いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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251:酔っ払いの動き

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彼女はたまにいらぬ方に考え込んでしまう傾向がある。
体を動かさないからだ。
健全な精神は健全な肉体に宿ると彼女は言う。
良い言葉だが、そうなるとワイプは健全な精神の持ち主になってしまう。
それは間違いだ。断言できる。
健全な肉体に健全な精神が宿るとは限らない。
逆もそうだ。
彼女の場合は、少し肉体がつかれている方が気持ちの健康が取れるのだろう。
いろいろ考えすぎるのだ。いつものように、まぁ、いいか、と考えればいい。
運動し、うまいものをたべ、笑い、寝れば治る。

鍛練場に行くと軍部のものが何人かいた。
1番隊の面子だろう。大会にも出ていなかった。
彼らこそ軍の上位だ。遠征から戻ったか。
彼らにもガイライは耳のことを悟らせなかったのか?
そうなると、その実力は知れているということか。

「マティス、モウ。彼らは1番隊のものだ。
いま、東、ピクトの遠征からもどった。
大会のことを聞いて悔しがっている。
わたしとモウの手合わせを見せてもいいか?」
「なぜ?」
「大会に出ていれば自分たちが優勝して副隊長になっていたと。」
「ああ、なるほど。」
「あれだね、ガイライ。あまりいい人材に恵まれてないね。
かーちゃんは心配だよ?」
「!!この年になり、母に心配をかけるとは。
わたしの不徳の致すところ、面目ない。」
「ははは!ゆっちゃあれだけど、彼らはわたしにすら勝てないよ?
気を意識して弱くしてるんならわからないけど。
それで、わたしとの手合わせ見せてどうするの?」
「愛しい人とガイライの手合わせをみてまだそんなことを言えるかどうかだな。」
「?」
「愛しい人。あの連中はある程度強い。だから自身より強いものが分かるはずだが、
軍部では昔の栄光で1番隊の副隊長だと思われていたようだ。
だから、本気で相手してやればお前の強さももちろん、
ガイライの強さもわかるというものだ。」
「なるほど。じゃ、師匠か、マティスが相手すればもっといいんじゃないの?」
「わたしは嫌ですよ?面倒くさい。」
「私もだ。ガイライの強さを戦いを見なければわからないという奴らのためにするというのがだ。」
「マティスと師匠は同格、その上をガイライは行くのね?」
「手合わせでな。」
「ん?」
「殺してもいいのならまた話は違う。」
「あー、そういうのね、なるほど。」
「愛しい人、思いっきりやれ。大会では30人相手の後だったんだ、今回は違う。
ガイライも遠慮せずにあたればいい。彼女の本当の強さがわかるだろう。」
「もちろん、そのつもりだ。」
「姉さん!がんばってください!!」
セサミナたちはトックスと一緒に一番いい位置を陣取り酒と、菓子、つまみを広げている。
お祭り気分だ。
「わたしの分を食べないでくださいよ?
わたしは武の師であなたは弟子なのですから、我が弟子モウ、
思いっきりやりなさい。ただし、じいはダメです。この鍛練場が崩れます。」
「はい!師匠!マティスも見ててね!」
「ああ、思いっきりな。」
「はーい。では、ガイライやりましょう。
あ、ほんとに酔拳って酔っ払いの動きだから、心配しなくていいよ?」
「ええ、わかりました。」
「でも、ま、最初だけだろうね。きっとガイライにつられるね。」
「そうでしょうか?」
「そうだよ。」



中央に出た二人が礼を取り、お互いに下がる。



ガイライが先に仕掛けていくが、
なるほど、酔拳。うまくかわしていく。

よろめきながら攻撃していくが、事前に聞いているガイライも容赦なく攻撃していく。
この動きは色っぽい、これは禁止だ。

彼女はニヤリと笑い、雰囲気を変えていく。
あくまでもいままでのは酔拳というものを見せるためだ。

「参る!」


ああ、うらやましい。
彼女とここまで踊れるのか。

「あなたとの剣技はこれ以上でしたよ?ほんとにうらやましい。」

ワイプが小さく呟きながら手を握ったり広げたりしている。
棒での力の入れる時を計っているのか。

自分が対戦していればこの姿が見ることが出来ない。
できることなら自身が対戦し、その姿を外から見たいものだ。


何もかもなくなってもいいのなら彼女が上だが、
さすが、ガイライだ。力の入れ方を知っている。



正拳が、彼女を捕える。

「参った!」


彼女が初めての言葉を発する。


一歩下がって礼。
にこりと笑う彼女はそのまま気を失う。もちろんわたしの腕の中でだ。

「マティス!彼女は?」
「体力の限界だ。これでもだいぶついたほうなんだ。」
「ガイライ殿、あなた、自身のことをもう少し理解してください。
あなたが息を切らすまで対戦できる人が今までいましたか?」
「あ、そう、だな。ああ、わたしもここまでの力が出せるとは。素晴らしい。
ああ、モウに、ありがとうと。」
「ああ、言っておく。これは月が沈んでも寝床の上だ。
今のうちに食料を作っておかねば。私は帰るぞ。」
「ええ、わたしたちはトックスさんと馬車で帰ります。
このまま厩でテンたちを引き取ってきますので。
ここを出るのは明日の半分すぎです。
それまで姉さんは目を覚ましますか?」
「大丈夫だろう。では、先に戻る。」

これで、目が覚めればいつもの彼女だ。
風呂だけ入れておこう。

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