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200:お祝い
しおりを挟むいくらをみせれば、彼女は大笑いをした。
「でかい!でかすぎるよ!これいくら?100万円ですっていう感じで!
ぶひゃひゃひゃ!!!」
しばらくは、ひゃくまんえんとつぶやきながら笑っていた。
「はーおかし。これはどうしようかな?
とりあえず、ちょっと切るね。ん?あー、なかにあるのか。
あ、これなら、大丈夫よかった、さすがにソフトボール級のいくらはないわー。
あ、パチンコ玉ぐらい。良い良い。じゃさ、マティスはこのおおきな塊から、この玉をだして、
中のを割らないように、こう、くるんと皮を返してくれる?
わたしはこの大根でこそげ落とします!」
言われた通りにしたものを渡すと、赤根を斜めに切ったもので、ツイッとそいでいく。
面白いようにポロポロ取れていった。
おおきな桶にいっぱいのものができ、それを丹念に水洗いしている。
不純物を取り除いているらしいが、移動すれば?といえば、
手順は踏んだ方がいいよ、との返事。
そのあと日本酒をいれてざぶざぶ洗い、濃いめに出した出汁の中に入れていく。
これで様子を見ようと、保存庫ではない、冷蔵庫にいれた。
外した皮や、血の塊は徹底的に掃除した。
これが少しでも残ると生臭くなるからということだった。
月が昇る少し前にワイプがまた来た。
「なぜおまえはここに来るのだ?」
「おかしなことを。わたしはあなたたちの師匠ですよ?いわば保護者で、親です。
親が子供を心配して、見に来ることが悪いのですか?」
「師匠!きょうのおやつはわたしとルグで作ったんです。食べてみてください!」
「やはり一番弟子は、1番弟子ですね。あなた、マティス君は末席ですよ?」
「末席って2人じゃないのか?」
しふぉんけーきと言う。
ここに行きつくまでの失敗作は、朝ごはんのふれんちとーすとになるらしい。
2人で菓子作り。私に食べさせたいためなのだ解っているが、
ルグとの雰囲気が、赤い塊に対するものではなくまた別のものになっている。
取合りあえず、ルグに気を飛ばしておく。
「あはは!マティス?いま、ルグに気を飛ばしたでしょ?
ルグはね、お父さんなんだ。」
「ルグが?」
「そうだよ?理想の。こう、子供がやってることを優しく見守る感じの。
あぶなっかしいときは手伝ってくれて、ダメな時はダメと、怒るんじゃなくて叱ってくれるね。
息子さんだっけ?いいね。憧れのお父さんだよ。」
「ありがとうございます。次の雨の日にはもう一人生まれます。」
「わ!すごい!おめでとう!ん?次の合わさりの月が来たら乾季に入るんだっけ?
奥さんのそばにいなくちゃいけないんでしょ?」
「そばというか、館内にいますから。」
「そうか、従者の家族は館の中に住んでるんだ。」
「わたしたちのようにセサミナ様お傍付きと呼ばれるものだけです。
いつ何時動くことがあるかわかりませんので。」
「そうかー、あかちゃん生まれたらお祝いさせてね?」
「姉さん?どうして子供が生まれることがおめでとうで、お祝いをするのですか?」
「え?怖い!セサミンが怖いこと言ってる!」
「怖い話をするのは姉さんでしょ!」
「え?おかしいのはわたし?マティス?師匠?」
「そうですね、わたしもわかりません。なぜ、おめでとうなのか?祝いするのか?」
「愛しい人。ここでは雨の日に皆生まれる。お前の言った誕生日とか、誕生日の歌なぞないんだ。
あたりまえのことなんだ。」
「うわー、そうなんだ。でも、うれいいでしょ?家族が増えるのは。おめでたいことだから、おめでとうで。
それを知り合いがお祝いするんだよ。」
「やはり、不思議な習慣ですね。」
「そうなの?お祝いしちゃダメとかはないよね?」
「それはないですよ。ただするものがいないだけで。」
「セサミンとこは領主だから、お世継ぎが生まれたー!!って盛り上がらないの?」
「領主の妻の子が生まれるだけであって、世継ぎになるかわからないからそれもないです。
正式に次期だと決まったときにはありますが。」
「おお、意外とドライだね。」
「?」
「殺伐としてるというか、なんというか。でも、お祝いするのは自由だね?
奥さんになにが欲しいか聞いといてよ?こう見えても出産祝いは数多くしたからね!」
「たとえば、どんなものか聞いても?」
「んー、やっぱり、赤ちゃんの服かな。あとはマザーズバック?おむつとか哺乳瓶とか便利に収納できる鞄ね。
お祝いはいろんな人がするから、同じものが重なったらもったいないでしょ?
だから必要なものを聞くことが多いかな?」
「あの、も、奥方様がめでたいと言っていただけるだけで充分です。」
「あはは!でも、奥さんに聞いてあげて?がんばった奥さんにするんだから。
一人目の時にこれがあったら便利だったのにっていうものとかね。
ここの世界は育児は女の仕事っぽいけど、なにかないか?って聞いてあげるだけでいいと思うよ?」
「では、聞いてみます。」
「軽い感じでね。じゃ、結婚の祝いとかもないの?」
「それは有ります。」
「あ、よかった。ドーガーは結婚するときはもちろんお祝いするよ?」
「はい!!」
「モウ殿、これは、食べてもいいのですか?
こちらの方が興味深いのです。」
「あ、そうだね。クリーム添えて。これは紅茶ね。
はい、召し上がれ。」
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