いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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199:賭け試合

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「戻った。」
「あ!兄さん!お帰りなさい。ドーガーも収穫は出来たのか?」
「はい!もう、移動も我がものにできたと思います。」
ルグさんより、繊細に使えます。」
「コンブだよな?取りに行ったのは?鍛錬したてのか?」
「昆布を移動させていたのです!」
「?うまくできたならよかったな。兄さんもなんだか、うれしそうですね。」
「ああ、海鮮の補充ができた。」
「そうですか!こちらの話も終わりましたよ。さすがトックスさんです。
このローブが売れることしか見えません!」
「そうか。それを彼女にも報告してやってくれ。喜ぶだろう。」
「はい!」
「では、トックス殿、私の用件を話していいだろうか?」
「ああ、明日に、ってのはダメなんだな?いいよ、なんだ?
領主さんと、若いのは、そこで服でも見ててくれ。
気に入ったのがあれば買ってくれよ?」
 「はい!」

「まずはこの絵を見てほしい・・・」



彼女のドレス姿を見て、トックスも、数点ドレスを作っていたようだ。
安い仮布でのドレス。それでも意匠はさすがのものだ。
これを絹にすればどんなに映えるだろう。
金剛石を加工したものを見せると、また話が膨らんでいく。
そこにセサミナとドーガーも加わって、彼女のドレスの話から、
装飾品の話まで及んでいった。

トックスとの話は、月が沈んでも終わらなかった。

「ああ、わかった。わかった。
まずは、先にローブの意匠を煮詰める。旦那、睨むな。
先に片づけたほうが、ドレスにじっくり掛かれる。
4日後にまた来てくれ。その時に、このタオル地で作っておく。
ドレスもその時には大体の形は作っておく。旦那の意匠を盛り込んだものだ。
それが固まったら、本布で作るから。
とりあえず、今はもうダメだ。さすがに腹は減るし、眠い。
店は休業だ。あんたたちも、ここで寝ていけばいい。
若いのは寝てるじゃないか?大丈夫か?」
「そうですね。いったん帰りましょう。また、4日後に寄せてもらいます。」
「わかった。4日後だな。」
「ドーガー!帰るぞ!」
「!!はい!」
「ああ、トックス殿、これを。」

作り置きのおにぎりを出しておく。
何も入っていないのと、カニみそ、唐揚げ入りのもの。

「?米か?へーこのまま食べてもいいのか?」
「そうだ。中に具が入っている。お茶と合う。」
「コットワッツは食がいいな。」
「今度、彼女の故郷の料理を振舞おう。」
「そうか?そいつはたのしみだ。」


ドーガーは欲しい服があったようだが、
手持ちでは足らなかったようだ。
買ってやろうか?と聞くと、貯めてから買うという。
財産は3日殺しの呪いの時にセサミナに渡している。それはそのままなのだそうだ。
セサミナも返却しようとしたが、それで命が助かったものだからと。
彼女に話せば買い与えるだろうか?それとも金を貸すのだろうか?


「そりゃ、稼ぐしかないね。」

館に戻って、彼女の気配を探れば屋上にいた。
屋上は、不思議な空間になっていた。

丸いジャグジーがあり、植物園があり、タロスの木も植えてある。
ばーべきゅうができる火台、便所、台所とある。
はんもっくというそのうえで寝れるようなもの。大きなクッションもある。
とらんぽりんまであった。
真ん中には大きなテーブルがあり、戻ってきたらおなかがすいているだろうからと
久しぶりにお好み焼きを作ってくれていた。
残っていたエビをみんな使ったと申し訳なさそうにいうが、補充はできたので安心するように言う。
さすが、わたしの旦那様だ褒められた。指数60だ。
いくらで100にいくだろうか。

ドーガーは疲れたのだろう。
瞬く間にお好み焼きを食べると、ハンモックの上で眠り始めた。
ルグも2人の時に何かあってはといつも以上に緊張したようで、クッションの上で眠っている。
セサミナはローブがうまくいきそうだと報告し、彼女に褒められていた。
それを聞いて安心したように、ルグの横で寝ている。

わたしと彼女は屋上のじゃぐじいに入っている。
水の中で着る服だという、私には下着のゆったりしたもの、
彼女も胸当てと下着のような恰好で入っている。
ルグと2人で作ったそうだ。
まさか、その恰好をルグに見せていないだろうな?と聞くと、
着てはいないし、我々の前でその姿になる場合は
私の許可を得てからにしてくれと言われたそうだ。
うむ、ルグはやはり人間が出来ている。
もう少し、胸元を詰めればいいだろう。

そんな恰好で、ゆっくりじゃぐじいだ。
ドーガーの話をすると、稼げばいいとなった。
「なにで?」
「んー、なんでもいいよ。賭け試合?街角で、1回手合わせ、5リング。
負けたら没収、勝ったら10リング差し上げますとか。」
「それは面白いな。ドーガーは、そうだな、ブラナダには負けるな。ルグで同等か。
軍部の大抵のものには勝つんじゃないか?ああ、資産院の暗部あがりはダメか。」
「お嬢の護衛たちは?」
「気配さえ消していなければ大丈夫だな。」
「そういうお金を賭けた手合わせってここでしてもいいのかな?」
「王都はいつも刺激に飢えている。いいんじゃないか?」
「でも、目立ってしまうね。そうだ、あのお嬢また来てたよ?
3人組はクッションごといなくなってた。」
「あの3人ではぎりぎりか。
久しぶりに鍛錬するかな。資産院の鍛練場を借りよう。
今日の資産受け取りが終われば鍛錬だな。
4日後にまたトックスの店に行く。
ローブとドレスの試作品ができるんだ。
それまでに鍛錬して、もう少し底上げすれば、帰りに間際に10人ほど相手をすればいい。
それで50リングだ。十分だな。
それとな、お前の言う、いくらが手に入ったかもしれん。」
「え?いくら?魚の卵?あったの?売ってた?」

彼女は興奮気味に聞いてくるので経緯を話した。
「気持ち悪いって、そうか、すじこ状態か。お礼はしたんだね。
さすがだ。もし、いくらだったら、また分けてくれるかもしれない。
そうか、軽いお礼で十分なんだ。うん、勉強になったよ。さすが、旦那様だ。」
「しかし、見てみないとわからないぞ?ここの厨房で出そう。」
「うん、楽しみだ。形や大きさが違うのはわかってる。
うまくいったら、いくら丼にしよう。」

彼女はさっと3人がまだ寝ていることを確かめると、チュッと可愛らしい音をたたて
頬に口づけをくれた。ああ、指数100だ。



風呂上がり、いくらの検分をするつもりが、
彼女も一睡もしていないので、うつらうつらとしだした。
そのころには、先に寝ていた3人が目を覚ましたので、
屋上ジャグジーを3人に譲り、一度家に戻った。

寝床に寝かすとそのまま眠りに入る。
彼女は頭から寝るのだ。
頭を枕か、私のうで、胸に押し当て、ぐりぐりと安定する場所を作り寝るのだ。
そのしぐさがなんともかわいい。

米だけを炊いて、わたしも寝ることにする。

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