いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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294:自ら望んで海を出た

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「みなさーん。残念でした!!
青いアヒルはこれにて失礼いたします!!
またどこかでお会いいたしましょう!!」


まだ、面をつけてるから、見れば笑う。みなが視線を外す。
その間を大きな袋を抱えて、広場をでた。

路地裏で袋を収納、面を外し、砂漠の民の服を脱ぎ、
先に買っておいたここの人たちと同じような服を着る。

これで、もうわからない。
落ち着いた頃に広場に戻り、買い物を楽しむことにした。





「おい!」

守衛さんだ。
「あ、さっきはありがとうございました。」
「お前たち、ん?服を変えたのか?」
「ええ、よくわかりましたね。さすが守衛さん。」
「それが仕事だ。それはいい。あれはなんだ?あの後はひどかったんだぞ?」
「え?なにかまずい?違反しましたか?」
「いや、そうじゃない。誰かが思い出して笑うたびに、皆が笑うし、
ぶ、俺も、仕事柄、笑い転げるわけもいかないし、
落ち着いたら落ち着いたで、あの甘い菓子の奪いあいだ。」
「子供同士で?」
「それは、俺が止めたよ。大人だよ、集めないで歌だけ聞いたやつらがな、
ずるいってよ。」
「笑ったから銅貨は渡せないけど、羽毛の報酬が菓子のつもりだったんですよ?」
「ああ、それはわかってる。苦しい想いをしたのにってことらしい。
それで、落ち着いた後に、菓子を食べてな、うまい、うまいって見せびらかすように
食べたやつがいるんだよ。そこから喧嘩だ。」
「あー、それは、そこまで考えなかった。迷惑かけましたね、守衛さんに。」
「俺か?ああ、止めるのは仕事だからいいさ。しかし、あの手は2度と使えんぞ?」
「ええ、ここではもうしませんよ。買い物が終われば出ますんで。」
「そうか?ま、楽しませてもらったよ。あんたたちは損したんじゃないか?
2リング払って、菓子を配って、手に入れたのはあの羽根だけだ。」
「ええ、十分手に入りましたんで。ありがとうございました。
あ、これ、ご迷惑をかけたみたいなんで、
よかったらどうぞ。」

袋に入れたクッキーを渡す。

「お!ありがたい!遠慮なくもらっておくよ。
まだ、向こうで文句を言ってるからな。これを配っておくさ。
いつまでここにいるんだ?」
「月が昇る前には出ます。」
「そうか、その時は門にはいないが、気を付けてな。」
「ええ、ありがとうございます。」

んー、喧嘩するとは思わなかった。

「愛しい人、子供がさっきからこっちを見てるぞ?」
「ん?ああ、最初に持ってきてくれた子だ。
少年!どうした?」

子供らしい子供に声を掛ける。
少年だよね?少女だったらどうしよう。

「さっきのねーちゃんだよな?」
「そうそう、お面がないのによくわかったね。」
「声で分かる。」
「そうか。少年は少年だよね?」
「?そうだ。あのさ、まだ羽根はあるんだ、持ってくるからあの甘いものと交換できない?」
「ん?羽根はもう一杯たまったからいらないよ?」
「・・・。さっきのトルガのおっさんにはなんで甘いのあげたんだ?」
「ああ、なんか、大人たちが喧嘩したって?よけいな仕事をさせたからね、そのお礼だよ。
少年?まだ甘いの欲しいの?もしかして取られた?」
「ううん、取られてない。取られそうになったけど、トルガのおっさんが助けてくれた。
でも、1つ食べた。あと2つ。
俺の家族4人なんだ。あと1つ欲しいんだ。」
「そうか、そうか。家近くなの?アヒルもいるの?そう?
じゃ、そのアヒルさん触らせてくれるかな?走っていくのを見ただけなんだ。
そのお代が甘いお菓子だ。どう?」
「ほんと?すぐ近く!行こう!早く!」
「うふふ。かわいいねー。ティス!アヒル見に行こう!」
「・・・・」
「?ダメ?」
「いや、現物をみれば、また笑ってしまう。」
「あははは!そう?あの子は大丈夫そうだったよ?」


「ねーちゃん!早く!」


そんなことはなかった。
ここだよ?と、大きな小屋に案内され、扉を開けた途端、
2人が噴出した。

「ね、ねーちゃん、じっくりみてて、ぶ、いいから、俺、そとに、あははは!にいるから!」
「愛しい人!わ、私もここにいる、から!!」
「はいはい。」


「お邪魔しまーす。」

おお、飼育小屋の匂い!うん、これは大丈夫!

「初めまして!アヒルを見るのが初めてなんで、
ここの家の少年に案内してもらいました。
もし、良かったら触ってもいいですか?あ、いいですか?
おお!つるつる。ここの抜け毛?胸元だと思うんですが、
これをね、集めて服を作ろうと思って。
あ?なんで笑ってるのか?外の2人?んー、よくわかんないんですけど、
歌があるんですよ、アヒルの歌。それをうたったら、あんなんで。
え?そうですか?」

どんな歌?というので、歌ってやる。
クーアーと一緒に歌ってくれた。
俺たちは自ら望んで海を出たんだと教えてくれた。
それに体は弱くなっていない、むしろ強くなったらしい。
そうなんだ。まちがった歌だったねというと、
そのほうがおかしいから構わないと許可をもらった。

歌のお礼に、尻尾の羽根を何本かもらった。お礼だからいいよね。
お面の飾りにしようと思う。

お礼を言って、外に出ると、2人ともうなだれていた。

「あ、歌が聞こえた?あははは、ごめんよ。
お礼に羽根をもらったよ。きれいだね。
あ、少年、ありがとう。これね。アヒルに会わせてくれたお代ね。
日持ちはするけど、早めに食べてね。」
「やった!こんなに?いいの?」
「もちろん!もし、あの広場にいた子が、あんたに嫌がらせしてきたら、腕をこうね、
で、ズンタッタって歌えば、大丈夫だよ、しばらくは。」
「ぶ!!お、俺がダメ!!」
「ああ、そうか、そこは、うん、がんばれ!」
「明日もする?」
「ううん、もうこれからここを出るよ?アヒルに会えてよかった。
ありがとうね。アヒルさんは歌を覚えたみたいだよ?」
「そうなの?アヒルって歌うんだ。」
「いやー、クークーアーだったけど。」
「あはははは!それも面白いね!ねーちゃんありがとう!」
「こちらこそ!」



マティスは、ずっとおなかをさすっていた。
ポンポンいたいいたい状態のようだ。すまぬ。









「愛しい人、マトグラーサとの国境沿いに森があるそうだ。
そこにリンゴがある。少年がおしえてくれた。」

やっと、腹の痙攣が落ち着いたので、彼女に教えてやる。
「わ!すごい情報をもらったんだね。ここから近い?」
「アヒルで2日だそうだ。赤馬で1日、ならば、砂漠の民でも1日。
しかし、飛べばすぐだろう。」
「よし!行こう!そのまえに腹ごしらえだ!!」

アヒルを見た後、また広場に戻って、
何食わぬ顔で屋台の食べ物を食べた。
メイガのスープと、厚切りのハム。彼女はパンにはさんで食べていた。
スープにはメイガの赤い粉をこっそり振りかけている。

「うん、おいしいね。体があたたまる。」
「これは、いいな。」
「あんまりたくさんいれたら、辛くてダメだけどね。ちょっとだけがいいね。
さ、リンゴを探しに行こう。ここには売ってなかったでしょ?」
「少し時期が早いらしい。いまはマトグラーサの向こう、ダカルナまで広がる森で、
雨の日まで、ここでは雪の日までだな、そのころまでに、実りが来るらしい。」
「ん?リンゴはなに?木の実?草の実?まさか動物?」
「植物だよ。蔓なる実だ。とても小さい。それが木々に絡みながら成長していく。
それを蔓ごと酒にしたのが、お前が気にいっていたリンゴ酒だ。」
「蔓かー。その実だけでは食べないの?お酒にするんじゃなくて。」
「小さいからな。それを食べるのは面倒だ。
だから蔓ごと酒にする。」
「なるほど。ちょっと苦味があるのは蔓せいかな?
よし!ニックさんとの約束の時間まで、リンゴを収穫しに行こう!」

広場を抜け、門を出る。

上空をかなりの速さで飛ぶことになるので、
毛皮以外のものを着こむ。耳も隠すように細長くした毛布を巻く。
ごうぐるを付け、マトグラーサの国境沿いの森へと進んだ。
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