いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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10:つとめを果たそう

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広い空間にでた。
夜目が効いているのか、なんとなく見える。
空間を把握している感じか。

いかにも、という地下空間。
土を粘土細工のように固め上げ、砂漠石を薄い幕にして
間に空気をいれて、エアーマットを作りベットとした。
そこにマティスを寝かせ、こちらもこまごまとした、休憩グッツを作り上げた。

センスがないので、実用主義だが、ま、いい感じだ。

扉の向こうの火は納まったのか、
がたがたと音がする。
しまった、死体もどきを置いておけばよかった。
そうすればマティスは死んだことになったのに。
あー、でも、そこまでする必要もないか。

そろそろ、ご本人をおこしましょうか。

『目を覚まして、体の不調はどこにもないよ』

驚異の腹筋力で起き上がり、そばに置いてあった槍手探りで探しあて構えた。

「おはようございます」
「・・・?どこだ?・・・なにも見えない。」

『明かりがなくても見えるよ』

そういうと、見えるようになったのか、さらにキョロキョロしだした。
テーブルとイス。そこに座るわたし。

「・・・とらえず、ここは大丈夫なところ。
気絶したあんたに蹴りをくらわしてから、
油かなんかを撒いて火をつけて、さっき帰っていったよ。
自称弟君たちは。
金目のものは、火をつける前にすべて持っていかれたけど、
それ以外であんたが「大事」だと思っているものは、すべてもってきた。
でだ、気づいていると思うけど、
わたしはここの人間ではないのよ。わかるでしょ?
あまり、ここの風習に疎いのよ。だから、砂漠の石のこととか、月の事とか、
ざっとでいいから、説明してもらえると助かるたすかるけど。
あー、左目と左腕は自分でつぶしたみたいだけど、もう、戻ってるからね。」

マティスは、大きく息を吐いて、槍を下した。
「座っても?」
「どうぞ。水しかないけど、おいしいと思うよ?」

椅子を勧め、水を出した。もちろん「おいしい水(原産地:ここの空気)」だ。

「まずは、感謝を。・・・・・・」

そうして、長い話を聞かせてくれてた。

合間に尋ねたことは、
太陽は昇らないのか?
魔法?なんでもできる力みたいな?
どれも初めて聞くものらしい。
最後に、

「・・・飴玉なんぞはくすねない。」

と、言われた。

「・・・なるほど。飴ちゃんで足がついたか・・・
 何を口にしているのか気になってね、
 ひとつとってみたら甘い匂いがしたから、思わずね。
こちらに来てから唯一口にしたものになるね。
 それぐらいもらっても文句は言えないと思うけど、
食べ物のうらみは怖いからいつか返すよ。」
「・・唯一?なにも食べていないのか?
・・人ではないのか?・・・今更だが、あんたの話が聞きたい。」

「うーん、こことは違うところから来たのよ。
 で、槍で刺されるわ、マッパだわ、乙女に対する暴力はあるわ、
そいえば謝罪もないよね?」
「・・・槍のことは、謝罪しない。ここは辺境だ。
 こうして話はできたが、あの時はあんたが何者かわからなかった。
いまもわからないが。
 ・・暴力、それは・・・、すまなかった。」
「・・・ふーん。その謝罪は受け入れましょう。
 さて、ゼムさんだっけ?この前来た人。
あの人、この騒ぎに気付いてこっち来るかな?」
「ゼムを知ってるのか?・・・ちがうな、あの時からずっといたのか?
ゼムは次の混合いはじめの月まで来ない。ここのことなぞ街には届かない。
セサミナも接触はしないだろう。でもなぜ?ゼムに?」
「ゼムさんが来たら、ついていって街に行こうとおもって。
 ここの事はおおよそわかったから。
太陽が昇らない。
1日が同じ時間ではない。
朝の挨拶の習慣がない。おはよう、こんにちは、こんばんは・・わかる?
基準はすべて2つある月の動きにある。
化学でも魔法でもない文化がある。
王様、貴族がある身分制度がある。
砂漠石は望んだことがある程度叶うけど、取扱注意。
砂トカゲは・・・おいしいの?」

「1日が同じなわけがない。月が沈み昇るまでの時間は毎日変わる。
アサ?挨拶はわかるが、オハヨウ?コンニチワ?コンバンワ?
さっきも言っていたな?オハヨウゴザイマス?だったか?
カガク?マホウ?
身分制度はもちろんあるさ。人が集まればおのずとできるだろう。
砂トカゲはうまいぞ。多少筋張っているが
砂漠石のことは簡単に言えばそうだが、さっき話したようにいろいろ制限がある。
しかし、あんたは、石使いのように扱えている。」
「石使い?魔法使いみたいな感じかな?」
「そのマホウとやらは何を示すかわからないが、
石の力を最大限に様々なことができる人の事だ。
 あんたは、石使いか?あんたの力はすこしちがうようだが。」
「石使いかどうかはわからんけど、そうだね、思ったことを強く願うとそうなる。
 浮いたり飛んだり姿が消えたりね。飢えがいやだからおなかもすかない。
 けど、心臓は動いているから切られると血は噴き出すね。
 止めることはできるし、出た血を元に戻すこともできた。
・・・わたしのからだ、なかなかいい感じでしょ?」
「なっ!!何の話だ!!」
「いやいや、わたしの力の話だよ。望んだようになるってね。
 質量保存の法則ってわかる?
変化の前と後で物質の総質量は変化しないって感じ。
 わたしのからだの脂肪は胸とお尻に、
あとはいい感じになってる。これは女の願望だね。
 けど、体重は変わらないはず。だから、すっごいのよ、わかる?」
「・・・・」
「それはさておき、弟君がしたみたいなことは石がなくてもたぶんできると思うよ。
望まないけどね。」
「あんたは違うところから来たといったな?
あんたがいたところではそれは普通の事なのか?」
「まさか!!こっちに来てからよ?泣いて起きて
 砂漠に行って、ちょっとやらかしたら石が出てきて・・・
 で、槍にさされた」
「・・やらかしたってあの地響きはあんたが起こしたのか?
石もやはり出たんだな?」
「そうそう、石が出たよ、おっきいの。それをそこの鞄にいれて使ってるよ。
 力がどうのというより加工性抜群の素材だよね?」
「鞄?しかし、5つも置いていっただろう?
もう残ってないんじゃないのか?なんでだ?」
「いや、なんか、申し訳ないなーとおもって。
石の事気にしてたから価値があるのかなと?
 きれいだしね。それにまだ石はあるよ。」
「あんたを探すのに4つ使った。気配が分かったのは最初の一回だけだ。
 最後の一つはゼムに渡した。見てただろ?」
「うん、使うと砂になるのね。気配は最初こっちを向いたから、
気配も消すように願ったんだよ」
「・・・そうか。石を使ったわけではないのか?すごいな。」
「そう、すごいよね。いわゆるチートだ。もう、どのパターンかもわからない。
 夢よ覚めろ、元に戻れと、強く願っても起きないし、戻れない。
 受け入れるのが自分でも早いと思うけど、仕方がないね。」
「チイト?時々わからない言葉が出てくるな。
それに聞こえる言葉と口の動きが違う。
 なぜだ?」
「そういうのをチートっていうんだと思うよ。
 お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま・す」
「?」
「最後のおはようございますって音と唇の動き合ってたでしょ?
てか、よく見てるね?
 これね、朝の挨拶。
わたしの世界では月と太陽があって、太陽が昇れば一日の始まり。
 その時の挨拶。月が昇れば夜でしょ?
沈めば太陽が昇って朝。簡単に言えばね。
 で、朝の挨拶。おはよう」
「月以外にそのタイヨウというのも空を制しているのか??
 違うところというのはこのグラシオル大陸ではないところという意味だよな?」
「違うよ。もっと別なところ。別な世界。あんたの本のなかにもあったでしょ?
 子供向けの本でさ、妖精の国とかそういう物語の世界。
 それと似て非なる世界だと思って。そこからなぜかここに来たのよ。」
「あの本も読んだのか?
しかし、妖精の住まう国というのは妖精たちが作り出したり現実逃避の妄想だぞ?」
「え?妖精はいるの?現実逃避ってなに?虐げられてるの?」
「いる。あたりまえだろ?奴らは基本働かないんだ。
なにかの庇護のもとに生きている。
 妖精の国は働かなくても日々生きていける国なんだと。
それが妖精の国だ。
 いつかそこに帰るまでここにいてやる、
だから養えという無茶なことを言う輩だよ
 見目がいいから貴族、王族のペット扱いだ。」
「うーん、わたしが知ってる妖精とちがうかもしれない。
 ま、ともかく、そういう別の世界から来たのよ。妄想じゃなくてね。
 で、もとには戻れないから、この世界で暮らそう、街にいってみよう。
 どこにある?ゼムについていこう、ってことで。」
「・・・妖精のように養えとはいわないのか?
それだけの力があれば王族に取り入ることも可能だぞ?」
「ばかだなー。だからだよ。
これだけの力があるんだから王族何ぞにかかわるのもばかなはなしでしょ?」
「・・・なるほど。」

理解できているのかどうかわからないけど、マティスは大きくうなずいた。

よくある話で異世界に転移、
現代科学を異世界で披露して文化レベルの向上ってのがあるが、
逆の場合もあるはず。ないものの証明、悪魔の証明はできない。
蒸気の力での産業革命まではまだしも、
そこからの電気、電子の発達はなにかしらの力が働いたとしてもおかしくないよね。
電気も0と1の世界もわからんもん。
でも、便利さは手放せない。上位の文明から下位への移転、ありうるよね。
でも、そんな話は聞かなない。万全の体制で秘密裏に披露しているか、
何もせずにその世界で生きて死んでるかだ。
べらべらとしゃべったりするやつはそもそも転移はしないかもしれない。
ならば、わたしは、というと、後者だな。生きて死ぬだ。
昔、新聞の詩の投稿に

-生きることは権利ではなく
-つとめだと・・・
-ただ黙々とつとめを
-果たすことだと・・・

というのがあった。切り抜いてずっと持っていた。
獣医だった父君が独り言のように言った言葉で
看取った方の投稿だった。

-それでも別れの時は
-つとめを果たしたのか
-やすらかな顔だった

ああ、つとめを果たそう。どこにいてもだ。
なにかの言葉で人生が変わったか?と聞かれればこの詩をあげるだろう。
死んでるように生きるのではなく
生きて死ぬ。

だから、ここの世界に来たことも受け入れられる。
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