マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第3章 東と西 黒の追憶編。

第116話 最強、海道を経つ。

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「よし、お前と深く交流できた事だ。要件を言うぞ?」

 夜遅くまで対談し、そろそろ置賜したくなった忍は結果だけを伝える。

「二日後に俺と雅は新大阪駅で新幹線へ乗り、東京へ向かう。そこで朝の十時まで待つ、来るか来ないかは、後はお前が決めろ……」

 拘束されて足に纏っている氷を忍は透過させて、立ち上がる。一歩前へと進み『ダークネスホール』から、新幹線から東京までの新幹線チケットを机上へ置いた。

「……」

 吹雪は新幹線チケットをジッと眺めていた。

「お前の答えを教えてくれ」

 大きな『ダークネスホール』を開き、ズブズブと入り帰宅した。

(荒らすだけ荒らして帰って行きやがった……けど、どうする? 俺には大学の単位もある。ずっと戦いばっかだから、美鈴の為にも一緒にいてやるべきなのは分かってる。だが、品川と差は縮まらない一方だ。アイツはどんどんと前に進んで行く……俺はどうするべきだ?)

 吹雪は大きく悩んでいた。修二と力の差が縮まらなく、もっと差が広がるばかりで内心焦っていた。
 これまでずっと修二と組んで戦って来たので、そろそろ一人でも立ち回れないと吹雪は、この数ヶ月悩んでいた。

「……どうすれば良いんだろうな。俺は――」

 どちらかを捨てなければならない選択に、迷いながら吹雪はベッドへ寝転がり、ゆっくりと瞼を閉じた。


 一方忍は、帰宅し自室までワープしていた。

「……吹雪が来なかったら、鬼塚辺り捕まえて日頃の鬱憤で働かせるか」

 吹雪が聞いたら青ざめそうな事を、忍は平気に発言しながら、裸となりベッドへ寝転がった。

「あ~やっぱ、閻魔の仕事は面倒くせぇ……」

 いない閻魔へ愚痴を呟きながら、今日の疲労を身体から忘れる為、ぐっすりと眠るのだった。
 翌日、直ぐ様目覚めた忍はシャワーを浴びる為、その場で素っ裸となった。

(――しまった。この前、裸で部屋を動き回るなって注意されたばかりだったな……でも嫌だな。裸でいることが気持ちいいのにな……やはり世の中にある常識のマナーが間違っているのではないか?!)

 自分が裸になれないのを世の中の所為にし始めた。
 脳内ではブツブツと世の中へ文句を垂れ流しながら、『闇の覇気』を使い、下半身辺りだけを黒い靄で隠した。

「一応、隠してる事になるよな? まあ、履いてるって事で、ごり押ししよう」

 メイドから文句言われても『闇の覇気』で覆っていると、完全に誤魔化す気マンマンの忍。
 そして浴室へ向かう為、ドアを引いて開けた。

「あっ……」

 ドアの前には、ノック態勢で驚愕し呆然とするスーツ姿の雅が立っていた。

「どうした? 何か報告でもあるのか?」

 たじたじで動かない雅に対し、先制したのは忍だ。もしかして裸の件で何かしら文句を言われるのではないかと、忍は身構えていた。

「はい。輝様が旅先を見まして、我々の動きが気になり、私に尋ねてきました。どうしましょう? 輝には正直に、閻魔様の仕事と伝えましょうか?」

「……あぁ、嘘ついて後から追及されても面倒だ。ここは正直に伝えておいてくれ、それから……一悶着ありそうだから、メイドと執事には避難勧告しておいてくれ」

「はい……それより、何故……裸なのですか? それに『闇の覇気』を覆って……何かするつもりだったのですか?」

 雅は戸惑いながら、裸になっている理由を忍へ尋ねた。

「……やっぱ、それ聞く?」

 困窮した表情で忍は、どう説明しようかと悩んでいた。

「やはり昨日、末端のメイドが忍様に失礼な事を申し上げたのが原因ですか? それならば私が、直々に性根を叩いて……どうしたのでしょうか?」

 メイド長として、主人に対する無礼を働いたメイドへ、雅が直々にと厳しく躾ようとする。が、忍に両肩を掴まれ、止められた。

「いや、俺も不注意だった事には変わりない。だから、彼女には何もしなくていい。私情も挟まなくても大丈夫だ。彼女も彼女なりに仕事をしている」

 忍なりの全力なフォローで、メイド長の指導からメイドを守った。

「……分かりました。忍様が、そう仰るなら私もわきまえましょう……輝様の件ですが、何処まで避難しましょう?」

「……取り敢えず、隣町のフロアまで避難しておいてくれ。衝撃波から他のフロアを防衛してくれ、後は……祈れ」

 忍と輝が喧嘩することは自然災害が起こる予兆であり、雅は急ぎメイドと執事達へ避難勧告する。
 今から喧嘩が始まろうという時、忍は地下に設備された浴室で、シャワーで身体を清めていた。

「……お互いに意地が張っているから、勝った者の言う事しか聞かないからな……久し振りに喧嘩か……」

 熱いシャワーのバルブを捻って止め、シェリア製の紺色なサテンシャツ、赤黒トランクの上から、グレー色スキニーパンツを穿き、裸足のまま地下から出た。

「……」

 そこへ忍を待っていたかのように、腕組みで壁へ凭れ、無表情の洋がいた。

「親父、早く避難しねぇのか?」

「あぁ、喧嘩が始まったら死なない程度に、尻尾を巻いて逃げる。それより司祭になったんだな?」

「情報早いな、勝手にされたんだがな? まあ、ちゃんとやるつもりだ……」

「――まだ気にしているのか?」

「……あぁ、気にしない方がおかしい。俺にとっては十字架を背負う羽目になった出来事だ。できる物なら……こんな重たくて身体が潰れそうな、十字架なんて下ろしたい……もう丁度十年になる……」

 洋による一言で、忍は曇った表情で途切れ途切れに返答する。

「――俺から言えるのは一つだ。司祭就任おめでとう、以上だ。閻魔様に粗相のないよう上手くやってくれ」

 そう告げると洋は壁から背中を離し、忍の前から立ち去った。

「分かってますよ……枢機卿すうききょう殿、できるだけ粗相のないように」

 洋の背中を眺めながら、忍より役職が上な事を呟き、誓うのだった。
 自室へと素早く戻り、忍はキャリーバックを用意し、荷物等を詰め込んでいた。
 ビジネスシャツ数枚、携帯電話、分厚い書物等を整理整頓しながら準備完了した。

「兄さん、五年前に発注して届いた。新しいサングラスはどうしようか?」

 そこへ何も知らない輝がサングラスの件で、忍へ尋ねて部屋に入場した。

「……輝か。すまないが、暫くまた留守にする。閻魔からの仕事だ」

 喧嘩となる前に忍は急いで部屋から退出し、新大阪から近いビジネスホテルまでワープしようと考えていた。
 だが、そう上手くいかず輝が右手でガッチリと忍の肩を掴んでいた。

「……それって遠出の準備をするぐらい、大事な事なの?」

 輝にとっては真剣であり、忍にとっても何事にも変えがたい程、真剣なのだ。
 例え、表情が平然としていても内心は争いたくないと思っているのだ。

「……閻魔には借りがある。それが終わり次第、何も言われなくなる」

「兄さん、五年前の事を覚えてる? 兄さんがフランスで勝手に行方不明になって、勝手に帰って来ては、また閻魔さんの頼みごとで、ゆっくり過ごせる時間を潰して、自分を犠牲にする毎日を送るの?」

「……」

 そんな事は分かっているつもりだ。けれど、コレ以上は自分自身の役目であるため、深く関わらせないと思った。

「品川の約束だって、まだ果たせてないじゃないか。閻魔さんの仕事は僕がやるから、兄さんは家でゆっくりして……!」

 輝が代理として閻魔の仕事を請け負うと言った瞬間、腹から強烈な衝撃が伝わった。
 それは忍がノーモーションで左足のみを上げ、神速で輝の腹を思い切り蹴ったからだ。

 そして輝は大きく吹き飛び、壁へ激突し、部屋中の窓ガラスを衝撃で粉砕させ、ダメージを負った。
 そのダメージの所為で輝は無抵抗のまま動けなかった。

「に……兄……さん?」

 輝は額から大量出血し、霞かかっている意識の中で忍を見た。

「……悪いが、半人前のお前に東京・・で仕事させる訳にはいかない。少しだけ、気絶していてもらうぞ」

 そう言いながら、気持ちを圧し殺した忍は輝へ靴底を見せ、的確に顎へ蹴ったのだ。
 蹴られた衝撃で輝は意識を失い、目覚める前に忍は『ダークネスホール』で荷物ごとホテルへとワープしたのだ。
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