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132:あしらい方
しおりを挟むここはメーウーの産地。
乳とメーウーの毛、そこから作る毛糸。
ブラシに使う少し硬い草、それが特産品。
乳はたいていチーズになる。
飲む習慣はもちろんある水代わりに乳。しかし、料理には使わない。
メーウーの肉は食べない。筋張って、どう料理してもダメなようだ。
乳の出ないオスでもだ。数が減ればそれだけで、メスの乳の出が悪くなるから。
メスは乳。オスは毛を。
オスのほうが毛足が長く艶がある。うまくできている。
水代わりに飲むからか皆、ボインボイン。
ちなみに私はかなり抑え込んでいる。
ざっくり編んだ毛糸地の服を着ている。
染色技術も進んでいるのだろう、様々な色があった。
家もモンゴルのゲルのようで、メーウーの毛が使われている。メスの毛を利用。
フェルトのように使うから、艶と長さは関係ないらしい。
どこか牧歌的だ。
床を敷き詰める色とりどりの絨毯は圧巻だった。
1枚ほしい。
しかし、砂漠の民が街にあこがれるように、
草原の民も街に住みたがる。ゼムはその成功者だ。
皆があこがれている。
年に数人はゼムをたよって街に行くらしい。
あの卵屋さんもゼムさんより数年遅れて街に出たそうだ。
それだけで、ゼムと呼ばれるのが
気に入らないらしい。
いろいろ説明してくれるのは、村長さんだ。その横は奥さん。
村長が上座でその正面に客人ティス、その左側に妻のわたしモウ、
ティスの右側になぜか村長の娘。名乗られたが覚えていない。
距離が近い。
人の名前を憶ええるのは昔から苦手なのだ。
しかもこちらの名前。ますます覚えられん。
決してむかつくからではない。
その証拠にいろいろ聞いているのはわたしだ。
村長さんは的確に説明してくれる。先生向きだ。
「では、ゼムさんには別の名前があるのですね」
「ええ、ラーゼムコーゼムナームルシートタートスですね。
わたしはラーゼムコーゼムルーツイルアナドバスです。」
「・・・すいません、村長さんとお呼びしても?」
「ええ、もちろんです。ラーゼム草原のコーゼム、これは一族の名前ですね。
そして父の名前、母の名前、自分の名前です。なので、街のゼムはタートスで、私はドバスです。
でも誰もドバスとは呼びません、みな職名で呼びますよ。
先ほど見張りに立っていたのは見張りの若い奴と、いつもの奴みたいに。それでわかるのです。
ここも人が減りました。チーズを作って、毛糸をつくり染色していく。
仕事は有りますが、食が、肉がないのですよ。それだけで若いものは外に行く。」
「そうですか、食べものは大事ですね。でも、あのサイは?」
「あれが年に3頭でもとれればこんなことにはなってませんよ。
2頭は領主に売り、1頭で村人皆で食べて、また頑張れる。
しかし、サイ狩りの人間が立て続けになくなりましてね。
一人は年齢で180歳、寿命を全うしたのですが、サイ狩りの若いほうが、毛にやられましてね。
気負いと若さがあったんでしょう、草を食べている間に風上から打てば大丈夫と思たんでしょうな。
即死したならよかったんですが、手負いの状態で若いのに向けて毛を飛ばしたんですよ。
かわいそうに苦しみながら死にました。その時死んだサイが村で最後に食べたものですね。」
うまい肉が砂を噛んだような味でした。
それで、ついこのあいだ、石に躓いて転んだサイが見つかりましてね、
みなで食べるより領主様に売ったんですよ。領主様もこちらの事情を知っていたので
いつもの倍で買っていただけました。」
(あう、それを奪たんだね、にーちゃんとねーちゃんは)
(だから一頭渡すだろ?)
「いい領主様ですね。わたしたちは砂漠の奥、サボテンの森で住んでました。
あの揺れの前に街にいたのでたすかったんですが、あの、揺れはご存じですか?」
「ええ、ここまで揺れましたよ。あれは何だったんですか?
月に2度ほどの街行くのですが、ちょうど戻ったばっかりで分からないのですよ。」
「砂漠がゆれて、サボテンも砂も何もかも天に昇って、砂だけまた振ってきたんです。」
「砂だけ?それは恐ろしい!街は街は無事ですか?」
「はい、もちろん、街に被害は有りませんよ。ゼムさんも元気です。
ああ、先ほどお話に出ていた卵屋さん、あの方は揺れをまえもって察知していたのか
棚に工夫をして卵の一つ割ることはなかったとか、すごい知恵ですね。」
「あははは!ラーゼムコーゼムドバスマルナロクリですね、そいつはわたしの息子ですよ。」
「そうだったんですか?ここで感じた揺れの何百倍の揺れだと思います。
その揺れであの割れやすい卵を一つも落とさずにする工夫はすばらしいですね。」
「ああ、そういっていただけると、親としてうれしいですね。あいつは昔から
手先が器用でね。思いついたらすぐに実行しようとするんですよ。
揺れの前にもね、乳を街で売るとか言い出してね。日持ちもしないのに。
氷を調達させられるわで大変だったんですよ。あれが売れたのかどうか。まだ、知らせが来ませんがね。」
「氷が取れるのですか?」
「ええ、南に行くと隣国との国境の山がありましてね、そこは万年雪があるのです。
その近くの湖はいつも半分以上凍ってる。氷も売れます、割にはあいません。」
「そうですか」
(よかった、氷を売って生計立ててる人がいなくて)
(おまえはいつもそういうところに気がまわるのだな。)
(それを言うならセサミンだよ、ちゃんと考えて乳を売り出そうとしてるんだよ。)
(ああ、自慢の弟だ。)
(そうだね。)
そこで、さっくり置いてけぼりになっていた右側の娘、村長の娘でいいだろう、
そいつが甘ったるい声を出した。
「兄の話なぞもういいです。ティス様のお話をお聞かせください。
砂漠の民で、草原まで起こしなのは?ここに住まわうのですか?大歓迎ですよ?
サイを2頭も仕留めてしまうほどの腕でしたら、嫁の2人や3人十分娶れるのでは?」
(うーわー)
(なんだこいつは?)
(マティス、頑張って?)
(何を?)
(マティスのあしらいかた一つでここでの過ごし方が決まるよ)
(あしらい方も何もないだろ?)
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