いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
388 / 869

388:クジラ

しおりを挟む
なぜかライガーもついてくる。
あんた、これからの生活どうするの?


「ここに。テルマ殿もとで。」
「ルカリアには戻らないの?」
「銃の仕入れの時だけだ。ここに生活の拠点を置く。」

そうなんだね。

「では、テルマ?やはり最初は?」
「もちろん。お前と同じだ。」
「ん?」
「テルマの家はきれいだっただろ?掃除が行き届いているというか。
あれはテルマの趣味だ。だから、あの家に逗留するなら、
まず掃除のやり方を仕込まれる。
私もそうだった。」
「そうか!だからマティスは世界一のお嫁さんなんだね?
いつもきれいにしてくれてありがと。」
「お前が喜んでくれるのならなんてことはない。」
「・・・。」
「マティスは良き嫁をもらったな。」
「ええ。自慢の嫁です。」

いやん、照れるがな。
世界一の嫁はマティスだよ。
ライガーも良い嫁になるだろう。


歩きながらマティスに簡単に書いてもらった絵は、
まさしくクジラ。這って土ごと食べる。
不要物は頭上から吐き出すそうだ。
進む速さは遅い。
ただ、クジラが進んだところは何もかもなくなってしまうので、
討伐するそうだ。
が、うまく誘導して、森を開拓してもらうこともある。
今回負傷したのはその誘導に失敗。
森から入ってすぐのところだったから持って帰れたらしい。


「さ、これだ。腐敗臭はしない。エデトのことがなければ、
土に埋めるところだった。」

部屋ほどの大きさを想像したが、
乾燥してかなり小さくなっているらしい。
これ以上小さくはならないので、土に埋めると。

クジラの原型はない。
肉を取り出すために解体されているのだ。
皮と骨、石のようなと呼ばれるもの。
この表面にへばりついているものがあのおいしい肉だ。
肉の廻りについている脂肪か?
いわばクジラの本皮?
ではこの固いものも肉?


森を出ると、森での速度が嘘のように高速で進んでいく。
そうなるとどうしようもない。
通り過ぎるのを待つだけだそうな。

・・・オームか?

何百年に一度はあるそうで、
その時はみなあきらめる。
その通り道がメイン通りだ。砂漠まで一直線。

「あの?じゃ、砂漠に突っ込んでいくと?」
「そうだ、そしてそのまま死んでいく。」



「内蔵とかは?」
「この固い身の中だろう?」
「なるほど。」

コンコンと叩く。クンクンと匂う。

「臭わないですね。」
「匂いがするのならこんなところに置いておかんよ。」
「これ、売ってもらえますか?」
「なににするんだ?」
「いや、ちょっと興味あるんで。どうにもならなかったら、
砂漠に埋めます。」
「どうやって運ぶ?」
「背負子で。」
「あの?あれでも無理だろう?」
「広げられます。いいですか?」
「売るもないも、いわばゴミだ。好きにすればいい。」
「ありがとうございます。」

乾燥しているからか、意外と軽い。
やはり背負子は無理だ。
大きな荷車を用意してもらった。
それを2台連結。
申し訳ない。

これをもって一度テルマさんの家に行こう。
そこで、別れて収納だ。


それに半分だ。
おなかがすいた。

テルマさんの家にえっちらおっちら戻ると、
マティスの機嫌は急降下。
ん?

お三方が待っていた。
暇なのか?


「どうした?」
「いえ、テルマが話していた、ぷりんが気になって。」

待っている間の話たらしい。
わたしの気に入った葡萄の甘露煮と交換というわけだ。

しかし、そこからシーツドレスの話にどうやって行ったんだろう?

テーブルは大きい。
こうして3世代が頻繁に集まっていたんだろう。
作るときも一人で食べきれるのか?というくらいの数を作ってくれと頼んでいた。
同士かとおもったが違うのか。

そして師匠だ。

「ちゃんと仕事ですよ?」

お三方と師匠なのだ。

テオブロマ入りのコーヒーと聞いて来たはずだ。
師匠は結構コーヒー好きなのだ。それとトウミギだろう。
ポップコーンはできるだろうか?

「それと、ライガー殿の安否確認ですか?
我が国の国民が言われなくルポイドに拘束されていると、
ルカリアの方からね。
えー、そんなことはないというのがルポイドの返答でよろしいか?
どちらにしろ、一度ルカリアに戻ってもらえますか?」
「・・・。」
「ああ、わたしが同行しますから。処分されることはないでしょう?
ルカリアに戻って、王都に入ってください。
そこからまたルポイドに?その時は別のものを付けますから。」
「・・・。」
「あなた、武の大会では優勝者ですが、
それに参加していない人間であなたより強いものはゴロゴロといるんです。
過信はダメですよ?」
「・・・わかりました。テルマ殿、早急に戻りますので。」
「そうだな。このままここにということはやはりできぬか。
ま、ワイプが同行するんだ問題はないだろう。」

マティスは8人前のラーメンを作っている。
醤油ラーメンだ。
マティス母さんだ。

その間、今回のあらましを面白話として伝えておく。
「ほうほう、赤い塊殿がいらっしゃいましたか。
エドガ元首のお加減は?」
「問題ない。」
「それは良かった。お怪我をされたとのうわさはあったのですが、
まさか、銃とはね。」

「ライガー、運べ。熱いぞ。」

トレーがないので手運びだ。うちの母さんがみたら怒るな。

「この時間に来たのは正解でしたね!!」

ズゾーと食べる。
わたしたちは問題ないが、ライガーとルポイド組は大変だった。
お箸がダメだからフォークだからそれは問題ない。
猫舌なのだ。
熱いものが苦手とかそういうレベルではない。
拷問か?というくらいに悶えている。
熱湯風呂?

「・・・舌先にあてるからですよ。
舌の真ん中?舌先を下の歯に押し当てて、
んー、うまく説明できないな。舌を引っ込めてない?
なんせ、舌先にあてないように。」

「?・・・!!熱くない!うまい!!」

ルポイドは暖かい国。あまり熱いものは食べない。
コーヒーも結構冷めている。
地獄のように熱くないのだ。

ライガーは父君が生きていれば次期領主だったはず。
子供のころは、冷まして、冷まして、食べさせてもらっていただろう。


食後のコーヒーはわたしがいれた。
ドリップだ。
あとはプリン。上から掛ける蜜もテオブロマだ。
おいしいね。


「これはまたうまいですね。」
「専用の器具がないので布で濾しただけですよ。」
「なるほど。」
「それで、モウ?あの大量の荷物がトウミギ?」
「いえ、あれはクジラの残骸です。石みたいなお肉ですって!
ほかのところも食べられるかなって。
お肉、すごくおいしかたんですよ。」
「ああ、モウ。それは残念ながら。
やっと表面の肉をとることに成功したんですよ。」
「え?そうなんですか?んー、じゃ、ダメもとでいろいろやってみます。」
「成功したら教えてください。いえ、その方法買い取りましょう。」
「それはうれしいですね。お願いします。
あ、おじい様?砂漠石なんですが、わたしの持っているものと交換してくれませんか?
いろんな大きさ、いろんな産地の砂漠石を集めるのが趣味なんです。」
「みな同じだぞ?」
「違いますよ?コットワッツは黄色っぽいし、マトグラーサは赤っぽい。
ここのはドルガナ?ちょっと黒っぽいですよ?」

それは表面についてる砂の色だ。
きれいに拭き取れば同じだ。

テルマさんはそうなのか?と大小さまざまな石を出してきてくれる。
それと同じ石を背負子から出すようにして交換。
これは研究しないと。
たまたまあの石だけがそうだったのかもしれないから。


マティスはラーメンの説明をしている。
コットワッツで売り出していると、この味は開発中だということで。
テオブロマの絞り機は素晴らしいとお褒め頂いた。
しかし、テオブロマの価値はこれではない。
赤い綿と皮、後は中の種。
もともと、皮と実は捨てていたんだ。

綿も皮も甘い。では実は?
そこから誰かかが気付くだろうか?


ライガーがいるので、
砂漠まで、荷車を押さなければならない。
荷車はラーメンの礼だと、
もらえることになったけど、なんてことだ。

エデトさんがわたしの横に来て、小さな声で聞いて来た。
「モウ、赤い塊殿。
感謝は香木の香りが続く限り、我が心に。」
「うふふふ。香木。ここの香木って、チャンナラともう一つ?」
「!!ご存じですか?」
「匂いが違った。チャンナラは縁があって、嗅いだことがるんです。
ちょっと違いますよね。」
「ええ。それはどうか内密に。」
「もちろん。」
「それと、あの糸は?操りの糸ではない?」
「違います。暫定的ですが、操りの糸を防止します。
内緒ですよ?たぶんもう一度あのお局様、じゃなくてドルガナの方から
なにかしら言ってくる。もしくはマトグラーサかな?
長寿というのは国を納めるための力だと公表したほうがいいかもしれない。
他国は香木が、不老長寿の妙薬とおもってるんじゃないですか?」
「ああ、それで、ドルガナ公が?」
はははは!なるほど!ああ、そういうことか!」

豪快にわらってるけど、違うのかな?
いや、触れちゃいけない。


・・・師匠が笑ってこちらをみているのが怖い。
なにも嘘は言ってない。
黙ってるだけだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...