップを掛けて、忍の説明を強制的に終わらせた。

「まだあったのにな……」

 色々と教えたいと思っていた忍は、分かりやすく不貞腐れていた。

「なんで制御できねぇんだ?」

「……無数分岐予知が問題だった。相手の行動パターンが、時間停止したみたいに脳に浮かび上がってくる。そして負ける事はできない、俺の身体は修羅場を潜り過ぎて、完全な勝利だけを求めていた。身体が勝手に対応し、止めようにも使っていない理性が本能に勝る事もなかった。だから、目を移植した。リスクを承知でな?」

「……アンタの過去は気になるし、強さの秘訣も知りたいと思った。けど、一番気になるのは……魔界連合会長、閻魔光との出会いだ。アイツ等の目的を知りたい――人間の力で敵うか怪しい奴等が、味方になりうるのか?だ」

 吹雪が知りたいのは自分を選んだよりも、閻魔光の目的だった。本当に味方なのか確認したかった。
 ウロボロスとの戦いで閻魔が動かない速さで倒した時点で、吹雪の本能は警報を鳴らしていた。
 本当に戦うとなると勝てるのか? という不安と恐怖が襲っていた。

「……別に教えても良いぞ?」

 忍は真剣な表情で少し間を空けて放った言葉が承諾だとは知らず、吹雪は拍子抜けした。

「良いのかよ! 今の間は何だったんだよ!」

「閻魔光の目的は……」

「早速、始めんなよ!」

 忍ペースに振り回されながら吹雪はツッコミの仕事をこなす。最早、仕事はツッコミ芸人なのでは?と忍は思った。

「……イレギュラーの排除、人類繁栄の手助け、天国文明・・・・の実現。その三つだ」

「……イレギュラーっていうのは?」

「ウロボロスみたいな人類に仇なす者を強制的に排除する事だ。今回、俺達が首を突っ込んだので、仕事の依頼が来てしまった訳だ」

 忍は淡々と閻魔の仕事内容を吹雪へ話す。

「人類繁栄の手助けっていうのは?」

「そのままの意味だ。人類を繁栄させ色々な欲を出させ、文明と日常品を開発させる……まあ、それをやり過ぎて、人間は核兵器を開発してしまい、人類滅亡となりかけたけどな?」

「……最後の天国文明・・・・って? 侵略するって事か? 天界側から人間を奴隷にするみたいな映画の話か?」

「いや、流石にそれはない。やろうと思ったら、『覇気使い』が繁栄する前に人間は奴隷化してるだろ……それに閻魔が、それを許さないだろうな。アイツは周りから極道という誰も得しない、世間から蛇蝎のごとく忌み嫌われる職業をしながらも、世界を見ている。矛盾しながら奴は……いや、少し話し過ぎた。コレは俺も分からない、悪い忘れてくれ――」

 初めて忍が他人へ対し思いやり、強制的に終わらせた。それも自ら謝罪し、間違いを認めたのだ。
 その態度を見て、吹雪は今の質問に対して改める気持ちになった。

「……じゃあ別の話題に変えよう。アンタの過去を少しでも教えてくれ……」

「……何故?」

 忍は表情を変える事なく、吹雪が尋ねた質問に対して疑問だけ持った。

「アンタが『覇気使い最強』まで、呼ばれる事になった武勇伝ぐらいは聞きたい。一応、柏木さんから、アンタの戦闘スタイルを教えられてるんだ。それぐらい参考にしてもいいだろ?」

「……柏木さんも困った物だな。弱点となる可能性がある物をベラベラと天敵に教えるなんて……しょうがねぇ、ここまで付き合わせたら話すしかねぇだろうな」

 致し方ないという表情で、忍は吹雪へ過去を話す決意をする。

「応……アンタ、柏木さんには優しいんだな?」

「あの人には厄介になってる。昔、俺の指導担当したりしながら、司教まで上り詰めた人だ。頭が上がらないな」

「へぇ~……俺って宗教の階級とかに詳しくねぇから分かんねぇけど、スゲェのか?」

 専門知識が苦手だから、ポケーとした表情で吹雪は忍に階級を尋ねていた。

「実は俺も知らん。だが、なんか凄い階級なのかもしれない! 閻魔から司祭やれって命じられたけど、なんとなく話しを合わせてたから、何が重要なのかも把握してねぇから、マジで階級制度とかも意味分かんねぇ」

 この話しをしても多分、ゴチャゴチャとなる予想がされ、忍はわざと阿保な振りをして、終わらせた。

「……なんか強制的に終わらせた感がスゲェんだけど?」

「気にするな。男がクヨクヨと過去のことを言い出してたらキリがないぞ?」

 これ以上は突っ込んでほしくないと忍は希望していた。

「……柏木さんって宗教やる前は何やってた人なんだ?」

「確か、京都の料亭で板長やってたって聞いてな……その前はホームセンターの店長、その前は大学教授、その前は海外留学して大臣と仲良くなったって聞いた。これは如何にも信憑性に欠けるから、教団ネットワークで経歴を調べたら……マジだった」

「……何そのハイスペック神父さんは?」

「だから、ログハウスとか細かくてややこしい物を作れると納得してしまう……それに木元雅を連れて来たのは柏木さんだったな」

「そうなのか?」

「あぁ、俺が少年期に柏木さんが急に屋敷へ連れて来た。その時、雅はボロボロの服で俺の前に立っていた。あまり気にもしなかった……が、アイツ、俺と出会った瞬間に顔面へ蹴り入れやがった」

「――多分、俺の予想だと『闇の覇気』で透過して無傷なんだろうな」

 吹雪は無表情で忍の行動を予想し返答した。

「はい正解。その時、俺は親父に課題を出されていた。『闇の覇気』を維持しながら生活しろってな?」

 そして、このまま吹雪と忍は夜遅くまで対談することになった。
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