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70:何も聞こえない
しおりを挟む彼女の作ったテーブルとイス。
一脚だけだったのでもう一つ出す。
そこに飯を用意すると素直にすわって食べてくれた。
何も言わない。
ありがとうも、おいしいも。
でも、心の中でも大絶賛で、表情もクルクル変わる。
心の中は見るものじゃないと思うけど、
もう少しこのままで。
話をしていく。弟の事、街の事、いろいろ。
彼女の思いが伝わってくる
---うまうま
---おお、きれい
---すげーなおやじ
雑貨屋の親父に興味が行く。
なぜだ?
---ハゲチャビン
なに?それ?
---曲者
---話がしたい
弟と話がしたいのか?
---見たくない
私を?
---お風呂
---腹が立つ
---ハゲチャビン
またそれ?
---ここはもう国外?
まだ出ていない。
---ぼっきゅん
---メイド
---雇う
---海
---海鮮
---これで決まり
どんどん思いがあふれる
---何て名前?
誰の?
---名前は呼ばない。
---名は呪だ。縛り付ける。
どうして?呼んで?
---帰れない
---お金
---素晴らしい
---先ほどはありがとうございました。
---食事も素晴らしくおいしかったです。
---家を無くされて大変だと思いますので、
---お礼と言っては何ですが、こちらの家をお使いください。
---おそらく収納関連の力もお使いいただけると思いますので
---持ち運びも自由ですよ。
---では、わたくしはそろそろお暇させていただきます。
---今生での別れでごさいます。
---本当にありがとうございました。
何を言ってるんだ?
「・・・三度の飯は私が作る。
家を建てるのはいい。
ぽっきゅ?メイド?召使か?必要なら雇えばいい。
海に行くのも山に行くのも自由だ。2人でな。
だが別れる?今生の別れ?
それはダメだ!」
声を荒げる彼女、怒りの言葉が心の中と同じで飛び出してくる。
「ウハウハな生活?私が考えた?
子供のことはいい、怯える?捨てる?」
あの時考えたこと?彼女の力の話ではなくて?
後何を考えた?
---ん?わたし、声出していた?なにもしゃべってない、はず。
「・・・心の中が聞こえる。漠然としているが
ところどころ理解できる。
今生云々のあたりははっきり分かった。」
「!!」
彼女の姿が消える。
気配を消したんではない。外だ。
外にでて、気配を探す。風呂を作ったあたりか?
月を見上げ左右を見渡す彼女を後ろから抱きしめた。
「ダメだと言ってる。」
彼女はうずくまり、目も心も閉ざした。
何も聞こえない。
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