いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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130:おまじない

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「もう月が沈んでる。我々の敗因はなんだ?」
「はっ!風呂に入った後、試作のぼでぃすうつの意匠を決め、
その段階で着用してしまい、楽しみ、寝てしまったことにあります。
それと、ほぼなくなってしまった食料の補充に時間がかかりました。
その責任を数値に置くと、ワイプ7割、マティス2割、モウが1割であります。」
「モウの1割が納得できないが?」
「もっととねだられ「黙れ!!」
「イエスマム!」

「もう、1日が早いのはいいけど、丸一日はないわな?」
「いいじゃないか、食料も補充できたし、草原サイは夜行性ではないはずだ。
これをせめて数頭狩らないといけないだろう?北の国は海の国だ。
肉はなかなかに手に入らないかもしれない。」
「そうだね。サイってどんな習性なんだろう?単体で行動?
複数?知ってる?」
「このガイドブックに載っていた。サイは単体で日中草を食べるためにかなりの範囲を
移動するそうだ。その速さは、、、、俊足馬以上で、土煙と振動を感じたら、
即、避けること。直進してくるのでよけやすい。ただしジグザグに移動するので1度避けても
数回遭遇する。止まった時は草を食べているのでその時は何もしないこと。
狩りをするときは突進してくるのを狩るべし。とある。」
「ふーん、なんで草を食べてる無防備な時に狩ったらダメなんだろう?」
「それは書いていないな。」
「ま、先人の知恵はなにかの教訓を含んでることが多いからその通りにしようか?」
「お前はいつもいいことをいうな。そうしよう。ちょうど、向こうから地響きが聞こえてくる。あれだろう。」
「え?耳いいね?んー?あー!ほんとだ来る!!マティスいける?」
「ああ、大丈夫だ。お前は上空で待機、誰もいないと思うが、気配は消してな。」
「アイアイアサー!!」


西の道に入り何もない道を進んでいくと北側から土煙をあげながら
あの吊るし肉の原型であろう物が突進してきた。ああ、サイと言われればサイだ。
ただ、毛がふさふさ。流れるようにたなびいている。
この世界の動物は毛が長いのが特徴かもしれない。
かなりの速さでマティスに向かう。マティスは半歩軌道を外し、道に向かって腰を落として構えている。
通り過ぎる瞬間マティスの正拳が炸裂してサイは西側に吹っ飛んでいった。

「おお、すごいね。一撃か!」
「あ、触るな、その毛に毒がある。触れた瞬間痛みが走った。」
「え?大丈夫なの?見せて!!」

右手の甲を見るとすでに赤くはれていた。

『毒なぞ効かない、痛みもない!!』

すっと腫れは引いていく。
「どう?痛いのない?」
「ああ、大丈夫だ、ありがとう愛しい人。」
「あは、その呼び名がなんか懐かしいね。
じゃ、おまじないもしておくね。」

手をぎゅっと握り

『ちちんぷいぷい!痛いの痛いの飛んでいけー!』

「はい終わり」
「不思議だな、最初の言霊で痛みはなくなったのにいまので、さらに気持ちがスッと軽くなる。」
「へー、ちちんぷいぷいは定番のおまじないだよ?
んーなんだっけ?なんか、賢くて優しくて力と勇気もあるから泣かないで痛み何ぞどこかに飛ばしてしまえ、だったかな?
それがちちんぷいぷい痛いの痛いの飛んでいけ。だったとおもう、たぶん。」
「たぶんか。それも久しぶりだな。でも、いい言葉だ。」
「ふふ、そうだね?でもまじめな場面でこれを言われるとわたし笑っちゃうかも。」
「なぜ?」
「子供向けのおまじないだからね?あはははは!」
「な!!しかし、実際きいたぞ?」
「うん、実際に願ったもの。さ。この毛はどうするの?」
「なにか方法があるんだろうな。とりあえず、収納して草原の民に聞けばいいだろう。
ここいらに住んでいるんだ、知っているはずだ。」

あの一撃で死んだわけではないので、槍で心臓を一突きしてから
収納した。あの状態でキープされるから、血抜きを先にしなければいけないのなら
そこから始めればいいらしい。どちらにしろ生きていれば収納できない。
生きてる状態で血抜きはさすがにしないだろうとのこと。うわ、それは勘弁!

「じゃ、次はわたしがしてもいい?」
「ダメだ手が腫れる。一時でも痛みを感じるのはダメだ!!」
「でもさ、この広いおでこに撃ち込めばいいんじゃない?」

サイの顔は平べったくおでこが広い。牙もあるが
口から左右に伸びているが短い。
手のリーチのほうが長いから打込めば脳震盪は起こすだろう。

「そうだな、次にそれを私がして大丈夫だったら、やってみてもいいかな?」

そこから寂しい道を進んでいく。草はあるが草原とは言えない。
サイも食事が大変だ。
で、今日のお歩きのテーマはまじないになった。

「うーん、まじないというか、今のちちんぷいぷいでしょ?
あ、これはここでも向こうでも効果あるよ?枕神様!!
起きたい時間、例えば5時だと5回まくらの後ろを叩くの。
マティスの腕枕でも効果あったよ?」
「あの腕にぐりぐりしてたのはそういうことか?」
「はははは、で、物がなくなったら物隠し小僧さんごめんなさいとか?
でもこれ、いま呼び寄せがあるから言ってないな、結構効くんだ。
あれだけ探してななかったのに、
物隠し小僧さんごめんなさいって三回唱えると目の前にあるのよ。」
「それは無意識に呼び寄せを使ってたんじゃないのか?」
「ないない!向こうでそんなことできてたら、大金持ちだよ!見世物で!!」
「・・・」
「あとは、夜に笛を吹いちゃいけないとか、夜に新しい靴をおろしちゃいけないとか、
夜に爪を切ると親の死に目に会えないとか?夜にってのが多いな。
しかもまじないじゃなくて、しちゃうとだめってものばかりだ。」
「お前の言う先人の知恵で教訓が含んでいるんだろう。」
「ああ、そいうのかな。なんせ、昔は夜は暗かったから、
ここみたいに月で常に明るいわけじゃないからね。
ああ!脅し文句の一つね、毎夜月明かりがあると思うなよってのがあるけど、
これ、ここでは使えないね。」
「どういう意味だ?」
「お月様がね、満月になるのは30日に1回であとはだんだん細くなって、
真っ暗になってまただんだん大きくなってくの。
だから満月の前後以外はだいたい真っ暗なの。
そんな時に命を狙われたら逃げられないよ?って意味」
「なるほど面白いな、脅し文句か。」
「そう、ここの定番ってある?」
「そうだな、夜の砂漠に放り投げるぞとか?」
「あははは!それ、実際にやられてるよね!!」
「あ、本当だな。脅しではないな!」
「あははははは!!」
「はは!これのことでこんなに笑えるなんて!あはははは!!」


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