いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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303:槍術

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昨日と同じように朝ごはんを用意する。
今日は和食。
焼き魚、温泉卵、だし巻き、サボテンの炊いたもの、肉そぼろも用意した。


3人一緒に帰ってきた。

「お帰りなさい。すぐにご飯はできるから、先にお風呂に入ってきたら?
ちょっと広げておいたから、3人いっしょでも入れるよ?」
「「「・・・・。」」」
「ん?」

「ああ、母さん、ただいまかえりました。」
「モウ、ここに住みなさい。」
「モウちゃんいいな。毎日これがいいな。」

そんな会話はマティスの殺気で飛んでしまう。3人はお風呂へと消えていった。


ニックさんもなんとかお箸をつかって食べている。
師匠とガイライは問題ない。


「昨日のおにぎりはうまかったですね。
オート院長の前で食べてやりました。
だって、あのしふぉんけえき、
半分一人で食べて、半分はいま通ってる娼婦のとことに
持っていったそうですよ?だったら部下に分け与えればいいのに!!」
「あははは、気に入ってくれればいいけど、
もっと食べたいって言われたらどうするんだろうね。
わたしはそこまで責任もたないよ?」
「でしょ?しかし、そこはうまいんですよね、2度と食べられないものだから
2人で食べたいって言ったそうですよ?
それを自慢げに言うのでね。おにぎりと唐揚げを目の前でたべてやりました。」
「・・・・師匠、大人げないね。シフォンケーキは今夜食べましょう。
あれにリンゴもつきますよ?」
「さすが、我が弟子ですね。今日は槍の鍛錬ですか?
棒術のことはいったん忘れなさい。それが習得の近道です。」
「はい、師匠。今日はニックさん、よろしくお願いいたします。」
「おお、まかせとけ。」
「モウ、無理はしないように。」
「はいガイライ。軍部の新人教育はどうでしたか?ああ、内容はいいですよ。
機密でしょうし。うまくいきそうかだけ。」
「ええ。大丈夫です。6人も自分の力量を計れたようです。
ルカリも、昨日は動きがよかった。
いつも半分すぎたら調子が悪くなっていたのですが、
なんでも、これのように月が沈んでから飯を食ってきたそうで・・・」



そんな話を聞きながら、今日は一日資産院の鍛練場を借りて
ニックさんの指導を受けることになった。
ガイライは軍部、師匠はもちろん資産院で。
マティスもわたしと一緒に鍛錬する。左を重点的に。


「いいか、モウちゃん。棒と槍は違う。
ワイプの言うように棒のことは忘れろ。まず、槍だ。これを構えてみろ。
そうだ、刀がある分、重心が先に行く。これに慣れろ。」
「はい!」




そこから構え、突き、振り回し、
穂先の使い方、柄尻の使い方。
腰の引き方、基本の型、構え。
ルグやドーガーがとる型。

その流れを繰り返しとにかく覚える。
繰り返し、繰り返し。

昼用に作ったサンドイッチを食べてすぐにまた始める。


月が昇る前には補正されることなく一通り通しで動けた。
これを毎日やればいい。おのずと自分の型ができるそうだ。

「ありがとうございます!!」

マティスはその間、左だけで型を繰り返していた。

「愛しい人、起きたらこの型を2人でとろう。
そうすれば、私の鍛錬にもなるし、あなたの鍛錬にもなる。」
「はい!」

この日はこれで終了。
晩御飯は師匠の家で食べることになった。
大蒜をつかった肉料理だ。もちろん、歯ブラシとガムも用意する。
柄は木にしているので渡しても大丈夫だ。

家に戻る前に厩に行ってみる。
スーとホーはもちろん、たくさんの馬がいた。

「久しぶり!聞いた?わたし師匠から10本中5本とったのよ?
すごい?」

懐かしい友達にあったように近況を報告していく。
話ながら、厩をきれいにして、スーとホーも銀色の毛並みにする。
他の馬たちもサービスだ。
メイガの赤い粉の話もした。リンゴの話も。
しかし、やっぱり興味があるのは呪いの森の泉の話だ。

「飲んでみる?」

もちろんということで、出してやる。

バッカスの石から妖精のお酒が出ないように、
この水は砂漠石からは出なかった。

少しだけでいいというので、
ほんとに少し。

「どう?」


うまい、と喜んだが、大量に飲むものではないといわれた。
ああ、なるほど。それはわかるな。妖精の酒のようなものだ。
これが欲しいと思うこともなく、
死ぬ前に飲みたいと思うものではない。
また、忘れたころに飲ましてくれたらうれしいといわれた。
そして、動物に一度に大量に与えるなとも。
これがないと生きていけなくなるだろうと怖いことをいう。
栄養ドリンクみたいなものみたい。
気を付けよう。


あ、ホーにあのメイガの羽根をプレゼントしよう。
薔薇の花ではバランスが悪いから、リボンの方。
そうすると、スーには何もないから、スーに渡しておこうか。
スーからのプレゼントだといえばいい。
ホーが水桶で自分の姿を確認している間に、
1つだし、ホーを指さし、リボンを指さし、スーを指さし、
また、ホーを指さした。
これで、スーは理解する。
壊れぬように、咥えて、隅のほうに隠していた。
が、ホーも気付いたようだ。じっと動かずにいるから。
きっと、初めて見たように喜ぶんだろうな。
明日から砂漠にいくから、帰りに寄るであろう師匠に付けてもらえばいいだろう。

わたしが厩で話している間、マティスはニックさんと話をしていた。
今後の鍛錬項目のおさらいだろうか?



鶏館に戻り、大蒜をすり込んだ焼肉の用意をしておく。
家の中では匂いがこもるので、外だ。


なぜか、馬車で帰ってきた3人。
ルカリさんとオート君もいる。

「お帰りなさい。どうしました?」
「モウ、ただいま戻りました。その、ルカリがどうしても話があると。」
「オート院長もです。ほら、あなた、自分で言いなさいな。」


ルカリさんの話は簡単だ。
昨日の半分の時に、ガイライからおにぎりを分けてもらったそうだ。
しかし、食事制限しているので、
半分食べて、半分寝る前に食べることにしたそうだ。
その半分をよく噛んで食べる。
家に帰り、やはり寝る前は腹がすくので残り半分の量を、
湯冷ましを飲み、1口30回噛んで、
味わうように食べた。
これが、ちょうどいいと作り方をガイライに聞いたが、
ガイライも知らないといわれ、それで聞きに来たそうだ。
ガイライも料理はしない。

オート院長の話はこうだ。
皆がそれぞれの馬を持っている。
当然、オート君も。オート君は乗って家に戻る。
ワイプ師匠が珍しく早く帰るので、自分も帰ろうと、一緒に厩に行くと、
ものすごくきれいになって、馬も輝くようになっていた。
馬たちもご機嫌だ。うれしくなって、さらにブラッシングをしてやる。
また、馬も喜んだ。
横を見ると、師匠が馬に命令されるように、鬣に飾りをつけている。
馬の方が偉いのだ。
その飾りをみてこれだと思ったらしい。要は、次の彼女のプレセントだ。
それを売ってくれといったが、無理だといわれた。
では、どこで買ったのかという話なり、与えたのはわたしだろうという話になって、
どこに売っているか聞きに来たそうだ。


「ああ、ルカリ殿が食べたものは米ですね。それを炊くんですよ。
それに塩を手に付け握るんですね。
炊き方は、紙に書いてお渡しします。
料理はされるんですか?なるほど。では簡単ですよ。
オート院長のお話はそうですね、さすがにお馬さんと同じ装飾をもらうのって
女性としてうれしいかといわれると、うーん、という感じですよ?」
「え?そうですか?しかし、あれはメイガの羽根。
普通は、ドレスの装飾の一部です。それをあのような形にするというのは、
今回戻られたニック殿の故郷、イリアスの最新な飾りでしょ?
馬と同じというのはそうですが、しかし、喜んでもらえると思うのです。」
「うふふふ。彼女は物よりも愛の言葉が欲しいかもしれませんよ?」
「え!そ、そんな!」
「言葉にしてくださいね。
いろいろなことを彼女さんしているとはおもいますが、彼女にしてみれば、
当然なんですよ。それに加え、言葉も欲しい。女は贅沢です。
物がなくてもいいのですが、愛の言葉は常にほしい。
でも、当然物も欲しい。あれはわたしが作ったものなんですよ。
なので、これを。」

薔薇の飾りを渡す。
このほうが喜ぶだろう。

「うわ!きれいだ!花ですね!こんなきれいなものは見たことがない!!
売ってください!!」
「師匠?これ、いくらぐらいでしょうか?」
「また、あなたは!これ、4枚使ってますね。それも傷のないもので。
材料だけで50リングですよ。この加工で50とってもいいんじゃないですか?
合計100ですね。」
「なるほど。ではオート院長、これは50リングで。」
「!え?材料費だけですよ?100、いえ、200払います!」
「いいえ。これはたまたま手に入ったもの。どこから入手したかは言えない。
わたしの職務を理解してください。これを付けたあなたを見たかったのです。
美しいあなたが更に美しくなる、わたしの手で。
とかなんとかいって、入手先はご内密に。
ああ、愛の言葉も忘れずにお送りください、その彼女に。」

「!!!!」

オート君が真っ赤だ。
純粋だなー。あ、ルカリさんもだ。
おいおい、女性を口説くのに、やるだけしかしてないのか?ダメじゃん。

「あ、あのありがとうございます。こ、これを。」
袋にはいった50リングをもらった。
4つ用意したようだ。さすが、資産院院長ですな。

「おお!50リング!いい稼ぎだ!マティス!やったよ!」
「愛しい人、これで稼いでいくか?」
「うーん、候補としては置いておこう。
メイガはうまいものっていう認識だからね、怖くない!
あ、お二方、いまから食事をするんですよ。
よかったら、ご一緒にどうですか?」
「え、それは・・・。」
オート君は師匠のほうを見る。
師匠はマティスを。マティスが頷くと、師匠も頷いた。
「いいんじゃないですか?」
「では、お言葉に甘えて!」
うれしそうだ。
ルカリさんは、かなりの難色だ。だってダイエット中だもの。
「ルカリ殿もご一緒に。1日ぐらい食べても大丈夫ですよ。
それを毎日食べるわけじゃないしね。次の日の食べる量を減らすとか、
鍛練の量を増やすとか!自分のご褒美の日を作らないと!
我慢が一番よくないんですから!!」

と、悪魔のささやきをした。
「そ、そうですね!では!」

火元を樹石に変えておいてよかった。何とでもいえる。
お酒、ビールはどうしようか。
食堂に転がっている酒樽のなかにいれておけばいいかな。
旅先で見つけた酒だということで。

馬車のお馬さんにはおいしい水と茶葉をだす。
これが噂に聞いていた水かと喜んでいた。

やはり、にんにくが効いているとうまい。
ただ、くれぐれも歯を磨いてガムも噛むようにと念を押す。
オート君には特に。彼女に嫌われるといっておく。
このブラシはいずれコットワッツから売り出されると宣伝も。
試作品扱いだ。

楽しい食事となった。
オート君は話上手だ。元院長の話をおもしろおかしく話してくれた。
金の使い道はわからないが、資産院の金を私物化していたそうだ。
それが妹が資産院に入ってから拍車がかかった。
さすがに、これ以上は出せないといったらしいが、
妹の方が、山と積まれたリングの箱をくすねることを思いついたらしい。
返済利息は月に20%、早く返さないととんでもない額になる。
その利息の設定をしたのは師匠だ。
返せなくなって、資産差し押さえを狙っているみたい。こわいなー。

甘味も出そうという段になったが、師匠の視線が
険しかったので、リンゴの砂糖煮だけにする。
それとコーヒー。
2人は満足して帰っていった。

それから、また、シフォンケーキを出す。
まだ入るのか。いや、入るけど。
師匠も満足のようだ。

この食事会のあいだ、ガイライはニコニコしていたが
ニックさんは話を振れば答えるが終始考え込んでいた。

とにかく、月が昇れば、渓谷に逸れた砂漠まで飛ぶ。
師匠はお呼び出しで。

そんな感じでお開きとなった。












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