いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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390:解体

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師匠を見送り、
お風呂に入る前に、このクジラの解体をせねば。

「故郷にもね、クジラっているの。
ここの言葉では?ホオル?ま、クジラね。
そのクジラは海にいるんだけど、
やっぱり頭から飲み込んだ要らないものを吐き出すの。
そこが一緒。で、捨てるところがないっていわれてるけど、
うーん、どうなんだろう?
骨は武器や、装飾?皮は膠?あとは油が取れるらしい。」
「油?」
「そう。でもそれが欲しいわけではない。
皮と骨はトックスさんに相談するとして。」
「ああ、トックスも相談があるらしい。糸のことで。」
「うん。そうだね。それは急ぎ?」
「いや、トックスのほうでいろいろ考えているようだな。」
「そうか、じゃ、また、遊びに行ったとき聞いてみよう。」
「それで?」
「で、この石のような身。その中の内臓。これ、細かく切れる?」
「かなり固いが、砂漠石で切れるだろう。」
「湯がいたり、乾燥させたり、炙ったりね。これはじっくりやっていこう。
しかし、本題はそこではないのよ。内臓に興味あり!!」
「うまいのか?」
「いや、内臓はさすがに鮮度がないと怖い。
内臓の中にあるかもしれない結石。というか、ま、内臓の中にある固いもの。
これを探したい。」
「?」
「あの香木の香り。ちょっと違ったでしょ?お風呂に入れたものと。」
「そうだな。炙ればあの香りになると
おもったが、元首が違うと言っていたな。」
「聞こえてた?うん。それがこのクジラの中にあったらいいなーって。」

龍涎香。
あるだろうか?



固いと言っても骨でもない。
切れる。削ぐ。それは収納。
これを切れば内臓だぞ?というところまで。

内臓が出たときは卒倒しそうだった。
腐ってやがる!
そりゃそうだ。
あと可愛く言えば、うんこくさい。

吐いた。

「愛しい人!!」

マティスが胸元に抱き寄せくれる。

「んー、マティスの匂い。
膜張っておけばよかった。うん、大丈夫。」
「まだするのか?」
「うん。これ、解体方法考えないとね。」
「それで、なにを探せばいいんだ?」
「石。結石、胆石。なんか、固く残ってるもの。」
「わかった。」

そこから先はまさにぐっちゃぐちゃ。
しかし、どこにあるかを確認しないといけないから。
鳥解体で覚えた知識で、取り出しては切り刻んでいく。
ちょっとよそ様には見せられない。
遠くに深く穴を掘り、ぐちゃぐちゃなものは移動していく。

「これか?固い。骨?」
「やった!それどこの部分?」
「胃袋の下あたりだな。」
「胆石?しかし、おっきいね。あとはなさそう?」
「ないな。」
「良し!撤収!!月が沈む。」

匂いの元は元から立たなきゃダメって、CMあったな。
そういうことで、土下座級のきれいに。
あとはお風呂だ。そしてご飯。朝ごはん。
スプラッターを見たけど、問題なく食べれる食欲が怖い。

「風呂、飯と食べている間に例の2人が追い付くぞ?」
「え?じゃ、お風呂はあきらめるよ。
ご飯にしよう。砂漠の民ぽく。チーズと干し肉と、リゾット。」
「それ好きだな。よし、すぐ作ろう。」
「あ!トウミギ入れて!お湯に戻したら柔らかくなるって。
それを実だけ削いでね。あー、バターで炒めよう。
コーンバター。でお醤油。
そうなると、そのままで食べたい。」
「少し、リゾットに入れて、あとは炒めよう。
両方だな。」
 「うん!」


まずは乾燥したまま削いだものを炒めてみる。
怖いので一粒、もう一粒熱したフライパンに入れる。

ボン!ボン!!

爆発して飛んでいった。

「ぶははははは!」
「これは食べてもいいものなのか?」

ポップコーンは断念か?
残りは湯がく

なるほど、湯がけば柔らかくなる。
乾燥したまま削いで湯がくと水っぽくなったので、
それはリゾットに。
そのまま湯がいて削いで、バター炒め。
屋台のトウモロコシも後で作ろう。

マティスが作ってくれている間にもう一度
ポップコーン。
フタをすればいいんでない?


フタが吹っ飛ぶ。

深めのフライパンを作り、
それに入れて、フタをし、重石を置いて、火にかける。
ボン!ボン!ボン!

音が止んだので、火からおろし、フタを取る。
カリフラワーかとおもった。おおきい。

さっと、塩を振る。

「食べるよ?」

湯がいたものは味見済みなのでマティスも止めない。

「・・・なるほど。
ああ、またしても止まらないものを作ってしまった。」

これ、チョコ液に付けたらもっと危険だ。

「うまいな!!」

こういうジャンク系に弱い。
ここの人たちみんなに言える。

「キトロスの種と一緒でいろんな味が付けれるよ。
チョコ液に沈めてもおいしいと思う。どう?」
「うまそうだ!」
「ふふふ。いいおやつができたね。
でも、おやつの前にご飯だ。いいにおい!!」

バター醤油とチーズ。いいにおいで美味しいに決まってる。

「おいしいね。こういうのって穀物っていうんだけど、
人間には必要だから、
かなり昔から食べ方とか研究してるもんなんだけど、
あんまりないね。とにかく馬が先に食べてる。
それだけ、馬を大事にしていたのか、
肉食で栄養が取れているのか。」
「肉だな。とにかく肉。小麦、パン、米なぞなくてもいい。
今はないと困るがな。」
「そうだね。はー、おいしかった。
・・・・そうそう、マティス君、お伝えしたいことが。」
「?いやな出だしだな。笑っているのが逆に怖い。」
「いや、言っとかないとね。これ、トウミギ。
よく噛んで食べてるんだけど、2つ、3つはそのまま呑込んでるでしょ?
で、それは直接出ます。物に。驚かないように。」
「ふは!!それは、重要なことだ。そうか、直接か。」
「分かっていても驚く。え?なに?って。
で、あー、昨日食べたわ、ってなる。おトイレで叫ばないように。」
「ふふふふ。わかった。」

ではでは、出発ということになった。


「来ないね?」
「そうだな。結局来ないのかもしれんな。」
「えー、じゃ、もうイリアスに行こう。」
「鍛錬だ。」

もう重いの。8倍の荷重ってなによ。
そしてお風呂に入りたい。


「遅い。」
「いや、そんなもんだろう。それに向こうは駱駝馬に乗ってる。」
「そうか、こっちが速かったんだ。
なんていって接触してくるのかな?
まだ、月は昇らないし、それまで来るよね?」
「どうしても風呂に入りたいんだな?」
「そうです。」
「ほら来たぞ。すごい勢いだ。駱駝馬も大変だな。」
「だね。」

後ろからドドドドとやって来た。
2頭だ。わたしたちを目視して、急に止まる。

「マティス様!モウ様!
よかった、追いつきました。
エデト様が至急お戻りいただくようにと。」
「何用で?」
「いえ、それはわたくし共は聞いておりません。」
「では、無理だな。コットワッツに書簡で送っておいてくれ。」
「それでは間に合いませぬ!」
「知らぬな。ではな。」
「荷のことでございます。その大きな・・・?」
「荷とは何のことだ。」
「え?」
「この背負子のことか?これは旅道具だ。これが?」
「・・・広場で仕入れたものは?」
「それを答える義務もないし、そのようなことはいちいち
ルポイドは把握するのか?自国内ならまだしも、
外に出てしまえば関係ないだろう?そのために税を払っているんだから。」

「・・・時間の無駄だな。ケアクお前は女を。俺は剣のマティスだ。」
「え?」

いきなりなんだ。もっと泣き落としとかがあると思ったのに。

「愛しい人。いきなり小芝居がはじめるのはあなたぐらいだ。」
「なんだ、そうなんだ。うちの地元では普通なのに。」
「故郷ではなく地元?」

関西人はちょっとしたことから一芝居ができる、はず。


「はっ!!」

女の人です。
8倍は無理。

「マティス外すよ?」
「ダメだ、3だ。」
「ひどい!!」


3倍荷重で、対処しろと。

相手は槍だ。
しかも騎乗で。
穂先が長い。なんていうんだっけ?ランス?

「馬よ、けがをするぞ!下がれ!」

前足を揚げ、振り落とし、結構な距離まで走っていく。
こちらを振り返る顔がかわいい。

「役立たずが!!」

騎乗用の武器なんだ。
今度は腰の剣を出してきた。


わたしも短く持って応戦。

棒と剣。

そこに集中してしまう。
試合じゃないよ?
殺し合い?いや、壊し合いだね。

息がかかるほどの接近。
下半身が無防備。容赦なしに蹴りを入れる。

「がぼっ、、、卑怯な。」

・・・なるほど。蹴りは反則なんだ。
では、棒を長くして、ブンと振り回す。
そのまま、短く持ち直し、懐へ。
心臓を突く。


今度は静かに倒れ込んだ。


「愛しい人、見事。」
「はー、マティスの雄姿を見れなかったよ。」

マティスは一撃だ。
わたしはまだまだダメだな。


2頭の駱駝馬がこちらに戻ってくる。
「ん。お前のご主人?
あ、違うの?あららら。じゃ、戻っていいよ。
お水だね。たくさん飲んで。
おなかは?お馬さんおすすめの餌籠あるけど、どう?
いいよ。かなりの速さで来たもんね。」

街の中で、盗んできたみたい。
戻りたいけど、水がないから不安だということ。

水桶とうまうま籠をだして、労ってやる。

「どうする?この2人。
ワイプに飛ばすか?」
「そうだね。けど、ま、ルポイドの館の中に出入りしてたから、
ルポイド側に渡そうか?」
「そうだな。ワイプにそういっておこう。
・・・・・。・・・・・。」

『ワイプ、来い!』

あれ?呼んだの?

「師匠?お疲れ様です。
棒と蹴りで対応しました。棒だけというのはなかなか難しいです。」
「それではかまいませんよ?試合じゃないんですから。
で?この2人?なるほど。
これ、ルポイドの人間ですね。わたしと同じような部署のはず。」
「え?荷物も欲しがってましたよ?仕事というより、強盗?」
「そうですよね?で、これをルポイドに返すんですか?」
「師匠のところに運んでも手間でしょ?」
「ま、そうですね。話を聞いたところで、どうにもならないですね。
マティス君が命を狙われているのは、昔からですし。」
「そうなの?兄弟げんかの延長で?」
「いえ、剣のマティスとしてですね。
しかし、コットワッツの関連することとか言ってましたね。
ちょっと面倒ですが、わたしが返して来ましょう。
ちょうど馬もありますしね。」

駱駝馬がものすごく嫌そう。

「ごめんね。わたしたちの師匠なんだ。
乗せていってくれる?この2人も。
うん。ありがとう。」

「では行ってきます。
晩御飯には戻ります。楽しみにしていますよ!!」


「なんでだ!!」

とりあえず、呪いの森に帰ろう。
お風呂入りたいんだよ。切実に!!


















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