いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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166:窒息

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セサミナの部屋ではなく、ワイプの部屋に皆が集まった。
もどってすぐに従者と弟子の食事だと、
いかにも残り物寄せ集めを持ってきた。
食べる気は起きない。

扉を閉じると同時に防音、部屋のなか自体を隠匿した。

そして私は彼女を抱きしめる。あー、落ち着く。
ワイプに給仕してやるなぞ、どんな罪を犯したというのだ。

「マティス、お疲れ様。
ああいうのもやっぱり勉強の一環として習うの?」
「マナー教育の一つだ。されるもの、するもの、
その両方取得してこそのマナーだといわれた。」
「かっこよかったよ?」
「ならよかった。」
「ルグもなんでもできるんだね。文武両道ってやつだ。」
「恐れ入ります。」
「ドーガーももう少しで名は知れ渡るね。がんばれ」
「はい!」
「姉さん、ありがとうございます。
なにもされなくても、あのまま出していたらやはり笑われていたでしょう。
これはなんだと。助かりました。」
「そんなことないよ。見せてもらったものは丁寧で、艶があって、滑らかだった。
あれは高級タオルの部類だ。頑張ったね。染めるとバリエーションも出るからね。
あのタオル地でローブを作ればさらに高級感が出るよ。ただ、このローブは縫い目がないからね。
素肌にあたるから、できるだけないほうがいいと思うんだ。
良かったらとトックスさんに相談してみたら?きっといい方法出してくれるよ。
出来上がったらわたしもほしいもの。」
「ええ、相談してみます。出来上がったらもちろん姉さんにプレゼントします。」
「ふふ、楽しみにいるね。
それと、ここの娘さん、手癖が悪いみたいで、
色ガラスと黄色い海峡石を盗ったんだ。」
「そうです!奥方は何も言わないし、セサミナ様もそのまま流してしまうし、
よかったのですか?」
「いいの、いいの。ここにまた移動させたから。
代わりのものは入れといたから、ちょっと楽しみだ。」

彼女の悪い顔がまたかわいい。
ほかの4人は何かを察したのか黙って震えていた。

「ささ、一所懸命移動させたものがありますから、食べましょう。
セサミナ殿もあまり食べていないでしょう。盛り付けは、ま、許してください。
モウ殿、この半透明のものがおいしかったですよ?」
「うれしい!ぜりー?、あ、煮凝りか。おいしいね、こういうの好きなんだ。
んー、でも臭みはとってないね。灰汁をとったらもっとおいしいのに。」
「なべですか?あの時も思ったのですが、灰汁を丁寧に取っていましたね。
ここではそんなことはしないんですよ。」
「そうなの?ちょっとした手間でおいしくなるのにね。もったいないね。
あ、お肉はさすがにおいしい。」

彼女がおいしいといったものを食べさせてくれる。
うん、うまい。彼女が口に運んでくれるのでなおさらだ。

「始まる前に言った言葉は石をつかった言葉だったのですか?」
ワイプが聞いてくる。
「うん、そんな感じ。毒が入ってたかどうかはわかんないけどね。
明日のみなの反応でわかるよ。時間差の毒を盛ったのになぜ動けるのか?ってね。
ここで食べたものはみんな力になるからね。どんどん、食べよう。」

それでも、持ってきたものはいかにもだったので食べなかった。
害のある成分だけは彼女に頼んで取り出してもらって置く。

ワイプが移動したものは、ある程度固形のものだけでだったので
結局作り置きの、食料を出すことになった。
彼女が作ったというソーセージも湯がいて、焼いて持ってきた。
酒もだ。

それが終わったらまた彼女の後ろから抱き付いた。

「マティス君はいつもそうなのですか?」
「んー、似たようなものかな?まだ、自制してるよね?みんながいるから」
「そうですか。」
「あ、テン君たち、馬組は大丈夫かな?」
「ああ、彼らは大丈夫ですよ。石も置いてきたし、飼葉もある。」
「そう?また、お茶葉を持っていこう。
明日はすぐに手合わせするの?朝ごはんは?」
「あさごはん!あの甘いとしょっぱいものですね?」
「いや、あの時間帯に食べるから朝ごはん。
あれは胸焼けするから、簡単におにぎり作っておくよ。」
「おにぎり!あの白い塊ですね!楽しみです。」
「白い塊ですか?それはどのようなものですか?姉さん?」
「あー、あんまり期待しないで、ほんとうに簡単なものだから。」

そこからまた飲んで食べてだ。
私が給仕をしている間に彼女が口を動かしていたのは
クッキーを口の中に移動させて食べたいたからだ。ドーガーも。
この2人がすることはあまりに幼稚だ。
なのに、そこから、どの大きさなら咽ないか、水の量、温度、
挙句に酒も飛ばす。マナーレッスンの教師が見れば卒倒ものだ。

「でもこれさ、相手の口の中に大量の水を移動させたら窒息死するね。」


「「「「「なにそれ、怖い!!」」」」」

相変わらず彼女の発想は恐ろしい。



「みなはこれからどうするの?泥棒に入られた部屋には入りたくないでしょ?
ここで寝たらいい。わたしとマティスは家に帰るよ。」

そのことに関して誰も何も言わない。

「ああ、主寝室はセサミナ殿がお使いください。
従者部屋はお二人で。わたしはここで寝ますよ。」
「え?」
「ああ、いつも、そんなに寝ませんしね。そんなように体がなっているのですよ。」
「でも!」
「愛しい人、そんなものなんだ、心配する必要はない。」
「そうなの?じゃ、あのクッション出しときますね。
もたれるだけでも疲れが取れるようにしておきますから。」
「ああ!あれはいいですね。お願いします。」


久しぶりに彼女と家の寝床で寝ることができた。
彼女は一段とかわいかった。

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