いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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241:接着剤

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「初めまして、イスナ様、フック殿。
対戦はほんとうに素晴らしいものでした。
わたしくしは夫の応援に夢中になってしまいましたが、
あの雄姿を引き出すことができたフック殿に嫉妬してしまいました。」
「なんと!赤い塊殿に嫉妬されるとは!
フック!でかした!今回一番の成果だ!領国での自慢話がまた増えたぞ!」
「はい!」

なんでそれが自慢なんだ?

「ボルタオネは木材加工が素晴らしいとか。
わたくしは、異国の出身なのですが、わたしも少し携わったことがありましてね。
お恥ずかしい話なるのですが、木表と木裏を間違ったことがありますし、
化粧単板の送りと拝みもよくありました。
あ、もちろん最初だけですよ?」

こういう話は失敗談を話せばそこから盛り上がるのだ。

「おお!ここで木材の話を聞けるとは。それに、木表木裏、ははは!
ボルタオネでは子供のころから木と接しておりますが、
理屈はわからぬまま肌で覚えてしまいます。
仕事を任されて慣れてしまった時に一度はやらかす間違いですな!」
「そうですね。その頃でしょうか。何も考えずに並べて加工したんですが、
あとで反りましてね。大失敗でした。聞けば、その時の上司はわかっていたと。
経験しないと覚えないからと後で聞きました。
道理でここだけという少ない範囲の指示だったのかと。勉強させてもらいました。
しかし、無垢材の扱いが少なくなり、化粧単板がふえますと、木目のこのみが、
人それぞれなんですよね。わたくしには美しく仕上がったと思ったんですが、
施主様には不評で。全面貼り換えでした。
見本を出しての念押しが足りなかったと、怒られましたよ。」
「それもありますね。しかし、よく材が取れましたな。
最近は良い木目の材が少ない。」
「ああ、ここでもそうなのですね。たまたま在庫がありました。
その作業場にはありとあらゆる単板があることが自慢でしたよ。
もうかなり前にわたくしはそこから離れてしまい、作業場も閉鎖してしまいました。
あの単板がはどうなったのかと、いまでも思い出します。」
「たんぱん?化粧たんぱん?」
「ああ、言葉が違いますかね、こう木目のきれいない材を薄く薄く削いだものですよ。
鉋はありますよね。あれの鉋屑よりもう少し厚いぐらい。
それをお安い板の薄いものを縦横に圧着してその表面に化粧単板を貼ったものですね。
こちらでは何というのかは不勉強で知らないんです。わたしくしは無垢材がすきなのですが。
ああ、今思い出しましたよ。化粧単板の歴史は接着剤の歴史だと。
確かにそうですね。ここでの接着剤はどうのようなものをお使いですか?」

「あ、姉上!その専門的なお話は、その。」

あ、しまった。
イナスさんが怖い顔してる。

「申し訳ありません。昔を懐かしんでしまいました。
お笑いくださいまし。」

「いえ。セサミナ殿。明日、お時間はいただけるか?
タオルのこともありますし。」
「ええ、それはもちろん。月が沈んで半分ぐらいで、そちらにお伺いさせていただきます。」
「いえ、ぜひ噂の鶏館を訪問させていただきたい。」
「ええ、それはもちろん。どうぞいらっしゃってください。
あの、姉上は遠い異国の方、ご無礼があったのでしたら、わたし、セサミナが謝罪いたします。」
「え?いえいえ。謝罪などとんでもない。
できればモウ殿、もう少しその話をお聞きしたい。
その時に我が自慢の木材製品もお持ちしましょう。」
「それはうれしいお話です。あの、できれば道具類も見せていただけますか?」
「はは!これはこれは。ご婦人にそういわれたのは初めてですよ。
ボルタオネはみなが自身の道具類を持っております。それをお見せしましょう。
では、わたしたちはこれで。フック、戻るぞ。」
「はっ。」


他の人と話すことなく帰ってしまった。
いいんだろうか?

「セサミン?なんかまずかったのかな?」
「わかりません。あまりに専門的なことなので。姉さんは木材加工を生業にしていたのですか?」
「うん、少しの間ね。」
「送り?拝みとは?」
「こう木目をさ並べるときに、送っていくか、こう真ん中から開いたようするかってことなんだけど。
用語は同じだったね。単板は通じなかったけど。なんていうんだろう?」
「愛しい人は好きなことを話し出すと止まらぬからな。」
「あー、そうか、好きなことなんだね。
木材はいいよ。植木職人もだけど、大工さんにもなりたかったんだ。」
「大工?姉さんが?」
「うん。ね?ルグ、屋上庭園の作業ぶりよかったよね?」
「ええ、わたしも趣味の範囲ですが、奥方は発想もすごいのですが、
そこに行きつく説明が納得のものです。もちろん加工技術も。」
「・・・ルグ、あとで手合わせしよう。」
「え?なぜ?」
「お前は私の知らない愛しい人の姿を知っているからだ。」
「マティス!もう!ルグ、相手しなくてくていいから。
マティスもわたしの大工さん姿みたいんなら、見せるから。
引出がいっぱいある机を作ろう。鉋とか売ってくれるかな?」
「わかった。」
「さ、セサミン、次いこう、次。」


マトグラーサ、ルカリア、ナソニール以外は概ね好評だった。
ご婦人を連れているタフト、フレシアはダイヤをお気に召したようだ。
これはまだまだ試作品でお売りすることはできない、
お譲りするとすれば、1粒100リングはかかてしまうというが、それでも欲しいという。
次回会合の時にという約束をしていく。
トックスさんの衣裳も好評だ。
近いうちにコットワッツで店を出すと、毛皮も、預けたものを持ってきてもらって
見てもらう。懇親会がコットワッツの商品説明会になってきた。
まずいな。
ほら、やっぱり。



「これはこれは、セサミナ殿。盛況のようですね。」
「ええ、ありがとうございます。ライガー殿が最後に姉上を紹介して頂いたおかげで、
みなが、ドレス、耳飾りのダイヤに注目してくれております。
ああ、遅くなりました。ライガー殿、優勝おめでとうございます。」

ルカリアの領主とライガーだ。
ライガーさんよ、わたしを上から下まで見た後の、
その間抜け面はおやめなさい。

「あ、ああ、ありがとうございます。
ことごとく、棄権されたおかげです。」

まさにその通りだ。

「ええ、銃の前ではとてもとても。
銃の量産も王都の協力のもと行われるとか。
素晴らしい話ですね。」
「ははは!そうです。ああ、見本として一つお配りしているのですよ。
なのに、みな、タオル?や装飾品の話ばかり。」
「ははは、それは、女性の目にはそうなりましょう。
ああ、タオルとはこれです。どうぞ。」
ルグが丁寧にタオルをライガーに渡す。いまは冷たくはない。
ドーガーは小さなダイヤと金の装飾。
「なるほど、女子供が喜びそうだ。
赤い塊殿も、そこまで着飾ってようやく見れるものに化けることが出来るのだから。」
(死にたいのか?)
(マティス!いま、褒められたんだよ?セサミン?わかるね?)
(はい)
「これはお褒め頂きありがとうございます。
姉上、紹介しましょう。
ライガー殿の伯父上にあたるルカリア領国、領主テレンス様です。」

身内だったんだ。

「初めまして。コットワッツ領国、領主セサミナの護衛を務めております
赤い塊、モウでございます。
ライガー殿の英断、ご紹介できるお役目をいただき光栄でございました。」
「ほう、セサミナ殿は姉として紹介されたのに、護衛と名乗られるか?」
「ええ、先ほどから、その銃先、我が主に向いておりますので。
わたくしを試されているのかと。」
「はは、これは失礼。弾は入っておりません?ほら。」
カチンと引き金をひく。
リボルバーではない。安全装置もない。自動拳銃か。
ワルサーP38の名前しか知らん。
「これを差し上げます。ああ、弾は12発装填できます。
3発こちらに。
どうぞご検討ください。1丁、180リング、弾は1発10リングです。」

うわー、プリンター商法だな。
1発10万円。これだけ高ければ庶民にいきわたるのは時間がかかるか。

「もちろん隠匿は掛けておりますよ。真似をされ、劣悪なものが
ルカリア製の銃だといわれてはたまらない。」

そりゃそうだ。

「姉上?持ってみますか?」

ほんと、BB弾銃ではないわな。重い。
グリップのなかに弾倉があるのは同じ。トリガーもこんな感じだっただろうか?
砂漠石で弾を送り出しているのかな?

「砂漠石の送り出し最大弾数は?取り換え可能?」
「さすがは赤い塊殿。持ち方も構えもご存じの上、そこまでお気づきになるとは。
 耐弾数は36発前後、取り換えは不可です。」

ん?じゃ、本体180プラス弾36発360リング?
36発撃つのに540リング?高くない?1発15リング。15万円。
しかも前後って。まだいけるとおもっていても撃てない場合があるのか。

「ああ、お渡しいているのは。耐弾数、残り3発のものです。」

(これが商売か。セサミン、良いか悪いかは別にして勉強になるね)

「なるほど。さすがですね。勉強になります。」
「セサミナ殿にそういわれると悪い気はしませんね。」


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